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第七章 黒闇の闇の中で
16 出会いと別れ
しおりを挟むそんな藤寺クリニックは完全予約制である。
人気がありまた予約殺到……ってチケット売り場じゃあなしと突っ込みどころ満載な気がするけれども、確かに私の時も順番が来るまでにかなりの時間を要していた。
予約する患者さんが多くて、なのに先生は一人だけ。
偶に捌き切れなくて新患受付をストップする事も少なくはない。
また今だからこそのカミングアウトになるけれど、藤寺クリニックより連絡が着た時はぶっちゃけ何の目的で……と思ったのは内緒って、もうこの時点で内緒はないでしょ。
抑々クリニックへ予約を入れたのは妹であり私ではない。
確かに昔そんな事を妹が言っていたかもしれない。
でもねぇ鬱の急性期真っ盛りな私へ伝えたとしてもだ。
特にあの頃は軽い認知症に陥った様に私は短期の記憶障害を生じていた。
新しい事やほんの少し前……一日も経ってはいない記憶をすこーんと綺麗忘れる事もあれば疎らな時もある。
忘れる事に恐怖を抱いた私はその時々にあった事をノートへ、然も鬱を発症してから私の手は何故かよく小刻みに震えるのだ。
その震える手で書けば当然ミミズの這った様な文字となるのは仕方がない。
実はこの件に関しても地味~に傷ついていたりする。
まあ書道家迄とは流石に烏滸がましくて絶対に言えないが、でもそこそこに文字を書けてはいたのである。
それが今現在も……。
本当にパソコンが発達していて良かったと、しみじみ心の中で感謝してしまう今日この頃だ。
そして話は戻り奥野先生と別れを告げた翌週だったと思う。
名前を呼ばれ母と共に扉の中へと入ればそこは書斎の様な感じの部屋だった。
沢山の書類や参考書の中で所狭しと存在を密かに主張するパソコン。
うん、お世辞にも先生の机の上は片付いているとは昔だけではなく今も言えない。
大型わんこの様なだけどほんの少しだけ強面風。
それからの立派なビール腹と貫禄たっぷりな眼鏡を掛けているのが藤寺先生。
今も現在進行形で私の主治医である。
奥野先生がしなやかな柳の木ならば、藤寺先生はどっっしりと大きな縄文杉なのかもしれない。
そして藤原先生よりの紹介?
同級生繫がりと言うのだろうか。
私の心臓を心配してくれた藤寺先生は友人でもある循環器と言えば京都で一番のM病院の先生を紹介してくれた。
然も電話で……。
当時は院長先生で今は顧問だったかな。
森本先生も同じく現在進行形で今も私の主治医である。
めっちゃダンディーで優し気な紳士って感じではなくそのもの。
色々紆余曲折を経て私は二人の先生のお蔭で今の自分を取り戻す事が出来たのだと思う。
勿論それは先生達だけではない。
こんな私を一気に日の当たる世界へ引き上げたのはまた別の存在である。
でも出会いがあれば別れがある。
Sクリニックの院長。
また奥野先生やT医院の先生も然りである。
そうして何時か藤寺先生と森本先生とも何れお別れの日が来るのだろうか。
もしその時が来るのであれば私は健康な身体と心を持つ事が出来た時だと信じたい。
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