異世界ライフの楽しみ方

呑兵衛和尚

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第六部・竜魔戦争と呼ばれる時代へ

カムイの章・その5 過去と未来を繋ぐ現在

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 そこは白亜の世界。
 なにもなく、ただ真っ白な世界が広がっている。
 そしてストームにとってはなつかしい世界。
 一番最初に地球から今の世界に来た入り口。
 そこにストームは立っていた。

「‥‥シャレにしてはきついわ」
 ぼそっと呟くストームと、その横でボーッと立っている十四郎。
 どうやらここが何処か考えているようだが、どう考えても判るはずがない。
「お、おう。ストーム殿、ここは一体何処でござるか?」
「な・ん・で・お前と一緒に此処なんだ?」
 ゆさゆさと十四郎を揺さぶるストームだが。
 十四郎には全く理解できない。
「な、なにがなんだか拙者にもさっぱりで‥‥」
「いや、もういいわ。創造神聞こえますか? ここは何処なんですか?」

‥‥‥‥

 何も返事はない。
 ならばと、ストームはゆっくりと歩きはじめる。
 そして自分に起こっている状況を一つずつ確認する。
「持ち物は全て問題なし。ウィンドゥも展開可能、スキル・クラス共に問題なし‥‥神槍もあるが、力の殆どを失っているか。リチャージ状態だな」
「ん? 持ち物でござるか?」
「ああ。スキルとか確認しておけ。どうなるか分からんぞ」
 そのストームの言葉に、十四郎も一通り確認する。
 とくに失ったものは何もないようだ。
「ふむふむ。とくに問題は‥‥あれはなんでござるか?」
 ふと、十四郎が目の前にいる何かを指差す。
「何かいるなぁ‥‥お、狼?」
 段々とそれが何か見えてくる。
 それは体長が10mはあろう巨大な狼。
 神々しい銀色の体毛をした狼が立っている。
 やがてストームと十四郎は、その足元までたどり着いた。

『ストームか。誰かとおもったぞ』

 直接二人の脳裏に響く声。
「あ、まさかとはおもうが、以前エーリュシオンでミスティが話していた天狼か?空間を司る天狼って聞いたぞ」
「天狼というと、カムイの神か」
 ストームに続いてあっさりと告げる十四郎。
「マジか?」
「そのマジが分からんが事実だ。天狼はカムイの呼び名ではウォセカムイ。遠吠えをする神という名前だ」
 十四郎の言葉には、天狼も静かに頷く。

『して、何故二人はこのような場所に?』

「この阿呆が、俺が神槍を異世界に飛ばそうとしたのを邪魔したんだ」
「ストームが異世界に槍を投げるのなら、ついでにと思って願いを込めたのでござる」
 二人が同時に説明すると、天狼はあくびをしながら頷いた。
『二人の意識が混雑して神槍に伝わった。神槍からはこういう意思を感じるがな』
 そう呟くと、天狼はゆっくりと意思を伝える。

『槍よ、異世界の門を開き、汝を手にするものを門の向こうへと解き放て‥‥混雑した意思がそう伝わっている』

――スパァァァァァァァン
 突然ハリセンを引き抜いて十四郎を力いっぱいぶん殴る。
「いてぇぇぇぇぇぇ。なにしやがる!!」
「お前が余計なことをするからだ。で、天狼さん、俺たちは元いた世界に戻りたいのだが」
 そう天狼に問い掛けると、天狼は困った顔をしている。

『ここはな、全ての空間の|間(はざま)。道を示すものがないかぎり、思いの世界に帰ることは出来ない』
「でも、ウォセカムイの力なら帰れるんでござるよな?」
 あっさりと問い掛ける十四郎だが。
『それは可能だが、そうすることで世界のバランスは失われる。迷い込んだのなら、己が力で道を探すとよい』

 そう告げた瞬間、白亜の世界に大小様々な扉が開かれる。
 古い石の扉もあれば、立派な鉄の扉もある。
 時代もバラバラで、中世ヨーロッパのようなものもあれば明治初期のゴシック調のものまであった。 
「この扉はなんだ?」

『全てが世界とつながっている。それを開くことで、扉の先の世界に向かう事ができる。が、それが何処に繋がっているかは、私は教えることは出来ない』
 その言葉と同時に、ストームはふと考える。
「この神槍があれば正しい道を探すことは出来る。が、力が戻ってないので、すぐには見つけられない。これはあっているか?」
 そのストームの問いかけにはコクリと頷いている。
「なら答えは簡単。神槍が力を取り戻すまで、ここで待っていればいいでござるな」
 ほっと一安心した十四郎がその場に座るが。
「天狼。この世界の時間、流れていないだろう? さっきからずっと槍を手にしているが、一向に回復する様子はない」
「なんだと?」
 ストームの問いかけに十四郎が慌てて立ちあがる。

『その通りだ、時を進めるならば扉を超えよ。その先で槍の力が戻るのを待ち、そして再びここにくるがよい。槍に力が戻ったときには、再びここに来られるようにはしてやろう』
 それを聞いてひとまずは安心。
「なら、とっとといこうぜ。さてと、ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な~」
 一つ一つの扉を指差して、十四郎が扉を選んでいるが。
「天狼。この扉はいくつの世界に繋がっている? どれだけの時代に繋がっている?」
 そう問いかけているストーム。

『創造神が作った8つの世界。それの過去から未来へ‥‥』

 それを聞いて、ストームはその場に座り込む。
「ハズレの組み合わせは二つか‥‥」
「ん? 外れってどういうことだ?」
 そう問い掛ける十四郎に説明しようとするが、すぐに口を閉ざした。

(引いて不味いのは地球の過去とシルヴィーたちの世界の過去。それ以外は問題ないのだが、扉が多すぎるな。直感でいくしかないが、どうする?)

 そんなことを考える。
 過去になど行った場合、どこかで未来を変えてしまうことも考えられる。
 それだけは絶対にやってはいけない。
 一番無難のは地球とシルヴィーの世界を除く残り6つの世界の今、もしくは未来。
 確率で言えば12/24。
 もっとも、扉がそれ以上に存在するので、確率などすでにないに等しい。
「ささ、ストーム殿、拙者の占いでは、この寂れて朽ちそうな鉄の扉がよいと出たぞ!!」
 なんだその選択肢は?
 そう心の底で叫びつつ、ふと扉を眺める。

――キラッ
「ん?」
 一瞬、天狼の影にある扉が光ったように感じた。
「なんだあれは?」
 そう呟きながら扉に近づく。
 そこには何の変哲もない木製の扉があった。
「天狼。俺はこれにするわ」
「なら、拙者はこちらの扉にするでござるよ!! ではお先に!!」
 そう叫ぶと、十四郎は素早く扉を開いた。
 その瞬間、十四郎の姿は光の中に消えていく。
――バタッ
 ゆっくりと扉が綴じと、スッと消滅していった。
「なあ天狼。あいつここに戻ってこれるのか?」
『い、いや‥‥ストームの持つ槍でなくてはここには戻ってこれないのだが‥‥』
 動揺しているせいか、天狼の尊厳なる声が普通の人の声に聞こえる。
 十四郎、まさか神様を慌てさせるとは思わなかった。
「じゃあ、彼奴とはもう会わないのか‥‥」
『いや、十四郎の開いた扉が正しい扉であった場合、いずれまた出会えると思うが‥‥果たしてどうなのかは我にも判らぬ』
 その言葉に、とりあえず納得するストーム。
「そうか。なら、俺はこの扉にするわ‥‥」
 そう告げると、ストームは目の前の扉に手を掛ける。
 そしてゆっくりと振り向くと、天狼に一言。
「あ、もしマチュアに出会うことあるなら伝言頼むわ。少し旅に出るけど、そのうち戻るからサムソンを頼むってな」
『よかろう。では開くがよい‥‥』
 その言葉で、ストームはゆっくりと扉を開いた。
 そして光の中に包まれると、ストームはすっとその場から消えていった。


 ○ ○ ○ ○ ○


 サムソン辺境王国。
 王城の執務室では、ストームmk2がのんびりと執務を行なっている。
「これが本日急ぎの分です。軽く目を通しておいてください」
 執務官のキャスバルが机でのんびりとしているフォンゼーン王に書簡を差し出す。
 それを受け取ると、軽く目を通してサインをする。
 それがストームのいない、サムソンのいつもの日常である。
「しかし、フォンゼーン王はいつ頃戻ってくるのでしょうねえ」
「さあ?少なくともサムソンは俺がいる限りは問題はない。そのうちひょっこりと戻ってくるとは思いますよ。残念なことに、俺にはマチュアの分身達のようにストームの位置を確認したり、ストームに異変があっても知ることはできないのでね」

 マチュアのゴーレムとは基本性能は同じだが、マチュアは自分の補佐としてそれぞれに役割を持たせている。
 だが、ストームmk2はそのまんまストームと同じ能力に特化しているため、その気になれば剣聖クラスの戦闘力も持っている。

「では、何か困った時はどうするのですか?」
「その時は手紙を書きますよ」
「手紙?」
「ああ。幸いなことに、俺の持っている【チェスト】という魔道具は、ストーム本人とダイレクトリンクしているのですよ。これが繋がっている限りは、ストームは無事ですので」
 その言葉の真意がまだわからないキャスバル。
「つまりは?」
――シュン
 空間に手を入れるストームmk2。
「この空間収納がチェストです。ここに手紙を放り込めば、ストームは気がついて見るでしょうから。まあ、基本ほっておいて構わないと思いますよ」
 そんなことを笑いながら話していると、ふと突然、ストームmk2の中で何がが反応した。
――ピッ
「ふあ?なんだなんだ?」
 慌てて周囲を見渡すが、何も変わったことがない。
(まさかなぁ。GPSコマンド起動、ストームのイヤリングの座標を‥‥)

 素早く確認するが、表示されるのは『|消失(ロスト)』の文字のみ。

「おおう!!」
 取り敢えず書簡を慌てて作ると、空間に放り込むストームmk2。
「何かありましたか?」
「ストームに手紙を書いてただけですよ。さて、残りの仕事も片付けてしまいますか」
そう告げながら、ストームmk2は再び執務に戻る。
 まずは手紙の返事が届くのを待ってから。


 そうして手紙を時折確認するが、暫くは手紙に手をつけた形跡もなかった。
 そんなある日。

――ピッピッ
『こちらミナセです。マークⅡ、貴方の国のニアマイアー領が飛竜の襲撃に逢いました」
 それは突然の報告である。
「なんだと。キャスバル、ニアマイアーに早馬を送れ。騎士団一個師団と救援物資の手配もだ。ニアマイアーが飛竜の襲撃にあったらしい」
 すぐさまキャスバルに指示を飛ばすストームmk2。
 するとキャスバルは廊下で待機している騎士を呼びつけて、次々と指示を飛ばす。
『それともう一つ。ニアマイアーのセシール様が何者かによって拉致され、どこかへ連れ去られたらしいです。相手が何者であるかはまだ不明。この案件の指示をそちらに移行します』
「了解。ニアマイアーの件はサムソンの管轄、こちらで処理をする。人道的支援だけは頼む」
『了解です。ではまた何か分かり次第連絡を入れます』
――ピッピッ

「状況はわかったな。クリスティナにに指示を、支援物資と救援部隊、一時的にだが各ギルドからも事務員を派遣する」
「すでに指示は出してあります。ストーム王は戻られますか?」
「連絡はしている。が、未だに返信がない。当面の指示は全て私が出す、王国内各都市にも早馬をだせ」
キャスバルは丁寧に頭を下げると、執務室から出て行った。
「状況極めて悪し。情報足りず、飛んでくる報告だけが頼みか。とっとと書簡を確認して帰ってこいよ!!」
 ここ一番に戻ってこないストームに、ストームmk2はやや苛立ちを覚えていた。

 そしてストームが戻らないまま、バイアス連邦のラグナ・マリア侵攻は幕を切った‥‥。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯

 
 シュトラーゼ公国の隣国にあるマドラー王国。
 その港町ノーウェルで、クッコロは客船『マッドハッター号』の到着をじっと待っていた。
 ストームと十四郎が消滅し、クッコロは暫くしてカムイの国を出た。
 その後、シュトラーゼ公国にいるスムシソヤの元に戻ってきていた。
 そこでストームとの旅の顛末を全て告げると、クッコロはストームの住むウィル大陸へと向かうために、隣国の港町ノーウェルまでやってきていた。
 以前ストームが乗るはずであったマッドハッター号はとっくにウィルにたどり着いており、いまはそこから戻ってくる便をじっと待っている。
 それもあと数日だろうと港湾施設で話をきいていたので、クッコロは毎日波止場に来ては海を眺めて待っていた。
 その日も、のんびりと待っていたのだが。

――キュィィィィィィィィィン
 突然クッコロの目の前で、空間が湾曲した!!
 それはストーム達が消滅した時と同じ輝きを発している。
「ま、まさかストーム!!」
 突然涙が溢れ出す。
 ストームと分かれてまだ二ヶ月ほどだが、それでもやはり寂しかったことに違いはない。
「ストーム‥‥本当にストームなの‥‥」
 やがて空間から人の形をした光が現れる。
 それがだんだんと輝きを失うと、その場には十四郎が立っている。
「おお、拙者のはあたりであったか‥‥おや、クッコロど‥‥」
――ドッボォォォォォォォォッ
 爆音とともに海に落ちる十四郎。
 慌てて十四郎に近寄っていくが、船着き場のギリギリで十四郎が泳いでやってくるのを見て、とりあえずは一安心。
――ザッバァァァァァッ
「クッコロ殿ではないですか。はて、何故拙者は海に?」
「そんなこと知らないわよ。それよりもストームは?」
 そう問い掛けるクッコロに、十四郎は頭を捻る。
「はて。試しの扉で拙者が引いた扉が正解ということは、ストーム殿は外れなのでいつ帰ってくるか判らないでござるなぁ」
 あっさりと告げると、取り敢えず上半身裸になって濡れた服を絞る。
 その光景に、クッコロは唖然としてしまった。
 豊満な胸をぎっちりと晒しで押さえつけている。
 ボンキュッボンがまさにそのとおりであろとも言える女性の体つき。
「じ、十四郎さんは女性でしたか!!」
「いかにも。拙者一度も自分を男といった覚えは無いでござるが?」
「そ、そうなの‥‥一体何があったのか教えて下さいますか?」
 どうにか涙を堪えると、クッコロは十四郎にそう話しかけていた。
「別に構わぬで‥‥ふぇ、ふぇっくしょい畜生っ!!」
 ズルズルッと鼻をすすると、十四郎はとりあえず服を羽織って周囲を見渡す。
「クッコロ殿、とりあえず宿に行きたいでござるよ。このままでは風邪を引いてしまうでござる」
「そ、そうですね。ではこっちに。私が泊まっている宿がありますので、そちらに向かいましょう。露天風呂もありますからまずは身体を温めていてください」
 そう告げて急いで十四郎を宿まで連れて行くと、クッコロはすぐに街の中で代わりの服を買い込んでから、再び宿に戻っていった。


「‥‥ということでござるよ」
 露天で身体を温めた十四郎は、取り敢えずクッコロの部屋に同室させてもらい食事をとっていた。 
 そこで空間の間で起こった出来事を説明すると、クッコロは大体合点がいったらしく溜息を吐いている。
「そうですか。ですがウォセカムイと出会えたということでしたら、それは信用できる話ですね」
「そうでござろう? ならそのうち帰ってくるでござるよ」
 からからと笑いながら食事を摂っている十四郎。
「では、十四郎さんもお元気で。私はウィル大陸に渡るので、もう会えなくなりますね?」
「そうでござるか。して、何故ウィルに?」
 ガツガツと飯を食い、さらに鍋から汁物を継ぎ足す十四郎。
「な、何故って‥‥サムソンがストームの国なのでしょう?だからに決まっているじゃない」
 カーッと顔中を真っ赤にして、クッコロが叫ぶ。
 だが、十四郎は頭を横に捻る。
「はて。そこの所が拙者よく分からないでござるなぁ。サムソンがストームの国として、依頼も終わったのに‥‥ははぁ、成る程」
 ニィッと十四郎が笑う。

「そ。そんなんじやありません。ただ、その‥‥」
 モジモジとするクッコロの肩を、十四郎はパンパンと叩いた。
「いやいや、あれ程の男、なかなかいないでござるよ。そうであったか。なら、拙者も加えて貰うでござるよ」
「なっ!!それって」
 突然の十四郎の言葉に、クッコロは驚く。
「いやいや、拙者はおまけ程度で。それで良い」
「そ、そんなの駄目です!!おまけ程度だなんて。そんな不純な」
「では、拙者とストームを合わせて二人では如何かな?」
 さらに十四郎が口元に笑みを浮かべる。
「ふ。二人‥‥でも、それは‥‥十四郎さんは、そっちも趣味なのですか?」
「趣味というか。イズモの里では二人三人は当たり前でござるよ。多い時は拙者は六人というのもありましたなぁ」
「い、イズモは一夫多妻が認められているのですか」
「はて?一夫一妻が当たり前でござるよ」
「それなのに六人って‥‥」
「左様。それぞれに役割がある。足りないところを補ってこそ、円滑にことは進むのでござるよ」
 すでにクッコロの頭の中はお花畑どころか、とんでもない妄想が渦巻いている。
「そ、それでも。十四郎さんには少しだけ守ってもらったけれど、でも‥‥」
「いやいや。前はストーム殿がいるので、拙者は後ろに回るでござる。それなら問題ないでござろう。ストーム殿の技術なら、それで問題ない筈でござるよ」

 その言葉にクッコロの妄想が大爆発。
「で、でも、十四郎さんは女性ではないですか」
「ん?里では大勢の男達と共にやっていたこともある。それなりの心得はあるでござるよ」
――クラクラクラクラ
「そ、そうですか‥‥な、ら‥‥」
 妄想に負けてとんでも無いことを呟くクッコロ。
「なら契約は成立でござるな。して、どのような任務でござるか?」
「け、契約‥‥そんな関係‥‥任務?」
 スーッとクッコロの顔色が戻り始める。
「契約って、任務ってなんですか?」
「サムソンに向かってから、ストーム殿に新しい任務の依頼をするのでござろう? 拙者もまだ神槍を回収していないし、おまけ程度でいいので甘い汁を吸わせて欲しかったでござるよ」
 クッコロの心臓がバクバクと脈打つ。
「イズモの里では二人三人って‥‥」
「うむ。任務の難易度によっては|二人一組(ツーマンセル)、|三人一組(スリーマンセル)は当たり前。六人で組んだこともあるでござるよ?」
「ま、前がストームさんで後ろが十四郎さんというのは?」
「あれ程の実力を持つ剣聖を後衛にはつけないでござるよ。ストーム殿は前衛で、拙者は忍術が使えるので後衛で構えるでござるが?」
「里では大勢の男達とって!!」
「イズモは女性の隠密であるくノ一は不足しているでござるよ。訓練も任務も、殆ど男達と一緒でござったからなあ」
 ここでようやくクッコロの中の妄想が消し飛んだ。
「あ、そ、そうですね。では、取り敢えずサムソンまで護衛をお願いしますね」
「うむ。全て拙者に任せるでござるよ」
 ガシッと握手するクッコロと十四郎。
「カムイの秘技は使えますが、私はほとんど戦えないのでお願いしますね」
「任せるでござるよ。それに必要なら」
 そう告げると、十四郎はクッコロの耳元で囁く。
「夜のお相手もするでござるよ。拙者くノ一ゆえ、その手の技術もしっかりとあるでござる」
 ビクッとクッコロが離れると、十四郎はニィッと笑った。
「なっ!!まさか分かって?」
 耳まで真っ赤になるクッコロ。
 その様子を見て、十四郎は軽く笑う。
「いやぁ、クッコロ殿は可愛いでござるなぁ。拙者が男なら嫁に欲しいでござるよ。では、ひと仕事するでござるね」
 突然刀を手に取ると、十四郎は部屋から出る。
「仕事って?」
「クッコロ殿を監視しているものが二人。ずっと付いて来ているようでござるよ?では‥‥」 
 そう告げると、十四郎は影の中にすっと消えていった。


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