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番外編
閑話 アリスノート 10
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蜂蜜づけのアップルパイを、悲壮な顔つきで、口に運ぶウルス。
「甘すぎて、体が震える…。脳がしびれる…。すごい刺激だ。…よしっ、脳が動き出した!」
ウルスの脳のしくみがわからない…。
脳が動きだしたものの、甘さのせいで小刻みに震えながら、ウルスが話し始めた。
「あれは、ルイスが8歳の時。はじめて、フィリップの公務についていった。そう、ノルド村だ。覚えてないか?」
ノルド村? …ああ、思い出した。
「国が支援した学園の視察だったか…」
「そうだ」
ウルスが、苦々しい顔でうなずいた。その隣で、兄上が、ぱあっと明るい顔になる。
「やっぱり、ルイスも覚えてるよね! 記念すべき、二人の初公務だもんね!」
陰と陽。闇と光。暗い、明るい。ネガティブ、ポジティブ…。
正反対の二人の表情を見ていると、色んな言葉が浮かんでくるな…。
「視察自体は、ありふれて、なんの問題もなく終わった。その後だ、ややこしいことばかり言いやがって…」
そう言うと、また一口、ウルスは、蜂蜜漬けのアップルパイを口に放り込み、ブルルッと大きく震えた。
「ウルス…。もう、食べるのはやめろ…」
思わず、心配になって声をかける。
すると、ウルスは、首を横にふった。
「いや、食べる。俺は、全部食べるぞ!」
「本人がそう言うんだから、いいんじゃない? 残したら、極上のアップルパイも蜂蜜も、もったいないしねー」
と、凶悪な笑みをうかべる兄上。
おい、笑う悪魔か?!
ウルスは、兄上をひとにらみしてから、俺のほうを向いて、話しを続けた。
「まず、その日のことだが、ルイスの服を手に入れろ事件だけではない。まず、公務が終わった後、フィリップが変なことを言いだした。それが、学園にモニュメントを自費で建てる事件だ」
「モニュメント?」
そこで、兄上が声をあげた。
「もちろん、ルイスが初公務に来たことを後世に残すためのモニュメントだよ!」
「はああ?! …そんなもん、いるか!」
「いるよ! ルイスが初めて公務に行った場所だよ?! ちゃーんと残しておかないと。なのに、ウルスが猛反対して、邪魔したんだよ!」
不満いっぱいに言う兄上。
…正気か?! 俺は、ため息をついて言った。
「ウルス、よくとめてくれた」
俺が感謝の気持ちをこめて、ウルスを見る。
ウルスは遠い目をして、答えた。
「ああ、あの時の俺、よくやった。ほんと、止めるの、大変だったんだぞ。フィリップが、学園長に直接、変なモニュメントを建てる話をつけてたんだ。王太子の言うことに、逆らえなかったんだろうな。気の毒に…。
後日、学園長が死んだ目をしながら、モニュメントを建てる企画書をもって、王宮を訪ねてきて、俺はたまげた…」
「ウルス、記憶力もおかしいんじゃない? 学園長は喜んで、ルイスの初公務を記念するモニュメントを建てようとしてくれてたよ?」
…そんなわけあるか。
「だが、フィリップは俺がどれだけ止めても、聞きゃしない。ノリノリでモニュメントのデザインを考え、学園長に指示しているのを見て、俺はすぐに、王妃様に連絡をした」
「そうだよ。よりによって、ウルスが、脳筋母上に告げ口したもんだから、母上が怒り狂ってやってきて、ぼくと大喧嘩だよ。せっかく考えたデザインも、びりびりに破かれたっけ。ひどいよね?」
と、恨みがましい目でウルスを見る兄上。
いやいや、ひどいのは兄上だろ…。
「甘すぎて、体が震える…。脳がしびれる…。すごい刺激だ。…よしっ、脳が動き出した!」
ウルスの脳のしくみがわからない…。
脳が動きだしたものの、甘さのせいで小刻みに震えながら、ウルスが話し始めた。
「あれは、ルイスが8歳の時。はじめて、フィリップの公務についていった。そう、ノルド村だ。覚えてないか?」
ノルド村? …ああ、思い出した。
「国が支援した学園の視察だったか…」
「そうだ」
ウルスが、苦々しい顔でうなずいた。その隣で、兄上が、ぱあっと明るい顔になる。
「やっぱり、ルイスも覚えてるよね! 記念すべき、二人の初公務だもんね!」
陰と陽。闇と光。暗い、明るい。ネガティブ、ポジティブ…。
正反対の二人の表情を見ていると、色んな言葉が浮かんでくるな…。
「視察自体は、ありふれて、なんの問題もなく終わった。その後だ、ややこしいことばかり言いやがって…」
そう言うと、また一口、ウルスは、蜂蜜漬けのアップルパイを口に放り込み、ブルルッと大きく震えた。
「ウルス…。もう、食べるのはやめろ…」
思わず、心配になって声をかける。
すると、ウルスは、首を横にふった。
「いや、食べる。俺は、全部食べるぞ!」
「本人がそう言うんだから、いいんじゃない? 残したら、極上のアップルパイも蜂蜜も、もったいないしねー」
と、凶悪な笑みをうかべる兄上。
おい、笑う悪魔か?!
ウルスは、兄上をひとにらみしてから、俺のほうを向いて、話しを続けた。
「まず、その日のことだが、ルイスの服を手に入れろ事件だけではない。まず、公務が終わった後、フィリップが変なことを言いだした。それが、学園にモニュメントを自費で建てる事件だ」
「モニュメント?」
そこで、兄上が声をあげた。
「もちろん、ルイスが初公務に来たことを後世に残すためのモニュメントだよ!」
「はああ?! …そんなもん、いるか!」
「いるよ! ルイスが初めて公務に行った場所だよ?! ちゃーんと残しておかないと。なのに、ウルスが猛反対して、邪魔したんだよ!」
不満いっぱいに言う兄上。
…正気か?! 俺は、ため息をついて言った。
「ウルス、よくとめてくれた」
俺が感謝の気持ちをこめて、ウルスを見る。
ウルスは遠い目をして、答えた。
「ああ、あの時の俺、よくやった。ほんと、止めるの、大変だったんだぞ。フィリップが、学園長に直接、変なモニュメントを建てる話をつけてたんだ。王太子の言うことに、逆らえなかったんだろうな。気の毒に…。
後日、学園長が死んだ目をしながら、モニュメントを建てる企画書をもって、王宮を訪ねてきて、俺はたまげた…」
「ウルス、記憶力もおかしいんじゃない? 学園長は喜んで、ルイスの初公務を記念するモニュメントを建てようとしてくれてたよ?」
…そんなわけあるか。
「だが、フィリップは俺がどれだけ止めても、聞きゃしない。ノリノリでモニュメントのデザインを考え、学園長に指示しているのを見て、俺はすぐに、王妃様に連絡をした」
「そうだよ。よりによって、ウルスが、脳筋母上に告げ口したもんだから、母上が怒り狂ってやってきて、ぼくと大喧嘩だよ。せっかく考えたデザインも、びりびりに破かれたっけ。ひどいよね?」
と、恨みがましい目でウルスを見る兄上。
いやいや、ひどいのは兄上だろ…。
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