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【番外小話】はちみつの日

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 インターホンが鳴ったのは、昼過ぎの事だった。

「何だった?」
「あー、何か、じーちゃんとこから。なんだろ」
 両手で箱を持ち戻って来た恭悟に、夏生はパソコンから顔を上げて聞いた。お互い在宅で仕事をしていると、突然の宅配も受け取り漏れが少なくなって便利だ。
 なんだろう。こういう贈り物は最近あまりない。夏生は少し胸を弾ませながら立ち上がった。
 たた、とそばに駆け寄って横から見つめていると、恭悟が「開ける?」と視線で聞いてくる。夏生はこくりと頷いた。

「うっわぁ~蜂蜜!? すっごい」
 中に詰められていたのは6種類の蜂蜜だった。光を反射して、宝石のようにきらきら煌めいている。
「じーちゃんの知り合いが養蜂やってんだよな。蜂蜜、好き?」
「好きだよ。好きじゃない人とかいるのかな」
「良かったわ。ほら、これ蜂によってどの花の蜜を集めるかが違って、味もそれぞれ違うんだってよ。」
 恭悟が説明書を取り出し夏生に手渡す。味が違うというが、色も6種類全て違う。透き通るようなレモン色から、カラメルを煮詰めたような濃い色まで。
「へぇ~!味比べできるね。あ、こないだ買ったホットケーキミックス余ってたよね!焼こう!」
「テンション上がってんな」
 最近は大して外出も出来ないから、夏生も真新しい刺激に飢えているのだろう。そう思って、うきうきと台所に向かう後ろ姿に、恭悟は小さく微笑んだ。



「おなか……いっぱい……」
「そりゃあんだけ食えばな。」
 ソファにくったりと身体を沈ませる夏生に、恭悟は呆れたように言った。そろそろ止めとけよと何度か言ったのだが、夏生は全く聞く耳を持たなかったのだ。
「でもまだまだあるよね。なにかお菓子とか、作ろっかな……」
「あんだけ甘ぇもん食って、よく……」
 スマホでレシピを検索し始める夏生を横目に、恭悟はビンを持ち上げた。そこでぴたりと動きを止めて、それから、ちらりと夏生を見る。
「なぁ……夏生」
「ん……なに?」
 夏生が携帯から視線を上げ、暫し、見つめ合う。夏生の目が細まった。
「……………………恭悟。」
「ん?」
「嫌だよ」
「まだ何も言ってねぇ」
「言わなくても分かる。やだ。」
「何で」
 恭悟はにやりと笑い、蜂蜜の蓋を捻った。きゅぽ、と小さく音がする。
「いーやーだ!!食べ物粗末にするのはだめ!!」
 抵抗する夏生の両手を恭悟は捕まえた。
「……粗末になんかしねぇよ。な?ちょっとだけ……」
 覆い被さる影に、夏生はそのまま押し倒された。


 
 たらり、と透き通る液体が谷間に垂らされる。
「……やだ。……んっ……」
 ちゅっ、とそれを吸われて、夏生はつい出てしまった声に下唇を噛んだ。
「あめぇ……。んー?夏生ちゃんはやだやだ言いながら、もうこんなに勃たせてんの?」
「ちがう……っ、あぅ……!」
 明らかに反応している突起をきゅっと摘ままれて、夏生はびくん、と震えて背を反らせた。
「どんどん敏感になっちまってるもんなぁ?ほら……」
 たらり。
 蜂蜜がとろりと先っぽに垂らされて、またぴくりと震える。恭悟がにやりと笑い、その口の隙間からちらりと舌が見えた。
「あ、ぁ……、きょ、ご……」
「いっただっきまーす」
 ぱくんっ
「ひぅッ」
 咥えられたらもう、駄目だった。
「んぁ……あー……ん、あっめ、うっま」
「あァっ、やん、あ……っ」
 ちゅぱちゅぱとそこを遠慮なく吸う音が、夏生の頭をぼやけさせていく。
「あー……、悪い悪い、こっちもな」
「ちょっ、もう、あぁ……っ」
 もう片方にもたらりと蜜を垂らされて、夏生は声を上げた。
「てらってらで、えっろ」
 ぷちゅ、ぷちゅ、と口の中で弄ぶその動きに、夏生は喘ぎながら首を振った。
 もうとっくに服はたくし上げられている。恭悟は蜂蜜をつけた指を臍に向かって添わせて、その跡を唇で啄んでいく。
「あ、あ……ッ、恭悟……っ」
「はいはい、分かってるって。腰震えちゃって、なぁ?」
 ズボンを引き下ろされても、下着の上から顔を擦り付けてられても、もう夏生はされるがままだった。
「……っ、夏生ぃ、ぐっちょぐちょだこりゃ」
「やあぁん……っ」
 鼻を押し付けて息を吸い込んでいた恭悟は、ガバッと顔を上げた。
「むり」
「え……っ、きゃ」
 下着を引き下ろされて、そのままどこかへ投げられる。両腿を押さえ付けて、恭悟の顔が泥濘んだそこに直に襲いかかった。
「あぁぁぁーーッ」
 じゅるるる、と手加減なしに吸われて、夏生は大きく痙攣して背を反らせた。
「ん、……ふ、あぁ、わり、一瞬、トんだ」
 ふー、ふー、と息を吐きながら、恭悟はベルトを外しかけている。
 いつの間にか瓶は、テーブルの上に戻されていた。虚ろな目でそれを追った夏生の視線に応えるように、恭悟はガチガチになった自分のものを足の間にぐちゅぐちゅ擦り付けながら言った。
「いや、なんつーか、ここは、さぁ……お前の匂いっつーか、味が、もう」
「そんな、こと……っ、いわないで、あん……ッ」
「なーんもつけなくても、……っ、あぁ、やっべ、」
 ぬちぬちと擦り付ける動きに合わせるように、夏生も腰を動かしてしまう。
「ね、……もう、きょう、ご……ッ」
「あぁ、……今日もいーっぱい、気持ちよく、なろうな……ッ」
 ごりゅ、と埋め込まれた快感に、夏生は歯を食いしばって引きつれた声を出した。
 リビングに響くいやらしく甘い音は、今日もなかなか止まなかった。



「あぁ、じいちゃん?蜂蜜届いたわ。ありがとう」
 隣で電話をかけている恭悟を、夏生は横目で睨み付けた。
「え?やー、めーっちゃくちゃ、美味かったよ。もう、なんつーの、甘ぇし、とろっとろで、いてッ」
 恭悟は突然の痛みに声を上げた。夏生が太腿をつねり上げたのだ。
「ん?いや、何でもない何でもない。とにかく、ありがとな」
 夏生を見返す恭悟の顔は、またニヤニヤと緩みきっている。
―こいつ……
 次はやり返してやる。
 夏生はそう心に誓ったのだった。
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