転生竜騎士は初恋を捧ぐ

仁茂田もに

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第二十三話 捕食*

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「あ、ぁ、あぁ……ッ」

 全身を震わせるルインを見て何を思ったのだろうか。不意にシグルドがルインの下肢にその端正な顔を近づけた。何を、と思った瞬間、ルインはまた声を上げる羽目になった。

 シグルドがルインの陰茎を口に咥えたのだ。
 悲鳴のように細い嬌声が部屋に響く。陰茎が温かい粘膜に包まれて、耐え難い快感がルインの脳天を貫いた。既に一度達してひどく敏感になっていたそれは、シグルドの口内で面白いくらいに跳ねた。

 苦しいほどの甘い快楽から逃れたくて、ルインは腰をひこうとする。けれど、それは後孔をいまだ嬲っているシグルドの指に阻まれてしまう。同時に中のひどく感じるしこり――前立腺を強く押される形になって、ルインはまた悲鳴を上げた。

「ひぃぁ――!」

 頭の中が真っ白になるような衝撃が全身に走る。咥えられた瞬間、達してしまわなかったのは先ほど一度出していたからだろう。

 恐慌状態に陥ったルインには構わず、シグルドは好き勝手にルインの陰茎を舐った。
 舌先で鈴口をほじられ、溢れる先走りを啜られる。唾液と絡めたそれを陰茎に塗されて、唇と頬の粘膜全体を使って陰茎を扱かれれば、気持ちが良くてどうにかなってしまいそうだった。

 陰茎が蕩けてしまいそうなほど気持ちがいいのに、拡げられている胎の中も気持ちがいい。中の電流が走るような愉悦と、前の慣れた快感に半狂乱になってルインは叫んだ。

「ぁんッ、あ、あ、ぃやっ、シグルド、はなしてッ」

 陰茎を弄られるのが苦しくて腰をひけば、後ろの指がより深いところに触れる。後ろの指の侵入を拒もうと前に行けば、今度は陰茎が強くシグルドの喉を犯した。
 どちらにしても気持ちが良くて、逃げられない。
 そんなものを一度に与えられて、初心者であるルインは耐えられなかった。快楽の閾値を超えてしまったようで、呼吸すら苦しくなってくる。

 喉を仰け反らせ、必死で息を吸おうとすれば宥めるように腰を撫でられた。それでも下肢は解放されず、腰のあたりに蟠る興奮は煽るように渦巻く一方だった。

 生理的な涙で潤んだ瞳で、ルインはシグルドを見た。己の下肢に顔を伏せ、シグルドは熱心に舌で陰茎に愛撫を施していた。赤い髪が揺れて、ふと顔を上げる。
 青い瞳がルインのみっともなくも乱れた姿をとらえた。

 まるで獣のようだと思った。普段は穏やかで優しい色をしたそれが、今はすっかり獲物を値踏みする捕食者の瞳でルインを見ている。
 今から食われる獲物は、間違いなくルインだ。
 他でもないルイン自身がそれを望んで、拒まなかった。

 がくがく震える膝を押えるようにそっと開かれて、後孔から指を抜かれる。じくじくとした疼きを誤魔化すように腰を揺らせば、すぐに与えられるものがあった。
 いつの間に寛げたのか、シグルドは飛行服の上着を脱いでボトムの前を開いていた。そのまま覆いかぶさるようにして自らの陰茎をルインの蕾に押し当てる。

 喉が戦慄き、唇が震える。それは期待からだったのか、それとも恐怖からだったのか。
 ルイン自身にもよく分からなかったけれど、身体はただひたすら熱かった。

「息吐いて、軽くいきんで」

 耳元でシグルドが言った。必死に頷いたルインだったが、どうしても身体の力は抜けなかった。
 シグルド自身がルインの中に入ってきたときも、きっと全身が強張っていたと思う。
 それでもここまで丁寧に解され蕩けたはずの後孔は、柔らかくシグルドを迎え入れたようだった。張り出した一番太い部分が、襞をめいっぱい伸ばして粘膜を押し広げていく。

「ルイン、息を吐いて」
「ん、あ、あぁ……」

 痛みはなかった。けれども身体の真ん中を太い杭で無理やり拡げられているような圧迫感があった。内臓全体を持ち上げられる苦しさに、ルインはただ苦しげに喘ぐことしか出来ない。
 開きっぱなしの唇から漏れるのは、肺を押しつぶされるたびに零れる生理的な声だった。

 きっと挿入しているシグルド自身もきつく締め上げられて苦しかったのだろう。シグルドは何かに耐えるように眉を寄せ、ルインを見た。そして顔を寄せ、柔らかく唇を食んでくる。
 下唇を舐められ、擽られる。その優しいキスに思わず涙が零れてしまいそうだった。

 お互いに快感よりも苦しさの方が強い挿入のはずだ。それなのに、彼はずっとルインを気遣うことをやめなかった。
 そんなシグルドから与えられる口づけに、ルインも夢中になって応えた。

 それと同時に逞しい剛直はゆっくりとけれど確実にルインを侵し、穿っていく。シグルドはたっぷりと塗り込められた香油のぬめりを利用して、少し引いては押し込むという動きを繰り返した。

 そんな動きをしばらくシグルドが繰り返したときだった。散々嬲られた雄膣がじわじわとした鈍い感覚を感じ始めたのだ。指で粘膜を拓かれているときにも感じていた、痺れるような何とも言えない感覚だ。

 それが快感だということを、もうルインの身体はシグルドに教え込まされていた。
 その圧迫感の中に確かにあるその快感に、ルインは困惑する。その上、感じるのは腹側にある、先ほどしつこく弄り倒されたしこりだけではなかったのだ。

 腸壁全体を陰茎が擦るたびにぞくぞくとする感覚がルインの背筋を這い上がってくる。
 気持ちがいいのと、苦しいのがいっぺんに来て、処理が追い付かない。

「あ、あ、あぁ」

 ルインの快楽とともに中が自らを犯す陰茎をしゃぶるように蠢いた。
 それに合わせてシグルドがゆるゆると腰を動かす。それは決して激しい動きではなかった。けれども、しっかりと張り出した先端が粘膜を穿つたびに、ルインの中で甘い疼きが生まれていく。

 少しずつ高められたそれは、確かにルインを満たして翻弄した。
 濁流に溺れそうになりながら、ルインは少しでも楽になりたくて必死に両手を伸ばす。広い背中に縋りついたのは、無意識でのことだった。
 シグルドはルインの細い腕を嫌がらなかった。むしろ、それが合図になったように腰の動きを早めていく。

「ぁ、ああああ――……ッ」

 激しい奔流が胎の奥から湧き上がって来て一瞬で弾けた。
 達した衝撃でルインの雄膣は激しく収斂して、中の陰茎を締め付ける。

「ぅッ……」

 強い蠕動に耐えきれなかったのだろう。小さなうめき声とともにルインの中で達したシグルドが、ゆっくりと倒れて来た。そのまま強く抱きつけば、どくどくと激しく動くシグルドの鼓動が響いてくるようだった。

「ルイン……」

 何度も名前を呼ばれた。けれども、疲れ切ったルインには返事をすることが出来なかった。
 初めてのセックスで後ろに挿入された上、二回も達したのだ。軍人とはいえ、あまり体力のない痩せっぽちのルインにはこれが限界だった。

 瞼が重たくて目が開けられない。数度、ゆっくりと深呼吸したかと思えば、ルインの意識はそのまま暗闇に落ちて行った。



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