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53.夕食

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 雑談を終えたシェリー達は、用意された部屋でくつろいでいた。
シェリーが窓から外を眺めているとドアをノックされ、声をかけられた。
「シェリー様、お夕食の準備が出来ましたので、食堂でお待ちしております」
「ありがとうございます」

 シェリーが食堂に着いた時には、カルロスとグレイス、シリル子爵とシンディー夫人がもう席についていた。
「遅くなってしまい、申し訳ありません」
 シェリーが席に着く前にそう言うと、シリル子爵が笑って言った。
「いえいえ、どうやらアシュトンが最後のようです。皆様をお待たせして申し訳ない」

 シリル子爵が困ったように笑ったところで、アシュトンが食堂にやってきた。
「皆さま、お待たせしてしまい失礼いたしました」
 アシュトンは席に着くとシェリーを見て、微笑みながら会釈をした。
「揃いましたね」
 シリル子爵は全員そろったことを確認してから、食前の祈りをささげた。

「皆様のお口に合うと良いのですが」
 シリル子爵は焼いた鹿肉を切り分けて、ホワイト家の人間の皿に取り分けていった。
 他のごちそうもそれぞれが順にとり、夕食が始まった。
「先ほどもお話しましたが、ジル様の結婚式が楽しみですわね」
 シンディー夫人がグレイスに言った。
「ええ。とても人気のあるかたですから、涙した方も多いのではないかしら」
 グレイスは話しながら、ちらりとシェリーのことを見た。

「私は、心から祝福しておりますわ。お母さま」
 シェリーはすまして言うと、鹿肉を口に運んだ。
「結婚と言えば……アシュトンはシェリー様と、まだ正式に婚約の話をしていないのですか?」
 シェリーはシリル子爵の言葉を聞いて、緊張した表情を浮かべた。そっとアシュトンの様子をうかがう。

「私からシェリー様にはお話してご了承いただいております。カルロス辺境伯と父上へのご報告がおそくなり申し訳ありません」
 アシュトンが赤い顔で言いにくそうに弁解した。
「まあ、その話は改めて後日、行いましょう。アシュトン様の婿入りのこともありますし」
 カルロスが言うと、シリル子爵はかしこまった表情で頷いて言った。
「アシュトンは頼りないところもありますが、誠実さは保証します。よろしくお願いいたします」

 シンディー夫人が仕切りなおすように、微笑みながら言葉を発した。
「あなた、今は明日の結婚式のことを考えましょう」
「ああ、そうだな。明日はめでたい日ですな。先を越されてしまったな、アシュトン」
「ジルのおかげでシェリー様と親しくなれたのですから、順番としてはおかしくないでしょう? 父上」
 アシュトンはそう言って、シェリーの目を見て、はにかむように微笑んだ。シェリーもつられて、くすっと笑った。
 
「その通りですね。ジル様には感謝しないと」
 カルロスはワインを一口飲み、アシュトンとシェリーを交互に見てにっこりと笑った。

 祝いの空気の中、皆それぞれ食事と会話を楽しみ、夕食はおだやかに終わった。
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