1 / 125
婚約解消
しおりを挟む
「婚約解消してくれ」
ピンク色の巻き毛の女性が、男性の腕にぶらさがっている。
小さい子どもなら、かわいいだろうけれど、大人の女性がすると、…おもしろすぎる。
しかも、男性は彫刻のような美貌で、無表情。
シュールな絵面で、笑えてくるわね…。
なんて、考えていると、
「聞いているのか? アリス」
と、その男性は、ピンク色の女性を腕にぶらさげたまま、無表情な顔で私に言った。
あ、いけない。婚約解消が嬉しすぎて、その後の話は、まったく聞いてなかったわ。
が、そこは、嘘も方便。
「はい、聞いています」
と答えながら、改めて、その男性を見る。
私、公爵令嬢アリス・ヴァルドの婚約者である、第二王子のルイス殿下。
私より5歳年上で、御年20歳。
背が高く、輝く金髪に、恐ろしく整った美貌は無表情でつくりものみたい。
そして、美しい青色の瞳は、今日も今日とて冷静な光を放っている。
とうてい、恋におぼれているようには見えない…。
それにしても、この女性、よく、こんな怖い人にぶらさがってられるわね…。
ま、それだけ愛されている自信があるんでしょう。
だって、私を見る目が、そりゃあもう、優越感にあふれている。
が、そんな目つきも、かわいく見えるほど、私としてはありがたい。
だって、王子妃なんて面倒すぎる。ずーっと嫌だった。
が、愛のためにというなら頑張れるのかもしれないが、あいにく、私はルイス殿下が苦手だ。
いつも無表情で、何を考えているのかわからないから。
おそらく、私に関心がないんだと思う。
初めて会ったのは、私が7歳。ルイス殿下が12歳のとき。
お人形のような、きれいな少年だったルイス殿下。
ドキドキしながら、一生懸命に挨拶したら、
「ちびだな」
と、無表情で返された。
挨拶をしたら、挨拶がかえってくると思っていた私。
まさか、悪口がかえってくるとは思わなくて、大泣きしてしまった。
はっきり言って、これが、トラウマになり、しばらくの間は、人と挨拶する時、どんな言葉がかえされるのか、変なドキドキにおそわれた。
もう会うことはないと思ったのに、まさかの婚約。
泣いていやがったけれど、王命で仕方ないと、私を溺愛しているお父様に散々謝られた。
それから月1回、お互いを知るためという名目で、二人だけのお茶会に強制参加させられた。
8年続いたが、ルイス殿下のことは、まったくわからなかった。
なぜって、会話というものがほぼないから。
会うたびに言われる挨拶の言葉は、
「小さいな」
だ。
どうやら、ルイス殿下にとって、私は背丈くらいしか目にとまるところがなかったんだと思う。
その後は、ほぼ無言。
たまに殿下が口をひらくのは、用意されたお菓子を指で差し、
「これ食べろ」
と、命令する時のみ。
私は指さされたお菓子を、無言で食べた。そう、修行のような、お茶会だったわね…。
こんな状況で好きになれというのは、いくら美形でも無理でしょ?
私としては、私を好きになってくれて、あたたかみのある人と結婚したい。
だから、ピンクさん、ほんと、ありがとうございます!
とりあえず、
「婚約解消、承りました。どうぞ、お二人でお幸せに」
と、微笑んで見せる。
ピンクさんは、うれしそうに、「ごめんねえ、アリスさん」と言いながら、
さらに強く、ルイス殿下の腕にぶらさがった。
反して、ルイス殿下の目は、更に冷たく光ったように見えた。
ピンク色の巻き毛の女性が、男性の腕にぶらさがっている。
小さい子どもなら、かわいいだろうけれど、大人の女性がすると、…おもしろすぎる。
しかも、男性は彫刻のような美貌で、無表情。
シュールな絵面で、笑えてくるわね…。
なんて、考えていると、
「聞いているのか? アリス」
と、その男性は、ピンク色の女性を腕にぶらさげたまま、無表情な顔で私に言った。
あ、いけない。婚約解消が嬉しすぎて、その後の話は、まったく聞いてなかったわ。
が、そこは、嘘も方便。
「はい、聞いています」
と答えながら、改めて、その男性を見る。
私、公爵令嬢アリス・ヴァルドの婚約者である、第二王子のルイス殿下。
私より5歳年上で、御年20歳。
背が高く、輝く金髪に、恐ろしく整った美貌は無表情でつくりものみたい。
そして、美しい青色の瞳は、今日も今日とて冷静な光を放っている。
とうてい、恋におぼれているようには見えない…。
それにしても、この女性、よく、こんな怖い人にぶらさがってられるわね…。
ま、それだけ愛されている自信があるんでしょう。
だって、私を見る目が、そりゃあもう、優越感にあふれている。
が、そんな目つきも、かわいく見えるほど、私としてはありがたい。
だって、王子妃なんて面倒すぎる。ずーっと嫌だった。
が、愛のためにというなら頑張れるのかもしれないが、あいにく、私はルイス殿下が苦手だ。
いつも無表情で、何を考えているのかわからないから。
おそらく、私に関心がないんだと思う。
初めて会ったのは、私が7歳。ルイス殿下が12歳のとき。
お人形のような、きれいな少年だったルイス殿下。
ドキドキしながら、一生懸命に挨拶したら、
「ちびだな」
と、無表情で返された。
挨拶をしたら、挨拶がかえってくると思っていた私。
まさか、悪口がかえってくるとは思わなくて、大泣きしてしまった。
はっきり言って、これが、トラウマになり、しばらくの間は、人と挨拶する時、どんな言葉がかえされるのか、変なドキドキにおそわれた。
もう会うことはないと思ったのに、まさかの婚約。
泣いていやがったけれど、王命で仕方ないと、私を溺愛しているお父様に散々謝られた。
それから月1回、お互いを知るためという名目で、二人だけのお茶会に強制参加させられた。
8年続いたが、ルイス殿下のことは、まったくわからなかった。
なぜって、会話というものがほぼないから。
会うたびに言われる挨拶の言葉は、
「小さいな」
だ。
どうやら、ルイス殿下にとって、私は背丈くらいしか目にとまるところがなかったんだと思う。
その後は、ほぼ無言。
たまに殿下が口をひらくのは、用意されたお菓子を指で差し、
「これ食べろ」
と、命令する時のみ。
私は指さされたお菓子を、無言で食べた。そう、修行のような、お茶会だったわね…。
こんな状況で好きになれというのは、いくら美形でも無理でしょ?
私としては、私を好きになってくれて、あたたかみのある人と結婚したい。
だから、ピンクさん、ほんと、ありがとうございます!
とりあえず、
「婚約解消、承りました。どうぞ、お二人でお幸せに」
と、微笑んで見せる。
ピンクさんは、うれしそうに、「ごめんねえ、アリスさん」と言いながら、
さらに強く、ルイス殿下の腕にぶらさがった。
反して、ルイス殿下の目は、更に冷たく光ったように見えた。
226
お気に入りに追加
1,778
あなたにおすすめの小説

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

公爵令息は妹を選ぶらしいので私は旅に出ます
ネコ
恋愛
公爵令息ラウルの婚約者だったエリンは、なぜかいつも“愛らしい妹”に優先順位を奪われていた。正当な抗議も「ただの嫉妬だろう」と取り合われず、遂に婚約破棄へ。放り出されても涙は出ない。ならば持ち前の治癒魔法を活かして自由に生きよう――そう決めたエリンの旅立ち先で、運命は大きく動き出す。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる