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転生の章 雌伏篇
第20話 団長の新政
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ピンクの体調が落ち着いた頃、ボクたちの砦にゴブリンとホブゴブリンの一隊がやってきた。どうやら団長の部下らしい。
彼らはボクの部下になれることを大層喜んでいた。
彼らは砦の南北に居住し、我らコボルド一族は中央から東西にかけて居住した。
砦の中央に政務する庁舎を作って我ら一族だけでなくゴブリン、ホブゴブリン関係なく役人を任命し、政治を始めた。
まず、砦から1km四方を馬車が通れるくらいの隙間をそれぞれ四か所だけあけて、それ以外は杭で囲みロープを張って簡易に敵の侵入を妨げた。
さらに500メートル地点にも同じことをした。
戦士は戦がない時は農業、畜産業をすることにさせた。これによって食料の自給率がグッと上がった。
我々は言葉を話すが文字を読める者が少ない。学校を作りコボルド、ゴブリン、ホブゴブリンの子供たちを通わせた。給食も出した。
砦の外の堀の前には屋台ができて、コボルド、ゴブリン、ホブゴブリンの戦士でないものが商売を始めた。我々が見張っていたので店は正規の値段で取引された。
そこにも低くはあるものの時間をかけて塀を作ると、町のスペースが広がった。
ああ! 政治だ。
ちゃんとした政治がとうとう始まった!
オーク族のブタン将軍の下にいる、ゴブリン族とホブゴブリン族はこの様子を大変羨ましがり、自分たちにも自由な権利を欲しがってオーク族に反乱をおこすようになった。
とうとう都の都督が動いて反乱を鎮圧し、首謀したゴブリン、ホブゴブリンの頭目を斬首した。
しかし、もとはと言えばオーク族の政治力のなさである。コボルド族の高い政治力のせいである。となって、ブタン将軍は将軍職を解任。檻がついた車に乗せられ、都に護送されていった。
そして、とうとう、鬼族全体はボク、チャブチ・ブラウン団長の指揮下におかれることになった。
ボクは、オークに復讐しようと思い、叔父と義父を呼んだ。
「オーク族は我らを軽視し過ぎました。ボクは彼らにされたように彼らを林に追いやり暮らさせたいと思っています。どう思います?」
二人は、「ふふ」と笑った。
「閣下。我々も同じ気持ちです」
ボクはその回答にニッコリと微笑んだ。だが、叔父が続ける。
「だからといって、そんなことをしたら彼らと同じですよ。……なぁチャブチ。忘れようじゃないか。同族と思ってオーク達を迎えるんだ。それが政治だ」
ボクは腹に据えかねるものがあったが、それは叔父も義父も同じこと。
素直に叔父達の言うことに従うことにした。
やがて都から印綬が四つ贈られてきた。
それは副団長印。ボクに副団長を任命する権利を委任してきたのだ。ボクは嬉しくなって、叔父、義父、コボルドの歴戦の戦士を二人呼んだ。
功績から言ってこの四人は副団長となる素質が充分にあると考えたのだ。
ボクがその話をすると、四人は嬉しそうな顔をしてそれを受け取った。しかし、その場で跪いて四人が四人こう言ったのだ。
「辞退申し上げます」
ボクは驚いてしまった。みんなに立ってくれるように懇願した。
叔父のゴールドはまたいつもの指導をした。
「チャブチが譜代である我々を重用してくれようという気持ちはありがたく頂戴した。だがな、鬼族はコボルドだけではない。外様である他の三つがあって初めて大きな力となるのだ。ホブゴブリン、ゴブリン、オークの指導者に渡してやってくれ。そうすれば彼らはきっと忠誠を誓うだろう」
ありがたい叔父の言葉。
ボクはオークのことが大嫌いだ。母のことを考えると全員殺してしまいたい気分だが、それが政治なのだと呑み込むことにした。
オーク族はブタン将軍が捕縛され、自分たちはコボルド族に復讐されると考えていた。そこに、コボルドからの書状が届いた。彼らは生きた心地がしなかった。主な者は斬首され、一族は離れ離れに荒野に住まわせられるかもしれない。
ところが別の返事だった。本領安堵。つまり、現在の砦を領地としてもよい。ただ、鬼族の本拠はコボルド族の砦である。定期的に一定量の貢ぎ物を捧げ、有事の際には戦士を出すように。
そしてファッティ隊長を副団長と任命する。という内容だった
彼らは、この処置に感激した。コボルド族に忠誠を誓うと返書をしたためた。
時同じくして、ホブゴブリンとゴブリンの長を副団長に任命すると、多大な貢ぎ物と恭順の書簡を贈ってきた。
そして一つ副団長印が余った。ボクは叔父を副団長にしたがったが、叔父は固辞し、義父シルバーを推薦した。義父も最初は固辞したが、ボクの是非にと言う言葉にようやく受け取り、副団長兼団長代理と言う、団長に次ぐ地位に就けた。
また、叔父ゴールドは軍事の参謀長として、庁舎の外に団長代理府と参謀長府を設置し二人に軍事と政治、外交に協力して貰うこととした。
そんな一年だったが、時が満ち、おぎゃーと生まれたのが元気な男の子。
ボクはピンクに慰労の言葉をかけて抱きしめた。彼女は細く涙を流した。
コボルドにとって名付けはとても大事なことだ。ボクは頼み込んで叔父に名付け親となってもらった。
ピンクが竜の身を食べて宿ったということで、一族の古語で「竜の牙」を意味する「ベジュ」と名付けたのだった。
彼らはボクの部下になれることを大層喜んでいた。
彼らは砦の南北に居住し、我らコボルド一族は中央から東西にかけて居住した。
砦の中央に政務する庁舎を作って我ら一族だけでなくゴブリン、ホブゴブリン関係なく役人を任命し、政治を始めた。
まず、砦から1km四方を馬車が通れるくらいの隙間をそれぞれ四か所だけあけて、それ以外は杭で囲みロープを張って簡易に敵の侵入を妨げた。
さらに500メートル地点にも同じことをした。
戦士は戦がない時は農業、畜産業をすることにさせた。これによって食料の自給率がグッと上がった。
我々は言葉を話すが文字を読める者が少ない。学校を作りコボルド、ゴブリン、ホブゴブリンの子供たちを通わせた。給食も出した。
砦の外の堀の前には屋台ができて、コボルド、ゴブリン、ホブゴブリンの戦士でないものが商売を始めた。我々が見張っていたので店は正規の値段で取引された。
そこにも低くはあるものの時間をかけて塀を作ると、町のスペースが広がった。
ああ! 政治だ。
ちゃんとした政治がとうとう始まった!
オーク族のブタン将軍の下にいる、ゴブリン族とホブゴブリン族はこの様子を大変羨ましがり、自分たちにも自由な権利を欲しがってオーク族に反乱をおこすようになった。
とうとう都の都督が動いて反乱を鎮圧し、首謀したゴブリン、ホブゴブリンの頭目を斬首した。
しかし、もとはと言えばオーク族の政治力のなさである。コボルド族の高い政治力のせいである。となって、ブタン将軍は将軍職を解任。檻がついた車に乗せられ、都に護送されていった。
そして、とうとう、鬼族全体はボク、チャブチ・ブラウン団長の指揮下におかれることになった。
ボクは、オークに復讐しようと思い、叔父と義父を呼んだ。
「オーク族は我らを軽視し過ぎました。ボクは彼らにされたように彼らを林に追いやり暮らさせたいと思っています。どう思います?」
二人は、「ふふ」と笑った。
「閣下。我々も同じ気持ちです」
ボクはその回答にニッコリと微笑んだ。だが、叔父が続ける。
「だからといって、そんなことをしたら彼らと同じですよ。……なぁチャブチ。忘れようじゃないか。同族と思ってオーク達を迎えるんだ。それが政治だ」
ボクは腹に据えかねるものがあったが、それは叔父も義父も同じこと。
素直に叔父達の言うことに従うことにした。
やがて都から印綬が四つ贈られてきた。
それは副団長印。ボクに副団長を任命する権利を委任してきたのだ。ボクは嬉しくなって、叔父、義父、コボルドの歴戦の戦士を二人呼んだ。
功績から言ってこの四人は副団長となる素質が充分にあると考えたのだ。
ボクがその話をすると、四人は嬉しそうな顔をしてそれを受け取った。しかし、その場で跪いて四人が四人こう言ったのだ。
「辞退申し上げます」
ボクは驚いてしまった。みんなに立ってくれるように懇願した。
叔父のゴールドはまたいつもの指導をした。
「チャブチが譜代である我々を重用してくれようという気持ちはありがたく頂戴した。だがな、鬼族はコボルドだけではない。外様である他の三つがあって初めて大きな力となるのだ。ホブゴブリン、ゴブリン、オークの指導者に渡してやってくれ。そうすれば彼らはきっと忠誠を誓うだろう」
ありがたい叔父の言葉。
ボクはオークのことが大嫌いだ。母のことを考えると全員殺してしまいたい気分だが、それが政治なのだと呑み込むことにした。
オーク族はブタン将軍が捕縛され、自分たちはコボルド族に復讐されると考えていた。そこに、コボルドからの書状が届いた。彼らは生きた心地がしなかった。主な者は斬首され、一族は離れ離れに荒野に住まわせられるかもしれない。
ところが別の返事だった。本領安堵。つまり、現在の砦を領地としてもよい。ただ、鬼族の本拠はコボルド族の砦である。定期的に一定量の貢ぎ物を捧げ、有事の際には戦士を出すように。
そしてファッティ隊長を副団長と任命する。という内容だった
彼らは、この処置に感激した。コボルド族に忠誠を誓うと返書をしたためた。
時同じくして、ホブゴブリンとゴブリンの長を副団長に任命すると、多大な貢ぎ物と恭順の書簡を贈ってきた。
そして一つ副団長印が余った。ボクは叔父を副団長にしたがったが、叔父は固辞し、義父シルバーを推薦した。義父も最初は固辞したが、ボクの是非にと言う言葉にようやく受け取り、副団長兼団長代理と言う、団長に次ぐ地位に就けた。
また、叔父ゴールドは軍事の参謀長として、庁舎の外に団長代理府と参謀長府を設置し二人に軍事と政治、外交に協力して貰うこととした。
そんな一年だったが、時が満ち、おぎゃーと生まれたのが元気な男の子。
ボクはピンクに慰労の言葉をかけて抱きしめた。彼女は細く涙を流した。
コボルドにとって名付けはとても大事なことだ。ボクは頼み込んで叔父に名付け親となってもらった。
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