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君とリスタート

第四話「可愛い色仕掛けには釘刺し必須」

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只今、昼飯も兼ねての小休止中。
シオンは切り株に座り、真剣な顔でレモンが運んできた本に目を通しており、ライはレモンと遊んでいる。
ライがそこら辺に落ちている石ころを適当に投げては、レモンがその石を口から出す魔玉で狙いを定め、粉砕していくという遊びだ。

「上手だなレモン。百発百中じゃん」
「キュゥ」

ライに褒められ、レモンも嬉しそうだ。
遊んでくれたお礼なのか、レモンはライの背後に回り服を足で掴むと、ライを空へと運んだ。

「おぉ!!」

服が引っ張られる感覚もない。
それに、特に指示を出している訳でもないのにライが進みたい方向へと上下左右とレモンは向かってくれる。

「レモンは人を運ぶの好きか?」
「キュキュ」

嬉しそうな声の張りから、どうやら「はい」と言っている様だ。

「シオンの事、好きか?」
「キュキュ」
「優しいもんな、シオンは」
「キュゥ、キュゥ」
「可愛いし」
「キュゥ~」
「これからも、側に居てやれな」
「キュ?」

「ライ~、レモン」

空中散歩も此処までの様だ。
本来の主に呼ばれ、レモンは急降下で地面に戻る。
ライを下ろすと、レモンは定位置であるシオンの肩へと。

「どうしたシオン?」
「少し、試させて貰おうかなって」

シオンが手に持っている本の表紙には「特級魔術、心を操る方法」と書かれている。
シオン曰く、惚れ薬は材料集めが相当困難らしく実質不可能で断念せざるおえず、まだ努力で何とかなりそうな、魔術を駆使した方法に切り替えたらしい。
とは言っても最高水準の特級魔術。何年も技術を磨く必要があり、一朝一夕に取得出来るものではない。

「ライ、私の目を見て貰っていい?」
「はいはい」

言われた通りに、ライはシオンの瞳を覗く。
シオンの手が延び、ライの頬に優しく触れてくる。
優しく笑み、ライにしか聞こえない声色で穏やかにシオンが囁くーーーー好き、と。

「・・・」
「・・・ライ?どうかな?本の通りに、してみたんだけど。何か心に変化ある?」
「・・・」
「ん~やっぱり失敗かな。眼力と言霊に術式魔力を込めるのが重要みたいなんだけど、その術式が高難易度で」
「・・・」

無言、無表情で立ち尽くすライ。
ライはシオンが持っている本を奪うと、素手で本を破いた。
シオンの行った仕草言動は、魔術がどうのこうの関係なく、男の本能を掻き乱す余りにも危険な行為だ。

「あ~まだ初歩しか読んでないのに~」
「シオン、男を煽ると後々大変な事になるって事、今夜、たっぷり教えてあげる」
「え?ライ?なんか怒ってる?」
「少しね」

(ユキと顔も声も同じ女が、なんて怖ろしい技術を身に付けようとしてやがる)



第四話「可愛い色仕掛けには釘刺し必須」終
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