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18、ジルの噂
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シェリーは目を覚ますと『シェリーヌ・ホワイトの記録』の続きを読み始めた。
途中、朝食に呼ばれ急いで食事を終えると、また部屋に戻って読書を続けた。
シェリーは本を読み終えると、ため息をついた。
「ああ、なんて素敵な方だったのでしょう、シェリーヌ様は」
本の中には恋愛についても書かれていた。隣国の王子に淡い恋心を抱いていたシェリーヌは、国のため政略結婚を選び、わざと隣国の王子に嫌われるような行動を取っていた。
「今の私があるのも、ひいおばあさまの悲恋があったからなのですね。そう思うと、切ない気持ちになりますね」
シェリーは本を本棚に入れると、ベッドに寝転がった。
「私も、あのときは本当の恋をしていると思っておりましたけれど……今はそんな気分ではありませんわ」
シェリーは起き上がると、机の上に置いていたハーブティーを飲んだ。
その時ドアをノックしたメイドから、声をかけられた。
「シェリー様、昼食の時間です」
「え!? もうそんな時間ですか!? すぐ参ります」
シェリーはハーブティーを飲み干すと、食堂に急いだ。
食堂に着くと、両親はすでに席に着いていた。
「遅くなり、申し訳ありません」
「あの本がそんなに面白かったのかい? シェリー」
父親の言葉にシェリーは明るく頷いた。
「はい。もう読み終えてしまいましたが、戦いの中で勇敢だったシェリーヌ様の活躍は、とても胸が踊りました」
「そうか」
父親は頷きながら、パンを摘まんだ。
「あとは、恋を諦めて国に尽くした姿は心が痛みました」
「そうですね」
母親がスープを飲んでから頷いた。
「ところでシェリー。今月末にこの国、スオロの中心都市で武術大会が行われるそうだ。興味はあるか?」
父親の問いかけに、シェリーは目を輝かせて答えた。
「是非、見てみたいですわ」
「そうか。それでは家族で見に行くことにしよう」
そう言った後で、父親の表情が少しだけ曇った。
「この国の代表となるのは、アルバートになるだろう。シェリーはもう、彼に会っても大丈夫か?」
「アルバート様ですか? そうですね……大丈夫です」
シェリーは心の中で、アルバートが負ければ少しは気持ちが晴れるだろうか? と思った。
「隣国のトラモンタからは、ジル様が参加されるそうだ」
「ええ!? ジル様って、お強いのですか!?」
シェリーが驚いて大きな声を出すと、父親は苦笑した。
「いつも冗談を言ったり、ふざけているが、彼は錬金術だけではなく剣の腕前も一流なんだよ」
父親の言葉に、シェリーは耳を疑った。
「あの、私をからかうのが大好きなジル様がそんなに強いなんて信じられませんわ」
「シェリー、おしゃべりはそのくらいにして、食事をしませんか?」
母親の言葉を聞いて、シェリーはハッとした。
自分の食事だけ、余り手が付いていない。
「……失礼致しました。武術大会が楽しみですね」
それだけ言うと、シェリーは食事を口に運んだ。
途中、朝食に呼ばれ急いで食事を終えると、また部屋に戻って読書を続けた。
シェリーは本を読み終えると、ため息をついた。
「ああ、なんて素敵な方だったのでしょう、シェリーヌ様は」
本の中には恋愛についても書かれていた。隣国の王子に淡い恋心を抱いていたシェリーヌは、国のため政略結婚を選び、わざと隣国の王子に嫌われるような行動を取っていた。
「今の私があるのも、ひいおばあさまの悲恋があったからなのですね。そう思うと、切ない気持ちになりますね」
シェリーは本を本棚に入れると、ベッドに寝転がった。
「私も、あのときは本当の恋をしていると思っておりましたけれど……今はそんな気分ではありませんわ」
シェリーは起き上がると、机の上に置いていたハーブティーを飲んだ。
その時ドアをノックしたメイドから、声をかけられた。
「シェリー様、昼食の時間です」
「え!? もうそんな時間ですか!? すぐ参ります」
シェリーはハーブティーを飲み干すと、食堂に急いだ。
食堂に着くと、両親はすでに席に着いていた。
「遅くなり、申し訳ありません」
「あの本がそんなに面白かったのかい? シェリー」
父親の言葉にシェリーは明るく頷いた。
「はい。もう読み終えてしまいましたが、戦いの中で勇敢だったシェリーヌ様の活躍は、とても胸が踊りました」
「そうか」
父親は頷きながら、パンを摘まんだ。
「あとは、恋を諦めて国に尽くした姿は心が痛みました」
「そうですね」
母親がスープを飲んでから頷いた。
「ところでシェリー。今月末にこの国、スオロの中心都市で武術大会が行われるそうだ。興味はあるか?」
父親の問いかけに、シェリーは目を輝かせて答えた。
「是非、見てみたいですわ」
「そうか。それでは家族で見に行くことにしよう」
そう言った後で、父親の表情が少しだけ曇った。
「この国の代表となるのは、アルバートになるだろう。シェリーはもう、彼に会っても大丈夫か?」
「アルバート様ですか? そうですね……大丈夫です」
シェリーは心の中で、アルバートが負ければ少しは気持ちが晴れるだろうか? と思った。
「隣国のトラモンタからは、ジル様が参加されるそうだ」
「ええ!? ジル様って、お強いのですか!?」
シェリーが驚いて大きな声を出すと、父親は苦笑した。
「いつも冗談を言ったり、ふざけているが、彼は錬金術だけではなく剣の腕前も一流なんだよ」
父親の言葉に、シェリーは耳を疑った。
「あの、私をからかうのが大好きなジル様がそんなに強いなんて信じられませんわ」
「シェリー、おしゃべりはそのくらいにして、食事をしませんか?」
母親の言葉を聞いて、シェリーはハッとした。
自分の食事だけ、余り手が付いていない。
「……失礼致しました。武術大会が楽しみですね」
それだけ言うと、シェリーは食事を口に運んだ。
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