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48.夜の中庭
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食事を終えるとアシュトンの父シリルが、シェリーに話しかけた。
「シェリー様、今日はもう遅いですから、どうぞ我が家にお泊りください」
「あら、でもご迷惑では?」
戸惑うシェリーにアシュトンも声をかけた。
「シェリー様、私からもお願いいたします。今からでは、家に帰るまでに夜が明けてしまいます」
シェリーは少し考えた後、頷いて言った。
「それではお言葉に甘えます」
アシュトンとシリルは目を合わせてから、微笑んだ。
「シェリー様、それではこちらへ」
アシュトンがシェリーの手を取り、ゲストルームへ案内した。
「棚にあるガウンはどれも洗ったばかりです。どうぞお使いください」
「ありがとうございます」
シェリーは部屋に入ると、しばらくベッドに腰かけてぼんやりとしていた。
「少し食べすぎたかしら? おなかがいっぱいだわ」
立ち上がり部屋の中を歩きながら、飾られたタペストリーや、壁に掛けられた貴石で作られたモザイク画を眺めた。
それにも飽きたシェリーは、美しい刺繡の施されたカーテンを開き窓に目をやった。曇りガラスの窓を開けると中庭が見えた。
中庭に人影があることにシェリーは気づいた。シェリーが目を凝らしていると、中庭にいた黒い影は手を振って屋敷の中に消えた。
シェリーが中庭をじっと見つめていると、ドアがノックされた。
「はい?」
「シェリー様、アシュトンです。……眠れませんか? もしよろしければ、少し外を散歩するのはいかがですか? 今日の月は、とても美しいですよ」
シェリーは微笑んで答えた。
「是非」
アシュトンと手をつなぎ、シェリーは中庭に向かった。
「暗いですから、足元にお気を付け下さい」
「ええ」
アシュトンはシェリーの腕を優しく支えた。
「本当にきれいな月夜ですね」
シェリーはアシュトンと腕を組み、ゆっくりと中庭を歩いた。
二人の影は、夜の芝生の上をすべるように動いた。
「……美しい……」
「え?」
「シェリー様の肌が、瞳が、輝石のように透明感をもって美しく輝いていて……」
シェリーの腕に当たったアシュトンの胸から、心臓が脈打つ振動が伝わってくるようだ。
「アシュトン様、それは……」
「あ、あの、ええと……」
戸惑うアシュトンの耳元で、シェリーは笑いをこらえて囁いた。
「……最高の誉め言葉、ですわね」
「……そのつもりです」
アシュトンはシェリーの頬に口づけをした。
「今日はこんな時間まで一緒に居られて……とてもうれしいです。ほんとうは……離れるのが寂しかったのです」
アシュトンの手が、シェリーの肩をゆっくりと抱きしめた。
「……恥ずかしいですわ、そんなことを言われるのは初めてです」
二人は見つめあった後、ゆっくりと月を見上げた。
「本当に、なんて美しい月なのでしょう」
「ええ」
アシュトンとシェリーは抱きしめあったまま、月明りに照らされたお互いの姿を見て、優しく微笑んだ。
「シェリー様、明日はいつまで一緒にいられますか?」
「……家族が心配していると思いますので、できるだけ早く帰らなくては」
アシュトンは寂しそうに微笑んで言った。
「そうですね。……はやく、ずっと一緒にいられるようになりたいです」
シェリーはアシュトンの言葉を聞いて、にっこりと笑った。
「そう遠いことではありませんわ」
「シェリー様、今日はもう遅いですから、どうぞ我が家にお泊りください」
「あら、でもご迷惑では?」
戸惑うシェリーにアシュトンも声をかけた。
「シェリー様、私からもお願いいたします。今からでは、家に帰るまでに夜が明けてしまいます」
シェリーは少し考えた後、頷いて言った。
「それではお言葉に甘えます」
アシュトンとシリルは目を合わせてから、微笑んだ。
「シェリー様、それではこちらへ」
アシュトンがシェリーの手を取り、ゲストルームへ案内した。
「棚にあるガウンはどれも洗ったばかりです。どうぞお使いください」
「ありがとうございます」
シェリーは部屋に入ると、しばらくベッドに腰かけてぼんやりとしていた。
「少し食べすぎたかしら? おなかがいっぱいだわ」
立ち上がり部屋の中を歩きながら、飾られたタペストリーや、壁に掛けられた貴石で作られたモザイク画を眺めた。
それにも飽きたシェリーは、美しい刺繡の施されたカーテンを開き窓に目をやった。曇りガラスの窓を開けると中庭が見えた。
中庭に人影があることにシェリーは気づいた。シェリーが目を凝らしていると、中庭にいた黒い影は手を振って屋敷の中に消えた。
シェリーが中庭をじっと見つめていると、ドアがノックされた。
「はい?」
「シェリー様、アシュトンです。……眠れませんか? もしよろしければ、少し外を散歩するのはいかがですか? 今日の月は、とても美しいですよ」
シェリーは微笑んで答えた。
「是非」
アシュトンと手をつなぎ、シェリーは中庭に向かった。
「暗いですから、足元にお気を付け下さい」
「ええ」
アシュトンはシェリーの腕を優しく支えた。
「本当にきれいな月夜ですね」
シェリーはアシュトンと腕を組み、ゆっくりと中庭を歩いた。
二人の影は、夜の芝生の上をすべるように動いた。
「……美しい……」
「え?」
「シェリー様の肌が、瞳が、輝石のように透明感をもって美しく輝いていて……」
シェリーの腕に当たったアシュトンの胸から、心臓が脈打つ振動が伝わってくるようだ。
「アシュトン様、それは……」
「あ、あの、ええと……」
戸惑うアシュトンの耳元で、シェリーは笑いをこらえて囁いた。
「……最高の誉め言葉、ですわね」
「……そのつもりです」
アシュトンはシェリーの頬に口づけをした。
「今日はこんな時間まで一緒に居られて……とてもうれしいです。ほんとうは……離れるのが寂しかったのです」
アシュトンの手が、シェリーの肩をゆっくりと抱きしめた。
「……恥ずかしいですわ、そんなことを言われるのは初めてです」
二人は見つめあった後、ゆっくりと月を見上げた。
「本当に、なんて美しい月なのでしょう」
「ええ」
アシュトンとシェリーは抱きしめあったまま、月明りに照らされたお互いの姿を見て、優しく微笑んだ。
「シェリー様、明日はいつまで一緒にいられますか?」
「……家族が心配していると思いますので、できるだけ早く帰らなくては」
アシュトンは寂しそうに微笑んで言った。
「そうですね。……はやく、ずっと一緒にいられるようになりたいです」
シェリーはアシュトンの言葉を聞いて、にっこりと笑った。
「そう遠いことではありませんわ」
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