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転生の章 雌伏篇
第19話 ピンク急変
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続いて、立食による会食が始まった。新団長とその家族、都督閣下も入った。ボクは母に促されて都督閣下に忘れていた貢ぎ物の目録を手渡すと大変に喜んでくれた。
「ほお! コボルドの革製品はいいものばかりだからな。実はな、ワシの今の馬の鞍はセピアンが作ったものなのだ。お前の父がな。しかし最近は少しくたびれてしまったところだったのだ。よかった」
「え? 父がですか?」
「そうだ。あやつは戦争も得意だったが、コボルドの革づくりも大変上手だった」
ボクが母に顔を向けると、昔からしている黒い革の首輪が見えた。あれは父ブラウンが結婚の際に自分で作った革の首輪を贈ったものなのであろう。
都督が父の作った鞍を大事にしていることも、母が今でも父の革の首輪をしていることが、すごくうれしくなった。
ピンクは見たこともない料理に舌鼓を打っていた。
「ねね。ブラウン団長閣下。これってなんのお肉なのかな?」
「なんだろうな? 大蛇かなぁ? 美味しいね」
とやっていると、若い僕たちが珍しいのか他の新団長たち四人も近づいてきて話し掛けてくれた。そもそも、新団長の親睦のための会食だ。
こうして顔なじみになって連携するのが目的なのだろう。
亜人のリザードマン。二足歩行した大トカゲ。身長は2メートルほどで、いつもは二本帯刀しているらしい。
亜人のラミア。人間の目からすれば美人な顔立ちだが下半身は大蛇。精神を狂わす術が得意らしい。これはえげつない。勇者たちを同士討ちさせた功績らしい。
鎧で固められた甲冑の騎士。中身はなにが入ってるか分からない。ずっと無言だが魔王様の話には答えていた。居合抜きが得意らしい。食事はするのかなぁ?
魔族のレンボル団長。歳は一番近い。実力者であっという間に団長の地位まで上り詰めたそうだ。
一番最初に話し掛けてくれたのはリザードマンの団長だった。
「ほ、ほう。ブラウン将軍のご子息か。父君には大変お世話になりまして。私はゲッコウと申します」
続いてラミアの団長らピンクの横から話し掛けた。
「私はカミラ。へぇ! カワイイ奥さんね。でも二人とも若くない? いくつ?」
「あ。チャブチ・ブラウンです。こっちは妻のピンク。お互いまだ12の子供でして。無礼がありましたらスイマセン」
そう言うと、ゲッコウさんとカミラさんは顔を見合わせた。
「へぇ! すごい!」
「ふむふむ。ブラウン将軍もまだお若かったですものな。ご子息はまだ12ですか。それで団長とは異例の出世ですな」
「あ、ありがとうございます」
甲冑の騎士さんも、無言だが肩に手を乗せてくれた。
「あ、ど、どうも」
「…………ブラウン 将軍には 良くして いただいた」
「あ、そうなんですか。ボクは父の記憶が余りなくて」
「偉大な 方」
「へぇ……。皆さんそうおっしゃいます」
「ふ ふ ふ ふ」
少し不気味だった。
そして、レンボル団長。魔族であっという間に上り詰めたとは思えない気さくな方だった。
「ドラゴンの肉が気に入ったようで」
「え? これドラゴンなんですか?」
「ええ。家畜用の肉竜ですが、美味しいでしょう?」
「すごい美味しいです。我々は貧しい出身なので……」
「へぇ。普段はどんなもの食べるの?」
「ああ、妻が作る蛙の唐揚げとか、粟の粥に、虫のミルク煮とか好きですね」
「ええ!?」
みんな引いてしまった。美味しいのに。
ピンクは気にせず受け答えた。
「コボルド族は今は貧しいし、このドレスもゴブリンの隊長の家から借りたものなんですけどね、ブラウン団長がきっと導いてくれます。私はそれについていくだけです」
その凛とした態度を団長たちは讃えてくれた。
レンボル団長がボクの肩を抱いて話す様は、まるで古くからの友人のようだった。
「君とは歳も近そうだ。仲良くしようじゃないか」
「ええ。レンボル団長がそうおっしゃられるのはこちらも望むところです」
「君の将来の夢は?」
「はぁ。将軍となって、一族を導くことです」
「ほう。きっとなれるさ」
「あ、ありがとうございます」
パーティーも進み、またリザードマンのゲッコウ団長が近づいてきてボクの体を見た。
「ふむ。コボルド族は騎馬の戦もするようですが、その大きな体では騎馬戦が難しくなるでしょう」
「はい。最近は貴重な馬も乗り潰してしまって。貧乏をしているもので思案に暮れているところです」
「そうでしょう! 昔、ブラウン将軍に贈りそびれてしまいましたが我が部族が育てている巨馬を贈呈しましょう。なに。昔、父君にお世話になったお礼です」
「ほ、本当ですか? これは心強い。我々もゲッコウ団長に革製品の進物をお礼に贈らせて頂きます」
「うおー! 嬉しい! コボルドの革製品は有名ですからな。楽しみにしております」
ゲッコウ隊長は2頭の巨馬を贈る約束をしてくれた。
ボクも帰ったらコボルド族の革製品の馬具をお礼に贈ると言うととても喜んでいた。
父の築いた文化がこう喜んでもらえるのは嬉しいことだ。
式典も終わり、ボクたちは都のホテルに一晩泊まり、帰路についた。
あと砦まで一日という道程で、ピンクの容態が悪くなってしまった。
不調を訴え、馬車の床に横になったと思うと、げぇげぇと言って吐瀉し、そのうち何もでなくなって、黄色い胃液まで吐き出した。めまいがするようで天も地も分からぬような感じになってしまったのだ。
彼女のピンク色の体色が徐々に青白くなってゆく。
馬車に酔ったのか?
ボクは彼女の体をさすり、ただ馬車を急がせるしかなかった。
砦の屋敷に付き、家政婦に彼女を託すとボクは走ってエルフのホーリーの屋敷に行って彼女を背負ってピンクを見てくれるよう頼んだ。彼女はピンクの脈をとり、頭や胸に手を当てて緑色の薬湯を飲ませてから、ボクの方を見てこういった。
「ピンクがこうなったのは団長閣下。あなたのせいよ?」
ボクはその意味が何が何だかさっぱりわからず、ひざまずいて彼女に直してくれるように頼んだ。
「ピンクのお腹の中で大暴れしている不埒者がおるのです」
「先生。そ、それはなんですか? ばい菌ですか? どうすれば治ります?」
彼女はたまらなくなったのかフフと声に出して笑った。
「それは、あなたの子供です。悪阻ですよ。時期がくれば治ります。ふふ。チャブチ。おめでとう」
「え?」
ホーリーはコクリとうなずいた。
「え? え? え? え? ウソ! やったぁ!」
ピンクは具合を悪そうにしていたが、かまわずボクは寝ている彼女に抱きすがった。
彼女は力無くだが嬉しそうに笑った。
「ほお! コボルドの革製品はいいものばかりだからな。実はな、ワシの今の馬の鞍はセピアンが作ったものなのだ。お前の父がな。しかし最近は少しくたびれてしまったところだったのだ。よかった」
「え? 父がですか?」
「そうだ。あやつは戦争も得意だったが、コボルドの革づくりも大変上手だった」
ボクが母に顔を向けると、昔からしている黒い革の首輪が見えた。あれは父ブラウンが結婚の際に自分で作った革の首輪を贈ったものなのであろう。
都督が父の作った鞍を大事にしていることも、母が今でも父の革の首輪をしていることが、すごくうれしくなった。
ピンクは見たこともない料理に舌鼓を打っていた。
「ねね。ブラウン団長閣下。これってなんのお肉なのかな?」
「なんだろうな? 大蛇かなぁ? 美味しいね」
とやっていると、若い僕たちが珍しいのか他の新団長たち四人も近づいてきて話し掛けてくれた。そもそも、新団長の親睦のための会食だ。
こうして顔なじみになって連携するのが目的なのだろう。
亜人のリザードマン。二足歩行した大トカゲ。身長は2メートルほどで、いつもは二本帯刀しているらしい。
亜人のラミア。人間の目からすれば美人な顔立ちだが下半身は大蛇。精神を狂わす術が得意らしい。これはえげつない。勇者たちを同士討ちさせた功績らしい。
鎧で固められた甲冑の騎士。中身はなにが入ってるか分からない。ずっと無言だが魔王様の話には答えていた。居合抜きが得意らしい。食事はするのかなぁ?
魔族のレンボル団長。歳は一番近い。実力者であっという間に団長の地位まで上り詰めたそうだ。
一番最初に話し掛けてくれたのはリザードマンの団長だった。
「ほ、ほう。ブラウン将軍のご子息か。父君には大変お世話になりまして。私はゲッコウと申します」
続いてラミアの団長らピンクの横から話し掛けた。
「私はカミラ。へぇ! カワイイ奥さんね。でも二人とも若くない? いくつ?」
「あ。チャブチ・ブラウンです。こっちは妻のピンク。お互いまだ12の子供でして。無礼がありましたらスイマセン」
そう言うと、ゲッコウさんとカミラさんは顔を見合わせた。
「へぇ! すごい!」
「ふむふむ。ブラウン将軍もまだお若かったですものな。ご子息はまだ12ですか。それで団長とは異例の出世ですな」
「あ、ありがとうございます」
甲冑の騎士さんも、無言だが肩に手を乗せてくれた。
「あ、ど、どうも」
「…………ブラウン 将軍には 良くして いただいた」
「あ、そうなんですか。ボクは父の記憶が余りなくて」
「偉大な 方」
「へぇ……。皆さんそうおっしゃいます」
「ふ ふ ふ ふ」
少し不気味だった。
そして、レンボル団長。魔族であっという間に上り詰めたとは思えない気さくな方だった。
「ドラゴンの肉が気に入ったようで」
「え? これドラゴンなんですか?」
「ええ。家畜用の肉竜ですが、美味しいでしょう?」
「すごい美味しいです。我々は貧しい出身なので……」
「へぇ。普段はどんなもの食べるの?」
「ああ、妻が作る蛙の唐揚げとか、粟の粥に、虫のミルク煮とか好きですね」
「ええ!?」
みんな引いてしまった。美味しいのに。
ピンクは気にせず受け答えた。
「コボルド族は今は貧しいし、このドレスもゴブリンの隊長の家から借りたものなんですけどね、ブラウン団長がきっと導いてくれます。私はそれについていくだけです」
その凛とした態度を団長たちは讃えてくれた。
レンボル団長がボクの肩を抱いて話す様は、まるで古くからの友人のようだった。
「君とは歳も近そうだ。仲良くしようじゃないか」
「ええ。レンボル団長がそうおっしゃられるのはこちらも望むところです」
「君の将来の夢は?」
「はぁ。将軍となって、一族を導くことです」
「ほう。きっとなれるさ」
「あ、ありがとうございます」
パーティーも進み、またリザードマンのゲッコウ団長が近づいてきてボクの体を見た。
「ふむ。コボルド族は騎馬の戦もするようですが、その大きな体では騎馬戦が難しくなるでしょう」
「はい。最近は貴重な馬も乗り潰してしまって。貧乏をしているもので思案に暮れているところです」
「そうでしょう! 昔、ブラウン将軍に贈りそびれてしまいましたが我が部族が育てている巨馬を贈呈しましょう。なに。昔、父君にお世話になったお礼です」
「ほ、本当ですか? これは心強い。我々もゲッコウ団長に革製品の進物をお礼に贈らせて頂きます」
「うおー! 嬉しい! コボルドの革製品は有名ですからな。楽しみにしております」
ゲッコウ隊長は2頭の巨馬を贈る約束をしてくれた。
ボクも帰ったらコボルド族の革製品の馬具をお礼に贈ると言うととても喜んでいた。
父の築いた文化がこう喜んでもらえるのは嬉しいことだ。
式典も終わり、ボクたちは都のホテルに一晩泊まり、帰路についた。
あと砦まで一日という道程で、ピンクの容態が悪くなってしまった。
不調を訴え、馬車の床に横になったと思うと、げぇげぇと言って吐瀉し、そのうち何もでなくなって、黄色い胃液まで吐き出した。めまいがするようで天も地も分からぬような感じになってしまったのだ。
彼女のピンク色の体色が徐々に青白くなってゆく。
馬車に酔ったのか?
ボクは彼女の体をさすり、ただ馬車を急がせるしかなかった。
砦の屋敷に付き、家政婦に彼女を託すとボクは走ってエルフのホーリーの屋敷に行って彼女を背負ってピンクを見てくれるよう頼んだ。彼女はピンクの脈をとり、頭や胸に手を当てて緑色の薬湯を飲ませてから、ボクの方を見てこういった。
「ピンクがこうなったのは団長閣下。あなたのせいよ?」
ボクはその意味が何が何だかさっぱりわからず、ひざまずいて彼女に直してくれるように頼んだ。
「ピンクのお腹の中で大暴れしている不埒者がおるのです」
「先生。そ、それはなんですか? ばい菌ですか? どうすれば治ります?」
彼女はたまらなくなったのかフフと声に出して笑った。
「それは、あなたの子供です。悪阻ですよ。時期がくれば治ります。ふふ。チャブチ。おめでとう」
「え?」
ホーリーはコクリとうなずいた。
「え? え? え? え? ウソ! やったぁ!」
ピンクは具合を悪そうにしていたが、かまわずボクは寝ている彼女に抱きすがった。
彼女は力無くだが嬉しそうに笑った。
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