11 / 121
番外編
ムルダー王太子 2
しおりを挟む
それから、ライアンは、ぼくたちの集まりにこなくなった。
王妃である母上に、それとなく聞いてみた。
「ムルダーの側近になることを辞退してきたの。なんでも、騎士になりたいそうよ。ロンバルディア公爵は、王弟でいらっしゃるし、ご子息のライアン様は、ムルダーの従兄弟。側近になってくれたら、心強かったのだけれど…」
と、母上は残念そうに言った。
どうやら、ライアンは、いじめられていたことを言ってないみたいだ。
ちょっと、ほっとする。
それにしても、ライアンが騎士?
あんな弱いライアンが?!
まあ、でも、これで、ライアンは王宮に来なくなる。
そうなると、ライアンがクリスティーヌを見かけることもない。
なら、良かった…。
ライアンが、あんな目でクリスティーヌを見るのは、どうしても許せないからね。
そう思ったのに、なんで、王宮にライアンがいる?!
しかも、隣にいるのは、クリスティーヌ?!
窓のむこうの中庭で、真っ赤な髪と銀色の髪が並んで立っているのが見えた。
ふたりは何か話しているみたいだ。
ぼくは、思わず、手にもっていた教科書を床にたたきつけた。
そばにいたロスが、驚いたようにぼくを見る。
「…ロス。なんで、ライアンは王宮にいるんだ?」
ぼくの問いに、ロスが答えた。
「ライアンは、騎士団で稽古をつけてもらっているようです」
「騎士団?」
「ライアンの父であるロンバルディア公爵が、親友の騎士団長に頼んだみたいです。空いた時間に稽古をしてくれって。ほんと、笑っちゃいますよね? あんなに弱いライアンが、厳しい稽古なんてできるわけないのに…。また、泣いて逃げるんじゃないですか?」
そう言って、ロスは、意地悪い笑みをうかべた。
確かに、そうだ。あんな弱いライアンが、騎士になんてなれるわけない。
稽古だって、すぐにやめるだろう。
でも、騎士団に通うのなら、また、庭でクリスティーヌと会うかもしれない。
さっきのふたりが目に浮かぶ。
絶対に許せない! クリスティーヌは、ぼくの婚約者だ!
あっ、そうだ! いいことを思いついた…。
母上に頼んで、クリスティーヌに、庭に出ないようにしてもらえばいいんだ。
そうすれば、騎士団に通うライアンと接点はなくなる。
早速、ぼくは、クリスティーヌの教育を監督する母上にお願いした。
「クリスティーヌの休憩時間なんだけど、庭に出ないようにしてほしいんです」
驚いた顔をする母上。
「何故、そんなことを言うの、ムルダー? クリスティーヌは一生懸命がんばってるわ。短い休憩時間くらい好きにさせてあげなさい」
「だって、庭に出ると、変な奴に会うかもしれない。クリスティーヌが危ないよ」
「まあ、ムルダーったら!」
そう言うと、母上はクスクスと笑いだした。
「クリスティーヌがそんなに心配なの? …王宮の庭に危ない人はいないし、もちろん、護衛もいるわよ?」
「でも、心配で…。ぼく、勉強が手につかないんです!」
「それは、困ったわね…。しょうがないわ。クリスティーヌには、ムルダーが心配するから、一人で庭にでないように言っておくわね。休憩は部屋の中でしてもらいましょう」
「ありがとうございます、母上!」
これで、ライアンがクリスティーヌに会うことはない。
そう思ったら、やっと心が落ち着いた。
王妃である母上に、それとなく聞いてみた。
「ムルダーの側近になることを辞退してきたの。なんでも、騎士になりたいそうよ。ロンバルディア公爵は、王弟でいらっしゃるし、ご子息のライアン様は、ムルダーの従兄弟。側近になってくれたら、心強かったのだけれど…」
と、母上は残念そうに言った。
どうやら、ライアンは、いじめられていたことを言ってないみたいだ。
ちょっと、ほっとする。
それにしても、ライアンが騎士?
あんな弱いライアンが?!
まあ、でも、これで、ライアンは王宮に来なくなる。
そうなると、ライアンがクリスティーヌを見かけることもない。
なら、良かった…。
ライアンが、あんな目でクリスティーヌを見るのは、どうしても許せないからね。
そう思ったのに、なんで、王宮にライアンがいる?!
しかも、隣にいるのは、クリスティーヌ?!
窓のむこうの中庭で、真っ赤な髪と銀色の髪が並んで立っているのが見えた。
ふたりは何か話しているみたいだ。
ぼくは、思わず、手にもっていた教科書を床にたたきつけた。
そばにいたロスが、驚いたようにぼくを見る。
「…ロス。なんで、ライアンは王宮にいるんだ?」
ぼくの問いに、ロスが答えた。
「ライアンは、騎士団で稽古をつけてもらっているようです」
「騎士団?」
「ライアンの父であるロンバルディア公爵が、親友の騎士団長に頼んだみたいです。空いた時間に稽古をしてくれって。ほんと、笑っちゃいますよね? あんなに弱いライアンが、厳しい稽古なんてできるわけないのに…。また、泣いて逃げるんじゃないですか?」
そう言って、ロスは、意地悪い笑みをうかべた。
確かに、そうだ。あんな弱いライアンが、騎士になんてなれるわけない。
稽古だって、すぐにやめるだろう。
でも、騎士団に通うのなら、また、庭でクリスティーヌと会うかもしれない。
さっきのふたりが目に浮かぶ。
絶対に許せない! クリスティーヌは、ぼくの婚約者だ!
あっ、そうだ! いいことを思いついた…。
母上に頼んで、クリスティーヌに、庭に出ないようにしてもらえばいいんだ。
そうすれば、騎士団に通うライアンと接点はなくなる。
早速、ぼくは、クリスティーヌの教育を監督する母上にお願いした。
「クリスティーヌの休憩時間なんだけど、庭に出ないようにしてほしいんです」
驚いた顔をする母上。
「何故、そんなことを言うの、ムルダー? クリスティーヌは一生懸命がんばってるわ。短い休憩時間くらい好きにさせてあげなさい」
「だって、庭に出ると、変な奴に会うかもしれない。クリスティーヌが危ないよ」
「まあ、ムルダーったら!」
そう言うと、母上はクスクスと笑いだした。
「クリスティーヌがそんなに心配なの? …王宮の庭に危ない人はいないし、もちろん、護衛もいるわよ?」
「でも、心配で…。ぼく、勉強が手につかないんです!」
「それは、困ったわね…。しょうがないわ。クリスティーヌには、ムルダーが心配するから、一人で庭にでないように言っておくわね。休憩は部屋の中でしてもらいましょう」
「ありがとうございます、母上!」
これで、ライアンがクリスティーヌに会うことはない。
そう思ったら、やっと心が落ち着いた。
応援ありがとうございます!
40
お気に入りに追加
4,091
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる