感染

宇宙人

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第2話

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    群集する死者が、所狭しとタクシー乗り場を埋め尽くし、それでもいまだに、小倉駅の構内から湯水のように溢れ出ていた。達也は、大きく距離を空けて車を停める。中間のショッパーズモールや、小倉の駐屯地襲撃の比ではない。九州中から死者を集めてきた、そう言われても信じてしまうだろう。

「......おいおい、冗談だろ?こりゃ一体、どんな悪夢だよクソッタレ……」

 希望を目前にして、辟易しなければならないのかと真一は唇を歪めた。リアガラスに不安を残したまま、こんな場所を通り抜けることなど不可能だ。
    死者が気づく前にルートの変更を提案したのは、浩太だった。小倉駅の北口へ車を走らせ、バスステーションでクラクションを響かせて呼び集める。その方法しかないだろう。
    達也は、溜息まじりに頷きつつ、恐々とギアを入れる。再び走り始め、小倉予備校の脇を通り、高架下を抜けた直後、さきほどの死者が道路へ飛び出し、車体に激しく衝突して突き飛ばされた。フロントガラスが鮮血に染まるが、ワイパーで作業のように拭う様に、どうにも、未だに慣れない感覚だと、祐介が顔をしかめた。

「......やっぱ、みんな慣れてしまったんですかね?それとも、俺たちにとっての現実ってやつが変わってしまっただけなんですかね……」

 祐介の問い掛けに、車内の空気が重くなる。現状、暗澹とした現実を裂く光が射し込んではいるが、もしも、このまま東京へ避難したとして、昔のような日常を送れるのだろうか。そう考えると、途端に自分が恐ろしくなる。
 同様の鬼胎を抱えているのは、祐介だけではなく、浩太もなのだろうか、沈痛な面持ちで言った。

「......大丈夫だろうさ、ここまで生き延びれた俺達なら、きっと大丈夫だ」

 まるで、自身に言い聞かせているような、細い語勢だった。それを受けた祐介も、糸のように短い息を吐く。
    以前、真一が八幡西警察署で上手く伝えられないと口にしたが、まったく同じ心境が垣間見える。切迫した状況では、不敵な笑みですら場違いとなるのだ。
 達也が、車を小倉駅のバスターミナルへと走らせれば、案の定、そちらも多くの死者が蔓延っている。まるで、巣穴だな、と囁くとクラクションへ手を添える。リアガラスの破損を考慮すれば、息を整えている暇もない。ここから先は、時間と死者、ありとあらゆるものとの戦いとなるだろう。

「......押すぞ」

 空気を引き裂く甲高い音が、魔都となり果てた小倉の上空へと吸い込まれていった。
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