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理由がある

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お茶会当日、私は薄いピンク色のシンプルなデザインのドレスを着た。

「そのドレスもララに似合うけれど、少しシンプルすぎない? もっと華やかなドレスにしたら?」
と、不服そうなお母様。

普段、ほとんど、改まった席に行かない私は、いつもはお母様のアドバイスに従う。
が、今日だけは、お母様になんといわれようと、このドレスにする!

その理由は、なんといっても動きやすいから。
このドレスは、少し、のびる生地。

何か不測の事態がおこったとき、さっと動けるほうがいいもんね。
それに、もしも、靴を投げることがあっても、このドレスなら腕の動きも問題ない。

そして、もうひとつの理由は、今日、はいていく靴。

今持っている靴のなかで、一番、投げたら飛びそうな靴を考えたら、なんと、ピンク色の靴だったんだよね。

そう、奇しくも、11年前、第二王子に投げつけようとした靴もピンク色だった!
なんという運命! 天敵に挑むなら、この靴しかないと確信した。

そうなると、ドレスもあの時と同じピンク色にしたい。

でも、私が持っているドレスは、ブルー系のドレスが多い。
私の瞳の色がブルーだからだと思う。

だから、今日は、数少ないピンク系のドレスから機能性で選んだのよね。
そう、このドレスを選んだのには、私なりの理由があるのだ。

ということで、今日だけは絶対にゆずれない。

私は、お母様に力強く言い切った。

「今日はこのピンク色のドレスを着ていくから」

普段と違う私の態度に驚いたようなお母様。

「まあ、ララがそこまで言うなら、そのドレスにしましょう……。じゃあ、髪は少し華やかな感じにしたほうがいいわね」

「あ、そうだ。今日も、おばあさまからいただいた髪留めはつけたい」

私はそう言うと、手に持っていた、水色のアクアマリンがうめこまれた花の形をした髪留めをぎゅっとにぎった。

つけているだけで、いつも幸せな気分になる、私のお守り。
先日の王宮でもつけたけれど、今日もつけておきたい。

第二王子や王女様の近くにいて、勝手に不安になって、気持ちで負けたくないもんね。
自分の気持ちは自分であげて、笑って、悪いものをふきとばそう! と気合いを入れた。

私の意気込みが伝わったのか、お母様が優しく微笑んだ。

「わかったわ。おばあさまにいただいた、その髪留め、ララによく似合っているものね。きっと守ってくれるわ。今日は、その髪留めが目立つ髪型にしましょう。……それと、ララ。今日、私が一緒に行くことはできないけれど、ルーファス君もレーナもララのそばにいてくれる。それに、お茶会には参加しなくても、ロイド公爵様も、公爵邸で働くみなさんも、ララを見守ってくださっているわ。ありがたいことに、あなたには心強い味方がいっぱいいる。だから、何も心配することないのよ、ララ」

そう言って、お母様は私の頭をなでた。


 ◇ ◇ ◇


そして、出発の時間。
今日もルーファスが迎えに来てくれた。

いつもは自然におろしている前髪を少しうしろに流したルーファスは、いつもより、ぐっと大人っぽく見える。
ふと、暗めの紺色のジャケットの襟元で輝くラペルピンに目がいった。

「あれ? ルーファス、その襟元につけてるのって、もしかして、アクアマリン? 私の髪飾りと同じ色の宝石みたいだけど? ほら、今日もつけてるの」

そう言って、頭をひねって髪飾りを見せる。

ルーファスが、嬉しそうにうなずいた。

「そう、アクアマリン。ララの髪飾りと同じような色だったから、見つけた瞬間、買っておいたんだ。今日、ララが絶対つけてくると思ったから、僕もつけてきた」

「ルーファスにすごく似合ってる! なんか、おそろいみたいだね」

「そう、おそろい。今日は相手が相手だから、僕はララと共にあるってことを知らしめておこうと思って。ララに言ったこと、したことは、すべて僕にしたことと同じこと。その意思表示かな」

え? おそろいって、そんな意味があったの……?
でも、ルーファスとおそろいだと思うと、私の髪飾りが更にパワーアップした気がする。

すっかり無敵な気分になった私。
いつもどおり、ルーファスと楽しくおしゃべりしていると、あっという間に、馬車がロイド公爵邸に到着した。



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