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第灸話
郷帰り後々、犯人捜しに叉焼炒飯
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里帰り当日。
早朝から茶色の襦裙に着替え、髪の毛をほんの少し纏め、後宮に来た時と同じ格好にした夜鷹は、風呂敷で小物や服の入った鳥さん模様の巾着を包んで背負い、いざ出発と思ったら。
雷鵻が郷帰り用の馬車の近くにいた。
「雷鵻殿下! 何故ここに……?」
「はぁ……お前な! なんで俺に言わずにここから出ようとしているんだ! せめて事前連絡しろ!兄貴は聞いてたのに俺だけ知らなかったし!小狼も行きたいと言うし……! こうなったらやけだ! 俺もついて行く!」
「えぇ……追跡者はやめてくださいませんか。怖いので」
「ちげーよ! 護衛だ! ご・え・い!」
「あぁ。そういう事ならまぁ、大丈夫です」
「なんだ不安か? 俺がついているんだから大丈夫だ!」
(大丈夫じゃないし、ついてこなくてもいいんだけどなぁ……めんどくさいけどいいや。いざとなったら護って貰おう。その為にきっとついてきたんだから。間違っても棘飴では無い筈)
夜鷹は1人納得した。
「いえ、心強いです。行きましょう」
「あぁ」
雷鵻と夜鷹の2人は、馬車に乗って華街へと赴いた。
暫くすると、沢山の出店や妓女のいる凰楼館(ほうろうかん)がある。
馬車は一旦そこで止まり、夜鷹はそこを降りた。
雷鵻もいきなり護衛対象が降りたので、慌てて同じように降りた。
「おい、なんでいきなり降りたんだ?」
「一応、知り合いがいるので」
話していると、やけに洒落た服を着た人達が鳳楼館から出てきていた。
「やあほー! 夜鷹!」
「久しぶりだねぇ、鷹ちゃん」
「ヨタちゃん、久しぶり~」
「あ! お姉ちゃーん! 楼のばあちゃーん! 夏翠! ただいまぁー!」
夜鷹に"お姉ちゃん”と呼ばれたのが、妓楼の妓女の中での1番人気な楼姫の1人、寧寧(ねいねい)。楼のおばあちゃんこと鳳楼館の主人、悠婆さん。通称"銭婆”。
"夏翠”と呼ばれたのが夜鷹の幼なじみであり大親友の杢 夏翠 だ。
今は楼の一労働者をしていて、会計の手伝いを悠婆と一緒にしていると文で連絡してもらった事がある。
「元気だったかい? 客は何処だ? その隣の人は……?」
「あ、お客さんじゃあ無いよ! 陛下の弟君の雷鵻殿下だから!」
「そうか……違うのね。残念」
「その言い方は直せないのか? あと、此奴の護衛で来ただけだからお構いなく」
「なんで直す必要があるんです?」
「ふっ……くくっ、お前は見ていて全く飽きないな」
「殿下の笑いの壷、分からないんですけど……」
「知らなくてもいい事だ」
「はぁ……」
雷鵻に夜鷹が呆れていると、夏翠がじっとこちらを見ていた。
「夏翠どうしたん? 話聞くよ?」
「……ヨタちゃん、お婿さんいるの?」
「え、居ないよ」
「本当?」
「ほんとほんと。作る気も起きんし」
「へぇ~? ならいいけど、上客ばんばん呼んで貰わないとおばあちゃんがお金稼げないから、よろしくね。あと変な虫寄ってきたら追い払ってやるから!」
「分かってるよ、ありがと夏翠。一旦家に戻るから、また後で話そうね」
「うん。あ、そういえば夏蓮は見なかった?」
「……うん、見てないよ」
「そっか。どこに行ったんだろう」
「一緒に探そうか?」
「ううん、大丈夫。それよりも早く羚苑おじいちゃんのところ行ってきなよ。身売りされたって聞いて心配してたよ?」
「……うん。じゃあまた後で」
「後でね~」
夏翠は自身の双子の弟であり行方不明の夏蓮の話をした後、鳳楼館へと戻っていった。相変わらず忙しなくて、楽しそうで、危なっかしくて優しい幼なじみだ。
夏翠達と別れた後は、雷鵻と共に歩いて村へ向かった。
素朴だが他の家よりかは遥かに大きい夜鷹の家に着くと、己の師匠である羚苑がフライパンを握っていた。
非常に危なっかしそうだったので、支えながら一緒に料理を作った。
その様子を、雷鵻はいつものような減らず口を叩かず、無言で見守っていた。
今回作った料理は、叉焼(チャーシュー)の入ったお肉たっぷり炒飯だ。
叉焼は叉焼で伽厘粉(カレー粉)をまぶしてフライパンでよーく焼いた。
その叉焼を四角く切って麦米と一緒に炒め、次に人参、玉菜(キャベツ)、そして卵の黄身を入れ、よく炒めて振って陶磁器に移したら瞑家流、叉焼たっぷり炒飯の完成だ。
これには雷鵻も目を輝かせていたので、夜鷹は早速手帳にレシピを書いて人数分の匙を用意し、「いただきます!」をした。
食べてみたらやはり美味しかった。流石師匠と作ったご飯だと思った夜鷹は、炒飯を沢山食べた。
その後は雷鵻を羚苑に紹介し、人数分の自分の体を癒す効果のある羽が入った羽毛布団を広げ、皆で寝た。
翌日。
夏翠の元々大きい声を更に二倍大きくした声で起こされたので、夜鷹は機嫌が悪かったのだが、「夏蓮は生きている」と言われたので驚愕した。
「え、生きてるの?!」
「うん、さっきおばあちゃんのところに文が来ててさ! "夏蓮から連絡があった”って!」
「良かった……! 生きていて……!」
「うん……うんっ! それでね!夏蓮は極東の国に行くんだって! 元気だってさ!」
「そっか……いつか絶対そこに向かうね!」
「うん! そうだ、朝ご飯はこっちで食べない? もう出来てるよ」
「本当? 行く! 師匠~、朝ご飯食べに行こ!」
「分かった。先に行っておいでな」
「うん!」
夜鷹は朝ご飯に釣られて夏翠と一緒に鳳楼館へ急いだ。
続く。
早朝から茶色の襦裙に着替え、髪の毛をほんの少し纏め、後宮に来た時と同じ格好にした夜鷹は、風呂敷で小物や服の入った鳥さん模様の巾着を包んで背負い、いざ出発と思ったら。
雷鵻が郷帰り用の馬車の近くにいた。
「雷鵻殿下! 何故ここに……?」
「はぁ……お前な! なんで俺に言わずにここから出ようとしているんだ! せめて事前連絡しろ!兄貴は聞いてたのに俺だけ知らなかったし!小狼も行きたいと言うし……! こうなったらやけだ! 俺もついて行く!」
「えぇ……追跡者はやめてくださいませんか。怖いので」
「ちげーよ! 護衛だ! ご・え・い!」
「あぁ。そういう事ならまぁ、大丈夫です」
「なんだ不安か? 俺がついているんだから大丈夫だ!」
(大丈夫じゃないし、ついてこなくてもいいんだけどなぁ……めんどくさいけどいいや。いざとなったら護って貰おう。その為にきっとついてきたんだから。間違っても棘飴では無い筈)
夜鷹は1人納得した。
「いえ、心強いです。行きましょう」
「あぁ」
雷鵻と夜鷹の2人は、馬車に乗って華街へと赴いた。
暫くすると、沢山の出店や妓女のいる凰楼館(ほうろうかん)がある。
馬車は一旦そこで止まり、夜鷹はそこを降りた。
雷鵻もいきなり護衛対象が降りたので、慌てて同じように降りた。
「おい、なんでいきなり降りたんだ?」
「一応、知り合いがいるので」
話していると、やけに洒落た服を着た人達が鳳楼館から出てきていた。
「やあほー! 夜鷹!」
「久しぶりだねぇ、鷹ちゃん」
「ヨタちゃん、久しぶり~」
「あ! お姉ちゃーん! 楼のばあちゃーん! 夏翠! ただいまぁー!」
夜鷹に"お姉ちゃん”と呼ばれたのが、妓楼の妓女の中での1番人気な楼姫の1人、寧寧(ねいねい)。楼のおばあちゃんこと鳳楼館の主人、悠婆さん。通称"銭婆”。
"夏翠”と呼ばれたのが夜鷹の幼なじみであり大親友の杢 夏翠 だ。
今は楼の一労働者をしていて、会計の手伝いを悠婆と一緒にしていると文で連絡してもらった事がある。
「元気だったかい? 客は何処だ? その隣の人は……?」
「あ、お客さんじゃあ無いよ! 陛下の弟君の雷鵻殿下だから!」
「そうか……違うのね。残念」
「その言い方は直せないのか? あと、此奴の護衛で来ただけだからお構いなく」
「なんで直す必要があるんです?」
「ふっ……くくっ、お前は見ていて全く飽きないな」
「殿下の笑いの壷、分からないんですけど……」
「知らなくてもいい事だ」
「はぁ……」
雷鵻に夜鷹が呆れていると、夏翠がじっとこちらを見ていた。
「夏翠どうしたん? 話聞くよ?」
「……ヨタちゃん、お婿さんいるの?」
「え、居ないよ」
「本当?」
「ほんとほんと。作る気も起きんし」
「へぇ~? ならいいけど、上客ばんばん呼んで貰わないとおばあちゃんがお金稼げないから、よろしくね。あと変な虫寄ってきたら追い払ってやるから!」
「分かってるよ、ありがと夏翠。一旦家に戻るから、また後で話そうね」
「うん。あ、そういえば夏蓮は見なかった?」
「……うん、見てないよ」
「そっか。どこに行ったんだろう」
「一緒に探そうか?」
「ううん、大丈夫。それよりも早く羚苑おじいちゃんのところ行ってきなよ。身売りされたって聞いて心配してたよ?」
「……うん。じゃあまた後で」
「後でね~」
夏翠は自身の双子の弟であり行方不明の夏蓮の話をした後、鳳楼館へと戻っていった。相変わらず忙しなくて、楽しそうで、危なっかしくて優しい幼なじみだ。
夏翠達と別れた後は、雷鵻と共に歩いて村へ向かった。
素朴だが他の家よりかは遥かに大きい夜鷹の家に着くと、己の師匠である羚苑がフライパンを握っていた。
非常に危なっかしそうだったので、支えながら一緒に料理を作った。
その様子を、雷鵻はいつものような減らず口を叩かず、無言で見守っていた。
今回作った料理は、叉焼(チャーシュー)の入ったお肉たっぷり炒飯だ。
叉焼は叉焼で伽厘粉(カレー粉)をまぶしてフライパンでよーく焼いた。
その叉焼を四角く切って麦米と一緒に炒め、次に人参、玉菜(キャベツ)、そして卵の黄身を入れ、よく炒めて振って陶磁器に移したら瞑家流、叉焼たっぷり炒飯の完成だ。
これには雷鵻も目を輝かせていたので、夜鷹は早速手帳にレシピを書いて人数分の匙を用意し、「いただきます!」をした。
食べてみたらやはり美味しかった。流石師匠と作ったご飯だと思った夜鷹は、炒飯を沢山食べた。
その後は雷鵻を羚苑に紹介し、人数分の自分の体を癒す効果のある羽が入った羽毛布団を広げ、皆で寝た。
翌日。
夏翠の元々大きい声を更に二倍大きくした声で起こされたので、夜鷹は機嫌が悪かったのだが、「夏蓮は生きている」と言われたので驚愕した。
「え、生きてるの?!」
「うん、さっきおばあちゃんのところに文が来ててさ! "夏蓮から連絡があった”って!」
「良かった……! 生きていて……!」
「うん……うんっ! それでね!夏蓮は極東の国に行くんだって! 元気だってさ!」
「そっか……いつか絶対そこに向かうね!」
「うん! そうだ、朝ご飯はこっちで食べない? もう出来てるよ」
「本当? 行く! 師匠~、朝ご飯食べに行こ!」
「分かった。先に行っておいでな」
「うん!」
夜鷹は朝ご飯に釣られて夏翠と一緒に鳳楼館へ急いだ。
続く。
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