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拉致
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あぁ、こんな非倫理的な事が起こっていいものなのだろうか。
「じゃぁ汐見、また明日……いや、今日だな」
「ハハッ……シャレになんねぇって」
そんな同僚の冗談になっていない事実に、苦笑いで返事をして会社のビルの前で別れた。
時刻は午前1時半。
こんな時間まで同僚と飲み歩いていたわけではなく、今のいままで仕事をしていた。
上層部が繁忙期に派遣切りなんてしたせいで、彼女にまでフラれた。新しい男ができたらしい。
仕事ばっかりで全然構ってあげられなかったから、当たり前なんだけど……。
『アンタと違って、愛情表現たっぷりしてくれる人にしたから』と……電話口で嫌味を言われた。
金髪青目の外人に口説かれて、俺から乗り換えたらしい。
それを聞いても大して悲しくなかったのは、俺も彼女に気持ちが向いていなかった証拠だろう。
今だってそんな事よりも、明日の仕事の方が気になっているんだから。
どんなに仕事を頑張ったって、弱小企業の俺たちは、大手企業様の下請けや孫請けでしかない。
汐見洸也……お前はこのまま、何者にもなれない一生を、社畜として過ごすのか?
大学卒業して、社会人三年目。自分が居なくても回るはずの会社にしがみつき、ただ自分の人生を消費することに何の意味があるんだ。
タクシーが多く停まっているであろう駅まで歩きながら、こんなことを考えているとなかなか末期だ。
こうなると明日の仕事のモチベーションに響く……忘れよう、いろんなことを。
「あーぁ、今日も疲れたな……もうどうでもいいわ」
深夜の人がいない公園を歩いているのをいい事に、結構大きな独り言を口に出した。
口に出して言えば楽になれるような気がした、本当にそんな気がするだけだ。
俯きながら歩いていたから気付かなかった、目の前に人がいた。
しかもデカい! というか金髪だ、そう外人さんだ。俺の彼女をかっさらっていった憎き相手だ……いや、多分この人は関係ないけど。
今の独り言聞かれただろうか、彼女を奪われ、情けない独り言を聞かれ、自分がひどく矮小な人間であるかのように感じた。
なんだか居心地が悪くて、心の中で八つ当たりしたことも申し訳なくて、気持ちペコリと会釈した。
「Hey! KOYA!」
突然見知らぬその外人は、俺の名前を呼んだ。
ハイタッチでもするように片手を出されて、ワケが分からないまま釣られて自分も手を挙げた。
だって名前を呼ばれてそんな動作をされたら、とりあえず応えなければいけないと思うじゃないか。
けれど、その大きな手のひらは、俺の手ではなく顔面を掴んだ。
「——ッ!!??」
その外人は手のひらに何か持っていたようで、俺の肌はその湿り気を感じ取った。感じ取ってはいたが、驚いて大きく息を吸い込んでしまった……そして俺の視界はそこで暗転した。
「じゃぁ汐見、また明日……いや、今日だな」
「ハハッ……シャレになんねぇって」
そんな同僚の冗談になっていない事実に、苦笑いで返事をして会社のビルの前で別れた。
時刻は午前1時半。
こんな時間まで同僚と飲み歩いていたわけではなく、今のいままで仕事をしていた。
上層部が繁忙期に派遣切りなんてしたせいで、彼女にまでフラれた。新しい男ができたらしい。
仕事ばっかりで全然構ってあげられなかったから、当たり前なんだけど……。
『アンタと違って、愛情表現たっぷりしてくれる人にしたから』と……電話口で嫌味を言われた。
金髪青目の外人に口説かれて、俺から乗り換えたらしい。
それを聞いても大して悲しくなかったのは、俺も彼女に気持ちが向いていなかった証拠だろう。
今だってそんな事よりも、明日の仕事の方が気になっているんだから。
どんなに仕事を頑張ったって、弱小企業の俺たちは、大手企業様の下請けや孫請けでしかない。
汐見洸也……お前はこのまま、何者にもなれない一生を、社畜として過ごすのか?
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タクシーが多く停まっているであろう駅まで歩きながら、こんなことを考えているとなかなか末期だ。
こうなると明日の仕事のモチベーションに響く……忘れよう、いろんなことを。
「あーぁ、今日も疲れたな……もうどうでもいいわ」
深夜の人がいない公園を歩いているのをいい事に、結構大きな独り言を口に出した。
口に出して言えば楽になれるような気がした、本当にそんな気がするだけだ。
俯きながら歩いていたから気付かなかった、目の前に人がいた。
しかもデカい! というか金髪だ、そう外人さんだ。俺の彼女をかっさらっていった憎き相手だ……いや、多分この人は関係ないけど。
今の独り言聞かれただろうか、彼女を奪われ、情けない独り言を聞かれ、自分がひどく矮小な人間であるかのように感じた。
なんだか居心地が悪くて、心の中で八つ当たりしたことも申し訳なくて、気持ちペコリと会釈した。
「Hey! KOYA!」
突然見知らぬその外人は、俺の名前を呼んだ。
ハイタッチでもするように片手を出されて、ワケが分からないまま釣られて自分も手を挙げた。
だって名前を呼ばれてそんな動作をされたら、とりあえず応えなければいけないと思うじゃないか。
けれど、その大きな手のひらは、俺の手ではなく顔面を掴んだ。
「——ッ!!??」
その外人は手のひらに何か持っていたようで、俺の肌はその湿り気を感じ取った。感じ取ってはいたが、驚いて大きく息を吸い込んでしまった……そして俺の視界はそこで暗転した。
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