推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

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8歳

72 貴族side

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宮殿そのものが揺れる。さっき陛下が外にほおり出された2人のせいだろう。

宮殿で働いている貴族は何事もないように会話に花を咲かせ、皇后陛下ですら陛下とダンスを始めてしまった。

皇宮に慣れてないであろう貴族は帰ることもできずに壁に集まって天井を見上げてる。
私もその1人。

あぁまた雷のようにピカっと光った。その後の揺れ。

誰が魔法大会の優勝者と皇族の暴れ馬が戦っているところに割り込みたいんだろう。帰ろうとして馬車をひっくり返されたらたまったものではないし、馬も怖がって暴れるかもしれない。
でもこのままじゃ皇宮が壊れたら私たちは道ずれだ。
…帰りたい。

「クラウス!!!お前、お前なぁ!!!なんで全部の魔法跳ね返せるんだよ!!」

「空間魔法だからねぇ!!反射魔法じゃないよ!新しく作った!の!!《ダークカッター》」


やはりどれだけ大人ぶっても子供は子供らしい。あのシルヴェスター公子が声を上げながらバカスカ打ってる。と、同時に殿下の怒鳴り声。恐らく殿下の魔法も当たってはいるんだろう。公子の笑い声が消えた時に今度は殿下の高笑いが響くから。


これは…子供らしい、、だろうか。そもそも魔法は作るものだったのか?あるものを改良するのは分かる。空感魔法の応用だろうか。…自分の感性が心配になってきた。

帰りたい。こんな現在進行形で災害が起きてるところにいたくない。
帰りたいなぁ…。



公子がいなくなったときにしれっと皇族立ちから離れた公爵夫人と新しい公子様。
夫人は壁の花になってワインを飲んでいる。もう誰も近寄らない。さっきコテンパンに振られた男たちをたくさん見たし、なんなら公子様に扇を振り上げているのを見た。下手したら本当に殴られるのはダンスを申し込んだ人になる。



…揺れが止んだ。

そういえば外から聞こえる声も消えている。
終わったのか?


少しずつ壁から離れていつものパーティのように楽しみ始めだした。良かった。これで帰らなくてすむ。私としても皇族主催のパーティなどまたとない機会だ。
人脈を広げてこれからの商売に繋げたい。


相も変わらず壁の花になっている夫人の観察は置いておいてフロアへと躍り出る。
公爵夫人は本当に目を引く容姿だな。どこにいても目に入る真っ赤な髪に夜のように美しいかんばせ

正直に言おう。羨ましい。
美人な奥さんを貰えた公爵も。綺麗な顔に生まれた夫人や公子達も。


貴族がそれぞれ人脈を伸ばすために動き始めた時、外から目が痛くなるほどの光と殿下の大声がここまで届いた。

「すっげえぇ!!!さすがクラウスだな!!」


今度はなにをしたのだろう。揺れなんかはなかったから攻撃魔法では無さそうだ。



そしてドンッと扉が開かれ、薄汚れた皇子と身綺麗な公子が入ってきた。仲直りはしたのだろうか。

「父様!クラウスが魔法の作り方教えてくれました!!」


魔法を作り出す?そんなこと宮廷魔法師や魔法塔の熟練魔法師ができることだ。
子供ができることじゃない。

「なんの魔法を作り出したんだ?」

「予知!!」


フロアを何度目かの静寂が包んだ。

「数秒しかできねぇけど…。」

「すごいですよ。私はできませんから。理論は理解していても技量がありませんから。さすが殿下です。わたしがやり遂げてみたかった…。」

仰々しく第1皇子を褒め称える。嘘っぽいけれど最後のは本音だろう。

プライド高そうだもんな。あの公子。







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