魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン

文字の大きさ
2 / 4

2

しおりを挟む
「あ~、わりィな。大丈夫か?」

 遥か上の方から声が下りてくる。ちょっと言葉が乱暴だけど優しさを含んだ、ずっと聞いていたくなるような声だ。

「あ、全然大丈夫です。むしろ大声出しちゃってすみません」
「いや、こっちが悪かった」
 
 お互いにぺこぺこと謝り倒し、強面なのに腰が低いんだなぁとこちらも謝りながら、腰を折る魚人の姿をちらりと見た。
 その隣りでルシュールカが声を上げた。

「あれぇ?よく見たらアグーラじゃん!やっほ~」
「あァ?なんだルシュールカじゃねぇか。もう酔っぱらってんのか」
「酔ってないんだよね~これが」
「酔っ払いはみんなそう言うぞ」

 アハハ~と陽気に笑いながら受け答えするルシュールカ。仲の良さそうな2人を見て、もしかしてルシュールカの最近出来た彼氏かな?と予想をつけた。

「もしかしてルシュールカの彼氏?」
「違うよ~!そもそもアグーラはサメ魚人だし。あたしの彼氏はもっと優しくて素敵な人魚なんだから~」
「オイ、俺も優しくて素敵だろーが」
 
 軽口を叩くアグーラ。

 その下半身をみると確かに足が生えているから人魚ではなさそうだ。
 
「このサメとはね~、幼馴染ってヤツなんだよね」

 ぺちぺち、とアグーラの広くて分厚い背中を叩く。

 上半身裸のアグーラの背中には尾びれが生えて、首筋にはエラがあって時折動いている。それ以外、ぱっと見はそこら辺にいる人族の男と変わらないようだ。
 
 あ、でもよく見たら掌がすごく大きくて指の間に水かきがある。

「アグーラ!こっちは人族のスーシャだよ~。海辺で干からびて死にそうになってた所を助けてもらって仲良くなったの」
「へー人族か。俺はサメ魚人のアグーラだ」
「スーシャです。よろしく」

 人族と聞いても特に物珍しそうな視線が来るわけでもなく、普通に接してくるアグーラ。

 それどころか、じっと視線を合わせて見つめてくる。その眼には熱が篭っているかのように感じ、耐えられなくなって視線を自分から外した。

 なんでこんな初心な生娘みたいな反応しちゃったの私っ!

 私は経験値の高い大人なはずで、それ相応の対応を取りたかったのに真逆の反応をしてしまった。顔が熱くなっているのがわかったが、さっき飲んだお酒のアルコールのせいにして、まだグラスに残ったお酒を一気に呷った。
 
 
「さっきの詫びに奢ってやるよ」
「やったー!タダで飲む酒はおいし~よね~」
 
 ルシュールカが飛び跳ねて喜ぶ。
 アグーラは、お前には言ってねェとは口で言いながらマスターに同じお酒を3つ頼んでいた。

 ルシュールカとスーシャへ奢りだとショットグラスを渡す。

 Salud乾杯
 
 アグーラはそう言って渡してきたものと同じショットグラスを私たちの目の前に掲げ、その中に注がれたキラキラと白く輝く液体を呷る。
 
「「 Salud乾杯!」」
 
 ルシュールカと同時にくいっと一気に飲んだ瞬間、意識がくらりと傾いた。かなり酒精が強い。
 
「うっ、わっ……ナニこれぇ~!喉がビリビリするっ」
 
 ルシュールカが舌を出しながら喉元を手で抑え込む。

「ククッ。お子ちゃまにはまだ早かったか?」
 
 ニヤニヤと意地の悪い顔をルシュールカに向けていた。
 
「はぁ~?こんくらいよゆうだしっ。マスター!同じモノ3つっ!」
「ルシュールカやめときなよ~」
 
 制止も聞かずに2杯目を呷ったルシュールカはもうすでに呂律が回らなくなっていた。
 
「よぉし~。もっかいのむ!」
「やめときなって」
 
 そういう私ももう頭はクラクラだ。ふらふらと身体を揺すりながら赤い顔してルシュールカは幼馴染のアグーラに絡みに行く。
 
「アグーラ~今かのじょいいないよね?スーシャはどう?かわいいでしょ」
「ああ可愛いな、マジでタイプだ」

 スッと目尻が伸びた三白眼に真っ直ぐ射抜かれて、ドキッと心臓が音を立てた。

「ふたりともフリーなんだからつきあっちゃえばいいじゃーん!そしたらまだまだスーシャと一緒にいられるし~」
「あたし誰とも付き合う気ないよ。1人でいたいんだってば」
「誰とも番わないのか?」

 アグーラが私に聞いてきた。

「番……旦那さんはいらないかなぁ」
「ふーん、そうか……」
 
 ふと、静かになったルシュールカの方を見ると、彼女はいつの間にか完全に潰れてカウンターテーブルに上半身突っ伏していた。

「え?!ルシュールカっ!」
「あー、完全に潰れたなこれは」

 肩をゆするも全く起きる気配がない。潰れるの早すぎるでしょ。まだまだ話したいことたくさんあったのに。
 
 
 
「ルシュールカの彼氏に迎えを頼んだ。お前はどうすんだ?」
「私1人じゃ帰れもしないし………、朝までここで飲むかなぁ」
 
 ここにはルシュールカの背中に乗って海を渡って来たのだ。まだ大分明るい時間だったのに、海の真ん中を渡っている時は海の底が見えずに暗く、1人ではとても泳げないと恐怖を感じてしまったくらいだ。

 そんなことを考えていると、アグーラにそっと手を取られ、指を絡められてぎゅっと恋人繋ぎされた。その手をゆっくりと彼の口元へと運ばれて、アグーラは私の手の甲にちゅっ、と優しくキスをした。

 パクッと私の指を彼の口に入れられて、思わず手を引こうとしたが全く動かせない。アグーラは全く力は入れていなさそうなのに1ミリも動かないので、魚人族の強靭な力の差を感じた。

 あぐあぐと甘咬みされる。尖った歯が指にあたりそのまま咬みちぎられてしまうんじゃないかと一瞬怖くなった。しかし、それ以上歯を立ててこないことからその気はないのだと分かり、恐怖心はすぐに落ち着いた。

 アグーラのこちらを見つめる両眼は分かりやすく例えるならば猫目みたいだといえばわかるだろうか。とにかく常人の、いつも見慣れている人族のものとは違っていた。
 
 鋭く射抜くように両眼で捕らえられると、もう逃げられないような感覚に陥った。腰がすくんで身体が麻痺してしまったように動かせない。

 彼の凶悪とも言える両眼の奥を覗くとそこには情欲の熱がこもっているのがわかった。
 
「なァ、俺とどうだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獅子の最愛〜獣人団長の執着〜

水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。 目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。 女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。 素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。 謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は… ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。

【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした

あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。 しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。 お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。 私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。 【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】 ーーーーー 小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。 内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。 ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が 作者の感想です|ω・`) また場面で名前が変わるので気を付けてください

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...