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美しい虎
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「ドルネドさんから聞いた、アンヌ様のお茶会を開く際の希望は、招待客は指定した人だけにしてほしいということ。まあ、慣れていないから、少ない人数で開きたいっていう気持ちは当然なのだけれど……」
「確かに、それはわかります」
私はうなずいた。
「でも、それしか希望を言わないの。たとえば、どんなお茶会にしたいか聞いても、ドルネドさん経由の答えは、すべて任せます、だけなのよね……。だから、いくつか主催者の負担の少なそうなお茶会を提案してみたの。そうしたら、面倒になったのかしら。じゃあ、茶葉とお菓子だけ、当日、持っていきますから、あとはお任せしますって言ったの。いくらなんでも、どんな茶葉かお菓子かわからないものを、当日もってこられて、いきなり出せないものね。結局、すべてこちらで用意することになったわ」
「それって、このお茶会の主催はレーナおばさまですよね……」
「あ、でも、招待状だけは、あちらが用意するとすぐに言ったわね。でも、送ったのは、ララちゃんだけじゃないかしら」
「え!? それはどういう……」
「あちらが指定したお茶会のメンバーは、アンヌ様とガイガー様、王女様とそのおつきの方がひとり、あとは、ララちゃん、ルーファスと私だけなの。王宮で滞在している王女様にはガイガー様が直接お伝えされると言っていたし、私はお茶会を手伝う側だからなのでしょうけれど、私もルーファスにも届いていないわ」
「それなら、第二王子の屋敷で王女様だけ呼んでお茶をふるまえばいいのに……」
思わず、本音がもれてしまう。
「本当にそうよね……。私としては、何人か信用できるご婦人に来ていただこうと思っていたの。もちろん、ララちゃんのお母様で、私の親友のソフィアもね。ドルネドさんには、お茶会に慣れたご婦人を交えたほうが円滑にすすむからと提案したのだけれど、きっぱり断られたわ」
「ま、来られたらまずいんだろうね。でも、あっちが何を企んでいようが、これで一気にかたをつけられるのなら、関係ない人を巻き込まないよう、招待客は少ないほうがやりやすい。そう考えると、こっちにとっても、今度の茶会はいい機会だ」
ルーファスの切れ長の目がすっと細められた。
一瞬、頭に浮かんだのは、獲物を狙う美しい虎。
まあ、見たことはないんだけど……。
「いやいや、何もおこらず、無事にお茶会が終わってくれるのが一番大事だからね!?」
私は、あわててルーファスに言った。
「一番大事なのは、ララの心身を守ることだよ。そのためには僕は何だってする」
そう言って、不敵な笑みを浮かべたルーファス。
レーナおばさまが軽くため息をついた。
「なんだか、ますます、あの人に似てきたわね、ルーファス……。ララちゃん、ルーファスがこれから、ますます迷惑をかけるでしょうが、ごめんなさい。先にあやまっておくわね」
「迷惑? いえ、ルーファスはめちゃくちゃ優秀だし、心優しい天使ですから。今までもこれからも、迷惑なんてかけられないと思います。それに、ルーファスには、いつも心配してもらってばかりで、迷惑をかけているのは私のほうです」
「天使? ルーファスが? ララちゃん、大丈夫……?」
レーナおばさまが、とても驚いたような顔で私を見た。
えっと、なんで、そんなに驚いてるんだろう……?
その視線をさえぎるように、ルーファスが私の顔をのぞきこんできた。
「ララの迷惑なら、喜んで、かけてもらいたいけど」
とろけるように甘く微笑んだルーファス。
なんというか、まるで、迷惑がかけると美味しい甘いシロップのような感じに聞こえてくる。
その後は、試食と称して、ひたすら美味しいお菓子を沢山食べた私。
おなかもいっぱいになったところで、レーナおばさまが真剣な表情で、私に言った。
「ララちゃん。あちらの思惑がどうであれ、お茶会にはルーファスも私もいるし、主人も別室で待機しているわ。ララちゃんのことは私たちが全力で守るから。何も心配しないでね」
レーナおばさまの言葉に、なんて心強いんだろうと、心がふわっとあたたかくなる。
こんな優しい人たちに、迷惑はかけられないもんね。
当日は、私も油断せず、天敵にしっかり目をひからせておかなければ!
そして、ついに、お茶会の日……というか、私にとっては戦いの日がやってきた。
「確かに、それはわかります」
私はうなずいた。
「でも、それしか希望を言わないの。たとえば、どんなお茶会にしたいか聞いても、ドルネドさん経由の答えは、すべて任せます、だけなのよね……。だから、いくつか主催者の負担の少なそうなお茶会を提案してみたの。そうしたら、面倒になったのかしら。じゃあ、茶葉とお菓子だけ、当日、持っていきますから、あとはお任せしますって言ったの。いくらなんでも、どんな茶葉かお菓子かわからないものを、当日もってこられて、いきなり出せないものね。結局、すべてこちらで用意することになったわ」
「それって、このお茶会の主催はレーナおばさまですよね……」
「あ、でも、招待状だけは、あちらが用意するとすぐに言ったわね。でも、送ったのは、ララちゃんだけじゃないかしら」
「え!? それはどういう……」
「あちらが指定したお茶会のメンバーは、アンヌ様とガイガー様、王女様とそのおつきの方がひとり、あとは、ララちゃん、ルーファスと私だけなの。王宮で滞在している王女様にはガイガー様が直接お伝えされると言っていたし、私はお茶会を手伝う側だからなのでしょうけれど、私もルーファスにも届いていないわ」
「それなら、第二王子の屋敷で王女様だけ呼んでお茶をふるまえばいいのに……」
思わず、本音がもれてしまう。
「本当にそうよね……。私としては、何人か信用できるご婦人に来ていただこうと思っていたの。もちろん、ララちゃんのお母様で、私の親友のソフィアもね。ドルネドさんには、お茶会に慣れたご婦人を交えたほうが円滑にすすむからと提案したのだけれど、きっぱり断られたわ」
「ま、来られたらまずいんだろうね。でも、あっちが何を企んでいようが、これで一気にかたをつけられるのなら、関係ない人を巻き込まないよう、招待客は少ないほうがやりやすい。そう考えると、こっちにとっても、今度の茶会はいい機会だ」
ルーファスの切れ長の目がすっと細められた。
一瞬、頭に浮かんだのは、獲物を狙う美しい虎。
まあ、見たことはないんだけど……。
「いやいや、何もおこらず、無事にお茶会が終わってくれるのが一番大事だからね!?」
私は、あわててルーファスに言った。
「一番大事なのは、ララの心身を守ることだよ。そのためには僕は何だってする」
そう言って、不敵な笑みを浮かべたルーファス。
レーナおばさまが軽くため息をついた。
「なんだか、ますます、あの人に似てきたわね、ルーファス……。ララちゃん、ルーファスがこれから、ますます迷惑をかけるでしょうが、ごめんなさい。先にあやまっておくわね」
「迷惑? いえ、ルーファスはめちゃくちゃ優秀だし、心優しい天使ですから。今までもこれからも、迷惑なんてかけられないと思います。それに、ルーファスには、いつも心配してもらってばかりで、迷惑をかけているのは私のほうです」
「天使? ルーファスが? ララちゃん、大丈夫……?」
レーナおばさまが、とても驚いたような顔で私を見た。
えっと、なんで、そんなに驚いてるんだろう……?
その視線をさえぎるように、ルーファスが私の顔をのぞきこんできた。
「ララの迷惑なら、喜んで、かけてもらいたいけど」
とろけるように甘く微笑んだルーファス。
なんというか、まるで、迷惑がかけると美味しい甘いシロップのような感じに聞こえてくる。
その後は、試食と称して、ひたすら美味しいお菓子を沢山食べた私。
おなかもいっぱいになったところで、レーナおばさまが真剣な表情で、私に言った。
「ララちゃん。あちらの思惑がどうであれ、お茶会にはルーファスも私もいるし、主人も別室で待機しているわ。ララちゃんのことは私たちが全力で守るから。何も心配しないでね」
レーナおばさまの言葉に、なんて心強いんだろうと、心がふわっとあたたかくなる。
こんな優しい人たちに、迷惑はかけられないもんね。
当日は、私も油断せず、天敵にしっかり目をひからせておかなければ!
そして、ついに、お茶会の日……というか、私にとっては戦いの日がやってきた。
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