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車内 —目的—

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 意識が回復した時、何が起こっているのか把握するのに時間がかかった。

 そもそも把握ができなかった。
 まず目を開いたはずなのに、俺の視界は暗転したままだった。

 次に自分の目を塞ぐものを取り去ろうと思ったが、手が動かなかった。後ろ手に拘束されている……ただ、この拘束自体はそんなにキツくはなかった。
 痛いほどに縛り上げられてはいないが、少し手を動かしても外れそうではなかった。

 ゴーッという車の走る独特な音と、時折軽くバウンドする体。恐らく走行中の車内、しかもこの走行音の大きさからして高速道路だろう。

 口は塞がれていないようだ、喋れるなら交渉することも可能だろうか。

 状況からして、俺は拉致されたのだろう。

 犯人はまず間違いなく、先ほどの金髪のデカい外人だ。
 顔は暗がりでよく見えなかったが、俺の名前を呼んだことからして、向こうはこちらを知っていたって事だろう。

 なぜ? 目的は? どこに連れていかれている? 俺は殺されるのか?

 疑問は次々と浮かんだが、何を考えても自分がいい状況にいるとは思えなかった。

「あ、起きた?」

 声を掛けられて体がビクッと強張った。思ったよりもすぐ近くから声がした。しかもさっきの外人とは声が違う、もっと若々しい……そして少しだけ英語なまりのある流暢な日本語。
 相手は複数犯なのが確定した、絶望的だな。

「あの、金とか持ってないですよ? 俺なんかじゃ一文の得にもならないっていうか……」
 あ、外人相手なのに『一文』って通じんのかな?

「知ってるよ、お給料の半分は家族に送ってるもんね」
「……えっ」
 え、なになになに!? 怖っ! なんで知ってんの!? 思わず絶句してしまった。

 相手の目的がわからないが、少なくとも俺を狙っての犯行だ。
 これは取引して、交渉して、解放してもらうなんて、甘すぎる考えかもしれない。
 いや、殺されるだろ! これ! どう考えても! なんで? 俺、他人の恨みを買うような事してないぞ!?

「あ、あぁ……あのっ、あの……殺さないで……ほしいんです、ケド」
「Uh huh」
 その特有の相槌は酷く優しい声で、逆に背中に寒気が走ったような気がした。
「殺さないよ、それよりこれ飲めるかい?」
「ヒ、あッ……!」
 無遠慮に顎を掴まれて、口を開けられた。舌の上にコロリと錠剤が置かれて、もう恐怖でしかない。
 これ、何の薬だよ!? 絶対飲み込みたくないんだけど!

 殺さないと言われたことで、少しは抵抗しようかと、飲み込むことを拒否して首を振った。
「いいから飲んで」
「——ッ!」
 先ほどとは打って変わって、あまりにも低くドスの効いた声に体が縮みあがった。

 ガチガチと震えるアゴで、乾ききった喉を潤す水もなしに、その錠剤を飲み込んだ。
 怖い、何飲まされたんだろう……やっぱり俺殺されるんじゃないだろうか。

「いい子だね、大丈夫、依存性は低いから……ちょっと気持ち良くなるだけだよ」
「うぅ……」
 絶対なにかの薬物じゃんそれ!! 俺タバコも吸わないし、酒も付き合いでしか飲まないのに……。
 情けなく半べそをかきながら、見えない相手に頭を撫でられている。

 さらったり、脅してきたり、優しくしてきたり……なんなんだ一体。
 いや、さらわれて拘束されてる時点で優しくはない。

「効くまでの間、少し遊ぼうか」
 スルリと胸元の肌を、直接相手の指が撫でた。ギョッとした、もしかして俺服着てない!?
 いや、裸の感覚はない……背中や腕にもワイシャツの感触がある。前だけはだけさせられてるんだ……なんのために!?

「洸也、筋肉が落ちてるんじゃない? 体に悪い生活をしてるから」
 誘拐犯が俺の健康状態を気にする理由ってなんだ? もしかして売り飛ばされる!? 臓器抜かれる!? いや、でも殺さないって言ってたし!
 もしかして、自分たちは殺さないけど、売り飛ばした先では知らないって意味だったら……?

 殺されるかもしれないという恐怖が、自分の中で復活する。
 怖くて体を強張らせていたら、急に乳首をギュッとつままれた。
「ヒッ!」
「ここはどう? 痛い? 気持ちいい? くすぐったい?」
「や、やめっ……!」
 指先で弾いて、こね回されて……怖すぎて何も感じねぇよ! 強いて言うなら痛い!

「質問をしているんだけど」
「痛い……です」
「そう、じゃあ指はだめだね」
 頭の上から声がしていた気配が、自分の下半身に移動していく。

 っていうか、これ普通の後部座席とかじゃないな……シートを倒してベッドみたいにしてある?
 俺が乗ってる軽の座席なんかとは、比べ物にもならない広さと、シートの柔らかさと弾力性。皮の臭いもするし、もしかして高級車なのか?

 俺のせんべい布団より遥かに気持ちいい。
 車のくせになんて贅沢な! なんて思っていたら、急に股間を掴まれた!
「――ッ!!!!!」
「さすがに反応しないね」
 パンツごとズボンを下ろされて、自分のモノが外気に晒される。
 今ベルトやチャックを開ける動作が無かったぞ!? 最初からズボンのチャックが開けられていた? もしかして身代金目的じゃなく、俺の体が目当て……?

 こんな恐ろしい状況で自分の急所を触られているのに、ムスコが反応するはずもない。しかも相手は男だ。
 フニフニと手で弄ばれて、緊張で腰が引ける。
 湿っていて生温かいものが、自分の腹から上へと這い上がってきた。舐められてる! ぞわわっと鳥肌が立って、正直気持ち悪い。
 しかし、ここで気持ち悪いなんて反応をすれば、機嫌を損ねて殺されるかもしれない。

 相手の機嫌を損ねない反応も分からず、ただ耐えるようにその行為を受け入れていると、相手の舌先は先ほど指でいじっていた乳首まで到達した。
 舌の中心で舐められて、口に含まれて……舌先で転がされると、ピリピリと体に走る感覚に思わず体がもぞりと動く。

 変わらず俺の下半身は手で弄られ続けていて、さすがに性的に触られている感覚に、下半身に血液が集まっていく。

「勃ったね」
 バカにするように笑われて、羞恥心で頭が沸騰しそうだった。
「も……やめ……」
「気持ちいいよね? 楽しもうよ……もうすぐ薬も効いてくるよ?」
 指で上下にしごかれた俺のモノは、俺の意に反してゆるゆると勃ち上がっていく。
「うぅぅっ……」

 ひどい辱めを受けている。
 泣きたくなるような気分の中、半勃ちになった俺のそれは生暖かくてぬめる何かに包まれた。
「んッ!??」
 これってもしかして、いや、もしかしなくても……男にフェラチオされてる!

 歴代の彼女にも嫌がられて、片手で数えるほどしかしてもらった経験がないアレを、男に!!
 絶対に気持ちよくなるものかと、心では思っていたとしても、不可抗力なほど体が快感を感じていく。

「んん~~っ!」
 不服だけど気持ちいい! 少なくとも今までしてもらった中で、一番きもちいいなんて……。
 同じ男同士だからツボが分かるのか!? せめて若くて可愛い見た目だったら、俺の心は救われる気がする。

 声は若いような気がしたけど……いや、こんな金持ちっぽい車に乗ってて、若くて可愛いなんてないだろ……ないない。
 そんなの、男も女も食い放題だ。わざわざ犯罪を犯してまで、俺なんかを拉致してやる事じゃない。

 つまり声は若い風のオッサンか、すげぇブサ男なのか……うぅ、死にたくなってきた。

 もし、もし生きて解放されたならば……示談金をたんまりぶんどって、あのブラックな会社を辞めてやろう。
 そんな、現実逃避をしていたら裏筋を舐められて、体がビクビクッと跳ねた。

 こんなに丹念に男のモノを舐めてくるなんて、余程好きなんだろう……。自分が同性のそれを咥えるところなんて、想像しただけで吐き気がしそうだ。

 そんなに俺のが好きなら、せめて満足してもらえるように精一杯腰でも振ろうじゃないか。だから、生きて帰してほしいし、できれば記憶を抹消して、示談金をたんまり寄越してほしい……!

「興奮してる?」
「くっ……!」
 声は良い……この声が喘ぐなら、意外とイけそうな気もしてきた。

「そろそろ効いてきたかな?」
 ブチュッと音がして、俺の股間に冷たい何かがぼたぼたと落ちてきた。
 ビックリして体がビクンッと反応すると、俺の股の間にいる人物は、楽しそうに笑っている。

 あーもう、好きにしてくれ。
 そんな自暴自棄な感情が芽生えたところで、自分のサオに塗り込められると思っていた、粘着質な液体は、その男の指によって俺の尻に塗りつけられた……。
「ヒッ!? イヤだ、やめろ!」
 ウソだろ! そっちかよ! さすがに尻の危機では黙っていられない!

 本当は蹴り飛ばしてでも逃げたい……が、この状況でそんな事をしても逃げ場はない。最悪ドアから外に放り出されて、人生終了だ。
 せめてもの抵抗で、上へと這い上がったとたん。

 パンッ

 頬に衝撃。
 最初は驚いて呆けた、しかし次に襲ってきた感覚は燃えるような痛さ。

「――痛っ!!」

 自然と涙が出てくるほど痛い! なんだこれ、まるで鞭で打たれたみたいだ! 平手打ちってこんなに痛かったか!?
「逃げるなよ」
 まただ、またあのドスの効いた声……一瞬楽観的になっていた俺の思考は、一気に恐怖へと引き戻された。

 無遠慮に俺の尻穴をグリグリと触ってきた指は、躊躇なく中へと入ってきた。
「――ッ!!」
 気持ち悪い! 痛い! 気持ち悪い!!
 完全に勃ち上がっていた俺のモノは、恐怖で縮み上がった。

「もっと力抜かないと痛いよ?」
「ううううっっ……!」
 入ってきた異物を押し出そうと力を入れた途端、その指はさらに奥へと侵入してきた。
「ああッ!?」
「すごい、今の上手だよ」
『なんだ、もうヤッてんのかよ』

 その声に心臓が跳ね上がった。
 アイツだ! 俺のことを眠らせた実行犯!
 やっぱり一緒に居たのか。
『あまり喘がせんなよ、気になって運転に集中できないだろ』
『うるさいな、音楽でもかけてろよ』

 英語で会話されて、話の内容は早口で単語しか分からなかった。しかし、俺に相対してる相手が、少し不機嫌になったのはわかった。

 突然かなりの音量で、ダンスミュージックが流れ始めた。
 こんな状況で音楽かけろってか!? クラブでヤってるようなノリで犯されるなんて……俺、パリピ文化圏の人間じゃないのに!

 指を出し入れされる異物感に、肩で息をした。
 これは性的興奮じゃない、恐怖と緊張だ……! そう自分に言い聞かせているのに、甘い痺れが体を襲ってくる。

 しかも、目の前にいる奴はさらに指を増やしてきて……!?
「も……やめて……っアッ!?」
 一瞬、下腹部から電撃のように快感が走った。
 なんだ、今のっ!?

「あっ、あっ、あッ! んんんんっ、やっ……!」
「ここ、気持ちいい?」
 音楽に合わせて、ぐちゅぐちゅと水音が聞こえる。その動きはさっき反応したところを的確に狙ってきていて、声が抑えられない! 嫌だ……尻で感じるなんて!

「んぅぅぅうう! うっ、う゛っ、うぅっ!」
 必死の抵抗で下唇を噛んだ。尻に指を突っ込まれて、気持ちよくなるものか……!
 気持ちはそう思っていても、体はビクビクと快感を享受する。なんとか抵抗する意思を保っていたのに、俺のモノはまた生暖かい口内に包まれた。

 あぁ、俺……勃ってたのか。

 一気に男としての矜持が崩れる気がした。
 指の動きと、口を上下される動きが連動して、バックミュージックにノせられるように、俺の腰はヘコヘコと上下する。
「んっ、ふ……ぅっ、んんっ! んうっ」
 あ、やばい……気持ちいい、外から内から気持ちいところを同時に責め立てられて、脳みそが溶けていくような感覚だ。

 もういい、気持ちいい事だけ考えたい……!
「んっ、んぁ……ッ! あっ、あ゛っ! ひぁッ……!」
「気持ちよさそうだね」
 恍惚とした声が耳に入る。その優しい柔らかい声に、背筋がゾクゾクした……先ほどの冷たくて怖い声と比べてしまって、優しくされているような錯覚を起こす。

 中を激しく擦られながら、前の性器を手で扱かれたらもう抗えなかった。
 前も後ろもいやらしい水音でぐちゃぐちゃで、俺は抵抗するという考えをやめた。
 
「イッ……うっ、ひもちいぃ……ふぁッ! 出る、でるうぅぁ!」
 頭の中がヂカヂカする! なんかくる! なんかきちゃう!
「んんうああああっ! イぐうッ! あ゛ぁぁっ!」
 目の前が真っ白になって、足がつりそうな程下半身が痙攣して、自分の腹に自分の出したものがかかる。
 絶頂感は自分で扱いて達するときとは桁違いだ……あぁ、俺の体おかしくなっちゃった。
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