真実の愛の為に冤罪で婚約破棄をされる公爵令嬢〜魅了魔法を使う魔女ですか。ならば望み通りに魔女になってあげましょう〜

茶坊ピエロ

文字の大きさ
115 / 217

113

しおりを挟む
 雷槍を食らったレインは腕を抑えながら蹲っていた。
 地面に手をつき、その手元にはドロドロに溶けた剣がある。

「うっぐ!いってぇ!」

「ほぅ、我の魔法を受け止めるか。実に面白い」

「なんなんやこいつ!おい、シリィ!」

 レインの腕は鮮やかな雷の模様が浮き出ている。
 落雷を受けたときにできる火傷だった。

「わからない。私の全知の片眼鏡モノクルデウスでも解析できないの!」

「ほぅ、解析の神器か。しかし種のまま。でも懐かしいな。我もこの雷鳴の転輪アダマスマキア雷鳴の首巻アダマスユーピテルから進化するまで時間がかかったな。してそこの少女。その神器の種が我に作用しないのは、我がマキアが貴様のデウスより上の存在だからだ」

「どういうこと?」

「一々説明してやるのも良いが、我にも時間がないのでな。冥土で知っている者にでも聞け!ケラウノス!」

「させないよ!」

 アハトは自身に雷耐性の魔法を全力でかけて、ケラウノスをはじいた。
 おかげでレインほどの火傷は負わなかった者の、やはり剣が溶けてしまった。

「くっ!耐性を付けたのに平気で貫通してくるのか。実に厄介だね」

「ほぅ、面白い。今回の降臨は実に骨のある相手と見た。それではケラウノスを二つ放つとしよう」

「へぇ、精霊神ってのは二つの魔法を同時に放てるんだ」

「何言ってるのよ、まずいわよアハト!」

「シリィを連れて離れろリィナ」

「駄目よアハト!あなたが死んだら帝国は誰が変えるの?」

「勘違いしないでよ。負けたわけじゃない。こっちには帝国最強の聖騎士と魔女がいるんだから」

 アハト、そしてレインも痛みに我慢こそすれ諦める様子はない。
 ゼウスからケラノウスが放たれると同時に、アハトの前にはルルシアが、レインの前にはカインが入ってくる。

「超級防御魔法:ライトニングアイテル!」

「聖なる力よ!我が同志を守護し、薙ぎ払え!」

 ルルシアが魔法でケラウノスを霧散させ、カインが聖剣で薙ぎ払った。
 そしてそのままディーラがレインをアハトの下まで抱え上げて、ロアーナが二人の治療に入る。

「ほぅ、まさか完全打ち消されたり、切り裂かれたりするとは思わなんだ。今回は本当に大当たりだ。今までこの槍を完璧に乗り切った者はでも見たことがない」

「とんでもないわよ。アハトとレインが倒れてたから全力で魔力を展開したけど、それでも衝撃は伝わったわ」

「へぇ、お前はへなちょこだもんな!俺はこの程度なんともねぇぜ!」

 ルルシアは悪態を吐いてカインは強がりを見せるものの、現状はあまりよろしくなかった。
 たかが一つの魔法で全力を出さなきゃいけず、ゼウスはまだピンピンしている。
 このままいけばガス欠になるのは自分達だとわかっているためだった。

「遅いでロア。ひやひやしたわ」

「ほんとだよ。ディラもあの槍が撃つ前に防げたでしょ」

「レインもアハトも無駄口叩かないで。治療したらまた参戦だからね。リィナ、悪いんだけどレインに剣を貸してあげて」

「え、あ、うん。わかった」

「ほんまか。二人じゃ敗色は変わらへんしな。ありがとうな」

「アハトは私の剣を貸しますわね。ちゃんと返さないと許さないわ」

「あんな一撃放つ奴ともう一度戦わせようなんてディラ、君までカインの性格が移ったかい?」

「今はそんな場合じゃありませんわ。さっさと治療されたなら行く!」

 二人ともすぐに治療を受けて立ち上がり戦いに参戦を決める。
 アハトとレインはルルシアの横に立ち上がった。

「ほぅ、さっきの二人も立ち上がるか。我は嬉しいぞ!」

「みんな聞いて。あいつの身体のレーゼという冒険者の筋肉は悲鳴をあげてるわ!あいつの強さに身体が追い付いてないの!」

「へぇ、じゃあ耐久すればなんとかなるってことじゃんか」

「馬鹿言わないでよカイン。次も確実に受け止められるかわからない威力だったのよ」

「そんなん気合だ!どのみち俺達しか受け止められねぇんだから覚悟決めろルル」

 反論をするも顔は無理とは言っておらず、二人とも口角を挙げて何度でも受け止めてやるという姿勢だった。
 二人のその態度に、レインは呆れながらアハトは頼もしいなと思いながら笑みを零す。

「二人ともドアホやな。せやけど限界があるってゆーんは朗報や」

「そうだね。防御はルルとカインに任せて、俺達はアイツを倒す。これでいいかい?」

「自分、あの攻撃受けといてよくそんなこと言えるなぁ。あいつ自身が雷を纏うような防御魔法を使ったらどうするんや」

「そんときはあいつの身体と、俺かレインのどっちかが黒焦げになるだけさ」

「はっ、自爆を勘定に入れんなや!」

「最低限雷耐性の付与は全力でかけた。俺達は突っ込むから援護よろしくね二人とも!」

「えぇ」

「おう!」

 本来であれば第二皇子であり皇族のアハトを矢面に立たせるのは臣下としては正しくはない。
 しかしこの場にいる全員はそうは思わなかった。
 アハトは実力者で自分達の横に並ぶ立派な皇帝であると。

「ほぅ、確かに我の肉体の依り代には限界がある。そしてこいつらのこの自信。我をして後ずさりするほどの気合の入り方だな!」

「俺がお前を討伐するよ。刺し違えてでもね」

「悪いなアハト。それをするんわワイや」

「我は闘いを好む。そしてこの身体は限界まで使う。貴様達全員を消すことで、我を呼んだ者の願いを叶えるとしよう」

 過去、精霊神を呼んだ者が倒せたケースはなく、依り代の身体の限界まで暴れた記録しかなかった。
 そのため、精霊神というものを見た人間が生き残ったことはなかった。
 故に生き残るだけで歴史的快挙の闘いだ。
 精霊神とルルシア達の最終ラウンドが開始された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~

ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。 絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。 彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。 営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。 「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」 転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。 だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。 ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。 周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。 「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」 戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。 現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。 「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」 これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...