Re:攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。【第一部新生版】

水無月いい人(minazuki)

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第三章 《第一部》ヒーラー 愛の逃避行篇

第39話「死の報せ」

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その玉座に座っていたのは若い獣人の男。
白い獣耳に白い顔。もふもふとした毛が生えている純粋な獣人……いや、もはや二足歩行の猫だ。

そんな彼がいま玉座に座って俺達に聞いている。

「……聞こえなかったのかな?君たちはなんだと聞いている」

その声はとても優しい声色だった。聞き入ってしまうほどだ。だが、他の言い方もできるだろう。
何を考えているのか分からないようなこの感じ。
王族特有のやつだ……俺はエルザを前にしている気分だった。

まずは俺が口を開く。

「初めまして、王様。僕はアスフィ・シーネ――」

と言いかけたところで言葉を被せられた。

「猫の僕が言うのはなんだが、猫を被るのはやめたまえ。虫唾が走る」

なるほど、やはりエルザタイプか。
王族というのは勘が鋭いやつばかりなのか。では、態度を改めようか。

「……これは失礼しました王、俺の名はアスフィです」
「なるほど、面白いね君……混じっているね・・・・・・・?」

混じっている?なんのことだ。
俺は何を言っているのか分からないと返す。
するとこの王様は今まで開いていたのかも分からなかった、猫目を大きく見開いた。

「……そうか、分からないか。まぁいい、で何の用だ」

「その前に名乗ってくれませんか?俺は名乗った」

「……王に向かって無礼なやつだ。まぁいいだろう。僕の名前は、キャルロット・アルトリウス。このフォレスティアの王だ」

と椅子に腰掛け頬をつき、足を組ながらそう名乗った。
……こいつなんて態度悪いんだ。

あのエルザですら……と思ったがそういやアイツも自分の腕を切り落とすという、ジャンルの違うヤバいやつだったのを思い出した。王は基本変なやつばかりなのか。

「さて、僕は名乗った。要件を聞こう犯罪者たち」

全てバレていた……。俺たちは説明する。誤解だと。

「……冗談だよ。あっはははは!知っているさ、君たちが来る事は村長の使い鳥が持ってきた手紙に書いてあった。少し試しただけだよ」

なんだろう凄くイラッとした。
それはコレイ、コルネ、ルクスも同じだったようだ。

眉間に皺を寄せていた。その後ルクス達も続けて苦笑いで自己紹介をしていく。

……
…………
………………

「……各自、自己紹介ありがとう。そんな険しい顔をしないでくれ。僕らは君達を歓迎するよ。『呪い』の件だよね?」

「……ああ、話が早くて助かる」

「……知っているさ。その者の正体もね」

何?呪いについて知っているのか!?

「正体!?どうゆうことだ!」

「まぁまぁ落ち着きたまえよ。今から話すよ」

キャルロットは語る。黒のフードを被った集団。
名を『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』。

この者たちはゼウスと名乗る者を神と崇め、
次々と無差別に『呪い』を付与しているという。
理由や目的は一切不明である。そう語るキャルロット。

「母さんはそんなヤツらに……キャルロット、目を覚まさせる方法はないのか?」

「……難しいね。まぁかくいう僕も『呪い』については他人事ではなくてね。僕の子はそいつらに殺された」

「…………そうだったのか、すまない」

「まぁ随分と昔の話だよ。そうだね、百年以上前かな」

キャルロット見た目は若いのにそんなに歳いってたのか。
俺はもちろん口には出さない。

「僕の子は優しい子だったよ……元々冒険者を目指していた子でね。アイツらは対象を選ばない。無差別に殺す」

そう語るキャルロットは少し悲しげな表情……には見えなかった。俺だけかもしれないが。

ん……?殺す?どういう事だ。『呪い』は確かに目を覚まさない、それは死んでいるも同然だが、まだ死んではいない。
俺はそれについて聞いてみた。すると――

「…………『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』の考えていることなんて分からない。ただ事実として、僕が着いた頃には殺されていたのさ……残されていたのは僕の子の死体だけだよ。無残な形でね……」

キャルロットにも分からない謎の集団、
『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』。

こいつらの目的はなんなんだ……なぜそんなことをする。
俺はこのどこにもぶつけることが出来ない怒りを
どうすればいいのか分からなかった。

「アスフィ……大丈夫です。きっと呪いを解呪出来る者が居るはずです。呪いを付与できるのなら、解呪もできます」

と俺を後ろから抱きしめて言ってくれるルクス。

「……ありがとうルクス」

「そうとも!ルクス殿の言う通り!………そう、呪いを解呪出来るものは必ずいる。僕はその者を探しているのさ」

とようやくここで椅子を立つキャルロット。
俺はキャルロットをようやく理解した。
こいつは……いや、こいつら王族は悪い奴ではない。

エルザもそうだった。悪い奴ではなかった。
ただ、少し変なだけだ。それは強さ故なのかは分からない。
このキャルロットもまた異質なオーラを放っていた。

強い、それもかなり。エルザと同等か。或いは……。

「さて、君達も疲れただろう。今日は休んでいくといい。部屋については外にいる猫耳メイド達に聞いてくれ」

わざわざ猫耳と付ける必要ある?

「……あ、そうそう――」

とキャルロットは思い出したかのように、俺に言う。

「……『君』には、言ってないよ?」

「………うん、もちろんだよ」

「分かればいい、では行きたまえ」

こうして俺たちは王室を出た。
王室を出ると城の中を沢山のメイドが歩いている。
俺たちは早速声をかけ、部屋を案内してもらった。
部屋はルクスと俺、コレイとコルネの2人ずつで部屋を貰った。

俺たちは早速食事することにした。
メイド達がそこまで案内してくれる。
ここフォレスティアのご飯は自然豊かなものばかりだ。
木の実もあればステーキなんかもある。

飲み物は甘い果実のジュース、オレンジに近い味だ。まさに自然の食材だ。

「美味しいですね」

「だね……でも、ルクス。好き嫌いは良くないよ?」

ルクスはグリーンピースのようなものをよけていた。
それを俺は仕方ないと食べる。どちらが子供なのか分からないな……。そういえばレイラは好き嫌いとかあるのだろうか。

食事を済ませた後、俺たちは用意された部屋に向かった。
ミスタリス程の広さは無いが、これはこれでいい部屋だ。
全てが木材で出来ている。風呂は露天風呂のようなものになっている。

「……混浴……だと」

「一緒に入りませんよ?アスフィ」

「ええーー!」

俺たちは時間をずらし、風呂に入った。
当然ルクスは鍵をかけた。……俺をなんだと思ってるんだ。
失礼なやつだな全く…………あれ?ホントに開かないや!!

ベッドももちろん木で出来ている。その上には何かの動物の羽毛を詰め込んだようなもふもふした気持ちいいマットレス。そしてフカフカの毛皮の布団である。

寝心地はかなり良かった。ただしこの部屋のベッドは一つだった。当然ルクスと一緒に寝ることになった。

「……ねぇルクス」

「どうしたんですか??」

「レイラ達元気かな」

「……ふふ……本当に寂しがり屋ですね、アスフィは。抱きしめてあげましょうか??」

「……ルクスありがとう……気持ちだけ受け取っておくよ。
今日はいいや。ありがとう、おやすみ」

「あ、あれ!?なんで!?」

ルクスは驚いた顔をしていた。レイラのことを考えたらなんだか、そんな気分にはなれなかった。

俺は疲れたので眠ることにした。

***

次の日の朝、特にやることもなかった。
ルクスは寝ている。もう一度寝る。

昼。ルクスは寝ている。俺ももう一度寝る。

夜。ルクスは寝て……っていつまで寝てんだよっ!
危ねー!このベッド気持ちよすぎて永遠に寝てられる……。まずいこれは人をダメにするベッドだ!

俺はルクスを起こすことにした。

「おいっ!ルクス!起きろ!」

「……ん…………アスフィ?……おはようございます」

「おはようじゃない!俺たち寝すぎだ!もう夜だ」

「…………え、ほんとに!?僕つい寝てしまったよ!」

俺たちは素に戻っていた。

俺とルクスは夜の街へ出ることにした。夜のフォレスティアはとても静かだ。昨日来た時は昼だったが、凄く賑わっていた。だが、夜のフォレスティアは昼とは比べ物にならないくらい人が居ない。獣人は夜が苦手なのだろうか。

俺たちはそれでも街を見て回ることにした。
そこで明かりがついた店があった。小さな店だ。

「どうも~」

「こんにちは」

俺とルクスは店に入る。
そこに居たのは煙草を咥えた、細身で顎髭を生やしたヒューマンだった。

「珍しいなこんな時間に客とは……いらっしゃ……おお?人間のお客様とは……それもまだ子供じゃないか」

「私は子供ではありません」

「僕は子供です」

どうやらここは酒場のようだ。こんな時間にやっても誰も来ないだろうに。それを言うと店主が、

「だからいいのさ……儲かるためじゃなく、ここの静かな空気がな。まだガキにこの良さは分からねぇさ」

との事。何を言ってるのか全然分からなかった。俺がガキだからだろうか。

商売は客が来てこそだろうに。ルクスは相変わらずガキじゃありません、と呟いていた。

「なんか注文あるか?」

「木の実のジュースでお願いします」

「では私は……お、お酒を少し」

「お!嬢ちゃんいける口かい?ならとっておきのをやろう」

俺は木の実のジュース、ルクスは自分の顔ぐらいある大きな樽に入った酒を用意されていた。

「……ルクス飲めるの?」

「私はお姉さんですよ?と、当然です」

「流石だねぇ!よっ!お姉さん!」

……
…………
………………

「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

ルクスは無理をしていたようだ。
俺にお姉さんだとアピールしたかったんだろう。

「無理するからだよ、ルクス」

「…………アスフィ……『ヒール』お願いします……」

俺は仕方なく、ルクスに『ヒール』をかけてやった。

「……ふぅ、ありがとうございます。助かりました」

「もう僕が居ないところでお酒飲んじゃダメだよ?」

「…………はい、すみませんでした」

こうして宿に戻ることにした。

そして特に何も無く一週間が過ぎた。
その間、獣人達に色々聞き込みをしに回った。
だが、『呪いを解呪できる者』については誰も知らなかった。キャルロットのお陰で俺たちが犯罪者という誤解はなんとか解け、調査は楽に進んだ。成果はなかったが。

***

俺たちはキャルロットに、呼び出された。
緊急で王がお呼びです!と獣人のメイドが部屋までわざわざ言いに来た。

なんだろう……何かあったのかな。俺は嫌な予感がした。


そしてその嫌な予感は的中した。

「…………ミスタリスの王より、君達に一通の手紙が届いた。ミスタリス王国の王女からだ。覚悟して読みたまえ。僕は……何もしてあげられない、すまない」

と一言添えて、キャルロットが手紙を手渡してきた。

「……エルザから?」

俺は震える手で、ゆっくりと手紙を開く。
嫌な予感がする。
胸の奥がざわつく。

読みたくない。

だが、読まなければならない。


『拝啓』

『私はあまりこういうのが得意ではない。
よって形式については気にしないでくれ。

さて、君たちはフォレスティアに向かったと聞いた。

早速で悪い、アスフィ。そしてルクス。
力を貸してくれ。

今、ミスタリス王国は危機に瀕している。
理由は単純だ。何者かに攻め込まれた。


何者かに――攻め込まれた?誰が? どこから?手が汗ばむ。
指先が紙を握る力を増していく。


敵勢力の名は『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』と言うらしい。
らしい、というのは私も詳しくは知らないのだ。

――また、あの名前だ。

フォレスティアで聞いたばかりの名が、まるで災厄のように、再び俺の前に現れる。


パパが戦っている。今から私も行かねばならない。

パパが……戦っている?エルフォードが、前線に出るような事態なのか?胸の鼓動が、速くなる。頭が、じわじわと熱を持つ。


『我が友ルクス、そしてアスフィよ。』

力を貸してくれ。
もし可能ならアスフィ、『お前・・』の力も借りたい。

――『お前』。

何かが、嫌な形で心に引っかかる。だが、今はそれどころではない。

本当にすまない。
そして、私は君にもう一つ謝らなくてはならない。


レイラが死んだ・・・・・・・



――何?

目が滑る。
意味が、わからない。

レイラが――
死んだ?



『すまない』



冗談だろう?

何かの間違いだろう?

レイラが?あのレイラが?

俺の――幼馴染が?

俺と共に育ち、
俺と共に旅に出て、
俺と共に笑い、
俺と共に歩んできた、あのレイラが?
俺が置いてきたレイラが?

そんなわけ、あるはずがない。



すまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまないすまない……』



紙が、震えている。
俺の手が震えているのか、紙が震えているのか――もう、わからない。

頭の中で、何かが砕ける音がした。



「………………レイラが……死んだ?」

声が、出ない。
喉が、張り付く。
肺に空気が入らない。

「…………そんな……レイラさんが……」

ルクスの声が震えている。

遠くで、誰かが俺を呼んでいる。
けれど、俺の耳には届かない。

まるで、世界が霞んでいく。

嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……

俺は、その場に崩れ落ちた。
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