Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
43 / 97
第三章 《第一部》ヒーラー 愛の逃避行篇

第41話 「ミスタリス王国陥落2」【エルザ視点】

しおりを挟む
レイラが死んだ。私はどうしたらいい……。
教えてくれアスフィ…………『』なら……。

「エルザちゃん!ここに…………そうか」

城の前でレイラを抱え竦んでいる私の前に、パパがやってきた。どうやらパパは全部を察したみたいだ。
パパ……私はどうしたらいいの。

「……エルザちゃん、彼女のことは残念だ。だけどね、エルザちゃん。パパもピンチなんだ。助けてくれないか?このままではミスタリスが落ちる」

「…………パパ……私……」

「………気持ちは分かる。私はエルザちゃんより冒険者歴が長い。このような経験は何度もしてきた。だからパパはあえてこう言うよ――」

「立て、エルザスタイリッシュ。そなたはまだやるべき事があるはずだ!レイラ・セレスティアの為にも!!」

パパが初めて私をエルザと呼び捨ててで呼んだ。
もしかすると、初めてでは無いかもしれない。だがこんな顔で言われたのは初めてだ。

そうだ。まだこのまま……負けたままではいられない。
私達は大事な友達を……民を……『宝』を奪われた。
奪われたままでは終わらせない……!

ありがとう、パパ。立ち上がる勇気をくれて。

やっぱり私のパパだ。私はまだまだ子供だ。

「……パパ、もう少しだけ待ってて貰える?私、レイラを寝かせてあげなくちゃ。こんな冷たい所に寝かせるのは可哀想なの」

「……ああ、そうしてやりなさい」

私は城の中へと戻った。

***

中にはまだ『やつら』の残党がいた。

「邪魔だァァァァァァァァァァァァァァァ」

私は両手でレイラを抱き抱えながら、斬っていく。
刀を口に咥え、ただただ斬って前進する。

(レイラ、少し揺れるが、我慢してくれ……)

私はアスフィとレイラの部屋へと走った。
何度も何度も立ち塞がる敵を斬りながら前へ進んだ。
そして辿り着いた。アスフィとレイラの部屋だ。

「………はぁ……はぁ………着いたぞ、レイラ……」

レイラの血がポタポタと滴っている。

「………………レイラ、おやすみ。友よ」

私はレイラをベッドに寝かせた。
これでレイラは安からに眠れることだろう。
笑っている……きっといい夢でも見ているのだろう。

(そうだ、アスフィに手紙を書こう)

私は手紙を書く事にした。

「……手紙など、久しぶりだ。なんて書こうか」

まずは敵の情報だ!そしてこのミスタリスに起きた事、その現状……それと……

「あああああああああああくそぉぉぉぉぉぉぉ!!」

分からない!なんて書けばいいのか分からない……!
君の大事な人を死なせた……?本当にすまない……?

どれも間違っていない。書きたいこと、言いたい事は沢山ある。しかし、私はこの国の王。王がすべき事は国を守る事だ。

民は大勢死んだ。しかしまだ、生き残っている者も居る。
なら私はその者達を守る義務がある……!

「…………なんて……ただの見栄だな」

それでも、どうしても謝りたい。そして、あわよくば助けに――

……
…………
………………

使い鳥を呼び、足に手紙を括りつけた。

「……頼んだぞ、渡す相手はフォレスティアに住む、王子キャルロットだ。最速で頼む」

使い鳥は物凄い速さで飛んで行った。

(さて……私はパパの元にいかなければ)

私は城を出た。パパと賊のリーダーらしき男が戦っていた。
黒いフードを被っていて顔がよく見えない。

その手には剣を持っていた。剣士だ。

パパが必死に戦っている……。

「はぁ……はぁ……」

「どうやら、お疲れのようだなエルフォード・スタイリッシュよ」

「……私はな……だがここからは親子一緒に戦うことにしよう」

「なに……!?エルザ・スタイリッシュ!?」  

こいつが今回の首謀者?生かしては置けない。

「待たせてごめんね、パパ。コイツは私がやる。下がってて」

「……エルザちゃん、ごめんよ」 

「……うん、任せてパパ」

パパはボロボロだった。左手はちぎれかかっていて、今にも落ちそうだ。体中、血で滲んでいた。

(パパ……ありがとう。ここからは私に任せて休んでてね)

「……エルザ・スタイリッシュ。通称『狂人のエルザ』。幼少の頃からS級冒険者になることが確定され、冒険者になったばかりにも関わらずその名を知らぬ者は居ない。……お前と戦えることを誇りに思うぞ。エルブレイドの孫よ。はっはっは!」

「…………よく喋るな。お前たちは何者だ」

「……私達は『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』」

「…… 『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』……そうかやはりお前達がそうなのか」

(アスフィに宛てた手紙には記しておいたが、どうやら正解だったようだな)

パパからその名前を聞いたことがある。パパも昔、現役の冒険者でパーティを組んでいた時、ダンジョンでコイツらに襲われたことがあったと聞いた。

まさかそんな連中がくるとは。

「お前たちの目的はなんだ」

「目的は既に達成した……」

「……レイラか」

レイラを殺すのがこいつらの目的。
なぜ、レイラなのだ。あいつが何をしたというのだ。

「……だが、俺は決めた。ターゲットは始末した。裏切り者の血族には相応しい死だっただろう。任務は達成した。しかし、俺はこの国を徹底的に潰すことに決めた」

「……なに?」

「『狂人のエルザ』よ。貴様が生きていてはいずれ、俺達の計画の障害になりそうだ。よってこの国と共に死んでもらう。貴様にもしこの先『子』でも遺されたら面倒だ」

「……それは安心しろ。私のお腹にまだ『子』は居ない。未来の旦那は既に決めてあるんでな」

「……そうか。だが、貴様を殺すことに変わりは無い。エルブレイドの孫である以上、早めにその才能の芽を摘んでおくに越したことは無いからな」

「ならやってみるがいい。この恵まれた才能の芽やらを存分に味あわせてやる」

私だって貴様らを許すわけが無い。
友を殺されたのだ。どこへ逃げようとも追いかけて確実に殺してやる。でなければ、私の気が済まない。

「『超身体強化』(ハイブースト)!」

「貴様の力は承知の上だ。『身体強化解除(ディスペルブースト)』」

「な!?」

なんだ……私の『超身体強化(ハイブースト)』が消えた?
どういうことだ?魔法使いでもないのにどうしてこんな真似が……?

「はっはっはっ!驚いただろう。……あまり我らを甘く見てもらっては困るぞ『狂人のエルザ』」

まさかあいつが手に持っている『赤い玉』……あれのせいか?だが、あんなマジックアイテム聞いたことがないぞ!

なるほど、パパはこれにやられたのか。
パパがこんな連中に負けるはずがないとは思っていたが、
こんなものをやられては勝てるはずがない。

『剣士』泣かせのマジックアイテムだ……。

「……これは厳しいな……ははは」

「俺は剣術の才能がある。元々『』を使わなくても貴様に負ける気など無いのだ。しかし、確実に貴様を殺すためには仕方ない。手段など選んでられん」

「よく言う。だったらハナからそんなものを使わず正々堂々戦え。それが出来ないのは自らの弱さを認めているからだろう」

「……確かに、俺は剣の腕ではお前に負けているだろう。だが、俺の十八番は剣の腕では無い。あまり俺を舐めるなよ?ガキが」

「……言ってくれるな。お前もあまり私を舐めないで欲しいものだ。『狂人のエルザ』の異名の由来をその体に教えてやる」

そうだ。私はエルザ・スタイリッシュ。
エルフォード・スタイリッシュの娘であり、
最強の師であり、最恐の祖父であるエルブレイド・スタイリッシュの孫だ。『超身体強化(ハイブースト)』が封じられたからなんだ。

思い出せ……私本来の力を。私本来の本性を。

***

どれくらい経っただろうか……。もう覚えちゃいない。
もう痛みもほとんど消えた。今はただコイツを……

「エルザちゃあああああああああああああああん」

パパの声だ。

「はぁ……はぁ……なんだコイツは何故まだこうも動ける……」

「……………………………………」

「……なるほどコイツは確かに『狂人のエルザ』だ。両腕が無いのにここまで食らいついてくるとは思っていなかった」
「エルザちゃん…………」

「仕方ない……お前達いぃぃぃぃぃ!増援を呼べぇぇぇ!」

「な……なに……」

増援だと。まだそんな数がいるのか。
既にこのミスタリスには百を超える『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』が居る。

そのほとんどはパパが倒した。

なのにその上まだ仲間を呼ぶ気かコイツら……!
もう十分だろう……やめてくれ。
これ以上この国を……傷つけないでくれ……
もう十分すぎる程、傷ついた。

(おじいちゃんがいれば……こんなヤツら……)

せめて、こいつだけでも……
こいつを生きて返さない。こいつらは『悪だ』。
せめてレイラの分まで……相打ちでもいい。

ああ……そうだ……相打ちになったらレイラに会えるな。
レイラに会ったら謝ろう……。アスフィに伝えることは出来なかったと。

(パパごめんなさい……私はコイツを道連れにレイラに会いに行きます。先逝く不幸をお許し下さい)


「同じ者を好きになったもの同士天国で語ろうではないか」

アスフィ。最後に君の顔を見たかった。だがそれは願わなかった。すまない。


「――それなら尚更生きていて貰わなければ困るよエルザ」


……聞き慣れた声が聞こえてきた。

私はこの瞬間凄く安心した。もう大丈夫だと。もう休んでいいと。

そして私は静かに眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...