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1巻 ドS極道の甘い執愛
1-3
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私は一分ほど悩んだあと、トボトボ歩いて黒い診察台――もといベッドに向かった。すべては自業自得なのだ。そもそも車をぶつけなければ、こんな悲惨なことにはならなかった。
私はしぶしぶベッドに上がる。横になると、葉月さんが鞭を持ったまま近づいてきた。
葉月さんは満面の笑みで、私の頬に鞭をピタピタと当ててくる。そして「いい表情ですね」と満足そうに言った。一体私はどれだけ怯えた顔をしているのだろう。
「さて、では脱がしますね」
「ままま、待って!?」
仕事着であるスーツの上着に手をかけられて、私は慌てて葉月さんの手首を掴む。眼鏡がきらりと光り、彼は嬉しそうな顔をした。
「なんでしょう。もしかして自分で脱ぎたいのですか?」
「そそそそそんなわけないっ! そうじゃなくて、な、なんで脱がすの? 点検って、脱がないとだめなの!?」
「当然でしょう。脱がなければ、何もはじまりません」
まじか。ウォーミングアップの時点で脱がなくてはいけないのですか。
脱がないといけないと思うと、急に恥ずかしさの度合いが上がる。それになんだか怖い。
「って、ああーっ! すでに脱がされてる!!」
私がボヤボヤ考えている間に、葉月さんはスーツの前ボタンをはずし終え、ブラウスのボタンまではずしていた。なんて手が早いんだろう。
慌ててブラウスの前を閉じようとすると、葉月さんはそれを制止するように、私の喉元にビタッと鞭を突きつけてくる。
「駄目ですよ。隠してはいけません。そう、手を下ろして。次に抵抗したら、拘束しますからね」
「……うう」
力なくだらりと腕を下ろす。抵抗しても状況を悪くするだけだ。どうしても無視できない抵抗感があるけれど、私は必死にその感情を抑え込む。
すると、葉月さんがくすくすと笑った。
「この程度で恥辱を感じているとは、先が思いやられますね? とっても楽しみです」
「っ、意地悪」
「ええ、そうですね」
葉月さんは細い鞭を手の内で回し、グリップをブラの下から差し込んだ。そしてグイッとブラを上にずらす。
「ですが、意地悪とはまた、可愛い表現ですね。はじめて言われましたよ」
葉月さんが何か言っているが、それどころではない。
だって、胸が露わになっているのが、恥ずかしくてたまらない。
「ささやかな胸ですね。もしかしてAカップですか?」
「失礼な、Bだよ! そ、それに、寄せて上げたら、Cカップのブラも入るから!」
「最近の下着は詐欺ですよねぇ。黒部がガッカリおっぱいと名付けていましたよ」
黒部……あのホストっぽい茶髪男か。ガッカリおっぱいとはまた酷い名付けだ。
葉月さんの鞭がゆるりと動く。鞭とは本来打つものだが、葉月さんはどうやらそれで私を傷つけるつもりはないらしい。ただ、硬い鞭の先で私の胸をなぞっていく。線を描いたり、乳輪の形を辿ったりを繰り返す。
気づけば私はこぶしを硬く握り、フルフルと小刻みに震えていた。
「もっと力を抜いてもいいですよ。今日は点検だけですし、何もしませんから」
裸を見たり、鞭で胸を弄ったりすることは、私の認識では『何かしている』うちに十分入る。しかし、彼にとってはそうではないらしい。だとすると、点検が終わった後に何が待ち受けているのか――怖すぎて考えたくもない。
胸を鞭でつつき、本当に点検をするかのようにジッと凝視する葉月さん。
どうしても恥ずかしくて、顔を背けてしまう。
「色白ですね。乳輪も綺麗な色をしていますし、形もいい。乳首がやや小さいですね。ここだけは少し幼い感じがします」
ツン、と胸の先端をつつかれた。びくりと肩を揺らし、目をぎゅっと瞑る。
「感度は今ひとつですね。もしかして里衣は、自分でここを弄ったことがないのですか?」
「っん、ないよ、一度も」
「ふむ、開発してないのですね。ここはいわゆる性感帯のひとつですよ。いくらでも気持ちよくなれる場所です。ほら、今も少しずつ気持ちよくなっていませんか?」
「あっ」
つん、つん、と胸の尖りをリズミカルにつつかれる。そのたびに肩が揺れ、我慢したいのに声が勝手に出てしまった。
「はっ、んっ……やぁ……なんか、変な感じ。これが気持ちいい、の?」
戸惑いながら聞けば、葉月さんはわずかに片眉を上げた。そして鞭を持つのとは逆の手で、じかに胸を触ってくる。温かくて乾いた、大きな手。それが胸を覆い、ギュッと強く乳首を摘まんだ。
「いッ……!」
痛いと抗議したかったが、『次に抵抗したら、拘束』という言葉を思い出して、言葉をのみ込む。
「あなたは性感にまったく慣れていませんね。里衣の男性経験をお聞きしてもよろしいですか?」
「だっ、だんせいけいけん!? そんなのないよ!」
「一度もないのですか?」
意外そうに目を丸くする。いや、まだ二十歳だし。この年なら、まだ一度も男の人と付き合ったことがないというのは、そう珍しいことではないと思うんだけど。
「一度もないよ。田舎から都会に来て以来、ずっと仕事が忙しかったから、恋愛なんてする暇なかったし」
「なるほど。健全でわびしい社会生活を送られてきたのですね。つまり里衣は処女ということですか?」
「しょっ……! ま、まぁ、そう、だけど」
顔に熱が集まるのを感じながら頷く。なんでこんな恥ずかしい問答をしなくてはいけないのだ。
そもそも、調教に処女かどうかなんて関係あるのかな?
――その時、ニヤリと、葉月さんが薄く笑った。
それははじめて見る、酷薄で冷たい笑みだった。穏やかさや優しさなどの人間味のある要素をすべて削ぎ落としたような、うすら寒い笑顔。
「ふぅん? それはまた都合がよい……」
葉月さんが、きゅ、と乳首が摘まむ。そして親指と人差し指で擦りはじめた。
「初心そうな娘だと思っていましたが、まったくの未開発だったとは。これは調教のしがいがありますね。ゆっくりと身体に教え込み、性の快楽を覚えさせましょう」
くすくすと笑う葉月さんの笑顔が怖い。
私は一体何をされて、どうなってしまうのだろう。得体の知れない不安が増していく。
「ほら、ここを擦ると気持ちがいいでしょう。この感覚を覚えてくださいね」
そう言いながら、葉月さんは私の乳首を擦り続ける。肌が粟立ち、ざわざわする気がするが、これが『気持ちいい』ということなのかは、よくわからない。
「ん、や……! 気持ち、いいっ? なんだか、不思議な感覚しかしないけどっ」
「ええ。そのうち自分でも擦りたくなりますよ。乳首でイけるようになりましょうね。ああ、これからのことを考えると、すごくわくわくします。処女を散らす前に、できればクリトリスとGスポットの開発まで済ませておきたいですね。たくさん感じられるように、がんばりましょう」
葉月さんがにっこりと笑う。その笑顔は冷たいものではなかったので、少しホッとした。
でも、知らない単語ばかり出てくるし、彼の言っていることはやっぱりわからない。
するすると葉月さんの手が動き、腰のくびれをなぞる。そして私の膝をぐっと持ち上げた。スカートがめくれ上がり、ストッキングを穿いた太ももが見えてしまう。
「あっ」
その上、足を開かせようとしてきたので、私は慌てて葉月さんの手首を掴んで足を閉じる。
葉月さんがニィと嬉しそうに目を細めた。
「抵抗しましたね?」
「っ、や、これは、その」
「言いましたよね。次に抵抗すれば拘束すると」
「ご、ごめんなさい。だって、つい」
足を開けば下着が見える。もうすでに上半身は何も身につけていなくて、十分恥ずかしかったが、下半身はもっと恥ずかしい。
葉月さんは私の謝罪など聞く耳も持たず、寝台の四隅に垂れ下がっていた鎖を手に取る。
「ここで、はっきりと教えて差し上げましょうか。私は反抗的な人は好きですが、対応を甘くするつもりはありません。言葉だけの謝罪で許されると思ったら、大間違いです」
彼は笑顔のまま、短い鎖に繋がる手錠をがしゃりと開く。そして手際よく私の両手首に手錠をはめた。いわゆる万歳の体勢だ。
「開脚させたいので、足には枷ではなくこちらを使いましょうか」
葉月さんはキャビネットの引き出しを開け、中から何かを取り出す。それから黒いガムテープのようなものを私に見せて、説明する。
「これは拘束テープと言いましてね。粘着剤が使われていないのですが、テープ同士はくっつく不思議な代物です。肌を傷つけずに拘束できる、便利なものですよ」
世の中にはそんな便利なテープがあるのか。もしかしてこういう趣味の道具って、種類が豊富なの?
そんなことを考えているうちに、葉月さんは私の膝を曲げ、手慣れた様子でクルクルと拘束テープを巻きつけてしまった。
拘束テープによってふくらはぎと太ももがぴったり合わさり、大きく足を開かれる。はたから見れば、私の姿はさぞ滑稽だろう。
しかしどんなに恥ずかしくても、手足を拘束されては身動きが取れない。
「あ、失敗しましたね。拘束する前に下着とストッキングを脱がせばよかった」
軽く照れ笑いをする葉月さん。その表情は可愛くて子供っぽいけど、やってることはとても酷い。
「仕方がないので切りますね」
「切る? って、ちょっ、まっ」
物騒なセリフにおののいていると、葉月さんはキャビネットから大きな裁ちバサミを取り出した。
何を切るの? まさかストッキングと下着をそれで切っちゃうの?
「や、やぁーっ! やだぁ! 下着は切らないで! だってそれ切ったら、私、穿くものがない……っ」
手錠をがしょがしょ鳴らして揺らし、足を左右にブンブン動かす。しかしすでにシッカリと拘束されているから、ろくに抵抗できていない。
葉月さんはストッキングを摘まんで、容赦なくビリビリに引き裂いてしまった。
「ひぃ……。わ、私のストッキングが……」
半泣きになる私に構わず、葉月さんの興味は私のショーツに向かう。腰の左側にひやっとした金属が触れたと思った瞬間、シャキンといっそ涼やかな音を立てて、ショーツを切られた。右側も同じように切られ、ショーツはただの布きれと化す。葉月さんが布を引っ張ると、その布きれもあっけなく抜きとられてしまった。
「うぅ、酷い……。パンツだって高いのに」
「後で用意して差し上げますよ。こんな色気のないものでなく、もう少しセクシーな下着をね」
いらない。私は普通の綿の下着がいい。だけどそんな要望は聞いてもらえないだろう。
意地悪ヤクザの葉月さんは、にっこりと微笑み、眼鏡の奥からジッと私を見つめる。
「さて、それではこちらもじっくりと点検させてもらいましょうね」
わざわざ宣言してから、私の膝を掴んであらためて大きく開かせる。秘所に指が添えられ、柔肉をぱっくりと開かれた。
恥ずかしくて声も出ない。唇を引き締め、震えながら羞恥に耐える。
スー……と秘所に冷たい風を感じた。普段閉じているところが、外気を敏感に感じ取っている。
身体の震えがしだいに強くなり、歯はがちがちと音を立てた。手首に繋がれた鎖にも震えが伝わり、チャラチャラと鳴る。
身体に力を込めて耐えていると、秘所にツンと硬い何かを当てられた。
「綺麗な色をしていますね。ほら、このあたり、わかりますか?」
「っ、ん。見えないから、わかんないよっ」
羞恥から逃れたくて、やけくそ気味に叫ぶ。すると葉月さんは「そうですよねえ」と笑った。
「じゃあ見てもらいましょうか」
「へ? それってどういう……きゃあ!」
思わず悲鳴を上げてしまう。なんと、いきなりベッドが動き出したのだ。
てっきり普通のベッドだと思っていたけど、コレ、可動式だったのか……
「病院にこういうベッドがあるでしょう? あれが便利そうだったので、特注で作ってもらいました。一見普通のベッドですから、動くなんて思わないですよね? 驚いてもらえて嬉しいです」
くすくすと笑って、いつの間にか手にしていた小さなリモコンを操作する葉月さん。
低い可動音と共に、背もたれ部分が上がっていく。両手は拘束されたままだから、いよいよ万歳のポーズになってしまった。
葉月さんは、キャビネットから四角い卓上ミラーを取り出し、私の足の間にコトンと立て掛ける。
「ひっ!」
目を見開き、身体をのけぞらせてしまう。鏡には私の秘所が映っていた。
かっと身体が熱くなる。こんなの見たくない。顔を背けて目を瞑ると、私の頬にぴたりと何かが当てられた。
「駄目ですよ。せっかく私が見せて差し上げているのですから。ちゃんと見てください」
頬に触れる硬い感触。おそらく、先ほどの鞭の先端だろう。それを動かし、私の頬をさらりと撫でてくる。
「だ、だって、こんなの……っ」
「私が言っているのですから、あなたは見なければならないのですよ。言うことが聞けないのなら、あなたの身体に直接教えてあげなければなりませんね」
「教える……って、何を?」
そう言った瞬間、ビュッと風を切る音がした。同時に、首のあたりに鋭い風を感じる。
驚きで目を開いて葉月さんを見ると、彼は不敵な笑みを浮かべながら鞭を構えていた。
「今のはわざと空振りさせましたが、まだ私の言うことが聞けないのでしたら打ちますよ。しつけも大事な調教ですからね」
「っ、そん、な」
「あなたは痛みに慣れていないでしょうし、最初は優しい鞭から教えようと思っていましたが……反抗するなら話は別です。私は、今、この鞭を振っても構わないのですよ。ちなみに、鞭には様々な種類がありまして、これは特別痛いほうです。下手に打てば肌を裂き、出血するでしょうね」
出血……血が出るの? 肌が腫れるどころか、裂けちゃうような鞭なの? それって、めちゃくちゃ痛いよね。
茫然とする私をよそに、葉月さんはうっとりと鞭を眺める。そして心底愛おしそうに、黒い鞭をゆるりと撫でた。
「鞭にはこだわりがありましてね。これは私が特別気に入っている鞭です。打たれたら、きっと、とても痛いですよ。裂傷は治るのに時間がかかりますから、数日痛みが続くでしょうね。けれど、私はあなたを苦しめたいわけではありませんから、綺麗に治して差し上げます。傷跡ひとつ、残さずにね」
くすりと笑う葉月さんの笑みは、どこか妖艶だった。でも、それ以上に凶悪だ。
――この人はやる。脅しじゃない。次に私が言うことを聞かなかったら、容赦なく鞭を打つ。
鼻がツンとして、目に涙がにじみそうになる。
しかし、ぐっと唇を結び、泣きたい気持ちを噛み殺す。こんなところで泣きたくない。泣いたら負けだ。
私は屈しない。この人がどんなに意地悪でも、要求された金額分働けばいい。それまで我慢すればいい話なんだ。
自分自身にそう言い聞かせて、鏡を睨みつけた。
すると、葉月さんがくすくすと楽しそうに笑う。
「そんなに鬼気迫った顔で自分の性器を凝視する人なんて、はじめて見ましたよ」
「み、見ればいいんでしょ。なら、お望み通り見てやるわよ!」
「ふふ、その意気です。あなたは私が思っていたよりもずっと興味深い。気に入りましたよ」
いいえ、気に入ってもらわなくても結構です。嫌な予感しかしませんから。
顔を歪ませて鏡越しに自分の秘所を見つめていると、葉月さんが人差し指と中指で秘裂を開いてみせた。
思わず、ごくりと唾をのむ。はじめて見る私の秘所は、ピンク色でぬらぬらしていた。
「いいですか、里衣。私が今指で触れている部分が大陰唇、内側のここが小陰唇。ふたつとも性感帯があります。例えば大陰唇だと、このあたり……」
彼は二本の指で秘所を割りながら、鞭の先で大陰唇のフチをなぞってきた。
「ひゃ!」
びくんと腰が浮く。茂みを優しく分け、羽で撫でるほどの力加減で、薄く線を描くように鞭を動かす葉月さん。
背中がぞわぞわして、なんとも奇妙な感覚がした。まるで身体中の産毛を撫でられているみたいだ。
「っ、んん、ふ……ぅっ」
「くすぐったい? それとも、気持ちいいですか?」
「わ、かんな、はっ!」
次は小陰唇の部分に鞭の先が触れてくる。色が沈んだひらひらしたところ。その形を辿るように、鞭の先がスーッと動く。ぞくぞくした感覚が強くなって、腰の後ろが激しくうずいた。
「ん、あっ、そこはっ」
「少しずつ感度がよくなっているようですね。ちゃんと鏡を見ていますか? あなたが感じているところはここですよ、ここ」
「やぁっ! あの、何度もなぞらないで。み、見てるからぁ」
はっはっと息を短く刻みながら、鏡を見つめる。
指でぱっくりと開かれた小陰唇を、葉月さんは見せつけるように何度も鞭の先で撫でてくる。
どうして? とても恥ずかしいのに、時々うっとりした感覚に陥る。これが気持ちいいってこと……?
「里衣。ここがクリトリスです。ほら、この小さな丸いところですよ」
「っ、く……くり、とりす?」
「ええ。ここが女性にとって一番敏感に感じるところなのです。だから強く刺激してやると……」
「あぁっ!!」
葉月さんが鞭の先でグリッと押し出すようにそこを突いてきて、身体中にビリビリした衝撃を感じる。思わず、膝をぎゅうっと閉じてしまう。
葉月さんはクスクスと笑って再び私の膝を開かせながら、「驚いたでしょう?」と眼鏡の奥にある目を細めた。
「ここはとても敏感なんですよ」
彼は笑顔で、さらに秘所の奥を開く。
「さて、いろいろ説明しましたが。ここが膣口ですよ。穴が空いてるでしょう?」
「え、あ……うん」
戸惑いながらも頷く。鏡の向こうに見える秘所は、赤くぬらぬらしている。その奥に、小指サイズの穴が見えた。
「この奥にあるのが子宮です。性交をして精子が卵巣に着床すると、子供ができるところですね」
「ソ、ソウデスネ」
なんだか保健体育の授業でも受けているみたいだ。
私の相槌に微笑み、葉月さんは鞭の先で膣口の周りをくるりとなぞった。なんだかぞわぞわしたものが身体中に走る。
「あ……っ」
「ふふ、感じますか? ここも性感の強い場所ですよ。他にもたくさんありますから、少しずつ教えてあげますね」
ツ、ツ、とリズムを取るように、鞭の先で膣口を優しく撫でられる。そのたびに、じわじわした感覚が襲ってきた。なんだろう。むずむずする。身体中が少しずつ熱くなっていく。
「里衣の身体は素直でよろしいですね。少し愛液が分泌されているようです。ほら、鞭の先が濡れている。これはあなたが濡らしているのですよ。性器は気持ちよくなると濡れてくるのです」
「う、うん……。はぁっ……あ」
葉月さんが鞭の先を柔らかに動かし、閉じていた秘所の内側を、ツツ、となぞり、蜜口のそばでくるりと回る。
「は、ぁ……。う、んっ」
腰のあたりがじわじわしてくるこの感覚が気持ちいいということなのだと、本能が感じ取ってしまったようだ。
私自身が感じたくないと思っていても、身体が鋭敏に感じ取る。
「ん、は……ぁ、あっ」
葉月さんの鞭は止まらない。クリトリスのまわりをくるくると回り、縦に線を引くように、秘所の真ん中を割る。彼の指によってぱっくりと開かれた秘所を好きなように弄られ、私の息は上がっていった。
恥ずかしくて堪らない。もうやめてほしいのにそれを口にするわけにもいかず、寝台に繋げられた短い鎖が鳴り響くだけ。
「あ、ああっ、ん、は……っ」
蜜口の大きさを計るみたいに鞭が円を描き、ゆっくりと何かを拭いとる。黒くしなやかな鞭には、ぬらりとした液体がついていて、ダウンライトに反射して光っていた。愛液と彼が呼んでいたもの。
葉月さんは手を止めることなく、濡れた鞭の先で色の沈んだひらひらしたところをなぞる。
「ひゃ、あ! あ、んんーっ!」
びくびくと腰が震えた。拘束テープで固定された膝が笑い出す。
自分から分泌された液体は、少し粘り気を帯びていて、やたらと滑りがいい。ぬるぬると小陰唇のフチを撫でられると、得も言われぬ感覚が襲いかかってくる。
ぬちぬちと音を立て、私の蜜を塗りつけるみたいに、葉月さんは鞭の先で秘所を弄り続けた。
「なかなかにいやらしい仕上がりになってきましたね。里衣もそう思いませんか?」
くすくすと葉月さんが笑い、小陰唇をめくって、そこにも蜜を塗りつける。
「おもわな……いっ! あ、んんっ」
ぐっと奥歯を噛みしめると、蜜口からとろりと液体がこぼれ出た。
「可愛らしい強がりですね。あなたの言葉に反して、ここはとても気持ちよさそうですけど?」
「こ、これは、私の意思じゃないっ! きもち、よくなんか」
鏡から目をはずし、葉月さんを睨みつける。彼はそんな私を、うっとりと愛でるように見つめ返してきた。
「――いいですね、その反抗的な表情。何がなんでも屈服させたくなります」
「性格、悪い……っ!」
心からの悪態をつくと、葉月さんはすっと私の顔に、自分の顔を近づけてきた。その至近距離に、私はヒュッと息をのむ。
「あなたは、初日から私を煽るのがうまいですね」
くく、と低く笑う声。ぬちゅりと、鞭ではなく彼の指が、秘所の割れ目を滑る。
「あ、やぁっ、ああっ!」
ダイレクトな指の感覚が、ゾクゾクした身体の痺れに拍車をかける。チャリリと鎖が鳴り、ぐっと強くこぶしを握った。
葉月さんは身体を起こし、とろとろとこぼれる蜜を指で掬い取る。
「指で軽く撫でただけなのに。本当に里衣の身体は可愛いですね」
「う、うぅ……」
眉を下げる私を楽しそうに見下ろして、彼は再び鞭の先で秘裂を割り、ぬらりと撫でた。
ちゅっ、ちゅく。小さな粘ついた音が聞こえてくる。
気持ちがいいって認めたくない。でもそう頑なに思い込んでいる時点で、私は――
ちゅ、る。葉月さんがその細長い鞭を、そっと膣口の中に差し込む。
「……あっ、あっ……! なかに、あっ、入れるの……?」
「今は入り口だけ、ね? この奥に、もっと気持ちよくなるところがありますよ。これから知っていきましょうね」
葉月さんは嬉しくて仕方がない、といった表情で言ってくる。そのとろけるような笑みを見て、私はなぜか素直に頷いてしまった。
「……う、うん」
膣内でクルリと鞭を一周させ、彼はそれを抜く。そして愛液を指で拭い取り、一舐めした。
「今日はこのくらいにしておきましょうか。初日にしてはなかなか楽しめましたよ、里衣」
ニッコリと笑って、ウォーミングアップ終了を告げる葉月さん。
初日からとてもハードな彼の『趣味』に付き合う時間は、ようやく終わった。
その後、リビングに戻り、ミニキッチンのそばにあるテーブルに向かい合って座る。
そして葉月さんは仕事の話をはじめた。
「さて、趣味にかまけていたせいで、すっかり遅くなってしまいましたね。時間もないことですから、仕事の内容については軽くお伝えします」
葉月さんは淡々とした様子だけど、私はスカートの中が気になって仕方ない。彼にストッキングとショーツをダメにされてしまったせいで、スカートの中がやたらとスースーするのだ。
「あの、話をする前に、下着をなんとかしたいです。一瞬でもいいからアパートに帰らせてください。私、着替えも下着も……何もかも持ってないんですよ」
泣きそうになりながら要望を伝える。
しかし葉月さんは、笑みを浮かべたまま人差し指を左右に振った。
「すみませんが、今日はそのままで過ごしてください。明日には用意して差し上げますから」
「な、なぜ……明日……」
「何せ急なことでしたからねぇ。さすがになんの準備もしていないのですよ」
そうじゃなくて、どうして着替えを取りに戻ることすら許してくれないのか。
再度お願いしようとするが、葉月さんはそれを遮るように話を続けた。
私はしぶしぶベッドに上がる。横になると、葉月さんが鞭を持ったまま近づいてきた。
葉月さんは満面の笑みで、私の頬に鞭をピタピタと当ててくる。そして「いい表情ですね」と満足そうに言った。一体私はどれだけ怯えた顔をしているのだろう。
「さて、では脱がしますね」
「ままま、待って!?」
仕事着であるスーツの上着に手をかけられて、私は慌てて葉月さんの手首を掴む。眼鏡がきらりと光り、彼は嬉しそうな顔をした。
「なんでしょう。もしかして自分で脱ぎたいのですか?」
「そそそそそんなわけないっ! そうじゃなくて、な、なんで脱がすの? 点検って、脱がないとだめなの!?」
「当然でしょう。脱がなければ、何もはじまりません」
まじか。ウォーミングアップの時点で脱がなくてはいけないのですか。
脱がないといけないと思うと、急に恥ずかしさの度合いが上がる。それになんだか怖い。
「って、ああーっ! すでに脱がされてる!!」
私がボヤボヤ考えている間に、葉月さんはスーツの前ボタンをはずし終え、ブラウスのボタンまではずしていた。なんて手が早いんだろう。
慌ててブラウスの前を閉じようとすると、葉月さんはそれを制止するように、私の喉元にビタッと鞭を突きつけてくる。
「駄目ですよ。隠してはいけません。そう、手を下ろして。次に抵抗したら、拘束しますからね」
「……うう」
力なくだらりと腕を下ろす。抵抗しても状況を悪くするだけだ。どうしても無視できない抵抗感があるけれど、私は必死にその感情を抑え込む。
すると、葉月さんがくすくすと笑った。
「この程度で恥辱を感じているとは、先が思いやられますね? とっても楽しみです」
「っ、意地悪」
「ええ、そうですね」
葉月さんは細い鞭を手の内で回し、グリップをブラの下から差し込んだ。そしてグイッとブラを上にずらす。
「ですが、意地悪とはまた、可愛い表現ですね。はじめて言われましたよ」
葉月さんが何か言っているが、それどころではない。
だって、胸が露わになっているのが、恥ずかしくてたまらない。
「ささやかな胸ですね。もしかしてAカップですか?」
「失礼な、Bだよ! そ、それに、寄せて上げたら、Cカップのブラも入るから!」
「最近の下着は詐欺ですよねぇ。黒部がガッカリおっぱいと名付けていましたよ」
黒部……あのホストっぽい茶髪男か。ガッカリおっぱいとはまた酷い名付けだ。
葉月さんの鞭がゆるりと動く。鞭とは本来打つものだが、葉月さんはどうやらそれで私を傷つけるつもりはないらしい。ただ、硬い鞭の先で私の胸をなぞっていく。線を描いたり、乳輪の形を辿ったりを繰り返す。
気づけば私はこぶしを硬く握り、フルフルと小刻みに震えていた。
「もっと力を抜いてもいいですよ。今日は点検だけですし、何もしませんから」
裸を見たり、鞭で胸を弄ったりすることは、私の認識では『何かしている』うちに十分入る。しかし、彼にとってはそうではないらしい。だとすると、点検が終わった後に何が待ち受けているのか――怖すぎて考えたくもない。
胸を鞭でつつき、本当に点検をするかのようにジッと凝視する葉月さん。
どうしても恥ずかしくて、顔を背けてしまう。
「色白ですね。乳輪も綺麗な色をしていますし、形もいい。乳首がやや小さいですね。ここだけは少し幼い感じがします」
ツン、と胸の先端をつつかれた。びくりと肩を揺らし、目をぎゅっと瞑る。
「感度は今ひとつですね。もしかして里衣は、自分でここを弄ったことがないのですか?」
「っん、ないよ、一度も」
「ふむ、開発してないのですね。ここはいわゆる性感帯のひとつですよ。いくらでも気持ちよくなれる場所です。ほら、今も少しずつ気持ちよくなっていませんか?」
「あっ」
つん、つん、と胸の尖りをリズミカルにつつかれる。そのたびに肩が揺れ、我慢したいのに声が勝手に出てしまった。
「はっ、んっ……やぁ……なんか、変な感じ。これが気持ちいい、の?」
戸惑いながら聞けば、葉月さんはわずかに片眉を上げた。そして鞭を持つのとは逆の手で、じかに胸を触ってくる。温かくて乾いた、大きな手。それが胸を覆い、ギュッと強く乳首を摘まんだ。
「いッ……!」
痛いと抗議したかったが、『次に抵抗したら、拘束』という言葉を思い出して、言葉をのみ込む。
「あなたは性感にまったく慣れていませんね。里衣の男性経験をお聞きしてもよろしいですか?」
「だっ、だんせいけいけん!? そんなのないよ!」
「一度もないのですか?」
意外そうに目を丸くする。いや、まだ二十歳だし。この年なら、まだ一度も男の人と付き合ったことがないというのは、そう珍しいことではないと思うんだけど。
「一度もないよ。田舎から都会に来て以来、ずっと仕事が忙しかったから、恋愛なんてする暇なかったし」
「なるほど。健全でわびしい社会生活を送られてきたのですね。つまり里衣は処女ということですか?」
「しょっ……! ま、まぁ、そう、だけど」
顔に熱が集まるのを感じながら頷く。なんでこんな恥ずかしい問答をしなくてはいけないのだ。
そもそも、調教に処女かどうかなんて関係あるのかな?
――その時、ニヤリと、葉月さんが薄く笑った。
それははじめて見る、酷薄で冷たい笑みだった。穏やかさや優しさなどの人間味のある要素をすべて削ぎ落としたような、うすら寒い笑顔。
「ふぅん? それはまた都合がよい……」
葉月さんが、きゅ、と乳首が摘まむ。そして親指と人差し指で擦りはじめた。
「初心そうな娘だと思っていましたが、まったくの未開発だったとは。これは調教のしがいがありますね。ゆっくりと身体に教え込み、性の快楽を覚えさせましょう」
くすくすと笑う葉月さんの笑顔が怖い。
私は一体何をされて、どうなってしまうのだろう。得体の知れない不安が増していく。
「ほら、ここを擦ると気持ちがいいでしょう。この感覚を覚えてくださいね」
そう言いながら、葉月さんは私の乳首を擦り続ける。肌が粟立ち、ざわざわする気がするが、これが『気持ちいい』ということなのかは、よくわからない。
「ん、や……! 気持ち、いいっ? なんだか、不思議な感覚しかしないけどっ」
「ええ。そのうち自分でも擦りたくなりますよ。乳首でイけるようになりましょうね。ああ、これからのことを考えると、すごくわくわくします。処女を散らす前に、できればクリトリスとGスポットの開発まで済ませておきたいですね。たくさん感じられるように、がんばりましょう」
葉月さんがにっこりと笑う。その笑顔は冷たいものではなかったので、少しホッとした。
でも、知らない単語ばかり出てくるし、彼の言っていることはやっぱりわからない。
するすると葉月さんの手が動き、腰のくびれをなぞる。そして私の膝をぐっと持ち上げた。スカートがめくれ上がり、ストッキングを穿いた太ももが見えてしまう。
「あっ」
その上、足を開かせようとしてきたので、私は慌てて葉月さんの手首を掴んで足を閉じる。
葉月さんがニィと嬉しそうに目を細めた。
「抵抗しましたね?」
「っ、や、これは、その」
「言いましたよね。次に抵抗すれば拘束すると」
「ご、ごめんなさい。だって、つい」
足を開けば下着が見える。もうすでに上半身は何も身につけていなくて、十分恥ずかしかったが、下半身はもっと恥ずかしい。
葉月さんは私の謝罪など聞く耳も持たず、寝台の四隅に垂れ下がっていた鎖を手に取る。
「ここで、はっきりと教えて差し上げましょうか。私は反抗的な人は好きですが、対応を甘くするつもりはありません。言葉だけの謝罪で許されると思ったら、大間違いです」
彼は笑顔のまま、短い鎖に繋がる手錠をがしゃりと開く。そして手際よく私の両手首に手錠をはめた。いわゆる万歳の体勢だ。
「開脚させたいので、足には枷ではなくこちらを使いましょうか」
葉月さんはキャビネットの引き出しを開け、中から何かを取り出す。それから黒いガムテープのようなものを私に見せて、説明する。
「これは拘束テープと言いましてね。粘着剤が使われていないのですが、テープ同士はくっつく不思議な代物です。肌を傷つけずに拘束できる、便利なものですよ」
世の中にはそんな便利なテープがあるのか。もしかしてこういう趣味の道具って、種類が豊富なの?
そんなことを考えているうちに、葉月さんは私の膝を曲げ、手慣れた様子でクルクルと拘束テープを巻きつけてしまった。
拘束テープによってふくらはぎと太ももがぴったり合わさり、大きく足を開かれる。はたから見れば、私の姿はさぞ滑稽だろう。
しかしどんなに恥ずかしくても、手足を拘束されては身動きが取れない。
「あ、失敗しましたね。拘束する前に下着とストッキングを脱がせばよかった」
軽く照れ笑いをする葉月さん。その表情は可愛くて子供っぽいけど、やってることはとても酷い。
「仕方がないので切りますね」
「切る? って、ちょっ、まっ」
物騒なセリフにおののいていると、葉月さんはキャビネットから大きな裁ちバサミを取り出した。
何を切るの? まさかストッキングと下着をそれで切っちゃうの?
「や、やぁーっ! やだぁ! 下着は切らないで! だってそれ切ったら、私、穿くものがない……っ」
手錠をがしょがしょ鳴らして揺らし、足を左右にブンブン動かす。しかしすでにシッカリと拘束されているから、ろくに抵抗できていない。
葉月さんはストッキングを摘まんで、容赦なくビリビリに引き裂いてしまった。
「ひぃ……。わ、私のストッキングが……」
半泣きになる私に構わず、葉月さんの興味は私のショーツに向かう。腰の左側にひやっとした金属が触れたと思った瞬間、シャキンといっそ涼やかな音を立てて、ショーツを切られた。右側も同じように切られ、ショーツはただの布きれと化す。葉月さんが布を引っ張ると、その布きれもあっけなく抜きとられてしまった。
「うぅ、酷い……。パンツだって高いのに」
「後で用意して差し上げますよ。こんな色気のないものでなく、もう少しセクシーな下着をね」
いらない。私は普通の綿の下着がいい。だけどそんな要望は聞いてもらえないだろう。
意地悪ヤクザの葉月さんは、にっこりと微笑み、眼鏡の奥からジッと私を見つめる。
「さて、それではこちらもじっくりと点検させてもらいましょうね」
わざわざ宣言してから、私の膝を掴んであらためて大きく開かせる。秘所に指が添えられ、柔肉をぱっくりと開かれた。
恥ずかしくて声も出ない。唇を引き締め、震えながら羞恥に耐える。
スー……と秘所に冷たい風を感じた。普段閉じているところが、外気を敏感に感じ取っている。
身体の震えがしだいに強くなり、歯はがちがちと音を立てた。手首に繋がれた鎖にも震えが伝わり、チャラチャラと鳴る。
身体に力を込めて耐えていると、秘所にツンと硬い何かを当てられた。
「綺麗な色をしていますね。ほら、このあたり、わかりますか?」
「っ、ん。見えないから、わかんないよっ」
羞恥から逃れたくて、やけくそ気味に叫ぶ。すると葉月さんは「そうですよねえ」と笑った。
「じゃあ見てもらいましょうか」
「へ? それってどういう……きゃあ!」
思わず悲鳴を上げてしまう。なんと、いきなりベッドが動き出したのだ。
てっきり普通のベッドだと思っていたけど、コレ、可動式だったのか……
「病院にこういうベッドがあるでしょう? あれが便利そうだったので、特注で作ってもらいました。一見普通のベッドですから、動くなんて思わないですよね? 驚いてもらえて嬉しいです」
くすくすと笑って、いつの間にか手にしていた小さなリモコンを操作する葉月さん。
低い可動音と共に、背もたれ部分が上がっていく。両手は拘束されたままだから、いよいよ万歳のポーズになってしまった。
葉月さんは、キャビネットから四角い卓上ミラーを取り出し、私の足の間にコトンと立て掛ける。
「ひっ!」
目を見開き、身体をのけぞらせてしまう。鏡には私の秘所が映っていた。
かっと身体が熱くなる。こんなの見たくない。顔を背けて目を瞑ると、私の頬にぴたりと何かが当てられた。
「駄目ですよ。せっかく私が見せて差し上げているのですから。ちゃんと見てください」
頬に触れる硬い感触。おそらく、先ほどの鞭の先端だろう。それを動かし、私の頬をさらりと撫でてくる。
「だ、だって、こんなの……っ」
「私が言っているのですから、あなたは見なければならないのですよ。言うことが聞けないのなら、あなたの身体に直接教えてあげなければなりませんね」
「教える……って、何を?」
そう言った瞬間、ビュッと風を切る音がした。同時に、首のあたりに鋭い風を感じる。
驚きで目を開いて葉月さんを見ると、彼は不敵な笑みを浮かべながら鞭を構えていた。
「今のはわざと空振りさせましたが、まだ私の言うことが聞けないのでしたら打ちますよ。しつけも大事な調教ですからね」
「っ、そん、な」
「あなたは痛みに慣れていないでしょうし、最初は優しい鞭から教えようと思っていましたが……反抗するなら話は別です。私は、今、この鞭を振っても構わないのですよ。ちなみに、鞭には様々な種類がありまして、これは特別痛いほうです。下手に打てば肌を裂き、出血するでしょうね」
出血……血が出るの? 肌が腫れるどころか、裂けちゃうような鞭なの? それって、めちゃくちゃ痛いよね。
茫然とする私をよそに、葉月さんはうっとりと鞭を眺める。そして心底愛おしそうに、黒い鞭をゆるりと撫でた。
「鞭にはこだわりがありましてね。これは私が特別気に入っている鞭です。打たれたら、きっと、とても痛いですよ。裂傷は治るのに時間がかかりますから、数日痛みが続くでしょうね。けれど、私はあなたを苦しめたいわけではありませんから、綺麗に治して差し上げます。傷跡ひとつ、残さずにね」
くすりと笑う葉月さんの笑みは、どこか妖艶だった。でも、それ以上に凶悪だ。
――この人はやる。脅しじゃない。次に私が言うことを聞かなかったら、容赦なく鞭を打つ。
鼻がツンとして、目に涙がにじみそうになる。
しかし、ぐっと唇を結び、泣きたい気持ちを噛み殺す。こんなところで泣きたくない。泣いたら負けだ。
私は屈しない。この人がどんなに意地悪でも、要求された金額分働けばいい。それまで我慢すればいい話なんだ。
自分自身にそう言い聞かせて、鏡を睨みつけた。
すると、葉月さんがくすくすと楽しそうに笑う。
「そんなに鬼気迫った顔で自分の性器を凝視する人なんて、はじめて見ましたよ」
「み、見ればいいんでしょ。なら、お望み通り見てやるわよ!」
「ふふ、その意気です。あなたは私が思っていたよりもずっと興味深い。気に入りましたよ」
いいえ、気に入ってもらわなくても結構です。嫌な予感しかしませんから。
顔を歪ませて鏡越しに自分の秘所を見つめていると、葉月さんが人差し指と中指で秘裂を開いてみせた。
思わず、ごくりと唾をのむ。はじめて見る私の秘所は、ピンク色でぬらぬらしていた。
「いいですか、里衣。私が今指で触れている部分が大陰唇、内側のここが小陰唇。ふたつとも性感帯があります。例えば大陰唇だと、このあたり……」
彼は二本の指で秘所を割りながら、鞭の先で大陰唇のフチをなぞってきた。
「ひゃ!」
びくんと腰が浮く。茂みを優しく分け、羽で撫でるほどの力加減で、薄く線を描くように鞭を動かす葉月さん。
背中がぞわぞわして、なんとも奇妙な感覚がした。まるで身体中の産毛を撫でられているみたいだ。
「っ、んん、ふ……ぅっ」
「くすぐったい? それとも、気持ちいいですか?」
「わ、かんな、はっ!」
次は小陰唇の部分に鞭の先が触れてくる。色が沈んだひらひらしたところ。その形を辿るように、鞭の先がスーッと動く。ぞくぞくした感覚が強くなって、腰の後ろが激しくうずいた。
「ん、あっ、そこはっ」
「少しずつ感度がよくなっているようですね。ちゃんと鏡を見ていますか? あなたが感じているところはここですよ、ここ」
「やぁっ! あの、何度もなぞらないで。み、見てるからぁ」
はっはっと息を短く刻みながら、鏡を見つめる。
指でぱっくりと開かれた小陰唇を、葉月さんは見せつけるように何度も鞭の先で撫でてくる。
どうして? とても恥ずかしいのに、時々うっとりした感覚に陥る。これが気持ちいいってこと……?
「里衣。ここがクリトリスです。ほら、この小さな丸いところですよ」
「っ、く……くり、とりす?」
「ええ。ここが女性にとって一番敏感に感じるところなのです。だから強く刺激してやると……」
「あぁっ!!」
葉月さんが鞭の先でグリッと押し出すようにそこを突いてきて、身体中にビリビリした衝撃を感じる。思わず、膝をぎゅうっと閉じてしまう。
葉月さんはクスクスと笑って再び私の膝を開かせながら、「驚いたでしょう?」と眼鏡の奥にある目を細めた。
「ここはとても敏感なんですよ」
彼は笑顔で、さらに秘所の奥を開く。
「さて、いろいろ説明しましたが。ここが膣口ですよ。穴が空いてるでしょう?」
「え、あ……うん」
戸惑いながらも頷く。鏡の向こうに見える秘所は、赤くぬらぬらしている。その奥に、小指サイズの穴が見えた。
「この奥にあるのが子宮です。性交をして精子が卵巣に着床すると、子供ができるところですね」
「ソ、ソウデスネ」
なんだか保健体育の授業でも受けているみたいだ。
私の相槌に微笑み、葉月さんは鞭の先で膣口の周りをくるりとなぞった。なんだかぞわぞわしたものが身体中に走る。
「あ……っ」
「ふふ、感じますか? ここも性感の強い場所ですよ。他にもたくさんありますから、少しずつ教えてあげますね」
ツ、ツ、とリズムを取るように、鞭の先で膣口を優しく撫でられる。そのたびに、じわじわした感覚が襲ってきた。なんだろう。むずむずする。身体中が少しずつ熱くなっていく。
「里衣の身体は素直でよろしいですね。少し愛液が分泌されているようです。ほら、鞭の先が濡れている。これはあなたが濡らしているのですよ。性器は気持ちよくなると濡れてくるのです」
「う、うん……。はぁっ……あ」
葉月さんが鞭の先を柔らかに動かし、閉じていた秘所の内側を、ツツ、となぞり、蜜口のそばでくるりと回る。
「は、ぁ……。う、んっ」
腰のあたりがじわじわしてくるこの感覚が気持ちいいということなのだと、本能が感じ取ってしまったようだ。
私自身が感じたくないと思っていても、身体が鋭敏に感じ取る。
「ん、は……ぁ、あっ」
葉月さんの鞭は止まらない。クリトリスのまわりをくるくると回り、縦に線を引くように、秘所の真ん中を割る。彼の指によってぱっくりと開かれた秘所を好きなように弄られ、私の息は上がっていった。
恥ずかしくて堪らない。もうやめてほしいのにそれを口にするわけにもいかず、寝台に繋げられた短い鎖が鳴り響くだけ。
「あ、ああっ、ん、は……っ」
蜜口の大きさを計るみたいに鞭が円を描き、ゆっくりと何かを拭いとる。黒くしなやかな鞭には、ぬらりとした液体がついていて、ダウンライトに反射して光っていた。愛液と彼が呼んでいたもの。
葉月さんは手を止めることなく、濡れた鞭の先で色の沈んだひらひらしたところをなぞる。
「ひゃ、あ! あ、んんーっ!」
びくびくと腰が震えた。拘束テープで固定された膝が笑い出す。
自分から分泌された液体は、少し粘り気を帯びていて、やたらと滑りがいい。ぬるぬると小陰唇のフチを撫でられると、得も言われぬ感覚が襲いかかってくる。
ぬちぬちと音を立て、私の蜜を塗りつけるみたいに、葉月さんは鞭の先で秘所を弄り続けた。
「なかなかにいやらしい仕上がりになってきましたね。里衣もそう思いませんか?」
くすくすと葉月さんが笑い、小陰唇をめくって、そこにも蜜を塗りつける。
「おもわな……いっ! あ、んんっ」
ぐっと奥歯を噛みしめると、蜜口からとろりと液体がこぼれ出た。
「可愛らしい強がりですね。あなたの言葉に反して、ここはとても気持ちよさそうですけど?」
「こ、これは、私の意思じゃないっ! きもち、よくなんか」
鏡から目をはずし、葉月さんを睨みつける。彼はそんな私を、うっとりと愛でるように見つめ返してきた。
「――いいですね、その反抗的な表情。何がなんでも屈服させたくなります」
「性格、悪い……っ!」
心からの悪態をつくと、葉月さんはすっと私の顔に、自分の顔を近づけてきた。その至近距離に、私はヒュッと息をのむ。
「あなたは、初日から私を煽るのがうまいですね」
くく、と低く笑う声。ぬちゅりと、鞭ではなく彼の指が、秘所の割れ目を滑る。
「あ、やぁっ、ああっ!」
ダイレクトな指の感覚が、ゾクゾクした身体の痺れに拍車をかける。チャリリと鎖が鳴り、ぐっと強くこぶしを握った。
葉月さんは身体を起こし、とろとろとこぼれる蜜を指で掬い取る。
「指で軽く撫でただけなのに。本当に里衣の身体は可愛いですね」
「う、うぅ……」
眉を下げる私を楽しそうに見下ろして、彼は再び鞭の先で秘裂を割り、ぬらりと撫でた。
ちゅっ、ちゅく。小さな粘ついた音が聞こえてくる。
気持ちがいいって認めたくない。でもそう頑なに思い込んでいる時点で、私は――
ちゅ、る。葉月さんがその細長い鞭を、そっと膣口の中に差し込む。
「……あっ、あっ……! なかに、あっ、入れるの……?」
「今は入り口だけ、ね? この奥に、もっと気持ちよくなるところがありますよ。これから知っていきましょうね」
葉月さんは嬉しくて仕方がない、といった表情で言ってくる。そのとろけるような笑みを見て、私はなぜか素直に頷いてしまった。
「……う、うん」
膣内でクルリと鞭を一周させ、彼はそれを抜く。そして愛液を指で拭い取り、一舐めした。
「今日はこのくらいにしておきましょうか。初日にしてはなかなか楽しめましたよ、里衣」
ニッコリと笑って、ウォーミングアップ終了を告げる葉月さん。
初日からとてもハードな彼の『趣味』に付き合う時間は、ようやく終わった。
その後、リビングに戻り、ミニキッチンのそばにあるテーブルに向かい合って座る。
そして葉月さんは仕事の話をはじめた。
「さて、趣味にかまけていたせいで、すっかり遅くなってしまいましたね。時間もないことですから、仕事の内容については軽くお伝えします」
葉月さんは淡々とした様子だけど、私はスカートの中が気になって仕方ない。彼にストッキングとショーツをダメにされてしまったせいで、スカートの中がやたらとスースーするのだ。
「あの、話をする前に、下着をなんとかしたいです。一瞬でもいいからアパートに帰らせてください。私、着替えも下着も……何もかも持ってないんですよ」
泣きそうになりながら要望を伝える。
しかし葉月さんは、笑みを浮かべたまま人差し指を左右に振った。
「すみませんが、今日はそのままで過ごしてください。明日には用意して差し上げますから」
「な、なぜ……明日……」
「何せ急なことでしたからねぇ。さすがになんの準備もしていないのですよ」
そうじゃなくて、どうして着替えを取りに戻ることすら許してくれないのか。
再度お願いしようとするが、葉月さんはそれを遮るように話を続けた。
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