【完結】希望 ~差し伸べられたのは貴方の魂の光でした

Hinaki

文字の大きさ
14 / 130
第一章  鬱と診断されて安堵する精神状態

12  バッカじゃない!!

しおりを挟む


 それ故救急車を呼び病院へ搬送されようが、また自宅でうんうん唸って寝転がっていたとしても然して余り変わりはないのである。

 心筋梗塞を起こしている訳でもない。
 狭心症の発作からの悪くて心不全。
 まあ状況が悪ければ死ぬ事もなくはない。
 

 しかし生憎ながらまだ意識を失うまでに至ってはいない。
 だとすれば場所なんて何処でも同じ。
 抑々そもそも治療法は変わらないのである。

 ならば私は自宅の寝室で暗闇の中一人静かに過ごす方が心の安定は少しは図れると言うもの。

 急性期の鬱状態で家族ですら真面に話をするだけでなく、顔や視線を合わす事さえ不安と恐怖で苛立つと言うのにだ。
 白衣アレルギーで同業者に囲まれるだなんて何かの公開処刑以外あり得ない。

 ただ気になるのは明らかな尿量の減少とちゃぷちゃぷと胸に感じる水の貯留感。
 それでもニトロとテープに内服薬で何とかその場を凌いできた。

 でも流石に数回しか面識がないとは言えクリニックの院長の暴言に、あの頃の私はショックで泣く事しか出来なかった。

 今なら、そう今であれば冷静に切り返す事も出来ただろう。
 本当に今更……。

 そしてそんな判断が出来る様になるまで凡そ八年と言う年月が必要だったのである。


 鬱とは本当に恐ろしい病である。
 先ず普通に外傷等表面的で実にわかりやすいもの程他人は可哀想にと素直に共感出来れば同情もしてくれる。

 しかし心の病は形として誰の目にも一切見えやしないもの。

 約二十年看護を仕事としてきた私も患者さんの抱える心の傷が見えなかった一人なのである。

 他人の痛みに寄り添い共感してきた心算が……である。

 ある程度の怪我や病気は予測の出来るしまた共感性もあり、マニュアルや参考書からの経験でそれなりに対応も出来ていた。

 勿論看護とは人それぞれに個々の違いと言うものがある。

 でもそれを理解した上で患者さん個人個人に沿った看護計画が立てられそれに沿って看護は粛々と行われていく。


 だが心の病は目に見える病とは根本的に違う。

 マニュアルや参考書等あってないに等しい。
 その事に気づかされたのは他の誰でもない、自分自身が生まれて初めて心の病に罹った事で理解が出来たのである。

 とは言え鬱に関してだけなのだが……。


 そう、あのクリニックへ通院する患者さん一人一人がそれぞれの環境の下でわずらった一つ一つ似ている様で全く違う病。

 なのに院長は何故か皆同じ様に――――。



 バッカじゃない!!

 本当に今ならば大きな声で言い返しも出来ただろう。

 でもあの頃の私は何もかもが一杯一杯で、一度は破裂したものの直ぐに破裂寸前の空気と言う名のストレスがパンパンに詰め込まれた風船の様だったのである。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...