オメガ殿下と大罪人

ジャム

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夜を待つ間・・・

トト「・・・」

「・・・」

俺とトトは何を話すわけでもないのに傍に居た

トト「に、兄さん?」

「な、なんだ?」

ぎこちない会話しかできない
さっきはお互いに罵倒しあっていたのに・・・

トト「その・・・あの・・・さっきは・・・」

「あ、ああ・・・」

トト「・・・」

「・・・」

お互い何を言ったらいいかわからない
何年も疎遠・・・と言うのか・・・
会わなかったからな・・・

ハルト「わぁ~!すごい!」

騎兵団「こんなのどうってことありませんよ!ほっ!ほっ!」

騎兵団の一人がナイフを数本使ってジャグリングをしている
ハルトはそれを楽しそうに見ている

トト「兄さんは・・・ハルト殿下と・・・付き合ってるの?」

「ああ・・・」

トト「ふ、ふ~ん・・・。ちゃんと幸せにできるの?」

「できるか・・・わからない」

トト「おいおい・・・。ハルト殿下を幸せにしないと俺たちの幸せも危ういんだが・・・」

「そう・・・だよな」

トト「まぁ・・・兄さんは不器用だけど、優しいから。大丈夫だと思う」

「そ、そうか?」

トト「う、うん・・・」

また沈黙が訪れた

トト「・・・さっきは・・・ごめん」

「え?」

トト「兄さんの事やハルト殿下の事・・・悪く言ったし」

「気にするな。お前も苦しんでたわけだし」

トト「でも、父さんや母さんの事で恨んでたのは本当だよ」

「・・・すまない」

トト「・・・実は母さんに言われてたことがあるんだよね」

「ん?なんだ?」

トト「『お兄ちゃんを恨まないで』って」

「え・・・?」

トト「兄さんはきっと苦しんでいるからって。恨まないでって。でも、無理だった。報告で兄さんの事は聞いてたんだよ。地下牢に幽閉されていたこともハルト殿下の付き人になったことも・・・夜、夜な夜なお楽しみをしていることも。それが羨ましかった。俺はこんな苦しんでいるのにって。俺だって兄さんと・・・一緒に過ごしたかった・・・」

「トト・・・」

トト「大罪人になっても・・・周りからどんな扱いを受けても・・・兄さんは家族だから。完全に恨むことはできなかった。そんな自分が嫌だったんだ」

「すまない・・・」

トト「でも、ハルト殿下に説き伏せられて思った。あ~・・・俺、間違ってなかったって!」

トトは昔・・・遥か昔に見たことがある明るい笑顔で俺を見てきた

トト「俺!兄さんを殺さなくてよかった!ハルト殿下が生きててよかった!これからは俺も一緒にハルト殿下を守る!」

「・・・ああ!頼んだぞ!」

お互いに手を握る
この手から信頼を感じる
昔に戻れるとは思っていない
でも、これから償っていけばいいんだ
そう思ってる

ハルト「ロト!トト!」

トト・俺「ん?」

ハルト「二人ってそっくりだよね?」

「そうか?」

トト「そんなことないよ~」

ハルト「そっくりだよ!笑顔なんて瓜二つ!かっこいい!」

「ハ、ハルト!?」

トト「フフッ!殿下?その言葉はこの馬鹿兄にだけ言ってあげてね?やきもち焼くから!」

「トト!?な、なに言ってるんだ!?」

ハルト「アハハ!面白い!」

ハルトはそういい俺の隣に腰を下ろした

ハルト「・・・夜になったら作戦開始だね」

「今のうちに休んでおけ」

トト「そうだよ。きっと大変な夜になるからね」

ハルト「大丈夫!夜になったら嫌でも寝るから!」

そういい仮死薬を見せてきた

「不吉なことを言う・・・」

トト「でも、効果時間とかは?」

ハルト「・・・どうなんだろう?」

「え・・・知らないのかよ」

ハルト「2時間くらいってことだけど、確証はないんだよね・・・」

トト「・・・まぁ・・・短くはないし・・・行ける!きっと!」

「まぁ、目を覚ますまで俺が守って見せる!だから安心しろ!」

ハルト「・・・うん!頼りにしてるね!」

トト「まぁ、それはそれとして。少し休んでおいた方がいい」

ハルト「・・・じゃあそうするね!」

そういい俺の膝に頭を乗せて眠りにつく

「・・・お前、なんかさっきと違うな」

トト「ん?そう?」

「ああ。なんか優しいというか軽いというか」

トト「・・・俺は騎兵団長として厳しく・・・何より復讐のために生きてた。でも、ハルト殿下に出会ったからかな。なんか、恨みとかなくなった!」

「・・・そうか!」

騎兵団「団長!」

トト「ん?」

騎兵団「港町に居るイシュリット兵はどうしますか?」

トト「ハルト殿下と兄さんがいることはまだ知らない?」

騎兵団「はい。まだ知られてません」

トト「なら、そのままで。知られると厄介だからね」

騎兵団「了解です!」

「お前、ホントに団長なんだな」

トト「まぁね~無駄に泥水すすってこなかったからね!」

「・・・すまない」

トト「・・・もし、本当にすまないと思ってるなら、イシュリット国王を止めてよ」

「・・・」

トト「あの人の目的はわからない。でも、きっと理由がある。いや、理由がないとおかしい」

「止めるのは俺じゃない。ハルトだ」

トト「ハルト殿下・・・」

ハルトは寝息を立てている

トト「どうか・・・王を止めてください。お願いします」

そう囁くとトトはどこかへ行ってしまった
トトはトトなりにイシュリット国王へ忠誠を誓っていたのだろう

「・・・ハルト。早く解決しような」

俺も目を瞑り眠りについた・・・
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