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【番外小話まとめ】

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【番外小話①その翌朝】

「出して」
「あ?何を」
「何じゃない!昨日のアレ!!」

 夏生が目覚めると、恭悟はベッドにはいなかった。それを確認してぼんやりとしたまま差し込む日差しに目を細める。ずんと重い腰、そしてまだ少しヒリヒリする胸の先。それに思いが至った瞬間、夏生は一気に覚醒した。
 バン!と乱暴にリビングに続くドアを開けると、憎らしい夫は寛いだ様子でバラエティを見ていた。夏生を見て、おー、と呑気に声を出した男に詰め寄ったのだ。

「どこに隠してんのあんなもの!!」

 恭悟はじろりと夏生を見上げて言った。

「お前、ヨガりまくってたじゃねぇか」
「痛いの!乳首が!!」

 真っ赤になってそう叫ぶと、彼はブハッと吹き出してリモコンを手に取りテレビを消した。

「見てやるよ」

 その言葉が脳に届く間もなく、恭悟は腕を夏生の背中に回して身体を引き寄せ、Tシャツを捲り上げた。

「ちょ……っと……!」
「あー……、まだちょっと赤ぇなぁ……」

 ガッチリ腰を掴まれてぷるん、と揺れるそこに触れそうな距離で囁かれる。夏生は一気に蘇る昨日の熱を無視してもがいた。

「だから……、痛いんだってば……」
「お前、動いたら揺れてさらにエロい……、あー……、やば、また興奮してきた……」

 ふぅッと息を吹きかけられてぴくんと震える。男の声色が変わった。それに触発されて、足の間がじわりと湿り気を帯びてくる。

「昨日、お前がイッちまったあとアレ外したら……、お前の乳首、真っ赤に充血して……ピンッピンに勃ったままで……」
「きょ、ご……」
「あー……無理、思い出したら……勃つ……」
「……ッ」

 突起を覆うようにして、はぁ、と熱い息をかけられた。でも、痛いと言った夏生に少しは配慮しているのか、あるいはただ焦らせたいだけか、そこには触れてこない。恭悟はうっとりとした目を上に向けた。

「……なぁ、」

 次の言葉は続かず、恭悟はごくりと唾を飲み込んだ。でもソファに座った彼の股間はもう明らかに準備万端で、しかも恭悟はズボンの縁に手を掛けている。
 ここで?ここで、このまま、するってこと?
 気付けば夏生の息も上がっていた。昨日みたいに思い通りになるもんか。ついさっきまでそう思っていた夏生は、恭悟がズボンを下ろすのに合わせて自分の下着を引き下ろした。



「ぁ……ッ、あっ、あん……ッ」

 男の上に足を広げて跨って、高い声を出してめちゃくちゃに腰を動かす。

「……ッ、エロい……、も、おまえ、エロすぎる……ッ」

 何かに耐えるように首を振る恭悟を見ているといい気分になる。薄目を開いて夏生を見ては、呻いて目をギュッと閉じるのを繰り返している男にいたずら心が湧いた。

―きのうの、しかえし。

 夏生は上半身を反らして後ろに手をつき、結合している部分が敢えて見えるようにしてやった。次に目を開いた時、恭悟はぐしゃりと顔を歪めて喘いだ。

「うあ……ッ、むり、えろ、い……ッ」

 ビクビク震えて恭悟は一瞬でイッてしまった。奥に熱く広がる感覚に甘い溜め息が漏れたが、夏生は達しそうなのを必死で耐え切って、ふん、と小さく笑ってやった。


【番外小話②冬のお買い物】


「これは?」
「あぁー、それねぇ……」

 恭悟が手にしているのは白いニットのタートルネック。着てみれば?と手渡されて夏生は苦笑した。その様子に気付いたのか恭悟は少し眉を上げる。たぶん止めろって言うだろうけど。そう思いながら夏生は試着室に向かった。

「駄目だな」

 試着室のカーテンを開けた瞬間、恭悟は言った。胸元に固定された視線に、でしょ、と笑う。白い服は似合わなくは無いのだが、膨張色の白、更にタートルネックとなると、夏生の胸はこれでもかと強調される。店員に小さく頭を下げてそれを返した。



「えっ、なんで?」

 帰宅後、というか入浴後、置かれていたそれを見て夏生は声を上げた。バスタオルを巻いたまま脱衣所を出る。

「ちょっと……恭悟……」

 またまたソファで寛いでいた男は背中で返事をした。

「着るのは家だけにしとけよ」
「いやいや……なんで今?ていうか私のパジャマどこやった?」

 まぁまぁ、と立ち上がった恭悟に背中を押されて寝室へ。男は後ろから耳元に口を寄せて囁く。

「下着、着けるなよ」

 そう言われて、夏生は真っ赤になった。にやりと笑った恭悟は夏生を置いてさっさと風呂場に行ってしまった。
 あのヘンタイ野郎!!
 夏生はギリリと歯を食いしばった。調子に乗ってる。あいつ最近、調子に乗りまくってる。ギュッと握った決して安くはないそれをそのままぶん投げようとして、ぴたりと止まる。
―なに、されるんだろう。
 ベッドに腰掛け、もぞ、と足を擦り合わせた。結婚してからの濃厚な夜の営みはほぼ毎日だ。予想を上回るその中身に、毎回夏生の身体はどろどろに溶かされている。きっと、今日も―……
 誰が着るもんか。そう思っていた夏生は、葛藤した末に袖に手を通してしまっていた。



「ほぉ、ら、……勃ってきた」
「やぁ……んッ」

 ニットの上から恭悟が胸を揉みしだいてくる。突起の部分を指でしつこく擦られて、夏生は身体を捩らせた。

「見てみろよお前、これ」

 目線を下げると、服で強調された膨らみのてっぺんに、小さいテントのように勃ち上がった、二つの。

「やだぁ……っ」
「あー……舐めてぇ……」

 生地の上から鼻をぐりぐりとそこに擦りつけられて、夏生はいやいやをして喘いだ。

「きゃぁ……ッ」

 いきなり恭悟がニットを捲り上げてその中に顔を突っ込んできた。

「ちょっ、えぇ……!?やっ、伸びる!!服伸びるってば、ぁあっ、あぁぁん……ッ」

 服の中をもぞもぞと上がってきた男は、見つけたそこに食い付いた。うごめくその下で何をされているのか見えない。しかも逃げられない!

「あぁっ、はぁん……ッ、やぁぁぁぁん」

 恭悟は服の下で、その身体を蹂躙しまくったのだった。



「ほら、もぉぉぉぉぉーー!!」

 叫ぶ夏生の手に残ったのはびろんびろんに伸び切ったニット。たとえ外では着ないものだとしても、たった一回でこんなことに!なんて勿体無い!!
 ぎゃんぎゃん吠える夏生の横で、恭悟は「ははっ」と満足そうに笑ったのだった。




【番外小話③かわいそうな林の話】


―帰りてぇ。
 恭悟は目の前の光景をうんざりとした表情で眺めていた。

 それを言い出したのは林だった。男だけで結婚祝いに飲もうぜ!と彼から社内チャットが入ったのだ。丁度繁忙期を終えた所だったからさっさと仕事を切り上げて、19時前にはいつもの居酒屋に集まることが出来た。
 夏生との関係が始まってから意図せず付き合いが悪くなってしまっていたようで、林と進藤は交際を内緒にしていた事も含めてぶつぶつと文句を言っていた。だが、何度も「でもやっぱりめでたい!」と言う二人の目には嘘は無いように見えて、恭悟は改めて同期ってありがたいもんだな、と思っていた。
 仕事の話も入り、生ビールを次々と注文する。その時恭悟は、何だか林のテンションがやけに高いしペースが早いなとは思ったのだ。でも普段はこのくらいで酔う奴じゃないし、と放っておいたら、気付けばこうなっていた。

「俺さぁ、俺……、山田のことちょっといいなと思ってたんだよぉぉ~!!」
 
 テーブルに突っ伏した林が慟哭する。「お、お前、まじか」と言いながら進藤がちらりとこちらを見た。気まずいというか、何と言うか。

「悪いな」
「思ってねぇだろぉお前ぇぇぇぇ」

 カバっと顔を上げた顔を見てヒッと身体ごと引く。まじで泣いてやがる!鼻水垂れてるし!

「いや、だってお前、……いやいや、……えぇぇ?」
「……お前、いつからだよ」
「は?」
「いつからだよ!前の同期会んときは絶対そんな感じ無かっただろ!!」

 ぎくり。内心ヒヤッとしながら、ぐしゃぐしゃの顔で詰め寄られて肩を抑えて宥める。林の言う通りだ。でも、それだけは言えない。お前らが振った話がきっかけで夏生に誘われました、なんて絶対に言えない。

「お前こそ、どこが良かったんだよ、あいつの……」

 話を逸らそうとしてそう言うと、ぐすっ、と林が鼻を啜り上げた。

「……なんかさぁ、俺がバカなこと言うと冷めた目で見てんだけどさぁ、……俺、そういうのこれまでも結構本気でバカにされることとか多かったんだけどさぁ、あいつは絶対そういう事しないっていうか、受け入れてくれてるっていうか、仕事ではちゃんと頼ってくれる時もあって、なんだかんだ優しくて、ぁ、ぁぁ……ッ、うぁぁぁぁぁあ」

 やばい。恭悟は顔を引き攣らせながら思った。これは、結構、本気のやつ。

「進藤ぉ!こいつセクキャバ連れて行こうぜ!んで山田に愛想尽かされたらいいんだよぉぉぉぉ」

 進藤の顔をチラリと見ると、いやいや、俺も知らんかった、とばかりに青ざめて首を振っている。
 それから林の泣き絡みは何時間も続き、彼が泣き疲れて眠ってしまいやっと恭悟が解放されたのは、深夜二時を回ってからだった。



「遅かったね」

 とっくに入浴を済ませてソファで微睡んでいた夏生の姿に一気に気が抜けて、恭悟はその柔らかい身体の上に倒れ込んだ。

「重っ、……楽しかった?」
「いや……」

 ん?と夏生が首を傾げる。一瞬迷ってから口を開いた。

「……林がさぁ、……お前のこと好きだったんだと」
「え」

 うそ、と目を丸くしてぱちりと瞬きをした夏生が、ふと考え込む。

「あー……、そういえば、遅く残ってた時とか、二課にたまに来てたなぁ」
「……は?」

―まじで?

「あんたに会いにきたのかなって思ってたんだよね」
「お前さぁ……」

 呆れた声を出して起き上がって、子どものようなすっぴん顔を覗き込む。お前、鈍感なんだよ。お前をいいなって思う奴は結構いるんだよ。気をつけろよほんとに!
 色々と言いたい事が頭を駆け巡ったが、何を言っても気恥ずかしいことになるのが目に見えている。恭悟はムスッとした顔をしながら、「どうしたの?」と聞く夏生の首に顔を埋めて、小さくため息をついたのだった。


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