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第14話
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祐介は、泡を食ったように飛び上がった。まだ、銃口から硝煙は登っていない。一体、どこから銃声が鳴ったのだろうか。その短い破裂音に、引き寄せられるように、武道場の扉に集まっていた異常者が、数人駆け出したようだ。
彰一が、この機会を逃す訳もなく、すぐさま尽きかけている体力を振り絞り、身体を扉にぶつけた。
「みんな!あのトラックが戻ってきたよ!それに、あいつらも振りきれてるみたい!凄い!凄いよ!」
トラックは、八幡西警察署内に入る。フロントガラスが無くなっているのか、運転席から男が一人、顔を見せた。迷彩柄の服を着用している。間違いなく自衛官だ。
阿里沙は、さきほど窓から垂らしたカーテンの真下を指差して叫んだ。
「お願いします!助けて下さい!」
扉の前から、走り去った異常者達が、警察署の玄関から飛び出す。間髪入れずに始まった銃撃が響き、異常者達が次々と倒れていく中、男が再び顔を出し言った。
「何人だ!?」
「四人です!四人います!」
「分かった!カーテンの下にトラックをつけるから、荷台の屋根に乗れ!」
阿里沙が祐介に確認をとるように振り返る。祐介は、しっかりと頷いて言う。
「阿里沙、加奈子ちゃんを頼んで良いか?」
「うん、大丈夫。二人は?」
加奈子を背負いながら、阿里沙が聞くと、祐介は拳銃を収めて返す。
「彰一を先に下ろして、あとに俺も続く。早く行け」
祐介は、扉の抑え込みに戻る。同時に、トラックがカーテンの真下についた。
「しっかり掴まっててね」
加奈子は、小さく頷く。きゅっ、と首に回された両腕が、信頼の証のように締まり、阿里沙は窓から身を乗り出した。
慎重に、全神経を集中させて降りていく。いくら年端のいかない少女だろうと、二人分の体重を抱えながらの下降は、阿里沙の腕力では、とても辛いものだった。
約五分ほどを要し、阿里沙はようやくトラックの荷台に、両足を揃え、息を整える暇もなく、阿里沙は二階の二人を振り立てる。
「降りたよ!二人も早く!」
その時だった。
二階の武道場から、けたたましい崩れるような音が響いた。扉がついに限界を迎えたのだ。
阿里沙は、瞼を瞬かせ、膝から崩れ落ちた。いくら人数が減っていたとしても、武器もない二人が相手を出来る人数ではない。絶望の淵に叩き落とされた気分だった。空いた口が塞がらず、阿里沙は二階の窓を仰ぐ。
「うおあああああああ!」
声が聞こえた。それは、気合いの掛け声のような、恐怖に耐えるような、どちらつかずな言葉にならない声だったが、阿里沙は、はっきりとこの声を覚えていた。
二階の窓から飛び出した二つの影は、トラックのカーキ色の布を破り、荷台の中へと勢いよく落下する。
「無茶する奴だな......これで全員か?」
運転席に座る男が呆れたように言った。祐介が声を張って短く答える。
「はい!」
「OK、掴まってろよ!」
瞬間、トラックは猛スピードで八幡西警察署を抜けた。
祐介は、荷台から顔を出し、警察署の外壁を眺める。小さな頃から、幾度となく父親の背中を見つめられる場所として慣れ親しんだ八幡西警察署、異常者に埋め尽くされる前の綺麗な外観を思い浮かべながら、祐介は幼い頃に父親から習った敬礼を送り続けた。
彰一が、この機会を逃す訳もなく、すぐさま尽きかけている体力を振り絞り、身体を扉にぶつけた。
「みんな!あのトラックが戻ってきたよ!それに、あいつらも振りきれてるみたい!凄い!凄いよ!」
トラックは、八幡西警察署内に入る。フロントガラスが無くなっているのか、運転席から男が一人、顔を見せた。迷彩柄の服を着用している。間違いなく自衛官だ。
阿里沙は、さきほど窓から垂らしたカーテンの真下を指差して叫んだ。
「お願いします!助けて下さい!」
扉の前から、走り去った異常者達が、警察署の玄関から飛び出す。間髪入れずに始まった銃撃が響き、異常者達が次々と倒れていく中、男が再び顔を出し言った。
「何人だ!?」
「四人です!四人います!」
「分かった!カーテンの下にトラックをつけるから、荷台の屋根に乗れ!」
阿里沙が祐介に確認をとるように振り返る。祐介は、しっかりと頷いて言う。
「阿里沙、加奈子ちゃんを頼んで良いか?」
「うん、大丈夫。二人は?」
加奈子を背負いながら、阿里沙が聞くと、祐介は拳銃を収めて返す。
「彰一を先に下ろして、あとに俺も続く。早く行け」
祐介は、扉の抑え込みに戻る。同時に、トラックがカーテンの真下についた。
「しっかり掴まっててね」
加奈子は、小さく頷く。きゅっ、と首に回された両腕が、信頼の証のように締まり、阿里沙は窓から身を乗り出した。
慎重に、全神経を集中させて降りていく。いくら年端のいかない少女だろうと、二人分の体重を抱えながらの下降は、阿里沙の腕力では、とても辛いものだった。
約五分ほどを要し、阿里沙はようやくトラックの荷台に、両足を揃え、息を整える暇もなく、阿里沙は二階の二人を振り立てる。
「降りたよ!二人も早く!」
その時だった。
二階の武道場から、けたたましい崩れるような音が響いた。扉がついに限界を迎えたのだ。
阿里沙は、瞼を瞬かせ、膝から崩れ落ちた。いくら人数が減っていたとしても、武器もない二人が相手を出来る人数ではない。絶望の淵に叩き落とされた気分だった。空いた口が塞がらず、阿里沙は二階の窓を仰ぐ。
「うおあああああああ!」
声が聞こえた。それは、気合いの掛け声のような、恐怖に耐えるような、どちらつかずな言葉にならない声だったが、阿里沙は、はっきりとこの声を覚えていた。
二階の窓から飛び出した二つの影は、トラックのカーキ色の布を破り、荷台の中へと勢いよく落下する。
「無茶する奴だな......これで全員か?」
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「はい!」
「OK、掴まってろよ!」
瞬間、トラックは猛スピードで八幡西警察署を抜けた。
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