オメガ殿下と大罪人

ジャム

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作戦決行

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・・・夜・・・

「さぁ、作戦を開始するよ。準備はいい?」

トト「ああ」

ロト「・・・」

ロトは険しい顔をしている

「どうしたの?」

ロト「やはりやめよう」

僕・トト「え!?」

ロト「いや、レムリック王国に乗り込むのはいいんだ。作戦の見直しをしたいんだ」

「どうして?」

ロト「・・・ハルトが仮死薬を飲むのを避けたい」

トト「不安・・・だよね」

ロト「ああ。もし目を覚まさなかったら・・・そう考えると・・・怖いんだ」

ロトは俯く

「・・・大丈夫だよ!父上がくれた薬だよ?そんなはずないよ!」

ロト「でも・・・」

「大丈夫!僕は死なないよ!信じて?」

ロト「・・・」

ロトは答えなかった
不安なのは僕も同じ
でも、ここまで進めた作戦なんだ
やるしかない

騎兵団「団長!棺の用意ができました!」

トト「どうするんだ?やめるなら今だよ?」

ロト「・・・」

「ロト・・・」

ロト「・・・やろう」

トト「・・・いいの?」

ロト「ああ。ハルトが決めたことだ。俺はそれに従う」

「・・・ごめんね」

ロト「その代わり、眠る直前まで抱きしめさせてくれ」

「うん。いいよ」

僕はロトの膝に座り、薬を持つ

ロト「・・・」

抱きしめる腕が震えている

「大丈夫だよ」

腕に触れ落ち着かせる

ロト「ああ」

「じゃあ、飲むね」

僕は薬を飲んだ

トト「どのくらいで仮死状態になるんだ?」

「わからない。どんな感じで仮死するんだろう・・・」

眠るようになるのか、急にくるのか・・・

ロト「絶対に守って見せる。だから、戻って来いよ?」

「うん」

頭を撫でてくれる
手は震えているがとても温かい

「・・・」

少しずつ眠くなってくる
いや、目の前が暗くなってきた

ロト「ハルト・・・」

「大、丈夫。そんな顔、しないで?」

ロト「・・・待ってるからな」

「うん」

そして・・・僕の意識は遠のき・・・

・・・ロト視点・・・
「ハルト・・・?」

ハルト「・・・」

ハルトは返事をしない
どうやら仮死状態になったらしい

「・・・とても・・・冷たい・・・」

ハルトの身体は急激に冷たくなる
まるで本当に死んでしまったようだ

「・・・」

涙が頬を伝いハルトの頬に落ちる

「すま、ない。不安なのは、俺だけじゃない、のはわかってる・・・。でも・・・でも・・・」

仮死と言うのはわかってる
でも、本当に死んでしまったかのように見えて涙が止まらない

トト「仮死状態なのはわかるんだけど・・・本当に死んでるみたい・・・」

「ああ・・・」

冷たくなったハルトを強く抱きしめ涙を流す

「ごめん・・・ごめんな・・・お前が戻ってきたら・・・もうこんなことさせないからな・・・」

もうこんな思いはしたくない
だから、これが最後だ
必ず守る
俺の決意が更に固くなる

トト「兄さん。行こう。仮死状態がいつまで続くかわからないんだよ?」

「ああ。行こう」

ハルトを棺に寝かせて荷車に乗せた

トト「レムリック王国の近くになったら兄さんも拘束するよ」

「ああ」

そして俺たちはレムリック王国に向かった
港町からレムリック王国までの道中で何度かイシュリット兵に出会ったがトトの機転のおかげで疑われることなく通ることができた

・・・一時間後・・・
トト「やっと着いた・・・」

ようやくレムリック王国が見えた
見た目は変わってないが、雰囲気が違う
不穏な空気が流れている

「ハルトが見たら悲しむだろうな」

活気があった城下町は誰も出歩かず、イシュリット兵が巡回している

「まるで監獄だな」

トト「イシュリット国王がレムリック陛下の死、ハルト殿下の失踪を伝えレムリック王国を乗っ取ったからね。民は絶望して言うことを素直に聞いているよ。働ける者は過酷な労働を強いられ、弱い子供や老人は痛めつけられる」

「酷いな・・・」

トト「・・・急ごう。一時間たってる。いつ目を覚ますかわからない」

「そうだな。急ごう」

トトは俺に拘束具を付け、レムリック王国に入った

イシュリット兵「とまれ!何者だ・・・ロト・ブルルク!?」

トト「ああ。大罪人とハルト殿下を発見した。通してもらう」

イシュリット兵「!?ハルト殿下を見つけたのですか!?」

トト「ああ」

棺を開け確認させた

イシュリット兵「!早く謁見の間へ!王がお喜びになります!」

俺たちはあっさりレムリック王国に入ることができた

「警戒心がないな」

トト「シッ!油断はしないで。ここはもうレムリック領土じゃないんだよ」

城下町を通りレムリック城の城門の前に来た
ここは特に警備が厳しい

トト「王に謁見を。大罪人とハルト殿下を連れてきた」

イシュリット兵「・・・ほう」

イシュリット兵たちは俺と棺を確認すると

トト「・・・なんの真似だ?」

イシュリット兵「悪いな!大罪人の弟。これも命令なんだよ」

イシュリット兵たちは俺たちに剣を向けてきた

トト「命令?誰から?」

イシュリット兵「王からだよ。『もしトト・ブルルクがロト・ブルルクとハルト殿下を連れてきたら殺せ』ってな!」

トト「・・・なぜ?」

イシュリット兵「兄弟に固執しているお前が素直に兄弟を差し出すはずがないと王はおっしゃっていた」

トト「・・・俺を誰だと思ってるんだ?俺は王直属騎兵団、漆黒の終焉の団長だぞ!今すぐ王に謁見させろ!」

イシュリット兵「すみませんね~。これは王直々の命令なんだよ」

トト「チッ!話にならないな。ここで切り捨ててくれる!!」

トトも大剣を構える
それに合わせて騎兵団たちも武器を構える

イシュリット兵「王からに命令なら素直に死んでくれると思ったが・・・仕方ない。イシュリット国王の命によりここで騎兵団には死んでもらう!」

「っ!」

気が付いたら周りはたくさんのイシュリット兵に囲まれていた

トト「クッ・・・ここで終われない!」

騎兵団「ロトさん!」

騎兵団が俺の拘束具を取ってくれた

騎兵団「ハルト殿下を連れて逃げてください!」

イシュリット兵「逃がすな!!ここで仕留めるんだ!!」

イシュリット兵は一斉に襲い掛かってきた

トト「っ!!この人数はきついな・・・」

騎兵団「団長!この数を相手にできませんよ!」

「はぁぁ!!」

イシュリット兵「グハッ!」

「諦めるな!一人ずつ確実に仕留めるんだ!」

イシュリット兵「無駄だ!」

イシュリット兵たちがハルトの眠り棺に刃を向ける

「それに触るな!!」

イシュリット兵を切りつけるがきりがない

騎兵団「ガハッ!」

騎兵団たちも次々にやられていく

トト「ぐっ!このぉぉぉ!!」

トトも傷ついていく

・・・残ったのは俺とトトだけになってしまった

イシュリット兵「いい加減諦めろ」

トト「はぁはぁはぁ・・・」

「はぁはぁはぁ・・・」

棺を守りながら自分も守り、尚且つ敵を倒す
その繰り返しで俺たちは疲弊していた

イシュリット兵「とどめだ。やれ!!!」

それを合図に一斉に襲い掛かってきた
俺もトトも死を覚悟したその時

トト「っ!?なんだ!?」

「っ!?」

棺から眩しい光があふれ大爆発した
光が消え目を開けると

トト「なんだ・・・これ・・・」

「これは・・・氷?」

周りは氷だらけになっていた
氷の刃がイシュリット兵たちを貫いていた

???「ふわ~~・・・まったく・・・寝起きで魔法を使わせないでよ・・・」

「!?ハルト!!」

ハルトが右手に冷気を纏いながら大あくびをしていた

トト「すげぇ・・・これが魔法か・・・」

トトは氷に触れて感心している

ハルト「ごめんね・・・救えなかったね」

ハルトは倒れている騎兵団を見て呟いた

ハルト「・・・これが終わったらちゃんと弔うから・・・それまでここで我慢してね」

手を合わせレムリック城に向き合った

ハルト「・・・行こう。ここで立ち止まるわけにはいかない」

トト「ああ!」

「おう!」

俺たちはレムリック城に潜入した
そしてイシュリット国王がいるであろう謁見の間に向かった・・・
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