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第一章 鬱と診断されて安堵する精神状態
12 バッカじゃない!!
しおりを挟むそれ故救急車を呼び病院へ搬送されようが、また自宅でうんうん唸って寝転がっていたとしても然して余り変わりはないのである。
心筋梗塞を起こしている訳でもない。
狭心症の発作からの悪くて心不全。
まあ状況が悪ければ死ぬ事もなくはない。
しかし生憎ながらまだ意識を失うまでに至ってはいない。
だとすれば場所なんて何処でも同じ。
抑々治療法は変わらないのである。
ならば私は自宅の寝室で暗闇の中一人静かに過ごす方が心の安定は少しは図れると言うもの。
急性期の鬱状態で家族ですら真面に話をするだけでなく、顔や視線を合わす事さえ不安と恐怖で苛立つと言うのにだ。
白衣アレルギーで同業者に囲まれるだなんて何かの公開処刑以外あり得ない。
ただ気になるのは明らかな尿量の減少とちゃぷちゃぷと胸に感じる水の貯留感。
それでもニトロとテープに内服薬で何とかその場を凌いできた。
でも流石に数回しか面識がないとは言えクリニックの院長の暴言に、あの頃の私はショックで泣く事しか出来なかった。
今なら、そう今であれば冷静に切り返す事も出来ただろう。
本当に今更……。
そしてそんな判断が出来る様になるまで凡そ八年と言う年月が必要だったのである。
鬱とは本当に恐ろしい病である。
先ず普通に外傷等表面的で実にわかりやすいもの程他人は可哀想にと素直に共感出来れば同情もしてくれる。
しかし心の病は形として誰の目にも一切見えやしないもの。
約二十年看護を仕事としてきた私も患者さんの抱える心の傷が見えなかった一人なのである。
他人の痛みに寄り添い共感してきた心算が……である。
ある程度の怪我や病気は予測の出来るしまた共感性もあり、マニュアルや参考書からの経験でそれなりに対応も出来ていた。
勿論看護とは人それぞれに個々の違いと言うものがある。
でもそれを理解した上で患者さん個人個人に沿った看護計画が立てられそれに沿って看護は粛々と行われていく。
だが心の病は目に見える病とは根本的に違う。
マニュアルや参考書等あってないに等しい。
その事に気づかされたのは他の誰でもない、自分自身が生まれて初めて心の病に罹った事で理解が出来たのである。
とは言え鬱に関してだけなのだが……。
そう、あのクリニックへ通院する患者さん一人一人がそれぞれの環境の下で患った一つ一つ似ている様で全く違う病。
なのに院長は何故か皆同じ様に――――。
『薬を飲んで眠りましょう』
バッカじゃない!!
本当に今ならば大きな声で言い返しも出来ただろう。
でもあの頃の私は何もかもが一杯一杯で、一度は破裂したものの直ぐに破裂寸前の空気と言う名のストレスがパンパンに詰め込まれた風船の様だったのである。
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