13 / 130
第一章 鬱と診断されて安堵する精神状態
11 攣縮性狭心症
しおりを挟む帰宅して直ぐに私はベッドの住人へと戻っていく。
クリニックで院長に拒絶の言葉を放たれたストレスも相まって感情の起伏は何時もより激しく、それに伴い心臓は過度のストレスで発作を起こしてしまった。
そうなればニトロを幾ら舌下しても症状は思う様に改善せず、だからと言って母が促すままに救急車へ乗りたくはない!!
抑々救急車と言うものはこれまで仕事で十分乗っていたのだ。
また救急車とは自分以外の患者さんと乗車するものであって、私自身がへ乗るものではないし乗りたくもない!!
何て訳の分からない理由をあの頃……多分それは今でも余り変わらないと思う。
それは救急車が、病院が嫌いと言う訳ではない。
ただ自分の弱った姿を同業者に見られたくはないだけ。
それに救急車で搬送され病院へ行ったとしても状況が好転する訳でもない。
確かに現状の発作は抑えられるだろうけれどもである。
私の狭心症は一般的な冠動脈と言う心臓に繋がる太い血管の狭窄によるものではなく、心臓の周りに纏わりつく幾つもの細い血管がパーマ状に縮れ、過度なストレスを負えばそれらの血管がキュッと狭窄と痙攣によって発作を起こすと言うもの。
先ず狭心症の治療対象である有意狭窄とは簡単に言えば心臓カテーテルのステント治療が行う事の出来る太い血管。
冠動脈の様に太くも丈夫な血管ならば細いカテーテルを通す治療にも堪えられるからである。
しかし残念ながら私の場合は有意狭窄ではない。
即ち心臓カテーテルの治療対象外。
とは言えストレスなどの負荷がかかればもれなく発作は起こってしまう訳で、そこで有益な治療法がない者にとって手放せないのが内服薬――――である。
然も私の場合かなりの量を毎日毎回服用している故にこれ以上の増量は出来ない。
今の私の頼みの綱はニトロである。
最初は一錠舌下するだけでも副作用で頭痛を起こし鎮痛剤を飲んでいたものだが、慣れとは実に怖いもの。
今では何錠舌下しようとも副作用は一切認められない。
因みに現在のニトロ最高量は一度の発作で十錠の服用で何とか……今を生きている。
ドラマの様に胸を押さえ『うぅ……』と唸り倒れる訳ではない。
左肩へひゅんひゅんと痛みが突き抜ける様な放散痛。
それと同時に何とも言えない胸や背中の重苦しさに鈍痛、嘔気と若干の息苦しさ。
そんな時は決まって全身が、特に左足が浮腫み尿量も僅かである。
それでも処方された薬の量と回数を調節して何とか症状を緩和しているのだ。
勿論セカンドオピニオン……正式にではない。
けれども以前働いていた病院のDr数名に心臓カテーテル検査の写真とお薬手帳等を見せては相談を行っていた。
患者としてでなく、あくまでも仕事のついでとばかりに仲良くなったDrへもう少し何か治療法はないのかと思っての事だったのだが、しかしどのDrも皆一様に同じ台詞を言うのである。
『薬だけは絶対に飲み忘れない様に。何があっても薬だけは手放してはいけない』
要するに打つ手なし――――ですね。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
春にとける、透明な白。
葵依幸
ライト文芸
彼女のことを綴る上で欠かせない言葉は「彼女は作家であった」ということだ。
僕が彼女を知ったその日から、そして、僕が彼女の「読者」になったその日から。
彼女は最後まで僕にとっての作家であり続けた。作家として言葉を残し続けた。
いまはもう、その声を耳にすることは出来ないけれど。もしかすると、跡形もなく、僕らの存在は消えてしまうのかもしれないけれど。作家であり続けた彼女の言葉はこの世界に残り続ける。残ってほしいと思う。だから、僕は彼女の物語をここに綴る事にした。
我儘で、自由で、傲慢で。
それでいて卑屈で、不自由で、謙虚だった長い黒髪が似合う、彼女の事を。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
稲穂ゆれる空の向こうに
塵あくた
ライト文芸
転校してきたばかりの少年蒼音(あおと)は、孤独をもて余し過ごしていた。
ある日、偶然にも自分に取り憑く守護霊を召喚してしまう。
その幽霊とも思しき、不思議な童女 茜音(あかね)と出会い、孤独な蒼音は、新しい生活をスタートする。
大人には視えない謎めいた童女と、ひょんなことから一緒に過ごすことになったが、彼女はどこから来た誰なのか?
やがて…仲良くなったクラス仲間と共に、蒼音と茜音は想い出に残るひと夏を過ごす。
そして夏の終わり・・・この世に存在する意味を見つけるために行動する。
2人を結ぶ強い絆と、胸が締め付けられる切ない秘密・・・
子供達にとって、かけがいのない、短くて長い夏。彼らは・・・茜音の過去の真実を求め、一歩を踏み出そうとしていた。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
詩集「支離滅裂」
相良武有
現代文学
青春、それはどんなに奔放自由であっても、底辺には一抹の憂愁が沈殿している。強烈な自我に基づく自己存在感への渇望が沸々と在る。ここに集められた詩の数々は精神的奇形期の支離滅裂な心の吐露である。

【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる