6 / 122
第一章 過去から現在へ向かって ~十年前より三年前
2 Sideエヴァ
しおりを挟む最初に私達は食料と水の確保を考えた。
食糧は国を出る時に母様が持たせてくれた私の好きな焼き菓子が沢山あったけれど、あぁ処か遙か昔の方で仰ってましたわよね。
パンがなければお菓子を食べればいい
とかなんとかね。
でも実際そのパンがないのだからこの焼き菓子は食糧としてかなり重要なもの。
さてこれで何日食い繋げられるか……は、出来れば考えたくない。
でも何故かこの焼き菓子、有難い事にやたらと数が多いのはやはり気の所為?
次に水の確保。
これは生き抜く為に最も重要だわ。
私達は慣れない中で台所やその周りを見れば丁度台所から出た所に井戸があったの。
然も水は澄んでいてとても綺麗な上美味しい。
自然豊かなライアーンの水とも引けを取らない味に驚きが隠せなかったわ。
またしても非常にラッキーだった。
次にこの離宮で目ぼしいものや生活の足しになるものがないかを家探しした。
王女たる私が……何て感情は何処かの棚へ置いておく。
多分この時点で深窓のお姫様というモノは完全に何処かへ旅行にでも行ったみたいね。
そこで偶然見つけたのが台所の隅にある隠し扉から森へと続く通路だったのだのよ。
「――――私が行くわ」
「いえ私が行きます。エヴァ様はここでお待ち下さいませ」
その隠し通路を見つけた私達はキラキラと瞳を輝かせって勿論それは私だけだったみたい。
ただこの通路の先についてどちらが探険へ赴くのかで暫くの間押し問答した結果、私はアナベルに負けてしまった。
危険を伴う所へ私を向かわせられないと力強く言い切られてしまったのだから仕方がない。
アナベルも今の私の状態をわかった上でのことだと思う。
好奇心は存在してもそれより先に進めない現実を……。
それからアナベル、彼女は侍女だけれども平民ではない。
彼女はライアーンでも名家とされるベイントン伯爵家の令嬢。
まぁ武門を尊ぶベイントン家の令嬢だからこそなのかもしれない。
ただの深窓の令嬢ではなく武芸を嗜み、私の話し相手兼ボディーガード的な存在。
そしてアナベルとのお付き合いはかれこれ三年になる。
アナベルはライアーンにいた頃より別にお仕着せ等着なくてもいいのにって何度も言っていたのだけれど、侍女として傍にいる方が何かと便利が良いからとやや頑固な一面がある。
だからして隠し通路探険も自分が行きますので――――としっかり押し切られてしまった。
そうしてアナベルが初めて隠し通路へと入った時は、今と違ってあちこちに蜘蛛の巣や思わず顔を覆いたくなるくらいの埃や虫も沢山いたわね。
今でこそきちんと毎日掃除をしているからそんな事はないのだけれど……。
あぁ真っ暗なのは今も変わらないか。
通路の闇の中へと姿を消したアナベルを見送った私は、彼女が戻ってくるまでの間に離宮の内部を物色し始めた。
部屋数はざっと十部屋くらい。
本当にこじんまりとした建物。
だけどどの部屋も蜘蛛の巣と埃でホント嫌になる。
離宮の奥はアナベルが確認するからと強く言われたから私は指定された部屋の物色を行う。
アナベルの話では何でも奥の方が本当にボロいらしく、危険だから私は行かない方がいいと言われたわね。
下手に怪我をしてこれ以上心配を掛けたくなかった私は取り敢えず彼女の言う事を聞く。
アナベルが戻ってくるまでに私が新たに発見したものは掃除道具一式。
少し汚れているけれどもまだしっかりと使える状態のもの。
ただ問題はこれをどう様に使うのかよね。
そう私は生まれてからまだ一度も掃除をした事がなかった。
何時も城では侍女達がしてくれていたから何も思わなかった。
でもこの状況になり初めて何でもして貰っていた有り難みがひしひしと感じ入ってしまう。
次に台所ではややボロいけれどもまだまだ現役そうな鍋や料理に使うだろう道具を一式。
う~ん、私の部屋に置いてきた御飯事で遊んでいたお道具の方が綺麗だったわね。
その次に寝室を覗いたわ。
素直に余り使いたくないなーって感じだけれどこの際文句は言えない。
私はこの国の王妃……ではなく人質なの。
国の為に剣を持って戦う事は出来ないけれど、許されるその時まで私はここで何としても生き抜かなくてはいけないのだから……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
248
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる