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61.自宅

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 馬車がホワイト家についたのは夜になった頃だった。
 カルロス達は馬車を降りて屋敷に入った。
「豪華な結婚式だったな」
「ええ」
 カルロスとグレイスが話している脇で、シェリーはただ微笑んでいた。

「シェリー、疲れただろう。部屋で休むと良い。今夜はもう遅いが、夜食をとるか?」
 カルロスがシェリーに声をかけるとシェリーは頷いた。
「そうしますわ」
 シェリーはメイドに部屋に紅茶を運ぶよう頼んでから自室に戻った。

 シェリーは部屋で普段着に着替えると椅子に腰かけた。
 ドアがノックされる。
「シェリー様、紅茶をお持ちいたしました」
「ありがとう」
 メイドは紅茶を窓辺の机の上に置き、シェリーにお辞儀をしてから部屋を出て行った。

「二人とも、幸せそうでしたわ」
 シェリーは熱い紅茶を一口のみ、ふう、と息をついた。
「ジル様も……『お幸せに』なんて。私に言うとは思いませんでした……」
 月明りが照らす外の風景を見ながら、シェリーはジルの少し寂しそうな笑みを思い出して苦笑した。
「……新郎のセリフではないでしょうに」

 シェリーは少し冷めて飲みやすくなった紅茶を味わって飲んだ。
「それにしても、結婚式って楽しそうだけれど、大変そうでしたね。私も……アシュトン様と……」
 アシュトンと並ぶ自分の姿を想像したシェリーは、くすぐったいような気持になって両手で頬をぎゅっと押して目をつむった。

「結婚式の準備って、なにをすればいいのかしら……? でも、その前に正式に婚約をしなくてはいけないわ……」
 シェリーは甘いため息をついて、紅茶を飲み干した。

 ドアがノックされた。
「シェリー様、お夜食の準備が出来ました」
「わかりました」
 シェリーがドアを開けると、メイドが紅茶のカップを片付けてから部屋を出て行った。シェリーは人のいなくなった廊下を歩き、食堂へと向かった。
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