チャラ男に囚われた忌み子の僕は

蓮恭

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35. 秘密の性格も、全部が好きだよ

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 宗次郎は、来た時には少し青褪めていた顔色を今度は何故か少し赤らめている。

「伊織、実は俺がすっごく情けない男でも嫌いにならないかな」
「ならないよ。何で宗次郎がそんな風に言うのか分かんないから、ちゃんと教えてよ」

 はあー……っと大きく息を吐いて、少しだけ俯いた宗次郎はポツリポツリと語り始めた。

「俺は確かに今まで言い寄ってくる女たちをそのまま相手して、そいつらが俺から去ってく時も別に気にしなかったんだけど。伊織に関しては全く違う。必死で追いかけて、捕まえないとって思って……」

 あんなに恋愛に慣れてる風で、いつも違う女の人を連れてグッドネイバーズに来てた『チャラ男』は、恋愛なんかしてなかったんだ。

「そもそも、誰かに言い寄るなんてしたことないからさ。最初はちょっと強引に男らしく攻めてみようかなとか思ったりして。それで何とか伊織と特別な関係になっても、伊織の気持ちが分かんなくて焦ってた。もしかして、俺ばっかり好きなんじゃないかって……」

 確かに最初に公園の修羅場に遭遇して、鼻血を止めた時には女だと思われてたし、しつこいくらいに言い寄ってきてた。
 まさにチャラ男だったけど……。

「伊織はしつこくて強引な俺に流されてるのか、それとも断れなくてなし崩しに付き合ったりしてるんじゃないかって……急に不安になってさ」
「でも、僕も好きだって伝えたよ」
「うん、だけど何故か不安で不安でたまらなかった。そんな時にさ、伊織が俺の嫉妬心を煽るから。とにかく誰かに取られるくらいなら、伊織を強引にでも俺のものにしたいって思って。あの日は元々抱くつもりでアパートに行ったんだ」

 明のことで嫉妬させちゃったことかな。
 ……っていうか、何でこんなに自信がないんだろう? 

「そしたら伊織が、俺のこと好きだって言うから。それが嬉しくてつい我慢出来なくてさ。何かそこからは頭に血が昇って、ハジメテなのに無理させちゃって。しかも、男相手なんて初めてだから俺も加減が分かんなくて。もしかして時間が経って野獣みたいな俺のこと幻滅したんじゃないかって、離れてる時間にすごく悪い方に想像が働いたんだ」

 なんか、あまりにもマイナス思考だ。
 宗次郎がこんな風に考える人だったなんて想像も出来なかった。
 いつも自信満々で、強引で、僕からすれば大人だったから。

「それでその上に連絡はないし、俺のLIMEも未読だし。電話しても繋がらない、アパートも帰って来ないってなったら俺は伊織に逃げられたんじゃないかって思って……」
「それで、なんであんな盛大に勘違いしたの? 僕が死ぬとかさ」

 どこをどう辿ったらあんな勘違いに繋がるのか、僕にはサッパリ分からなかった。

「俺さ……、めっちゃマイナス思考人間なんだよ……」

 へ?

「だから、伊織は入院してたから連絡ができなかったって言うのには安心したんだけど。いや、良くはないけどね! でも、急に入院するほど体調を壊すっておかしいと思って……。もしかして、俺が男同士のセックスを失敗したのか⁉︎    って不安になって心配し過ぎてああなったんだよ」
「心配し過ぎでしょ」
「だから、俺はめっちゃ心配症のマイナス思考人間なの! こんなの伊織にだけは知られたくなかったのに……」

 なんだ、宗次郎も完璧な人間じゃないんだ。
 僕みたいに人と違う部分があったんだ。
 そしてそれを他人に隠して生きてる。
 
「……心配症でマイナス思考人間って、例えばどんな事考えるの?」

 僕は自然と穏やかな笑みが浮かんだ。
 こんな宗次郎が愛しくて、可愛くて。

「えっ⁉︎    例えば⁉︎    そうだな……ちょっとお腹が痛いと悪い病気かも知れないと思って眠れなくなるし、海に行けばサメが怖いし、山に行けば熊が怖い」
「ふふっ……。何それ」
「いや、本当に心配なんだって! 前に伊織がアパートのドアをすぐ開けた時だってすっごい心配したし」

 何だ、本当に可愛い人だ。
 欠点だと本人は気にしていても、僕は全然受け止められるよ。
 そうか、これが愛情なのか。

「宗次郎、僕はそんな宗次郎がますます好きになったよ」

 僕は宗次郎に素直な気持ちを告げた。
 何を言っても、きっとこの人は受け入れてくれる。
 遠慮なんかしなくていいんだ。
 僕が宗次郎の欠点を受け入れるように、きっと宗次郎も僕の欠点ごと受け入れてくれる。

「伊織ぃ……」

 宗次郎は眉を下げて泣きそうで、とっても情けない顔をして抱きついてきた。
 ほんとにほんとにその顔は情けなくて、僕はそれでもこの人が愛しい。

「僕は宗次郎の全部が好きだよ。忌み子で、他人を信じられなくて、上辺だけで生きてきた僕を変えてくれてありがとう」

 宗次郎の背中は筋肉でしっかりと硬くて、ひ弱な僕の身体とは違う。
 その身体を包み込むようにして、僕は宗次郎に素直な気持ちを伝えることができた。

「伊織……。どうしよう、ここ病院なのに。伊織はまだ全快じゃないのに」
「なに?」
「シタくなった」

 そう言う宗次郎の頬は熱くて真っ赤になっていた。
 
「今はダメ。退院したら……しよ?」
「……ぐうっ! 伊織が可愛すぎる……」

 とにかく、僕と宗次郎はお互いが自然体を曝け出していられる関係になったみたい。

 あとは、鈴木さんのことが解決したら安心するんだけど、警察沙汰になってしまってこの後どんな事になるのか……。

 僕は心配症の宗次郎じゃないけども、その事に関しては不安な気持ちでいっぱいだった。


 





 
 

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