371 / 419
第11話
しおりを挟む
※※※ ※※※
田辺は、腕時計を一瞥した。
現在十一時二十二分、岡島浩太との約束の時間が迫る中、操縦士の男が声を張った。
「見えてきたぞ!関門橋だ!」
田辺が操縦席に目を向けると、本州へと続く関門橋の中央付近は、大きく崩れており、すっぱりと裂けた口を広げているようにすら映り、その光景に絶句する。さながら、希望の梯段を壊されたヤコブのような気分で喉を鳴らし、田辺は視線を真っ直ぐに戻した。
九州にくるのはこれで数回目だが、ハッキリとした地理を覚えていない。待ち合わせ場所になっている小倉のあるあるシティを探す為、田辺は両目を皿にして見回している。そんなとき、ふと、平山が言った。
「そういえば……田辺さん、そのあるあるシティってとこの場所、知ってるんですか?」
田辺は振り返らずに首を振った。
「いいえ、けれど、地図で確認はしています。位置としては小倉駅の裏にあたるようです」
門司港レトロを眼下に捉えて首を横に向ければ新幹線の路線が確認できる。博多から続く路線には、小倉駅が含まれているので、目印としては充分だろう。あとは、建物の看板等を早急に探しだせば良い。
残る問題は、着陸場所の確保だ。それは岡島浩太も気にしていたことだが、屋上に消化機材などがあった場合、着陸が難しくなる。電話での会話で理路整然と話していたからこそ、着陸に関することは慎重にならなけらばいけない重要事項だ。
忙しなく腕時計へ目を移しながら、パイロットと共に下関の街並みを俯瞰していると、やがて、長い直線道が見えてくる。目的地の小倉まであと少しといったとこで松谷の屈託そうな溜息が聞こえた。
「さっさと、こんなシケた場所からオサラバしたいもんだ。なあ、野田さん?」
嫌味な言いぐさに、平山が弾倉のチェックを行いつつ微笑する。
「まーーだ、ビビッてるんすか先輩?あんまりそんなこと言ってると、映画の脇役みたいに真っ先に死んじまいますよ?」
「んだと?コラ、平山もういっぺん言ってみろよ」
「何度も言わなければ分からないようなことじゃないでしょ?それでも分からないってなら、もう一度だけ言いましょうか?」
「平山よぉ……良い度胸してんな。どうせ、これから一暴れするんだ、お前で肩慣らしでもしてやろうか?」
「遠慮しときますよ。体力は無駄にしたくないですし」
「なんだ?ビビッちまったのか?」
意趣返しのような言葉に、平山のこめかみが僅かに動き、大袈裟に溜息を吐き出すと素早く銃を松谷へ向けた。深く暗い穴が松谷の目に止まる。
「いい加減うるせえってんだよ。腰が引けてんなら、足手まといになるし、ここでリタイアしとくか?先輩」
田辺は、腕時計を一瞥した。
現在十一時二十二分、岡島浩太との約束の時間が迫る中、操縦士の男が声を張った。
「見えてきたぞ!関門橋だ!」
田辺が操縦席に目を向けると、本州へと続く関門橋の中央付近は、大きく崩れており、すっぱりと裂けた口を広げているようにすら映り、その光景に絶句する。さながら、希望の梯段を壊されたヤコブのような気分で喉を鳴らし、田辺は視線を真っ直ぐに戻した。
九州にくるのはこれで数回目だが、ハッキリとした地理を覚えていない。待ち合わせ場所になっている小倉のあるあるシティを探す為、田辺は両目を皿にして見回している。そんなとき、ふと、平山が言った。
「そういえば……田辺さん、そのあるあるシティってとこの場所、知ってるんですか?」
田辺は振り返らずに首を振った。
「いいえ、けれど、地図で確認はしています。位置としては小倉駅の裏にあたるようです」
門司港レトロを眼下に捉えて首を横に向ければ新幹線の路線が確認できる。博多から続く路線には、小倉駅が含まれているので、目印としては充分だろう。あとは、建物の看板等を早急に探しだせば良い。
残る問題は、着陸場所の確保だ。それは岡島浩太も気にしていたことだが、屋上に消化機材などがあった場合、着陸が難しくなる。電話での会話で理路整然と話していたからこそ、着陸に関することは慎重にならなけらばいけない重要事項だ。
忙しなく腕時計へ目を移しながら、パイロットと共に下関の街並みを俯瞰していると、やがて、長い直線道が見えてくる。目的地の小倉まであと少しといったとこで松谷の屈託そうな溜息が聞こえた。
「さっさと、こんなシケた場所からオサラバしたいもんだ。なあ、野田さん?」
嫌味な言いぐさに、平山が弾倉のチェックを行いつつ微笑する。
「まーーだ、ビビッてるんすか先輩?あんまりそんなこと言ってると、映画の脇役みたいに真っ先に死んじまいますよ?」
「んだと?コラ、平山もういっぺん言ってみろよ」
「何度も言わなければ分からないようなことじゃないでしょ?それでも分からないってなら、もう一度だけ言いましょうか?」
「平山よぉ……良い度胸してんな。どうせ、これから一暴れするんだ、お前で肩慣らしでもしてやろうか?」
「遠慮しときますよ。体力は無駄にしたくないですし」
「なんだ?ビビッちまったのか?」
意趣返しのような言葉に、平山のこめかみが僅かに動き、大袈裟に溜息を吐き出すと素早く銃を松谷へ向けた。深く暗い穴が松谷の目に止まる。
「いい加減うるせえってんだよ。腰が引けてんなら、足手まといになるし、ここでリタイアしとくか?先輩」
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
神送りの夜
千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる