捨てようとした命の価値

水谷アス

文字の大きさ
上 下
12 / 21
人間が島にやってきた

しおりを挟む
「月にどうしてウサギがいるって
なっているか、知ってる?

インドの神話に出て来るお話。

神様が老人の姿になって
”食べ物がないから
何か探してきてくれ”と
動物たちに話しかけるの。

食べ物を探すのが上手な子は
次々と老人に
食べ物を運ぶのだけど
ウサギだけは食べ物を
見つけられなかった。

だからウサギは自ら
たき火の中に身を投げて
「私を食べて下さい」と
言ったのよ。

神様はそのウサギの想いを
みんなに見せたくて
ウサギを月に登らせた。

…そんなお話。

火を怖がることなく
自己犠牲でも他者を
救おうとする習性。

このお話に出てくるウサギって
ネコウサギだったんじゃないか…
私はそう思ってる。

あなたがもし、お肉を食べたいと
望むことがあったら…

この子たちは焚火に
自分から飛び込んだかも」

女の人がちょっと真剣な顔で
おれを見た。

ちょっと、ぞっとした。

肉を望まなくて本当に良かった。
目の前で火の中に飛び込まれたら
トラウマものだったよ。
しおりを挟む

処理中です...