上 下
2 / 4

中編~乳首責めから手コキに至るまで~

しおりを挟む
「……すごい……」

 光に吸い寄せられる虫みたいに、倉持がふらふらと立ち上がる。一瞬ぎゅっと目を閉じた。触られる、と思ったからだ。けれど予想に反して倉持は、いつまで経っても俺の乳首に指一本触れやしない。

「……? ……!?」

 恐る恐る目を開いて、飛び込んできた光景に目を疑った。俺の胸板から五センチの位置、中腰の倉持が俺の乳首をガン見している。

「もしもし、誠太郎くん。何をしておられるのかな」
「はぁあ……だってこんな……まずは目に焼き付けておかないと、こんな乳首……」
「こんな乳首……」

 無意識に復唱してしまった。褒め言葉のつもりなんだろうが、やなフレーズだ。どうしていいかわからないまま、とりあえず棒立ちで倉持の視線を浴びる。

「ああ……いい……いいです、すごくいいです、やっぱり……。存在感があるのに大きすぎなくて、色も濃すぎないのに鮮やかで、華があるのに肌に馴染んでいて、乳輪にも突起部分にも、シワひとつ寄ってない瑞々しさで……ああ、至近距離で見ると、左側だけちょっと陥没気味なのがはっきりわかりますね」
「わ、悪いか。理想の乳首的にはマイナスポイントか」
「いえ、陥没には陥没の良さがありますから。むしろ一組でノーマルと陥没の両方を味わえるなんて、こんなにお得なことはないです」
「人の乳首を損得で語るな」

 真顔で突っ込む俺の顔を見もせずに、倉持は乳首の前でうっとりと目を細めている。くそ。俺が許可したこととはいえ、よくもまあ遠慮なく観察しやがって。今まで気にしたこともなかった陥没を、今後はやけに意識してしまいそうだ。

「はぁ、たまんねえ……ちょっと、恥ずかしい話なんですけど」
「今までの流れの中に恥ずかしくない話なんざ一つもなかったが、とりあえず、なんだよ」
「あの、今まで俺、乳首と女性のおっぱいは一体のものだって固定概念を持ってたんですよね。つまりは俺の乳首好きも、いわゆるおっぱい星人の一種なんじゃないかって」
「はあ」
「でもこうして先輩の乳首を拝見して、改めてそういうことじゃなかったんだなって気づかされました。俺が好きなのはおっぱいじゃなく、乳首だ。豊饒な山の頂ではなく、平坦な荒野に凛と咲くからこそ、より際立つ美しさもあるんだって。今俺は天啓を受けた気分です」
「人の胸部を荒野呼ばわりするな」

 ほんとに、なんなんだこいつは。普段は饒舌ってわけでもないのに、乳首のことを語らせると熱量が凄まじい。これがいわゆるオタクの早口ってやつなのか。好きな人にこんなこと思うのもなんだけど、あんまり関わりたくないです。などと考えている俺の気も知らず。

「じゃあ……まずは、触らせてもらいます、ね」
「おっ、おう」

 一本突き立った倉持の人差し指が、まずは右の乳首に近づいてくる。直視するには恥ずかしく、さりとて目を閉じればその瞬間がより怖い。なんだこれ、注射か。結局中途半端に目をそらし続けている内に、指の腹がぺとりと先端に当たった。

「ぅひっ」
「はぁあ……っ!」

 倉持が感嘆に身を震わせたのが、乳首を通して俺にまで伝わってくる。やめろ。興奮のせいか倉持の指はほんのりと汗ばんでいて、吸い合うような感触が余計に居心地悪い。なのに倉持はさっきまでの早口はどうしたってくらい押し黙ってしまった。沈黙に耐えきれず、俺の方から尋ねてしまう。

「ど、どうよ」
「……凄い。凄いっす」

 倉持は重々しく口を開いた。瞳孔がかっ開いている。怖い。

「弾力があって瑞々しくて、グミの実、いや、この世のどこにも存在しない天国の果物みたいです。比較対照は自分のしかないけど、それでもこの感触が極上だってことはわかります」
「自分の……? って、ああ、そっか……」
「くっきりした境界も、無毛の肉感も、マジでもう、夢にまで見た理想の乳首だ……触り心地までこんなに最高だなんて、まさに夢にも思ってませんでした。もう俺このまま死んでもいいです」
「それは俺が非常に困るからやめてくれ」

 俺のツッコミを聞いているのかいないのか、倉持はうっとりと俺の右乳首をいじり回し続けている。乳首を褒め称えられながら、乳首を指で転がされる。あまりにも落ち着かない。当たり前のことだが、そこにばかり意識が向いてしまう。ちょっとまずいかもしれない。

「っ、なあ、そっちばっかりじゃなくて、左の方は。セットでお得なんじゃなかったのか」
「ああ、そうでしたそうでした。右側だけで頭吹っ飛んでたのに、この上左まで……ああっ」

 身悶えする倉持、ほんとこいつこんな奴だったっけ。俺の知らない奴みたいだ。でもこんな変態としか言えない行動に出ているときですら、下がった眉も恍惚とした瞳も全部がかっこいいんだから反則だ。

「そしたら左側、失礼しますっ」
「おー……、っあ!」

 やや埋まり気味の乳頭に、まずは表面をさらうように触れられる。あ、ヤバい。察して止めるより前に、倉持の指が乳輪をくるりと撫でる。
 乳首という部位の生理的な反応として、触られりゃ硬くなるってのがある。本来の目的からして当然の反応ではあるが、そうなると物理的な理屈として、埋まってたもんは飛び出てくるわけで。そして今まで外気に晒されてなかったってことは、即ち刺激に敏感になってるってことでもあるわけで。

「ひぅ……っ!」
「あぁっ」

 そういうわけで俺の口からは、不覚にも盛大な喘ぎが漏れた。同時になぜか倉持も声を上げる。持ち主の意に添わない不埒な乳首は、内部からぷるんと飛び出たのち僅かに揺れている。

「そ、そっち、あんま触んなっ」
「え、なんでですか!?」
「なんでもクソも、わかんだろっ、今の声聞きゃ!」
「わかんないですよ! 乳首触られて喘ぐ先輩、めちゃくちゃ良いじゃないですか!」
「良……っ」

 まっすぐな瞳で(その視線はもちろんまっすぐ乳首に注がれているわけだが)そんなことを言われちゃ、俺の方が弱い。少なくとも気持ち悪いとは思われなかったってことだ。理想の乳首になぜか付属している汚いおっさんが、聞きたくもない喘ぎ声を上げやがった、とは思ってないってことだ。いやさすがにそれは自分を卑下しすぎか。

「だって、ほら、先輩の乳首だって喜んでくれてますよ」
「ひっ! だ、だからっ……んんっ!」
「ああ、やっぱ、普段隠れてる分敏感なんですね……可愛い」
「……っ!」

 可愛い。その言葉を聞いた途端、脳にぱしっと電流が走る。いや、おかしい。何喜んでんだ俺は。男が男に乳首を引っ掻かれて、揺らされて、喘いで、そんな様が可愛いなんてどうかしてる。異様なシチュエーションで頭がおかしくなってきてるんだ、俺も、倉持も。
 乳輪に沿って指を動かされ、仕上げとばかりに先端を優しく弾かれる。抗い切れない吐息が口元から零れて、思わず口を押さえた。

「ああ、やばい、俺、もう……し、失礼しますっ」
「!? ん、はぁっ!!」

 唐突に、倉持が俺の胸元に文字通り食いついた。温かい舌を押し付けられた乳首が、奴の口内でびくりと跳ねる。

「ちょ、おま、急にっ、んうぅっ」
「もふぁ、ああいっ、ああいっふっ」
「馬鹿っ、何言ってんだかわっかんねーよっ、んあぁっ!」

 声の振動が先っぽにダイレクトに響く。力の抜けた膝が自重を支えられずに、俺はその場に崩れ落ちた。胸元に吸いついたままの倉持も、俺を追っかけて膝をつく。

「ぷぁっ、先輩……感じやすいんですね」
「お、お前がっ……な、舐める、からっ」
「だって、舐めていいって言ったのは先輩じゃないですか」
「それはそう、だけど……」
「だったら俺も遠慮しないですよ。こっち側も……んっ」
「わひゃっ!」

 倉持の首が傾いて、今度は右乳首を舐め上げられた。またしてもバカみたいな声が出てしまうのが恥ずかしい。

「はぁっ……やっぱ、こっちはこっちで正統派の魅力が……んっ」
「んっ、うぅっ、はっあっ」

 わけのわからない独り言にも反論すらできない。どうやら倉持も少し乳首の扱いに慣れてきたようで、軽く吸い上げながら舌先で転がされると、吐息どころか喘ぎ声すら抑えられなくなってくる。

「あっ、あ、倉持……もう、ふっ、うぅんっ」
「んちゅっ……らめ、れふか?」
「はぅっ……」

 胸元の倉持が、上目遣いで俺を見上げた。心臓がきゅんとなる。ああ、畜生、顔がいい。その位置の上目遣いは反則だ。

「も、好きにしろ……ひゃうっ」
「ふっ、ありがとうごぁいまふ……んっ、ちゅっ」
「ひっ、あ……は、んっ、あぁっ♡」

 自分の頭の中に響く声がだんだんと甘ったるい色を帯びていく。こんな声を倉持に聞かせてるのか、俺は。今までささやかながら築いてきた、頼れる先輩のイメージが台無しだ。なのに止められない。乳首から染み透る快感で、頭の中までもが塗り替えられていく。
 現実を忘れたくて目を閉じる。倉持の顔が見えないけれど、奴に見惚れなくて済む分一長一短だ。

「ふっ、あっ、倉持っ……う、美味い、か?」
「はい、美味いっす……先輩の乳首、美味しい……」
「んっ、あっ♡」

 冷静さを保とうと口に出した問いは、それはそれでどうかしている内容になってしまって、もちろん倉持の答えも頭がおかしい。けれど一番狂っているのは、その答えにちょっとした喜びを覚えてしまった自分自身だ。
 そのとき、ふと倉持の動きが止まった。乳首を舌の肉に包まれたまま、恐る恐る目を開く。目線の下にある倉持の頭は、俺の胸に顔を埋める姿勢で静止している。

「倉持、どうした」
「……っ」
「倉持? ……え、おい!?」

 斜めから顔を覗き込んで、ぎょっとした。俺の乳首を口内に含んだ状態で、倉持は静かに涙を流していた。

「ど、どうした。なんで泣く」
「……すいません、先輩」

 鼻をぐすっと鳴らしながら、倉持は目だけを俺に向ける。乳首から口は離さない。その状態で喋られるのはいろんな意味で辛いのだが、それを突っ込めるような空気ではない。

「俺……こんなどうしようもない俺のことを、引かずに受け入れてもらったのって初めての経験で。それが俺とずっと一緒にいてくれた先輩だなんて、嬉しくて、なんか、感極まっちゃって……っ」
「はぁ……」
「すいませんっ……、うぅっ、先輩、ヤス先輩っ……!」

 そう言い残して倉持は、ぼろぼろと大粒の涙を零し始めた。引けばいいのか同情すればいいのか全然わかんねえ。けど好きな奴が自分の胸で泣き始めたというシチュエーションを考えれば、ここはそっと抱きしめてやるのが定石じゃなかろうか。胸っていうか乳首だけど。
 とりあえず倉持の頭を腕の中に包み込み、後ろ髪をぽんぽんと撫でてやる。

「なんか……辛かったんだな、お前も」
「先輩っ……すいません、俺、こんなっ……自分でもおかしいってわかってるんです、でも、乳首が、先輩の乳首が好きすぎてっ……!」
「うんうん。気持ちはわかるよ。俺だってお前の顔好きだもん」
「え?」
「なんでもない、乳首吸ってろっ」

 持ち上がりかけた倉持の頭を、乳首にぎゅっと押し付ける。倉持は抵抗することもなく、再び俺の乳首を吸い始めた。赤ちゃんか。そう思えば可愛く思えないことも……いや、どうだろう……。
 そっと倉持の顔を覗き見る。さっきまでの真剣さが少しほどけた、無邪気なまでに安らかな顔だ。

「うっ……」
「?」

 うっかり声が漏れてしまったのは、その顔ですら予想外に可愛かったからだ。やばい。しっかりしろ俺。自分に活を入れて背筋を伸ばす。倉持は俺の胸にしなだれかかる形で、一心不乱に乳首を吸っている。
 敏感になったしこりを、濡れた舌がころころと弄ぶ。じんじんと痺れるような熱が、割れた先っぽからじんわりと体中に滲みていく。

「んっ……くっ、ふ……ちゅっ」
「ん、はぁ……っ、く、らもち、あっ、はぁっ……♡」
「んぅ、んっ、んくっ」

 ちゅっちゅっと音を立てて吸い上げる様は、本当に赤ちゃんみたいだ。ああ、駄目だ、脳が痺れる。普段は男前なこいつの無防備な表情が、どうしようもなく愛おしく思えてしまう。なんだこれ、母性か。駄目なのに、明らかにドン引きものの行為なのに、こいつの変態嗜好に巻き込まれて、俺の頭までおかしくなってきている。

「あぁっ……んんっ、倉持っ、はんっ、あんっ♡」
「はっ……はぁ、っ、先輩……っ」

 俺の胸に張りついた倉持が、その姿勢のまま下半身をもぞもぞと動かし始めた。自然とそちらに目が行く。膝立ちになった倉持の腰部、その中心にある社会の窓部分が、ズボンの生地を突き破らんばかりに膨れ上がっている。

「っ、お前、それ……」
「っぷぁ、す、すいませんっ! 俺、童貞なんでっ」
「いや関係あるか、それ」

 腰を引いて隠そうとする倉持だが、シルエットが切り立っているのはどこから見ても明白だ。なぜか俺はそこから目が離せなかった。倉持が、俺で勃起してくれている。厳密に言えば俺じゃなくて俺の乳首にかもしれないが、今はそんなことどうでもいい。
 倉持がまたぐ形になっていた脚を引き寄せて、そっと膝を立てた。大きくなったそれに膝が触れる。倉持の体が大げさなくらいにびくんと跳ねる。

「せ、先輩っ!?」
「……嫌、か?」
「い、嫌じゃないです、全然、嫌では……ないんですけど……」

 倉持の男らしい喉仏が、動揺を飲み込むように上下した。

「いいんですか、その……し、してもらって」
「ん……だって、なんだ、お前も辛いだろ、そのままじゃ」
「それは……そうですけど、でも」
「いいから。ちょっとくらい俺にも触らせろ」
「は、はいっ……ありがとうございますっ」

 乳首と頭の位置はそのままに、倉持の体を横たわらせる。左手は倉持の後頭部に添えたまま、右手を伸ばして股間のチャックを開いた。窮屈そうに閉じ込められていた倉持のあれは、元気いっぱいにぶるんと飛び出してきた。

「……すげーな、お前の」
「あ、あんま見ないでくださいよ……恥ずかしい、です」
「なんだよ。俺だってさんざん見られたんだから、お互い様だ」
「で、でも俺、変なとことかあるかもわかんないし」
「っは、何気にしてんだ。大丈夫だよ、その……お、男前だから」

 嘘や慰めではない。初めて目のあたりにした倉持の性器は、お世辞抜きに立派なものだった。持ち主に似て均整の取れた、だけど男っぽさを感じる体格。ついついこの手で可愛がってやりたくなるのは、この場の空気に当てられているんだろうか。
 太くて長い茎の部分に、そっと指を絡ませる。

「うぁっ」

 倉持が、乳首から口を離して声を上げた。同時に手の中のものもびくんと跳ねる。さっき聞いた話からすると、こんな状態で自分以外の相手に触れられるのは恐らく初めてのはずだ。なんだか気持ちがふわふわしてくる。嬉しい。少なくとも今この瞬間は、倉持のちんこは俺だけのものだ。
 包んだ手を上下させながら、親指の腹で先端の溝をなぞる。あっ、あっと断続的に零れる倉持の声。俺の股間にある同じものにも、自然と熱が溜まり始める。

「ふふっ、倉持……いいよ、我慢すんな」
「っは、ぅっ、先輩っ……も、もう、俺、吸いたいっす、乳首吸わせてくださいっ」
「んっ、いいよ、吸って……。吸うのと一緒に俺の手で、ちんこも気持ちよくしてやるから」
「はぁっ、はっ、先ふぁいっ! んんっ!」
「あぅんっ!」

 倉持の唇が、噛みつくように俺の乳首を咥えた。彼のものを掴んだ指に知らず力がこもる。内部を血が巡る感触が、手の中にダイレクトに伝わってくる。

「は、ぅんっ、倉持っ、おっきいっ……」
「ちゅっ、ふっ、先輩っ、擦って……擦ってくださいっ……!」
「んっ、はぁっ、こ、これでいい?」
「あぁ……っ!」

 吸いつくリズムに合わせて、言われた通り手を上下させてやる。先端の割れ目から、先走りがぷくっと滲んだ。指先で絡め取り、全体になすりつけるように広げてやる。滑りのよくなった陰茎から、ちゅこちゅこと濡れた音がし始めた。

「んちゅ、くぅっ、先輩っ、ヤス先輩っ……や、康成さんっ……!」
「っ、おま、そんな、名前っ……はぅっ、あうんっ♡」
「はぁ、はぁっ、康成さんっ……ちゅ、んっ、康成さんのも、勃ってる……っ」
「え? や、ちょっ……んあぁっ!?」

 反射的に腰を逃がそうとした。倉持の片手が、俺の股間に伸びてきたからだ。散々乳首を吸われた上に、倉持の痴態まで目の当たりにした俺のペニスは、当然のように固く屹立していた。そのこと自体はもうしょうがないとして、倉持に触られるとなると話は別だ。

「やっ、やめろって、倉持っ!」
「んふぁ、なんでですか? 康成さんにも……んっ、気持ちよくなって欲しい、っく、ですよ」
「いいって、俺はっ! あと合間合間に乳首吸うのやめろ!」
「吸っていいって言ったのは……ぷぁっ、康成さんでしょ」
「だ、だからって……きゃふっ!?」

 つい漏れてしまったのは、気持ち悪いほど甲高い声だった。倉持が俺のブツを引っ張り出して、俺と同じように握り込んだからだ。先輩としてあるまじき醜態に、だが倉持は嬉しそうな笑みで俺を見上げる。

「可愛い……めちゃくちゃ可愛い声出すじゃないですか、康成さん」
「だ、誰がっ……ひゃふっ、うぁっ♡」
「乳首だけじゃなくて、ちんこも感じやすいんですね。あぁ、いい……すごくいい」
「ひゃ、めろ、ってぇっ……あぅ、あぁんっ♡♡」

 口を押さえたくても倉持の頭と股間だけで両手はいっぱいいっぱいで、自然俺の喘ぎは止めるものもないままだだ漏れになる。倉持が、倉持の手が、俺のアレを包んで扱き上げている。その事実だけでもう、嘘みたいに興奮を止められない。手コキと同時に乳首を吸い上げられると、二か所責めの快感で脳がどろどろに溶けそうだ。

「はぁ、はぁっ……や、康成さんっ、俺のっ、俺のもシコってっ」
「んぁっ、う、うんっ、はぅっ……こ、こう? んっ、倉持、いい? 気持ちいい?」
「っぐ、はっ、きも、ちいい、気持ちいいですっ、んちゅっ、あぁ、最高……っ!」
「はぁんっ、やっ、んんっ♡ お、俺もっ、いいっ、あっきもちいいっ♡♡」

 気持ちよさから逃げるように、上半身をのけぞらせる。倉持の頭と体の重みが、胸と膝にダイレクトにのしかかる。手の中でびくびく震える熱いものと、倉持に擦ってもらっている俺のもの。リズムを合わせてぬちゅぬちゅと扱きあうと、快感がシンクロしてますます高まっていく。

「はっ、あっ……、や、康成さんっ、康成さん……っ、あぁ、俺、入れたい、入れたいですっ……!」
「あんっ、あぅっ、やっ……へぇっ?」

 倉持の手が俺のブツを離れ、尻の割れ目の方へと忍び寄る。背筋にぞくぞくと鳥肌が立った。それが悪寒なのか快感なのか、それとも期待なのかすらわからない。

「ねえ、駄目、ですか? んぷっ、俺の童貞、康成さんに捧げちゃダメですか?」
「だっ……だって、おま、さすがにそれはっ……はぁんっ♡」
「お願い、お願いします、俺……何でもします、ふっ、お願い、ですからっ……!」
「んぁっ、んうぅっ♡♡」

 乳首をれろれろと舐め回しながら、そんなことを頼み込むなんて反則だ。ただでさえ断る理由なんて俺にはないってのに。ああでも、ひとつだけ確認しておかなきゃいけないことはある。

「お……お前は、俺でいいの? だって、初めてが男で、俺って……そんなの」
「いいです、嬉しいです! 先輩が俺の童貞貰ってくれたら、俺、一生の思い出にしますっ……!」
「ひゃうっ」

 倉持は真剣な表情で俺を見上げている。乳首じゃなくて、俺の目をまっすぐに。つくづく顔がいい男だ。でも例えこいつの顔がいまいちだったとしても、この目で倉持に頼み込まれた時点で、俺にとって断るなんて選択肢はありえないのだ。

「い……いいよ」
「……!」
「お前がそう言うんならしょうがねえ。倉持の……せ、誠太郎の、童貞。俺が……貰ってやるよ」
「康成さんっ……!」

 再び胸に飛び込んでくる誠太郎を、子犬を甘やかすみたいに抱きしめて撫で回す。予想外に行くところまで行ってしまった感はあるが、それでも今の俺に後悔はなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺はモブなので。

BL / 連載中 24h.ポイント:3,819pt お気に入り:6,532

隣国王子に快楽堕ちさせれた悪役令息はこの俺です

BL / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:673

獣人だらけの世界に若返り転移してしまった件

BL / 連載中 24h.ポイント:10,117pt お気に入り:2,354

番から逃げる事にしました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,493pt お気に入り:2,175

野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,579pt お気に入り:8,415

優しいおにいちゃんが実はとっても怖い魔王さまだった話

BL / 連載中 24h.ポイント:1,846pt お気に入り:2,769

お風呂でエッチな意地悪をされちゃうお話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:63

処理中です...