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第19話
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「離せって、こら、遅刻しちまう!」
「あんたら刑事やろ、わしも刑事や、つれてって」
「ふざけんな、猫連れで仕事に行けるか!」
「猫やない、刑事やて」
「喋る猫なんか、余計に拙いだろ!」
「ニャオ、ニャオ」
「わざとらしいんだよ!」
けたたましいそのやり取りを眺めていたハイファが靴を脱ぎ、キャリーバッグとリードを手にしてくるとシドに示した。
「つれて行くしかないんじゃない?」
「って、マジかよ?」
「一日中閉じ込めておくのも何だし、どうせ別室任務だし」
「あー、そいつがあったか」
別室任務と絡めて、タナカが誘拐された可能性のあることをヴィンティス課長に告げなければならない。それが済めばあとはタナカの自宅を訪ねるくらいだ。
「仕方ねぇな。つれて行くから絶対に喋るな、分かったな?」
「喋るなて、わし、自信ないわ」
「口を接着剤で固めて欲しいか、それともいっそミンチに――」
「分かった、分かったからその目ェはやめてんか!」
タマ、いや、ヘンリーの赤い首輪に赤いリードをつけると、三毛猫は素直にキャリーバッグの中に飛び込んでくるりと回り、顔だけ出す。
シドが持ち上げて肩に掛けると、ふんふんと鼻を鳴らしヒゲをピンと張って、ニッと口角を上げた。
「これは楽ちんや。眺めもええなあ」
「シド、時間!」
「うわ、もう十五分じゃねぇか。行くぞ」
二人は靴を履いて玄関に立ち互いの腰に腕を回す。そっと抱き合って唇を寄せた。
「おおーっ、人が見とるっちゅうに、大胆やな」
「わあ、いたんだった!」
「構うもんか」
出掛ける前のいつもの儀式も半ばで声を上げられて、慌てて離れたハイファは顔を赤らめ、シドはポーカーフェイスながらムッとする。
玄関を出てリモータでロックしたところに隣室のドアが開き、水槽を小脇に抱えた白衣姿が現れた。
「おはよう、マルチェロ先生」
「おはよう、先生」
「お隣さんか。おはようさん」
「おう、相変わらず仲が良くていいですねえ」
一緒にエレベーターに向かって歩き出しながら、マルチェロ医師は当然ながらシドの担いだキャリーバッグ、それもニュッと顔を出した馴染みの三毛猫に目を留める。
「何だ、タマなんかつれて。お前さんたち、仕事じゃねぇのかい?」
「あー、まあな。任務だ、任務」
「任務って、また厄介事か。懲りねぇなあ」
「別に好きで背負ってる訳じゃねぇよ、知ってんだろ」
「嫌い嫌いも好きのうちだ。けど、何なら預かるぞ。そろそろ同じラーメンの出汁にも飽きてきたからな。しっぽだけでも煮込めば――」
と、マルチェロ医師は白衣の袖口からするりとメスを出し、三毛猫の前に翳した。
「わああ、何すんねん!」
ヒゲを一本プチッと切られ、ヘンリーは驚いてキャリーバッグの中に潜り込む。
「『何すんねん』……?」
目にも止まらぬ鮮やかさでメスを仕舞った医師は呟いてシドを見た。見られたシドは涼しげなポーカーフェイス、焦ったハイファが口を開く。
「え、あ、ちょっと僕、地方言語の勉強を……何すんねん、儲かりまっか、あはは」
黙っていた方がマシだと思われた。
エレベーターに乗り込んでマルチェロ医師は、そっとシドに訊く。
「おい、お前の嫁さんはどうしたんだ、変な宗教にでも嵌ったのか?」
「知らねぇよ。それより先生も遅刻じゃねぇのか?」
「昨日が遅かったからな。このくらいは許されますって」
「おやつのイモムシ持って、か?」
「食べ頃で早く食わない飛んでっちまう。この前もサユリとヨウコがヒラヒラと」
「おやつにいい加減な名前をつけるなよ」
一階に着いてエレベーターから降りると、他の利用者らと共に三人は――じつは四人だったが――足早にロビーを横切りエントランスを抜けた。
ここからマルチェロ医師は八分署管内の軍施設まで無人コイルタクシーだ。
「先生、いってらっしゃい」
「お前さんらも気を付けて励めよ」
片手を挙げてタクシーに乗り込み走り去るのを見送って、シドとハイファは溜息をつきながら、七分署のある左方向へと歩き始めた。
「八時二十三分、完全に遅刻だな」
「スカイチューブにすればよかったね。走る?」
「いい、今更だ。……くそう、喋るなって言っただろ!」
また顔を出したヘンリーの頭をシドは小突く。
「吃驚したわ、あの医者。わしを出汁にするて冗談きっついわ」
「冗談だとでも思ってるのか?」
ギョッとして金色の目がシドを見返した。見事な無表情に負けた三毛猫は目を逸らし、超高層ビル群に切り取られスカイチューブに分断された空を眺める。
「何ぞ降ってくるんちゃうか、えらい曇っとるで。雨の匂いもするわ」
素早くハイファがリモータ操作した。
「ヘンリーすごい。気象制御装置情報、十時から十二時までの大雨を小雨に変更だってサ」
「せやろ、任せとき」
「そいつはあんたの能力なのか?」
ヘンリーは否定した。
「ちゃうちゃう、この猫の能力や。わしらは大概自分よりも知能の劣る宿主と共生するんや。それでエサを取ったりするための知能を貸す。代わりに養って貰うっちゅう寸法やな」
「ふうん。じゃあサ、僕らが寝てる間に、勝手に乗っ取ったりはしないんだね?」
「普通そうやな。人間くらい知能があると、乗っ取るのも楽やない」
「ということは、乗っ取れないこともねぇんだな?」
何やら話が核心に触れたのか、ヘンリーの口調が妙に軽くなる。
「メッチャ疲れて腹が減るけどな。通常は宿主側に受け入れる気がないとアカンし、そこまでして無理に乗っ取っても意味があらへん。大体、今住んでる星では勝手な乗っ取りっちゅうのんは犯罪やねん」
「なるほど」
「それこそわしは超法規的行為を許された刑事やから、ホシを追うために人から人に移ってきたけど、やっぱりこの猫くらいが居心地もええわー」
湿気を帯びた暖かな風にヘンリーはヒゲをそよがせる。
「タマ、いや、ヘンリー。で、何だって深夜徘徊してたんだよ?」
「何度も言うてるやろ、ホシを追ってるんや。せやけどわしらはこんな身の上やからな、現地の刑事に協力を願おう思て病院から一番近い警察署まで爺さん歩かせてん」
しなやかな足取りで歩くシドと肩を並べてハイファがサラッと訊いた。
「じゃあヘンリーは、もしかして刑事の誰かを勝手に乗っ取るつもりだったの?」
「う、まあ、そう言えるかも知れへんけど……できれば本人の了解を得ようと……そないな目で見んといて、ホンマやて。了解を得た共生関係の方が疲れへんねん」
何処までが本当だか、怪しいもんだと二人は黙る。
あと百メートルほどで七分署という辺りでシドは思考を切り替えた。
「ナメクジのホシはともかく、タナカだな」
「タナカさん、身代金も支払われずに……可哀相、憎めない人だったよね」
「まあな、悪い奴じゃなかったな」
「早く死体だけでも発見してあげないと」
「成仏しねぇと、あのデカい顔で化けて出られたら……って、死んでねぇだろ」
「そうかなあ?」
本当に可哀相で憎めないと思っているのか、こちらもかなり怪しかった。
そうしているうちに何とノーストライクで三人は七分署に着いてしまう。
「すごいすごい、近年まれにみる快挙だよ、シドってば!」
「とっくに朝っぱらから厄介を背負ってるだろうが」
「あ、そうだっけ。でも課長の血圧が下がらなくていいじゃない」
「ふん、可愛い部下を別室に売り渡すような上司、放っとけ」
署のエントランスを正面のオートスロープではなく脇の階段を自身の足で上る。オートドアを一枚くぐった所で立ち止まり、シドは低い声で三毛猫に命じた。
「ミートソースになりたくねぇなら、デカ部屋では絶対に喋るんじゃねぇぞ」
「んな、凄まんかて。わしかて普通のテラ人がどないな反応するか、分かっとるし」
「その言葉、忘れるなよ」
「はいはい」
機捜課のデカ部屋に入ると、シドとハイファはデジタルボードを見上げる。既に二人の名前の欄は『研修』となっていた。ヴィンティス課長が嬉々として入力したに違いなかった。
ちなみにタナカの欄は『自宅』だった。
いつもと変わらず対衝撃ジャケットを椅子に掛けてデスクに着いたシドに、課長は『何で出てきたんだ?』という目を向ける。不審そうなブルーアイを無視し、まずは煙草を咥えた。
「あれ、先輩たちって研修じゃなかったんスか?」
深夜番明けの代休から出てきた左隣の席のヤマサキがデカい声を張り上げた。無言でシドはヤマサキを睨みつける。後輩はへこたれずに話しかけた。
「ところで何処に何の研修なんスか?」
「うるせぇな。お前こそ仕事はどうしたんだよ?」
七分署一空気の読めない男ヤマサキの質問を、シドは質問返しで封じる。
毎度毎度、別室任務が降ってくるたびに『出張』に『研修』なのだ。シドとハイファにだけ特別勤務がこんなに降って湧けば、とっくに機捜課の同僚たちは二人には何かがあると悟っている。分かっていながらも黙っていてくれるのだ。
それをこのヤマサキは唯一人、素で『出張』に『研修』だと信じている。
「十時から下請け、捜三の張り込みっスよ。それまでヒマで」
「俺をヒマツブシにする気か?」
「しませんって。機嫌、悪いっスね」
「分かってたら黙れ。なんなら消えろ」
「あんたら刑事やろ、わしも刑事や、つれてって」
「ふざけんな、猫連れで仕事に行けるか!」
「猫やない、刑事やて」
「喋る猫なんか、余計に拙いだろ!」
「ニャオ、ニャオ」
「わざとらしいんだよ!」
けたたましいそのやり取りを眺めていたハイファが靴を脱ぎ、キャリーバッグとリードを手にしてくるとシドに示した。
「つれて行くしかないんじゃない?」
「って、マジかよ?」
「一日中閉じ込めておくのも何だし、どうせ別室任務だし」
「あー、そいつがあったか」
別室任務と絡めて、タナカが誘拐された可能性のあることをヴィンティス課長に告げなければならない。それが済めばあとはタナカの自宅を訪ねるくらいだ。
「仕方ねぇな。つれて行くから絶対に喋るな、分かったな?」
「喋るなて、わし、自信ないわ」
「口を接着剤で固めて欲しいか、それともいっそミンチに――」
「分かった、分かったからその目ェはやめてんか!」
タマ、いや、ヘンリーの赤い首輪に赤いリードをつけると、三毛猫は素直にキャリーバッグの中に飛び込んでくるりと回り、顔だけ出す。
シドが持ち上げて肩に掛けると、ふんふんと鼻を鳴らしヒゲをピンと張って、ニッと口角を上げた。
「これは楽ちんや。眺めもええなあ」
「シド、時間!」
「うわ、もう十五分じゃねぇか。行くぞ」
二人は靴を履いて玄関に立ち互いの腰に腕を回す。そっと抱き合って唇を寄せた。
「おおーっ、人が見とるっちゅうに、大胆やな」
「わあ、いたんだった!」
「構うもんか」
出掛ける前のいつもの儀式も半ばで声を上げられて、慌てて離れたハイファは顔を赤らめ、シドはポーカーフェイスながらムッとする。
玄関を出てリモータでロックしたところに隣室のドアが開き、水槽を小脇に抱えた白衣姿が現れた。
「おはよう、マルチェロ先生」
「おはよう、先生」
「お隣さんか。おはようさん」
「おう、相変わらず仲が良くていいですねえ」
一緒にエレベーターに向かって歩き出しながら、マルチェロ医師は当然ながらシドの担いだキャリーバッグ、それもニュッと顔を出した馴染みの三毛猫に目を留める。
「何だ、タマなんかつれて。お前さんたち、仕事じゃねぇのかい?」
「あー、まあな。任務だ、任務」
「任務って、また厄介事か。懲りねぇなあ」
「別に好きで背負ってる訳じゃねぇよ、知ってんだろ」
「嫌い嫌いも好きのうちだ。けど、何なら預かるぞ。そろそろ同じラーメンの出汁にも飽きてきたからな。しっぽだけでも煮込めば――」
と、マルチェロ医師は白衣の袖口からするりとメスを出し、三毛猫の前に翳した。
「わああ、何すんねん!」
ヒゲを一本プチッと切られ、ヘンリーは驚いてキャリーバッグの中に潜り込む。
「『何すんねん』……?」
目にも止まらぬ鮮やかさでメスを仕舞った医師は呟いてシドを見た。見られたシドは涼しげなポーカーフェイス、焦ったハイファが口を開く。
「え、あ、ちょっと僕、地方言語の勉強を……何すんねん、儲かりまっか、あはは」
黙っていた方がマシだと思われた。
エレベーターに乗り込んでマルチェロ医師は、そっとシドに訊く。
「おい、お前の嫁さんはどうしたんだ、変な宗教にでも嵌ったのか?」
「知らねぇよ。それより先生も遅刻じゃねぇのか?」
「昨日が遅かったからな。このくらいは許されますって」
「おやつのイモムシ持って、か?」
「食べ頃で早く食わない飛んでっちまう。この前もサユリとヨウコがヒラヒラと」
「おやつにいい加減な名前をつけるなよ」
一階に着いてエレベーターから降りると、他の利用者らと共に三人は――じつは四人だったが――足早にロビーを横切りエントランスを抜けた。
ここからマルチェロ医師は八分署管内の軍施設まで無人コイルタクシーだ。
「先生、いってらっしゃい」
「お前さんらも気を付けて励めよ」
片手を挙げてタクシーに乗り込み走り去るのを見送って、シドとハイファは溜息をつきながら、七分署のある左方向へと歩き始めた。
「八時二十三分、完全に遅刻だな」
「スカイチューブにすればよかったね。走る?」
「いい、今更だ。……くそう、喋るなって言っただろ!」
また顔を出したヘンリーの頭をシドは小突く。
「吃驚したわ、あの医者。わしを出汁にするて冗談きっついわ」
「冗談だとでも思ってるのか?」
ギョッとして金色の目がシドを見返した。見事な無表情に負けた三毛猫は目を逸らし、超高層ビル群に切り取られスカイチューブに分断された空を眺める。
「何ぞ降ってくるんちゃうか、えらい曇っとるで。雨の匂いもするわ」
素早くハイファがリモータ操作した。
「ヘンリーすごい。気象制御装置情報、十時から十二時までの大雨を小雨に変更だってサ」
「せやろ、任せとき」
「そいつはあんたの能力なのか?」
ヘンリーは否定した。
「ちゃうちゃう、この猫の能力や。わしらは大概自分よりも知能の劣る宿主と共生するんや。それでエサを取ったりするための知能を貸す。代わりに養って貰うっちゅう寸法やな」
「ふうん。じゃあサ、僕らが寝てる間に、勝手に乗っ取ったりはしないんだね?」
「普通そうやな。人間くらい知能があると、乗っ取るのも楽やない」
「ということは、乗っ取れないこともねぇんだな?」
何やら話が核心に触れたのか、ヘンリーの口調が妙に軽くなる。
「メッチャ疲れて腹が減るけどな。通常は宿主側に受け入れる気がないとアカンし、そこまでして無理に乗っ取っても意味があらへん。大体、今住んでる星では勝手な乗っ取りっちゅうのんは犯罪やねん」
「なるほど」
「それこそわしは超法規的行為を許された刑事やから、ホシを追うために人から人に移ってきたけど、やっぱりこの猫くらいが居心地もええわー」
湿気を帯びた暖かな風にヘンリーはヒゲをそよがせる。
「タマ、いや、ヘンリー。で、何だって深夜徘徊してたんだよ?」
「何度も言うてるやろ、ホシを追ってるんや。せやけどわしらはこんな身の上やからな、現地の刑事に協力を願おう思て病院から一番近い警察署まで爺さん歩かせてん」
しなやかな足取りで歩くシドと肩を並べてハイファがサラッと訊いた。
「じゃあヘンリーは、もしかして刑事の誰かを勝手に乗っ取るつもりだったの?」
「う、まあ、そう言えるかも知れへんけど……できれば本人の了解を得ようと……そないな目で見んといて、ホンマやて。了解を得た共生関係の方が疲れへんねん」
何処までが本当だか、怪しいもんだと二人は黙る。
あと百メートルほどで七分署という辺りでシドは思考を切り替えた。
「ナメクジのホシはともかく、タナカだな」
「タナカさん、身代金も支払われずに……可哀相、憎めない人だったよね」
「まあな、悪い奴じゃなかったな」
「早く死体だけでも発見してあげないと」
「成仏しねぇと、あのデカい顔で化けて出られたら……って、死んでねぇだろ」
「そうかなあ?」
本当に可哀相で憎めないと思っているのか、こちらもかなり怪しかった。
そうしているうちに何とノーストライクで三人は七分署に着いてしまう。
「すごいすごい、近年まれにみる快挙だよ、シドってば!」
「とっくに朝っぱらから厄介を背負ってるだろうが」
「あ、そうだっけ。でも課長の血圧が下がらなくていいじゃない」
「ふん、可愛い部下を別室に売り渡すような上司、放っとけ」
署のエントランスを正面のオートスロープではなく脇の階段を自身の足で上る。オートドアを一枚くぐった所で立ち止まり、シドは低い声で三毛猫に命じた。
「ミートソースになりたくねぇなら、デカ部屋では絶対に喋るんじゃねぇぞ」
「んな、凄まんかて。わしかて普通のテラ人がどないな反応するか、分かっとるし」
「その言葉、忘れるなよ」
「はいはい」
機捜課のデカ部屋に入ると、シドとハイファはデジタルボードを見上げる。既に二人の名前の欄は『研修』となっていた。ヴィンティス課長が嬉々として入力したに違いなかった。
ちなみにタナカの欄は『自宅』だった。
いつもと変わらず対衝撃ジャケットを椅子に掛けてデスクに着いたシドに、課長は『何で出てきたんだ?』という目を向ける。不審そうなブルーアイを無視し、まずは煙草を咥えた。
「あれ、先輩たちって研修じゃなかったんスか?」
深夜番明けの代休から出てきた左隣の席のヤマサキがデカい声を張り上げた。無言でシドはヤマサキを睨みつける。後輩はへこたれずに話しかけた。
「ところで何処に何の研修なんスか?」
「うるせぇな。お前こそ仕事はどうしたんだよ?」
七分署一空気の読めない男ヤマサキの質問を、シドは質問返しで封じる。
毎度毎度、別室任務が降ってくるたびに『出張』に『研修』なのだ。シドとハイファにだけ特別勤務がこんなに降って湧けば、とっくに機捜課の同僚たちは二人には何かがあると悟っている。分かっていながらも黙っていてくれるのだ。
それをこのヤマサキは唯一人、素で『出張』に『研修』だと信じている。
「十時から下請け、捜三の張り込みっスよ。それまでヒマで」
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