5 / 45
5. どうしても隠し通さねばならぬことなのです
しおりを挟む考えるだけで頭が痛くなるようなことを平然とする婚約者に、もう何度目かのため息をついたところで親友のシアーラが声をかけてきました。
「エレノア、いつもながら大丈夫なの?」
「あのような態度には本当に頭が痛むけれど、いつものことだから大丈夫よ。」
伯爵令嬢であるシアーラは、この学院に入学してすぐに親しくなって二人でお忍びスタイルのお出かけを楽しむこともできる非常に気の合う令嬢なのです。
ですから私とシアーラは爵位の差など関係なくカジュアルなお付き合いをしています。
「それにしてもエレノア、最近のジョシュア様とドロシー嬢の距離感は目に余るわよ。いくらなんでも婚約者である貴女のことを蔑ろにしすぎなんじゃないかしら。」
そう言って怒るシアーラは、ジョシュア様やドロシー嬢のことで頭を痛めている私のことをとても心配してくれているのです。
「分かっているわ。それでも仕方のないことよ。この婚約は王命なのだから覆すことはできないわ。」
「貴女の過保護なご家族に相談してみたらどうかしら?」
シアーラは我が侯爵家に何度も遊びに来ていますから、あの私に異常に甘いお兄様たちやお父様のことも知っているのです。
「きっと、騎士であるエドガーお兄様は有無を言わさずジョシュア様に斬りかかるでしょう。ディーンお兄様だってこの国でも一二を争う怜悧な頭脳を使ってジョシュア様を破滅させようとするでしょうし、お父様に至ってはこの国の『宰相』という大切な職を放棄してまで婚約破棄を陛下にお願いして、他国へ亡命を図るかも知れないわ。」
私がずっと危惧していることはこのことなのです。
「そうね、確かに貴女のあのご家族ならそうしかねないわね。」
そうシアーラが納得するほどに、私の為ならばお父様もお兄様もお母様でさえ何をするか分からないところがあるのです。
私は、あのようなボンクラ婚約者の為にそんな恐ろしいことを大切な家族になさって欲しくないのです。
つまり、ジョシュア様のこともドロシー嬢のことも絶対に家族には知られないようにする必要性があるのです。
ですから私はこの学院内で理解ある婚約者のふりをするのです。
どこから噂は漏れるか分かりませんから。
私の演技によって、『エレノアはジョシュア様のことを余程お慕いしているから、あの様な理不尽な真似をされても耐えている』ということにしておくのです。
そうすればもし万が一家族に知れた時にも、私がジョシュア様のことを深くお慕いしていると思えば、手荒な真似はしないと考えたのです。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる