53 / 75
53.夕食
しおりを挟む
雑談を終えたシェリー達は、用意された部屋でくつろいでいた。
シェリーが窓から外を眺めているとドアをノックされ、声をかけられた。
「シェリー様、お夕食の準備が出来ましたので、食堂でお待ちしております」
「ありがとうございます」
シェリーが食堂に着いた時には、カルロスとグレイス、シリル子爵とシンディー夫人がもう席についていた。
「遅くなってしまい、申し訳ありません」
シェリーが席に着く前にそう言うと、シリル子爵が笑って言った。
「いえいえ、どうやらアシュトンが最後のようです。皆様をお待たせして申し訳ない」
シリル子爵が困ったように笑ったところで、アシュトンが食堂にやってきた。
「皆さま、お待たせしてしまい失礼いたしました」
アシュトンは席に着くとシェリーを見て、微笑みながら会釈をした。
「揃いましたね」
シリル子爵は全員そろったことを確認してから、食前の祈りをささげた。
「皆様のお口に合うと良いのですが」
シリル子爵は焼いた鹿肉を切り分けて、ホワイト家の人間の皿に取り分けていった。
他のごちそうもそれぞれが順にとり、夕食が始まった。
「先ほどもお話しましたが、ジル様の結婚式が楽しみですわね」
シンディー夫人がグレイスに言った。
「ええ。とても人気のあるかたですから、涙した方も多いのではないかしら」
グレイスは話しながら、ちらりとシェリーのことを見た。
「私は、心から祝福しておりますわ。お母さま」
シェリーはすまして言うと、鹿肉を口に運んだ。
「結婚と言えば……アシュトンはシェリー様と、まだ正式に婚約の話をしていないのですか?」
シェリーはシリル子爵の言葉を聞いて、緊張した表情を浮かべた。そっとアシュトンの様子をうかがう。
「私からシェリー様にはお話してご了承いただいております。カルロス辺境伯と父上へのご報告がおそくなり申し訳ありません」
アシュトンが赤い顔で言いにくそうに弁解した。
「まあ、その話は改めて後日、行いましょう。アシュトン様の婿入りのこともありますし」
カルロスが言うと、シリル子爵はかしこまった表情で頷いて言った。
「アシュトンは頼りないところもありますが、誠実さは保証します。よろしくお願いいたします」
シンディー夫人が仕切りなおすように、微笑みながら言葉を発した。
「あなた、今は明日の結婚式のことを考えましょう」
「ああ、そうだな。明日はめでたい日ですな。先を越されてしまったな、アシュトン」
「ジルのおかげでシェリー様と親しくなれたのですから、順番としてはおかしくないでしょう? 父上」
アシュトンはそう言って、シェリーの目を見て、はにかむように微笑んだ。シェリーもつられて、くすっと笑った。
「その通りですね。ジル様には感謝しないと」
カルロスはワインを一口飲み、アシュトンとシェリーを交互に見てにっこりと笑った。
祝いの空気の中、皆それぞれ食事と会話を楽しみ、夕食はおだやかに終わった。
シェリーが窓から外を眺めているとドアをノックされ、声をかけられた。
「シェリー様、お夕食の準備が出来ましたので、食堂でお待ちしております」
「ありがとうございます」
シェリーが食堂に着いた時には、カルロスとグレイス、シリル子爵とシンディー夫人がもう席についていた。
「遅くなってしまい、申し訳ありません」
シェリーが席に着く前にそう言うと、シリル子爵が笑って言った。
「いえいえ、どうやらアシュトンが最後のようです。皆様をお待たせして申し訳ない」
シリル子爵が困ったように笑ったところで、アシュトンが食堂にやってきた。
「皆さま、お待たせしてしまい失礼いたしました」
アシュトンは席に着くとシェリーを見て、微笑みながら会釈をした。
「揃いましたね」
シリル子爵は全員そろったことを確認してから、食前の祈りをささげた。
「皆様のお口に合うと良いのですが」
シリル子爵は焼いた鹿肉を切り分けて、ホワイト家の人間の皿に取り分けていった。
他のごちそうもそれぞれが順にとり、夕食が始まった。
「先ほどもお話しましたが、ジル様の結婚式が楽しみですわね」
シンディー夫人がグレイスに言った。
「ええ。とても人気のあるかたですから、涙した方も多いのではないかしら」
グレイスは話しながら、ちらりとシェリーのことを見た。
「私は、心から祝福しておりますわ。お母さま」
シェリーはすまして言うと、鹿肉を口に運んだ。
「結婚と言えば……アシュトンはシェリー様と、まだ正式に婚約の話をしていないのですか?」
シェリーはシリル子爵の言葉を聞いて、緊張した表情を浮かべた。そっとアシュトンの様子をうかがう。
「私からシェリー様にはお話してご了承いただいております。カルロス辺境伯と父上へのご報告がおそくなり申し訳ありません」
アシュトンが赤い顔で言いにくそうに弁解した。
「まあ、その話は改めて後日、行いましょう。アシュトン様の婿入りのこともありますし」
カルロスが言うと、シリル子爵はかしこまった表情で頷いて言った。
「アシュトンは頼りないところもありますが、誠実さは保証します。よろしくお願いいたします」
シンディー夫人が仕切りなおすように、微笑みながら言葉を発した。
「あなた、今は明日の結婚式のことを考えましょう」
「ああ、そうだな。明日はめでたい日ですな。先を越されてしまったな、アシュトン」
「ジルのおかげでシェリー様と親しくなれたのですから、順番としてはおかしくないでしょう? 父上」
アシュトンはそう言って、シェリーの目を見て、はにかむように微笑んだ。シェリーもつられて、くすっと笑った。
「その通りですね。ジル様には感謝しないと」
カルロスはワインを一口飲み、アシュトンとシェリーを交互に見てにっこりと笑った。
祝いの空気の中、皆それぞれ食事と会話を楽しみ、夕食はおだやかに終わった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
197
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる