ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり

文字の大きさ
10 / 53

10 お祭り騒ぎの村を過ぎて

しおりを挟む

 渡り人が放流されてこの村に来た。他国のイケメン三人がわざわざ迎えに来たってんで、見世物になっている。間に一般人が物見遊山で眺めている。見物人が大勢押しかけて屋台が出て、お祭り騒ぎだ。こんな事、滅多にないらしい。そりゃあ、何年かおきだし、どこに放流されるか分からないとくれば、祭りになるんだろうか。

「やっぱりオバサンだな」
「魔力ないのか」
「神気も無いらしい」
「外れもいいとこだな」
 ぞろぞろと集まった連中が噂する。きさまら女性に対して失礼であるぞ。
「あいつら、あんなオバサン、何で引き取るんだ」
「後から魔力が発現するケースがあるってよ」
 私もその部類か、ロンダリングされた人が他にもいるんだろう。
「見かけも何とかなんねえの」
「後で発現するかもよ」
「ゲラゲラゲラ……」
 くそっ。何か腹立つな。
「抑えろ」傍でルパートが囁く。

 私は元々オバサン、……だから、ちょっとカチンときたけれど、率先してぶーたれる程じゃないわ。我慢くらいできるのよ。知らぬが仏ってあるし、後でざまぁしてもいいかも。でもね、年を取ると気が短くもなるんだわ。

「ねえ、ここで渡り人の降臨しちゃいけないの?」
「イケナイ。君の身が危険になる」
「見ると聞くとは大違いっていうだろう」
「みんな国に帰って報告する為に来ているから」
 三人のイケメンに宥めすかされてしまう。そうなのね。テレビも写真もなきゃ、見に来るしかないのか。

「私なんかこんなオバサンだし、渡り人と言っても……」
「君は戻り人なんだろう?」ブルネットのキリルが言う。
「え」
 彼の肩に乗った小鳥が『ピチュピチュ』鳴いている。
「戻って来たんだろう、こちらの世界に」
「「「お帰り、エマ!」」」
 イケメン三人がにっこりと笑う。そう言われると照れるというか恥ずかしいというか。何かオバサンは思考が乙女寄りになりそうやん。


 そういう訳で少し雰囲気良くなって村を通っていると、前を歩く人がいなくなって両側に人垣ができた。

「ようお疲れさん」
 人垣の前方にひときわ目立つ大きな男が立っていた。厳つい顔に頬に傷痕、組んだ腕は太く、肩も胴体も筋肉もりもりである。そしてルパートと似たような軍服を着ているが、着る者が違うと服も違う服に見えるのか。
「ああ、後は頼んだ」銀髪のルパートが言う。

「任せとけ」
 男は腕を組んでいた手を解いて、ルパートの肩に軽く触れた。
 ああ、男同士のナンチャラみたいな尊い姿を間近で見てしまった。その手の読み物も嗜んでいた私の胸がキュンキュンする。
 いや美形同士より、こういうのが好みよ。私としては。

 後ろにたくさん騎士服を着た男を引き連れて、強面という感じか、某アタタの漫画に出てきそうな感じ。彼の前を遮る者は誰もいない。
 男の傍らにフードを被った魔術師らしき者がいて、話しかけている。軽く頷いて私をチラリと見てなるほどとまたニヤリとする。
「片付いたら遊びに行ってやろう」
「わざわざ来んでもいい」
「じゃあな」

 くっ、別れ際に肩越しに振り返って斜めに見るとか、悶え死ねる。
 拳骨を握ってのた打ち回りそうな私を不審げに見る三人。


「行くぞ」という言葉に我に帰れば、すでに小さな村の中を通り抜け、出口に立派な馬車が待っていた。
 ひとり馬車に乗せられて三人は騎乗し、すぐに出発した。
 イケメン三人は馬で移動するようで、少しホッとした。あんまりキラキラしいのも目の毒なのだ。


  ◇◇

 村から小一時間くらい走っただろうか、馬車から降りると神殿のような立派な建物がある。立派な門には警備兵がいて、まず手前の建物で利用目的などの書類を書く。書類手続きが済むと、ゲートのある神殿の部屋に行く。

 ゲートは広い部屋の中央に五本の柱に囲まれて、一段低く作られた魔法陣だった。何となくこの世界に来た時の場所を思い出させた。警備兵が四人部屋の中にいる。
「転移ゲートだ」ルパートが簡単に説明して、魔法陣の手前にある水晶が乗った台に手をかざす。次々に四人が手をかざして魔法陣に乗り込んだ。
 目の前の景色が消えて一刻の浮遊感。そして地に足が着く。


 魔法陣から降りて部屋を出ると、三人が並んで胸に手を当てて言った。

「「「ようこそエマ。我が国、アルンシュタット王国に!」」」

 私、そう言えばこの世界の地名とか何も聞いてない。
 最初に着いたあの国も、転移ゲートで行ったあの屋敷も、町も、名前を知らない。地図にも何も書いていなかった。川の名前も、森の名前も。

 そうなのか。私はこの世界に来て、初めて迎え入れられたのだ。
 ここは素直に喜ぶべき所だろうか。しかし、前の世界でボッチとはいえ当たり前に暮らしていたオバサンとしては、漠然とした納得がいかない気持ちがある。
 しかし目の前のイケメンたちには申し訳ないのでにっこり笑っておこう。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

悲報!地味系令嬢、学園一のモテ男に「嘘の告白」をされる。

恋せよ恋
恋愛
「君のひたむきさに心打たれた」 学園の王子様、マーロン侯爵令息から突然の告白。 けれどそれは、退屈な優等生である彼が仕掛けた「罰ゲーム」だった。 ターゲットにされたのは、地味で貧乏な子爵令嬢・サブリナ。 彼女は震える声で告白を受け入れるが――眼鏡の奥の瞳は、冷徹に利益を計算していた。 (侯爵家の独占契約……手に入れたも同然だわ!) 実は、サブリナの正体は王都で話題の「エアハート商会」を率いる敏腕マネージャー。 「嘘の告白」をした男と、「嘘の快諾」をした女。 互いに利用し合うつもりが、いつの間にか本気に……? お互いの本性を隠したまま進む、腹黒×腹黒の騙し合いラブコメディ! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

処理中です...