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第二章 3120番の世界「IASB」
第33.5話 ???
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東京都C地区のとある廃墟。コンクリートの塊にはコケやツタが巻きついていて、もう何十年も人の手が加わっていないのが安易に想像できる。
その廃墟の屋上で風を感じていると、薬指につけた指輪に大きく亀裂がはいり、粉々に砕けた。
「……解けたか。予想していたより時間がかかったな」
思わず笑みがこぼれる。待ちに待った日が近づいているのだ、無理もない。
全ての力を封印して、行動を観察していても、つまらないくらいに何もなく、無駄だと気づいてとっくにやめた。現在は周りの人物との関わりだけを見ている。
そういえば以前から指輪に亀裂が入ることがあった。一番最近では、今朝か。封印を通して様子を見ると、手枷に反応したらしい。
その前は本を見た時か。あの時の亀裂は大きかった。一番長く、共に過してきた仲間の姿だ。これで解けると思っていたら、あれが一番の記憶では無かったようで、亀裂で終わった。
仲間の記憶をも上回る重要な記憶。仲間と過ごした時間より、もっと最高な事が今までにあったのかと思いきや、まさか最悪の記憶の方とは。どこまでも面白い「人間」だ。
兄達や父親、母親には申し訳ないが、こいつはこの手で殺し、『あの名』は貰う。
砕けた指輪を手の平から地面に捨てた。金色の欠片は、地面に落ちると同時に塵のように消える。
廃墟の内部に入り、机の上に置いてある八枚の紙を全て手に取った。
「どーれーにーしーよーうーかーな……と」
紙を裏返して混ぜながら、適当な場所で止める。それを二回繰り返した。
選んだ二枚を表向きに机の上に並べる。
「この二人か。まあ良い感じに釣れそうだ」
置いた紙には、男の写真と女の写真が印刷されていた。
「見ていた感じだと、この男の行方不明で、こっちの女は探しに動くだろうから、楽そうだな」
記憶の戻ったアイツなら、どうせラークに目をつけている。ラークも動かせば、それに気づいたアイツも動くだろう。
男と女、特に女の方を餌にすれば、ほぼ確実にアイツは釣れる。それでこの計画は終了となる。
そうと決まれば行動開始だ。ガラスのない二階の窓から飛び降り、公園を抜けて道路に出た。
まずは見張って、チャンスが来たら捕まえるだけの簡単な仕事だ。まだアイツに知られる訳にはいかない、よってラークを使うことは出来ないから、自らの手で捕らえに行く。
既に楽しみで仕方ない。一つ気がかりがあるとすれば、アイツの力が目覚めることだ。目覚めていない今のうちに終わらせないと、次狙えるのはいつか分からない。
夜の空気に包まれながら、大通りを歩いて行った。
その廃墟の屋上で風を感じていると、薬指につけた指輪に大きく亀裂がはいり、粉々に砕けた。
「……解けたか。予想していたより時間がかかったな」
思わず笑みがこぼれる。待ちに待った日が近づいているのだ、無理もない。
全ての力を封印して、行動を観察していても、つまらないくらいに何もなく、無駄だと気づいてとっくにやめた。現在は周りの人物との関わりだけを見ている。
そういえば以前から指輪に亀裂が入ることがあった。一番最近では、今朝か。封印を通して様子を見ると、手枷に反応したらしい。
その前は本を見た時か。あの時の亀裂は大きかった。一番長く、共に過してきた仲間の姿だ。これで解けると思っていたら、あれが一番の記憶では無かったようで、亀裂で終わった。
仲間の記憶をも上回る重要な記憶。仲間と過ごした時間より、もっと最高な事が今までにあったのかと思いきや、まさか最悪の記憶の方とは。どこまでも面白い「人間」だ。
兄達や父親、母親には申し訳ないが、こいつはこの手で殺し、『あの名』は貰う。
砕けた指輪を手の平から地面に捨てた。金色の欠片は、地面に落ちると同時に塵のように消える。
廃墟の内部に入り、机の上に置いてある八枚の紙を全て手に取った。
「どーれーにーしーよーうーかーな……と」
紙を裏返して混ぜながら、適当な場所で止める。それを二回繰り返した。
選んだ二枚を表向きに机の上に並べる。
「この二人か。まあ良い感じに釣れそうだ」
置いた紙には、男の写真と女の写真が印刷されていた。
「見ていた感じだと、この男の行方不明で、こっちの女は探しに動くだろうから、楽そうだな」
記憶の戻ったアイツなら、どうせラークに目をつけている。ラークも動かせば、それに気づいたアイツも動くだろう。
男と女、特に女の方を餌にすれば、ほぼ確実にアイツは釣れる。それでこの計画は終了となる。
そうと決まれば行動開始だ。ガラスのない二階の窓から飛び降り、公園を抜けて道路に出た。
まずは見張って、チャンスが来たら捕まえるだけの簡単な仕事だ。まだアイツに知られる訳にはいかない、よってラークを使うことは出来ないから、自らの手で捕らえに行く。
既に楽しみで仕方ない。一つ気がかりがあるとすれば、アイツの力が目覚めることだ。目覚めていない今のうちに終わらせないと、次狙えるのはいつか分からない。
夜の空気に包まれながら、大通りを歩いて行った。
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