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貴方を取り戻す (リオナ・ラミレス視点)
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ラミレスさんがミライザさんの居る地方局へ転勤になると聞き、申し訳ないけど私の気持ちは晴れやかだった。
これでチクチク影でマウントを取られる事もなくなるし、それに対し上手く処理出来ない自分の不甲斐なさに落ち込む必要もなくなる。
そして何より、“仕事上の妻”と揶揄される存在が夫の側から居なくなってくれるというのは、私の平穏な結婚生活においてかなり重要な事なのだ。
変な話だけど、旦那様を取り戻せた気持ち。
これが嬉しくないはずはなく、心が軽やかにならないはずもない。
「でもなんか倦怠感があるのよね……せっかく心は軽やかなのに体が重いなんて……」
ん?……そういえば、月のものがかなり遅れているような気がする。
元々やや不順気味なのだけど、今月はいつもに増して……。
「え、まさか……」
私はそうつぶやいて自身の下腹部に触れた。
◇◇◇◇◇
最悪の気分だ。
なぜこんな事に。
異動?……しかも地方局に?
王都から離れて、グライユル室長からも離れて?
なぜ?どうして彼の側に居られなくなる?
誰よりも彼を理解して支えてきた私なのに?
魔法省の職員なら異動転属は当たり前?
でも私はレグラン・グライユルにとって必要な人間なのよ?
それなのに彼は私を手放そうとしている。
私の将来を思って?私のために?
それは違う、違いますグライユル室長。
私の希望は貴方の側に居続けること。
ああでも、そうか……彼は私の気持ちを知らないから。
私が彼を愛していることを知らないから、
私のためを思ってキャリアアップのために手放そうとしているんだ。
こんな事になるならさっさと告白して想いを伝えていれば良かった。
貴方を愛していると。
誰よりも、貴方が私の想いを知らずに娶ってしまったあの小娘よりも、私の方が深く貴方を愛しているともっと早く伝えていればよかった。
そうね、私はもう迷わない。
一度告白を決めて、それでもまだ時期じゃないと止めにした告白を今こそしよう。
私のこの想いを、彼に教えてあげよう。
きっと彼は驚いて、そして喜んでくれると思う。
そう確信できるほどに私たちは長く時間を共有してきた。
だから彼に告白をして、王都を離れても縁が切れないようにしなくては。
そう。
私は彼を取り戻す。
でもどうせなら合理的にいきたい。
私の想いを知った彼が次に行動しやすいように、あの小娘にも同時に己の立場を解らせてやればいい。
そんな事を退勤後に考えながら省舎のエントランスを歩いていると、前方にトレア法務部長の姿が見えた。
珍しい。どうやら部長も今日は定時上がりのようだ。
私は少し離れた後方から、部長の背中に語りかける。
貴方の事は尊敬しているけど、自分の娘をグライユル室長に押し付けたのは許せない。
でもじきにその事を部長自身が早計だったと後悔するでしょう。
レグラン・グライユルの妻に相応しくない貴方の娘が出戻ってきた時に。
「ふっ……」
なんだか気分が高揚してきた。
早く、早くにグライユル室長にこの想いを伝えたい。
早く……そうね明日にでも行動に移すことにしよう。
でもそれにはまず。
私はリオナ・グライユルに火急の知らせと称して魔法電報にて連絡を入れた。
“午後の会議に必要な書類を室長がお忘れになられました。至急省舎までお届け願いたいのですが”
という文面でリオナ・グライユルが本省へと訪れるように仕向ける。
もちろん会議は今日ではないのでその書類は必要ない。
従ってグライユル室長の部屋にその書類があるはずなのだ。
そしてリオナ・グライユルはまんまと嘘の知らせを信じ、のこのこ省舎までやって来た。
事前に監査室の新人職員にリオナ・グライユルが来たら室長のオフィスに通すように伝えてある。
さぁ、リオナ・グライユル。
ドアの前で私がグライユル室長に告白し、彼が私を女性として意識する瞬間を見届けなさい。
ふふ。驚いて目を瞬かせる彼に私がキスをしたら、貴女はどう思うのでしょうね?
いかに自分がお邪魔虫であったのか、彼女はようやく理解するのだろう。
私は部屋の入り口付近に立って、少しだけ開けたドアからリオナ・グライユルが新人職員に訪いを告げているのを確認した。
そして徐に彼に声を掛ける。
「グライユル室長」
デスクに座り、書類に目を落とす彼は顔を上げる事なくそのままで返事をした。
「なんだ?」
私は力強く一歩を踏み込み、大きくひとつ深呼吸をして彼に告げた。
「私は室長に、ずっと告げたかった言葉があるんです」
──────────────────────
今日は短めでごめりんこ。
( ߹꒳߹ )スマソ…
さぁ、ホントにラストスパートですよ!
これでチクチク影でマウントを取られる事もなくなるし、それに対し上手く処理出来ない自分の不甲斐なさに落ち込む必要もなくなる。
そして何より、“仕事上の妻”と揶揄される存在が夫の側から居なくなってくれるというのは、私の平穏な結婚生活においてかなり重要な事なのだ。
変な話だけど、旦那様を取り戻せた気持ち。
これが嬉しくないはずはなく、心が軽やかにならないはずもない。
「でもなんか倦怠感があるのよね……せっかく心は軽やかなのに体が重いなんて……」
ん?……そういえば、月のものがかなり遅れているような気がする。
元々やや不順気味なのだけど、今月はいつもに増して……。
「え、まさか……」
私はそうつぶやいて自身の下腹部に触れた。
◇◇◇◇◇
最悪の気分だ。
なぜこんな事に。
異動?……しかも地方局に?
王都から離れて、グライユル室長からも離れて?
なぜ?どうして彼の側に居られなくなる?
誰よりも彼を理解して支えてきた私なのに?
魔法省の職員なら異動転属は当たり前?
でも私はレグラン・グライユルにとって必要な人間なのよ?
それなのに彼は私を手放そうとしている。
私の将来を思って?私のために?
それは違う、違いますグライユル室長。
私の希望は貴方の側に居続けること。
ああでも、そうか……彼は私の気持ちを知らないから。
私が彼を愛していることを知らないから、
私のためを思ってキャリアアップのために手放そうとしているんだ。
こんな事になるならさっさと告白して想いを伝えていれば良かった。
貴方を愛していると。
誰よりも、貴方が私の想いを知らずに娶ってしまったあの小娘よりも、私の方が深く貴方を愛しているともっと早く伝えていればよかった。
そうね、私はもう迷わない。
一度告白を決めて、それでもまだ時期じゃないと止めにした告白を今こそしよう。
私のこの想いを、彼に教えてあげよう。
きっと彼は驚いて、そして喜んでくれると思う。
そう確信できるほどに私たちは長く時間を共有してきた。
だから彼に告白をして、王都を離れても縁が切れないようにしなくては。
そう。
私は彼を取り戻す。
でもどうせなら合理的にいきたい。
私の想いを知った彼が次に行動しやすいように、あの小娘にも同時に己の立場を解らせてやればいい。
そんな事を退勤後に考えながら省舎のエントランスを歩いていると、前方にトレア法務部長の姿が見えた。
珍しい。どうやら部長も今日は定時上がりのようだ。
私は少し離れた後方から、部長の背中に語りかける。
貴方の事は尊敬しているけど、自分の娘をグライユル室長に押し付けたのは許せない。
でもじきにその事を部長自身が早計だったと後悔するでしょう。
レグラン・グライユルの妻に相応しくない貴方の娘が出戻ってきた時に。
「ふっ……」
なんだか気分が高揚してきた。
早く、早くにグライユル室長にこの想いを伝えたい。
早く……そうね明日にでも行動に移すことにしよう。
でもそれにはまず。
私はリオナ・グライユルに火急の知らせと称して魔法電報にて連絡を入れた。
“午後の会議に必要な書類を室長がお忘れになられました。至急省舎までお届け願いたいのですが”
という文面でリオナ・グライユルが本省へと訪れるように仕向ける。
もちろん会議は今日ではないのでその書類は必要ない。
従ってグライユル室長の部屋にその書類があるはずなのだ。
そしてリオナ・グライユルはまんまと嘘の知らせを信じ、のこのこ省舎までやって来た。
事前に監査室の新人職員にリオナ・グライユルが来たら室長のオフィスに通すように伝えてある。
さぁ、リオナ・グライユル。
ドアの前で私がグライユル室長に告白し、彼が私を女性として意識する瞬間を見届けなさい。
ふふ。驚いて目を瞬かせる彼に私がキスをしたら、貴女はどう思うのでしょうね?
いかに自分がお邪魔虫であったのか、彼女はようやく理解するのだろう。
私は部屋の入り口付近に立って、少しだけ開けたドアからリオナ・グライユルが新人職員に訪いを告げているのを確認した。
そして徐に彼に声を掛ける。
「グライユル室長」
デスクに座り、書類に目を落とす彼は顔を上げる事なくそのままで返事をした。
「なんだ?」
私は力強く一歩を踏み込み、大きくひとつ深呼吸をして彼に告げた。
「私は室長に、ずっと告げたかった言葉があるんです」
──────────────────────
今日は短めでごめりんこ。
( ߹꒳߹ )スマソ…
さぁ、ホントにラストスパートですよ!
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