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5.5巻
5.5-1
しおりを挟む恋するアマリー
1 アマリーと教師
とある日の午後、レングランド学院にて――
「でね、ルーナったら早くも白魔法は上級講座ですって! すごいでしょ!!」
「そうだね」
大きな執務机と本棚、そして簡素な木製テーブルが置かれただけの殺風景な部屋で、男――ヒューイ・ジル・エストランザは、はしゃいだ声をあげる少女に対し、気のない返事を口にした。
「もう、ちゃんと聞いてます?」
そう言って、不満そうに唇を尖らせた彼女――アマリーこと、アマリーシェ・フラウ・リヒトルーチェは、山のように積まれた書類に囲まれているヒューイに近づいた。
「うん、聞いてるよ」
答えながらも、ヒューイが書類から目を離すことはない。だが、返事がもらえただけで満足したのか、アマリーは嬉々として話を続ける。
「それでね、昨日はエレイナとルーナと、そのお友達のコーデリアの四人で、放課後にお茶会を開いたの」
「なるほど」
「その時に、わたしとエレイナはもうすぐ卒業っていう話をしていたんだけど、ルーナったら『せっかく、姉様と一緒の学院生活が送れてうれしかったのに、もうおしまいなんだね』なんて、しょんぼりしてしまったの。もう、本当に可愛いんだから!」
「確かにね」
何度目かの気のない返事。話に夢中になっていたアマリーも、ようやくそれに気がついた。
「ちょっと、ヒューイ先生ったら! なによその適当な返事は!」
アマリーの抗議の声を聞いて、ヒューイははじめて書類から顔を上げた。
「え? どうかしたのかい?」
その言葉で、アマリーは先程までの彼の相槌がいかに適当なものだったかを再確認し、ガクリと項垂れる。彼女は恨みがましく、じとっとヒューイを睨みつけるが、当の本人は不思議そうに首を傾げるだけだ。
「はぁ……」
アマリーは諦めて大きなため息をつくと、ヒューイの執務机から離れ、テーブルへ戻る。
そして椅子に腰を下ろすと、何事もなかったかのように書類へ視線を戻すヒューイを、ぼんやりと眺めた。
無造作に伸びてあちこちにはねている、亜麻色の柔らかそうな髪。その長い前髪から覗く眼鏡の奥には、若葉色の綺麗な瞳。
(ほんと、研究一筋なんだから……)
心の中でぼやきながら、アマリーはヒューイの背後にある窓へと目を向けた。そこからは、秋らしく黄色や茶色に色づく木々が見えている。
次第に感傷的な気分になりながら、彼女は目を細めた。
(あと少しか……)
アマリーは二ヶ月ほど後に卒業式を控えていた。
レングランド学院へ入学出来る最低年齢は十歳。その歳で入学した者は、基本的に成人となる十八の年に卒業を迎える。
十歳で入学し、四月ですでに十八歳となったアマリーは、この十二月に晴れて学院を卒業する。そして、新年に行われる王宮の夜会で、社交界デビューすることになっていた。
貴族の娘として生まれた以上、いずれそうなるのは決まっていたこと。アマリーもそれ自体に不満はないが、社交の場が花嫁探し、あるいは花婿探しの側面を持つことを憂鬱に思っていた。
(卒業したら、学院で身につけた知識を生かしたいって思ってはいるけど、まだはっきりと何をすればいいのかわからないのよね。まあ、社交界デビューはしても、普通の貴族令嬢みたいに両親が勝手に結婚相手を決める――なんてことにはならないだろうから、それだけは良いけど。でも、出来ればその前に……)
「アマリーさん」
ぼんやりと考え事に耽っていたアマリーは、名前を呼ばれてハッと我に返った。
「な、なんですか、先生」
彼女が焦りつつも返事をすると、ヒューイは不思議そうにアマリーを見つめ、おもむろに書類を差し出してきた。
「え?」
意図をはかりかね、アマリーはきょとんと彼を見返す。
「悪いけど、帰るならこの書類を本棟の研究所事務室に届けてくれないかな?」
ヒューイはそう言った後、差し出した手はそのままに、視線を机の上の書類へと戻した。
人に頼みごとをしておきながら失礼な態度だが、これにも長年の付き合いで慣れたもの。アマリーは、「ハア……」とわざとらしいため息を零して書類を受け取った。
アマリーが今いるのは、通称『ヒューイの研究所』。この建物の主であるヒューイ・エストランザは、レングランドの研究所で薬草学の研究をする傍ら、学院で教鞭も執っている。
そんな彼にアマリーは、十四の頃から教えを乞うており、その一方で、研究の手伝いもしていた。
最初は雑用を手伝うだけだったのだが、現在では助手兼秘書と名乗ってもよいと、アマリーは自負していた。
もっとも今のようなお遣いを頼まれると、やはり雑用係にすぎないのかと、落ち込んでしまうのだが。
「仕方ないですね」
「ああ、悪いね。頼んだよ」
ヒューイはアマリーに一瞬だけ笑顔を見せると、それでもう用件は終わったとばかりに、再び書類へと意識を向けた。
(ヒューイ先生、いつもこんな感じの対応をしているけど、他の先生や研究員と円満なコミュニケーションが取れてるのかしら……いいえ、ここに一人で籠っているところを見ると取れていないんでしょうね)
アマリーは半ば呆れながら肩を竦めると、ちらりとヒューイを見てから部屋を出た。
ドアを閉めるまでの短い間、こっそりと彼を窺っていたものの、ヒューイはアマリーを気にした様子もない。彼女は小さく息を吐くと、玄関へと歩きだした。
ヒューイの研究所は、学院の敷地内の森にある、こぢんまりとした一軒家だ。周囲は木々に囲まれており、明るいうちはいいが、夜に女生徒が一人で歩くにはいささか勇気がいる。
(もうすぐ暗くなるのに、送ってくれるどころか用事を頼むなんて……ほんとに先生って、自分の研究以外のことには気が回らないわよね)
ため息を零し、アマリーは地面を蹴るようにして力強く歩き出す。
アマリーの生活拠点であるレングランド学院の女子寮は、ここからだと学院の校舎や研究施設がある本棟を通らないと辿り着けない。
だからこそヒューイは気軽に用事を頼んだのだろうが、そこに、「女の子の一人歩きは危険だ」という考えは欠片もない。
(わたしってば、お人よしかも……)
アマリーはそう自嘲すると、後ろを振り返って木々に隠れた一軒家に目をやった。そして大きく頭を振ると、踵を返して本棟へと急いだのだった。
†
ヒューイに頼まれた用事を済ませ、アマリーが自室へと帰ると、エレイナが心配そうな顔で待っていた。
「遅くなるようでしたら、ご連絡下さい。すぐに迎えに行きますから」
「ごめんね、エレイナ」
エレイナに謝りながら、アマリーは着替えもそこそこに、温かいお茶が用意されたテーブルにつく。コクリとひと口紅茶を飲むと、彼女の顔は自然と綻んだ。
秋も深まった今は、日が落ちると同時に気温が一気に下がっていく。温かい飲み物は必須だ。
「アマリー様、先程も申しましたが、最近は日が落ちるのも早くなって参りました。あまり寄り道は感心しませんわ。遅くなるのなら、必ずご連絡を」
丸テーブルを挟んで向かい側に座っていたエレイナは、アマリーが落ち着いたのを見て、改めて告げる。
「う……だから悪かったわって。本棟の研究所に寄っていたら、遅くなってしまったのよ」
「本棟ですか? 今日はエストランザ様のところに行っていたのでは?」
エレイナは、アマリーの返事が予想外だったのか、不思議そうに聞き返す。
「行ったわよ。そしたらヒューイ先生に、事務室に書類を持っていってくれと頼まれたの」
「なるほど……」
うなずくエレイナの声音に、アマリーはどことなく自分に対する憐みを感じ取り、頬を膨らませた。
「……エレイナ、言いたいことがあるなら、はっきり言っていいわよ?」
「いえ。ただ、エストランザ様は相変わらずだと思いまして」
エレイナが苦笑していると、アマリーは大きなため息をついた。
本来、アマリー至上主義のエレイナならば、アマリーが遣いっぱしりのような扱いを受けたと知った途端、烈火の如く怒り狂い、猛抗議しただろう。
だが、ことヒューイに関しては、内心はどうあれ静かに見守ってくれているのだ。
もちろん当初は良い顔をしなかったエレイナだが、当のアマリーが口出しされることを望まなかったことと、ヒューイのあまりの朴念仁ぶりを聞くうちに、怒りよりもその行動を面白がるようになっていた。
「そうなのよね。わたしが傍にいても、仕事か実験しか目に入ってないんだもの」
「それは……」
「今日も深刻そうに名前を呼ばれたと思ったら、書類を差し出して研究所の事務室まで持っていってくれないか、ですって! 何を言われるのかとドキドキしてたのが本当に馬鹿らしいわ」
「アマリー様をメッセンジャー扱いとは、ある意味大物と言えるのでしょうか」
「ちょっとエレイナ! 変なところで感心しないでちょうだいよ!」
「あ、いえ……すみません」
あからさまにしゅんとするエレイナに、アマリーは言い過ぎたと思い慌てて取り繕う。
「ああ、そんなに落ち込まないで。わたしが言い過ぎだったわ」
「いえ、わたしが悪いのです」
「エレイナってば、本当に気にしなくていいから! というか、元凶は、女の子への気遣いが足りないヒューイ先生よね」
疲れたようにアマリーが言うと、エレイナは我が意を得たりとばかりにパッと表情を明るくした。
「そうですわ。すべてはエストランザ様が悪いのです! そもそもあの方は名門エストランザ伯爵家の当主でありながら、レングランドで研究に没頭し、その傍ら非常勤講師を務めているという変わった方ですもの。おかしな振る舞いも当然のことですよね!」
(……エレイナ、それは単に変人って言い切っちゃってるだけよ)
アマリーは顔を引き攣らせながら、内心で突っ込む。
エレイナの言う通り、ヒューイはエストランザ伯爵という肩書きを持つ、正真正銘の貴族だ。
本来、伯爵といえば政に参加していなくとも、領地や領民の管理運営などで日々忙しくしている。しかし、ヒューイは違った。
隠居した彼の両親をはじめ、優秀な家人のサポートのおかげで、領地に関しては滞りなく管理出来ているからだ。
さらに、ヒューイは薬草学の研究でいくつもの重要な発見をし、国からも研究者として認められている。それゆえ、道楽と言われることもなく、好きなだけ研究に打ち込むことが出来ていた。
背景だけ見れば優秀な人物なのだが、その実、研究することだけが生きがいという、いわば研究馬鹿だ。そのため、対人コミュニケーションスキルは極めて低かった。日頃ヒューイと接する機会が多いアマリーは、そのことを誰よりも良くわかっている。
「アマリー様」
エレイナにやたらと真剣な表情で呼ばれ、アマリーは思わず姿勢を正して彼女を見た。
「な、何かしら?」
「何故、あの方なのですか?」
「え?」
問いかけられた意味がわからず、アマリーは目を丸くした。そんな彼女の様子にエレイナは小さくため息を零した後、爆弾を投下する。
「ですから、何故アマリー様はあの方をお慕いなさっているのですか?」
「は……えぇぇぇっ!?」
次の瞬間、アマリーは素っ頓狂な叫び声をあげた。彼女は、誰が見ても動揺しているとしか思えないほどガチャガチャと音を立て、持っていたカップをテーブルに置く。
(アマリー様がこんなに取り乱すなんて……まさか、本当にご自分の気持ちが気づかれていないとお思いだったのかしら……)
エレイナは内心驚きながらも、アマリーが落ち着くのをひたすら待った。
しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻したアマリーは、目の前のエレイナを窺うようにしながら、おずおずと口を開いた。
「い、いつから気づいてたの?」
(……本当に気づかれていないと思ってらっしゃったのですね)
これも言葉に出さずに突っ込みながら、エレイナは答える。
「なんとなくそう感じたのは、三年ほど前のことです。最初は憧れている程度なのかと思っていましたが、ここ二年ほどのご様子を見て、本当にお慕いなさっているのだな、と」
自分ではまったく表に出していないと思っていた感情が、見事なまでに駄々漏れになっていたとは。アマリーは一気に脱力し、くたりとテーブルに伏せた。
(まさか、バレバレだったなんて……しかも三年前ってわたしが自覚した頃だから、ほとんど最初からじゃない!)
今、自分の顔は見たこともないくらい真っ赤になっているだろう。恥ずかしさのあまり顔を上げることができず、アマリーはそのままの姿勢でエレイナに尋ねる。
「……わたしってそんなにわかりやすかった?」
アマリーの赤くなった耳を眺めながら、エレイナはクスリと笑った。
「そうですね。それに、わたしはいつもアマリー様のお傍にいますから。そのくらいのことならば、すぐにわかりますよ」
「うーん、そこは親友だからって言ってほしいんだけど」
エレイナの答えが不満だったのか、アマリーは上目遣いでじとっとエレイナを睨みつける。
だが逆に、エレイナは嬉しそうに微笑むだけだ。
「僭越ながら、一番大切なお友達だと思っておりますわ」
「それならいいけど」
「ええ。ですので、よろしければ教えていただきたいのですが」
「何を?」
「それはもちろん、どうしてエストランザ様のことをお慕いするようになったのか……ですわ。失礼ですが、人付き合いが得意ではなく、あまり女性受けするような方ではないですわよね。アマリー様はあの方のどこに惹かれたのです?」
好奇心に目をきらめかせ、エレイナはアマリーに迫る。アマリーは、親友の勢いに怯んで、椅子の背に張りついた。そんな彼女に、エレイナはさらに畳みかける。
「年齢だって結構離れていらっしゃいますよね。やはり、年上ならではの包容力といったものなのでしょうか。でもあの方にそんなものが……? 年上といっても、年齢はパッと見ただけだと謎ですしね。何しろ、あの髪と分厚い眼鏡のせいでお顔もよくわからないんですもの」
エレイナの言葉を聞き、アマリーは脳裏にヒューイの姿を思い描いた。
身長は高いが、猫背気味なので気が弱く見える。その秀麗な顔立ちも、普段は分厚い眼鏡と長い前髪で隠されてしまっているため、よく見なければ気づかないだろう。
髪も無造作で、決してお洒落とは言い難い。着ているものが上質でなければ、貴族であることも疑われそうな外見なのだ。
(確かにあれでは、年齢不詳よね……)
自分の想い人であるものの、その残念な有様にはアマリーも思うところがある。
エレイナは追及の手を緩めず、身を乗り出して親友に詰め寄った。
「というわけで、どうなのです? どういった馴れ初めなのです?」
「な、馴れ初めって……わたしたちはそんな関係じゃ――」
アマリーはますます赤くなり、わたわたと首を左右に振る。
「細かいことはよろしいじゃありませんか。それで、出会いの印象はどうだったんですか?」
もはやワクワクとした様子を隠しもしないエレイナ。普段は落ち着いていて理性的だが、彼女もやはり若い娘。恋の話は大好物のようだ。
「う……わかったわ、話す、話すから!」
アマリーは興奮気味のエレイナを手で制すると、自分の気持ちを落ち着かせるように、すっかり冷めてしまった紅茶に手を伸ばす。
それをひと口飲んでから、彼女はゆっくりと口を開いた。
「あれは、十四になったばかりの頃だったわ――」
2 アマリーと夢
アマリーが十四歳になったばかりの春。彼女は母ミリエルに誘われ、王都・ライデールにある大神殿を訪れた。ここで行われる奉仕活動に参加するためだ。
クレセニア王国だけではなく、フォーン大陸の各国に散らばる神殿のほとんどで、慈善事業が盛んに行われている。
王都の大神殿も多岐にわたる活動をしているが、この日の活動は、貧しさから十分な治療を受けられない病人のために、白魔法や薬師の心得のある者が行う無償診療だった。
ミリエルは、以前から時間を見つけてはこういった奉仕活動に従事している。そのため市井の人の間では尊敬の念を込めて『純白の魔女』と呼ばれているのだ。
「母様、この人たちは今日のために……?」
大神殿の近くで馬車を降りたアマリーは、目に映る光景に驚いていた。
神殿の入口――祈りの間へと続く階段には、大勢の人がずらりと並んでいる。彼らは皆、生活の大変さがすぐに見てとれるほど粗末な身なりだった。
「そうよ。我が国は大陸で一、二を争う豊かな国。そして陛下の善政によって他国と比べても貧困にあえぐ民は少ないわ。それでも……皆無ではないの。病に倒れても満足な治療を受けられない人々もいるのよ」
ミリエルは静かな声で言い、言葉もなく立ち尽くす娘の背をそっと押した。それに促されてアマリーが視線を前に向けると、離れた場所で頭を下げる神官の姿があった。
「さぁ、行きましょう」
母の言葉にうなずき、アマリーはぎこちない足取りで歩き出した。彼女は列に並んでいる人々を何度か振り返りながら、ミリエルの後に続く。
ミリエルが神官に声をかけると、彼女たちは正面入口ではなく、関係者が出入りする通用門へ案内された。
そこから向かったのは、貴族用の待合室だった。
室内にはいくつかの飾り気のないテーブルがゆったりとした間隔で配置され、それに合わせて長椅子や椅子が置かれていた。部屋の彩りといえば、床の深緑色のラグのみで、石を積んだ壁にも飾りは一切ない。
アマリーたちが中に入ると、世話役の女性神官の他に、身なりの良い貴婦人や、すでに一線を退いたと思われる老年の男性など、数人の男女がいた。
彼らはミリエルと同じく、奉仕活動のため集まった白魔法使いや薬師、あるいはその心得がある人間だった。
「皆様、お久しぶりですわね」
部屋に入ったミリエルがにこやかに挨拶すると、一人の老紳士が近づいてきた。
皺の刻まれた顔は柔和で整っており、若い頃はなかなかの美男子だっただろうと思われる。
癖のあるふさふさとした髪は白く、長く伸びた眉毛も同じく白い。その下にある理知的な瞳は、薄い青だ。
「ミリエル、元気じゃったか?」
「お久しぶりですわね、ドゥナン先生」
老紳士をドゥナンと呼んだミリエルは、軽く頭を下げる。
「ははっ、この老いぼれをまだ先生と呼んでくれるか」
「もちろんですわ。先生がいつまでたってもわたくしの先生であることは変わりありませんもの」
ミリエルの答えに、ドゥナンは嬉しそうにうなずき目を細めた。それはまるで愛娘を見るような眼差しだ。
(誰? 初めてお会いするわよね。「先生」ってことは母様の恩師かしら?)
心の中で首を傾げながらも、アマリーは二人のやり取りを静かに見守る。そんな彼女の心の内がわかったのか、ふいにドゥナンの視線が向けられた。
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