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1部 おっかなびっくり放浪編
10 プレゼント
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早朝のシミューズ運河。
「う~……」
ベットから身を起こして魔導コテージの中で欠伸をした。肺に流れ込む空気が冷たい。外の気温は何度だろ? 生活魔法で調べる。
は? もう春なのに外は気温3度とか。
運河の側だから寒いのかな。魔導ストーブを点けている室内でも12度だ。
だるい……耐寒と耐熱の上位スキル『気温適応』を取得する。
昨日は沢山魔力も使ったし疲れも溜まってるのかもしれない。
体に洗浄魔法をかけて、ベットに腰掛ける。
「まだ5時過ぎかぁ……」
収納からヌコン村で貰ったドライフルーツを出して食べる。あら、この白いの美味しい。鑑定するとライチと出た。ライチうまー。
牛乳に蜂蜜を加えて飲む。喉を潤しながら、体が暖まってきたところで新たに収納に加わったものがあるか探る。
昨夜は結界に色んな生き物が触れてきた。
その記録を見る。
斑スネーク。
巨大団子虫。
兜ザリガニ。
百足コウモリ。
六ツ目モンキー。
「お、この辺は六ツ目モンキーがいるんだ」
これが昨夜、結界に攻撃してきた生き物。
でも残念、夜光蝶の時のように結界に触れるだけで手に入るおこぼれは無かったみたいだ。
冒険服に着替えてアクセサリー装備をつける。
風向きを読む帽子。
探検家の靴。
水難無効のサーチライト。
海洋生物学者の片眼鏡。
よし、魔導コテージを収納する。
飛行で運河の上まで飛び、収納から船を出す。
「浮いた~!」
と思ったらすぐ海に向かって進んでいく。
一応、海賊魔導船だからね。大海原の海底に眠るお宝を感知してくれたか。
船に結界を張って、座布団の上に座る。
「うっひょー! アマゾン探検みたい」
両側に森。見渡す限り水路が続いている。
今のうちルアー作りをしておこう。
まずは海中罠の簡易ルアー。
『泳ぐ眼』を丸い結界で包む。
見た目は透明なボールの出来上がり。外から攻撃されたらボールのように弾むし、伸縮もする。そして重石も入れて沈むようにした。
海底にいる魚はキョロキョロと泳ぐ眼に誘われてこの結果に触れる。触れた魚は結界の中に強制的に入れられて捕獲される。結界の中にも海水と酸素は通るから、捕らえた魚は新鮮なまま。だからこれを海中に放りこんだら基本放置。遠くにいても回収できるからね。
「できたー!」
名付けて目玉ルアー! ダサ。
20個作ったぞ。
続いて釣竿用ルアー。
ヌコン村では釣り餌が入った珍しい缶詰が売られていた。それを応用する。
魚が大好きな匂いを出して捕食する『寄生三枚貝』と『とぐろ海老』を空き缶に入れ、錬金術で蓋をしめる。既に貝と海老は死んでいるけど、匂いは残ってる。缶にいくつか小さな穴をあけて、そこに魔導具『引っかけ針』をつけたら完成。
これを釣糸につけて海に放りこんだら、海老や貝の匂いにつられて魚が寄ってきて、ヒレでも尻尾でも引っかけ針に触れた途端、魚に針が食い込む仕掛け。
釣糸の長さを調整して中層にいる魚を狙う。
釣れると思うんだー。
もはや釣りじゃなく、これも罠だね。
名付けて缶ルアー! ダサダサ。
20缶作ったぞ。海釣り楽しみー。
そこでカツンと何かが結界にあたった。
見ると木の上にいる六ツ目モンキーが何かをぶつけてきた。10匹程の群れだ。
「キャッキャッ、ギィー!」
「警戒されている……」
ここはあの群れの縄張りか。
六ツ目モンキーが投げ付けてきた物の中に、木の枝や石に混じって鬼栗や厚皮バナナがあった。亀の甲羅なんかもある。
どれも固くて当たったら痛いだろう。まぁ、結界に触れたら生き物以外は収納されちゃうんだけどね。
さ、ルアーも作ったしご飯食べよー。
「船の上で食べるおにぎりは格別だね」
具は色々。
煮卵、辛子明太子、天むすもある。
イベントで手に入れたコンビニシリーズのおにぎりだ。塩結びセットもある。沢庵ときゃらぶきが美味い。麦茶さいこー。
「ウッキャアアア!」
「うるせーぞ猿が」
なんだろう。
海に向かって運河を進んでいる、たまの悪路は物理的に船をゴリ押しして進む、その途中で、色んな猿の群れが船に物を投げてきた。
まず小型の六ツ目モンキーと陸アイアイの群れ、そのあと中型のキーイエローの親子連れに、大型のガットゥーゾと呼ばれる黒猿。ゆらゆらと揺れる提灯目掛けて食いかけの魚を投げ付けてきた個体の魚人もいた。藻みたいな肌の、手足がある海水魚だ。
「ギャアアアア! ウホウホウホ!」
「あ、ゴリーハンド」
巨猿ゴリーハンドは岩を投げてきた。
猿系は収納から鏡を出してチカチカさせると、しばらく怯える。そのあと危険はないと学ぶのか、また物を投げてくるので面白い。
色々試した。
鏡、タンバリン、レーザー銃(玩具)の光線。
とくに食べ物を見せると猿の態度がかわる。凶暴になるのだ。投げる物の量も3倍になる。
今もボーリング玉みたいな木の実【どんぐり頭】を高速で投げ付けてきてガーターさせている。
「ほーれ、最高級黒毛和牛もあるぞー」
「ギャアアアアアアアア!!」
お、木をぶち抜いて投げてきた。おまけに果物が成ってる木じゃないかー。みんなプレゼントありがとう。
でもなんでこれだけ煽っても水路には入ってこないんだろう、と思ったら水路にある岩の上で休む赤ちゃんワニを見つけた。その下の黄土色の動く岩……じゃない。鑑定するシャークギガダイルの成体だった。かなりでかい。
通り過ぎるとき長い尻尾で船体を攻撃してきた。弾いた結界からも凄い音。
猿たちが威嚇に混じって怯えた声を出す。
「これは水路に入りたくないわな」
煽るのをやめるとプレゼントが減った。
ごめんよ。収納から焼き芋を50本出して猿たちに投げ付けた。
「キャー♪」
「キャキャ、キャッ♪」
「キュイキュイ♪」
う~ん。森に反響した鳴き声が耳に心地よい。もっと早くこうすればよかったね。
締めに鯛焼きと温かい抹茶を頂く。うまま。甘い物は別腹。
「おっ、ご飯食べてただけで結構集まったね」
猿と魚人からのプレゼント。
虫、石、枝、岩×502
鬼栗×129
厚皮バナナ×22
どんぐり頭×19
亀の甲羅×2
食いかけの魚×1
ヌメリ藻×6
ミニレッドライチの木×1
「さ、結界を更に重ねて昼寝しようかね。座布団も重ねて、と」
お腹パンパンだけど魔導囲炉裏に鬼栗を放りこんでおく。
鬼栗は1日かけてじっくり熱を通せばホクホクのトロトロになるのだ。
沢山あるからオヤツにしよー。
「う、ん……」
もう夕方か……。
目覚めて船の耐久度を鑑定する。
無傷……何事もなく進んでいるようだ。
む? いま結界に攻撃があったな。
収納には吹き矢と……あ、リアルタイムで槍も入ってきた。
鑑定すると、ケッチャカ族の矢と槍……へぇ。初ゲットー。
ただの木製手作り武器だけど、変装するときは雰囲気が大事だからね。この槍なんか先端が丸くて形が独特で民族衣装シリーズの狩人服と合いそうだ。
さて、探知探索。
「……あそこ?」
目視は出来ないけど、木の上にケッチャカ族がいる。……1人だ。偵察ぽいな。なにもしませんよ。
また吹き矢がとんできた。
さっきのと同じ、毒矢でもないただの矢。おまけに私を狙ってない。
いや……その前に吹き矢には殺傷力がない。だから普通は毒を塗りこむものなのだけど。
もしかしたら攻撃じゃなくて──。
「物々交換ですかー!」
ケッチャカ族に向かって声を上げると、ピュロォロロロと笛の音が返ってきた。その笛の音、かなりイイ! 欲しいなー。
舵を掴んで船を操作する。
ケッチャカ族がいたのは確かこの辺……探知すると、水路にはみ出た太い木の枝に少女がいた。修行僧のような布を纏った、肌が浅黒く可愛らしい子だ。船を停止させ、結界を消して見上げる形で手を振る。
「ムギ、ほしイ……」
ムギ……小麦か? 大麦か?
てか可愛い声だな。
両方2キロずつ出して、紐付きの袋に入れて、少女が袋を掴めるよう、上に持ち上げる。もじもじしながらも少女は受け取った。
「くすり、むし、くすり、を」
「いいよー」
虫下しか食中毒だな。
両方に効く万能薬を渡した。
奮発して100錠!
なんかもじもじする少女が可愛くてね。庇護欲をそそられた。
さっき欲しいと思った笛は少女の首にかけられていた。いい音が鳴る笛。鑑定すると『木の笛』と出た。
「これ、おだい、おかね」
少女の手には……金鉱石。まんま黄金だ。金額が違い過ぎる。これの価値を知らないのだろうか?
「いいのいいの」
「で、も」
収納からホイッスルを取り出す。
鳥笛だ。竹で出来ている。
少女の前でふくと、驚いたように目を丸くして、ニコッと顔を綻ばせた。
ピュロォロロロォォ……少女も自分の笛をふいた。
あー……いい音。
先程の鳥笛は『ピュピュ』だったので、今度は別の鳥笛で『キュウキュウ』ふいた。
少女の笛には敵わないけど、こちらもよい音だ。夢中になってふいて気付いた。
少女がドン引きしている。
それもそのはず、近くの木にはいつの間にか紅カケス、真似鳥、プラチナ孔雀、逆さオウムがとまっていたのだ。上空にスプー鴨もいる。あのまま笛をふき続けていたら着水してきたかも。鴨。
ハッと我に返った少女がプラチナ孔雀に向かって別の吹き矢をふいた。糸のついた毒矢だ。ヒット。落下したプラチナ孔雀は着水してもがいている。
幼いながらも、それを狩人の眼でじっと静かに見つめる少女。ゾクゾクする。
やがてプラチナ孔雀がもがくのをやめ、水に浮いた。少女は糸を手繰り寄せ、獲物をゲットしていた。
「おめでとう~」
「おだい、の、かわり」
「え?」
少女は木の上から獲物をおろしてくる。やだいいのに。
受け取って洗浄。すぐに収納すると、少女がじっと見つめてきた。魔法が珍しいのかな?
「いい、ふえ、それ」
「あ、これ? 君のも、凄くいい笛だよー」
そう言うと少女は今日一番もじもじした。可愛いぃ。
「あげるよ」
いくつかデザイン別で出して、それを手に飛行で近付くと、少女は驚きつつも笛を受け取った。
「あ、りがと」
「どういたしましてっ」
結界も張り直し、停止させていた船を再び発進させてから二時間。ご飯も食べたしそろそろ魔導テントに入って休もうかな。
「……あ」
首にかけた笛を手にとる。
ピュロォロロロォォ……あぁ。いい音。癒される。
少女はあの笛を2つ持っていた。どちらも手作りだそうだ。
こんなに胸が温かくなるプレゼント貰ったの、前世を含めてもはじめてかも……。
寝る前にもう一度ふくと、それに応えるようにどこからか『キュウキュウ』と音が返ってきた気がした。
「う~……」
ベットから身を起こして魔導コテージの中で欠伸をした。肺に流れ込む空気が冷たい。外の気温は何度だろ? 生活魔法で調べる。
は? もう春なのに外は気温3度とか。
運河の側だから寒いのかな。魔導ストーブを点けている室内でも12度だ。
だるい……耐寒と耐熱の上位スキル『気温適応』を取得する。
昨日は沢山魔力も使ったし疲れも溜まってるのかもしれない。
体に洗浄魔法をかけて、ベットに腰掛ける。
「まだ5時過ぎかぁ……」
収納からヌコン村で貰ったドライフルーツを出して食べる。あら、この白いの美味しい。鑑定するとライチと出た。ライチうまー。
牛乳に蜂蜜を加えて飲む。喉を潤しながら、体が暖まってきたところで新たに収納に加わったものがあるか探る。
昨夜は結界に色んな生き物が触れてきた。
その記録を見る。
斑スネーク。
巨大団子虫。
兜ザリガニ。
百足コウモリ。
六ツ目モンキー。
「お、この辺は六ツ目モンキーがいるんだ」
これが昨夜、結界に攻撃してきた生き物。
でも残念、夜光蝶の時のように結界に触れるだけで手に入るおこぼれは無かったみたいだ。
冒険服に着替えてアクセサリー装備をつける。
風向きを読む帽子。
探検家の靴。
水難無効のサーチライト。
海洋生物学者の片眼鏡。
よし、魔導コテージを収納する。
飛行で運河の上まで飛び、収納から船を出す。
「浮いた~!」
と思ったらすぐ海に向かって進んでいく。
一応、海賊魔導船だからね。大海原の海底に眠るお宝を感知してくれたか。
船に結界を張って、座布団の上に座る。
「うっひょー! アマゾン探検みたい」
両側に森。見渡す限り水路が続いている。
今のうちルアー作りをしておこう。
まずは海中罠の簡易ルアー。
『泳ぐ眼』を丸い結界で包む。
見た目は透明なボールの出来上がり。外から攻撃されたらボールのように弾むし、伸縮もする。そして重石も入れて沈むようにした。
海底にいる魚はキョロキョロと泳ぐ眼に誘われてこの結果に触れる。触れた魚は結界の中に強制的に入れられて捕獲される。結界の中にも海水と酸素は通るから、捕らえた魚は新鮮なまま。だからこれを海中に放りこんだら基本放置。遠くにいても回収できるからね。
「できたー!」
名付けて目玉ルアー! ダサ。
20個作ったぞ。
続いて釣竿用ルアー。
ヌコン村では釣り餌が入った珍しい缶詰が売られていた。それを応用する。
魚が大好きな匂いを出して捕食する『寄生三枚貝』と『とぐろ海老』を空き缶に入れ、錬金術で蓋をしめる。既に貝と海老は死んでいるけど、匂いは残ってる。缶にいくつか小さな穴をあけて、そこに魔導具『引っかけ針』をつけたら完成。
これを釣糸につけて海に放りこんだら、海老や貝の匂いにつられて魚が寄ってきて、ヒレでも尻尾でも引っかけ針に触れた途端、魚に針が食い込む仕掛け。
釣糸の長さを調整して中層にいる魚を狙う。
釣れると思うんだー。
もはや釣りじゃなく、これも罠だね。
名付けて缶ルアー! ダサダサ。
20缶作ったぞ。海釣り楽しみー。
そこでカツンと何かが結界にあたった。
見ると木の上にいる六ツ目モンキーが何かをぶつけてきた。10匹程の群れだ。
「キャッキャッ、ギィー!」
「警戒されている……」
ここはあの群れの縄張りか。
六ツ目モンキーが投げ付けてきた物の中に、木の枝や石に混じって鬼栗や厚皮バナナがあった。亀の甲羅なんかもある。
どれも固くて当たったら痛いだろう。まぁ、結界に触れたら生き物以外は収納されちゃうんだけどね。
さ、ルアーも作ったしご飯食べよー。
「船の上で食べるおにぎりは格別だね」
具は色々。
煮卵、辛子明太子、天むすもある。
イベントで手に入れたコンビニシリーズのおにぎりだ。塩結びセットもある。沢庵ときゃらぶきが美味い。麦茶さいこー。
「ウッキャアアア!」
「うるせーぞ猿が」
なんだろう。
海に向かって運河を進んでいる、たまの悪路は物理的に船をゴリ押しして進む、その途中で、色んな猿の群れが船に物を投げてきた。
まず小型の六ツ目モンキーと陸アイアイの群れ、そのあと中型のキーイエローの親子連れに、大型のガットゥーゾと呼ばれる黒猿。ゆらゆらと揺れる提灯目掛けて食いかけの魚を投げ付けてきた個体の魚人もいた。藻みたいな肌の、手足がある海水魚だ。
「ギャアアアア! ウホウホウホ!」
「あ、ゴリーハンド」
巨猿ゴリーハンドは岩を投げてきた。
猿系は収納から鏡を出してチカチカさせると、しばらく怯える。そのあと危険はないと学ぶのか、また物を投げてくるので面白い。
色々試した。
鏡、タンバリン、レーザー銃(玩具)の光線。
とくに食べ物を見せると猿の態度がかわる。凶暴になるのだ。投げる物の量も3倍になる。
今もボーリング玉みたいな木の実【どんぐり頭】を高速で投げ付けてきてガーターさせている。
「ほーれ、最高級黒毛和牛もあるぞー」
「ギャアアアアアアアア!!」
お、木をぶち抜いて投げてきた。おまけに果物が成ってる木じゃないかー。みんなプレゼントありがとう。
でもなんでこれだけ煽っても水路には入ってこないんだろう、と思ったら水路にある岩の上で休む赤ちゃんワニを見つけた。その下の黄土色の動く岩……じゃない。鑑定するシャークギガダイルの成体だった。かなりでかい。
通り過ぎるとき長い尻尾で船体を攻撃してきた。弾いた結界からも凄い音。
猿たちが威嚇に混じって怯えた声を出す。
「これは水路に入りたくないわな」
煽るのをやめるとプレゼントが減った。
ごめんよ。収納から焼き芋を50本出して猿たちに投げ付けた。
「キャー♪」
「キャキャ、キャッ♪」
「キュイキュイ♪」
う~ん。森に反響した鳴き声が耳に心地よい。もっと早くこうすればよかったね。
締めに鯛焼きと温かい抹茶を頂く。うまま。甘い物は別腹。
「おっ、ご飯食べてただけで結構集まったね」
猿と魚人からのプレゼント。
虫、石、枝、岩×502
鬼栗×129
厚皮バナナ×22
どんぐり頭×19
亀の甲羅×2
食いかけの魚×1
ヌメリ藻×6
ミニレッドライチの木×1
「さ、結界を更に重ねて昼寝しようかね。座布団も重ねて、と」
お腹パンパンだけど魔導囲炉裏に鬼栗を放りこんでおく。
鬼栗は1日かけてじっくり熱を通せばホクホクのトロトロになるのだ。
沢山あるからオヤツにしよー。
「う、ん……」
もう夕方か……。
目覚めて船の耐久度を鑑定する。
無傷……何事もなく進んでいるようだ。
む? いま結界に攻撃があったな。
収納には吹き矢と……あ、リアルタイムで槍も入ってきた。
鑑定すると、ケッチャカ族の矢と槍……へぇ。初ゲットー。
ただの木製手作り武器だけど、変装するときは雰囲気が大事だからね。この槍なんか先端が丸くて形が独特で民族衣装シリーズの狩人服と合いそうだ。
さて、探知探索。
「……あそこ?」
目視は出来ないけど、木の上にケッチャカ族がいる。……1人だ。偵察ぽいな。なにもしませんよ。
また吹き矢がとんできた。
さっきのと同じ、毒矢でもないただの矢。おまけに私を狙ってない。
いや……その前に吹き矢には殺傷力がない。だから普通は毒を塗りこむものなのだけど。
もしかしたら攻撃じゃなくて──。
「物々交換ですかー!」
ケッチャカ族に向かって声を上げると、ピュロォロロロと笛の音が返ってきた。その笛の音、かなりイイ! 欲しいなー。
舵を掴んで船を操作する。
ケッチャカ族がいたのは確かこの辺……探知すると、水路にはみ出た太い木の枝に少女がいた。修行僧のような布を纏った、肌が浅黒く可愛らしい子だ。船を停止させ、結界を消して見上げる形で手を振る。
「ムギ、ほしイ……」
ムギ……小麦か? 大麦か?
てか可愛い声だな。
両方2キロずつ出して、紐付きの袋に入れて、少女が袋を掴めるよう、上に持ち上げる。もじもじしながらも少女は受け取った。
「くすり、むし、くすり、を」
「いいよー」
虫下しか食中毒だな。
両方に効く万能薬を渡した。
奮発して100錠!
なんかもじもじする少女が可愛くてね。庇護欲をそそられた。
さっき欲しいと思った笛は少女の首にかけられていた。いい音が鳴る笛。鑑定すると『木の笛』と出た。
「これ、おだい、おかね」
少女の手には……金鉱石。まんま黄金だ。金額が違い過ぎる。これの価値を知らないのだろうか?
「いいのいいの」
「で、も」
収納からホイッスルを取り出す。
鳥笛だ。竹で出来ている。
少女の前でふくと、驚いたように目を丸くして、ニコッと顔を綻ばせた。
ピュロォロロロォォ……少女も自分の笛をふいた。
あー……いい音。
先程の鳥笛は『ピュピュ』だったので、今度は別の鳥笛で『キュウキュウ』ふいた。
少女の笛には敵わないけど、こちらもよい音だ。夢中になってふいて気付いた。
少女がドン引きしている。
それもそのはず、近くの木にはいつの間にか紅カケス、真似鳥、プラチナ孔雀、逆さオウムがとまっていたのだ。上空にスプー鴨もいる。あのまま笛をふき続けていたら着水してきたかも。鴨。
ハッと我に返った少女がプラチナ孔雀に向かって別の吹き矢をふいた。糸のついた毒矢だ。ヒット。落下したプラチナ孔雀は着水してもがいている。
幼いながらも、それを狩人の眼でじっと静かに見つめる少女。ゾクゾクする。
やがてプラチナ孔雀がもがくのをやめ、水に浮いた。少女は糸を手繰り寄せ、獲物をゲットしていた。
「おめでとう~」
「おだい、の、かわり」
「え?」
少女は木の上から獲物をおろしてくる。やだいいのに。
受け取って洗浄。すぐに収納すると、少女がじっと見つめてきた。魔法が珍しいのかな?
「いい、ふえ、それ」
「あ、これ? 君のも、凄くいい笛だよー」
そう言うと少女は今日一番もじもじした。可愛いぃ。
「あげるよ」
いくつかデザイン別で出して、それを手に飛行で近付くと、少女は驚きつつも笛を受け取った。
「あ、りがと」
「どういたしましてっ」
結界も張り直し、停止させていた船を再び発進させてから二時間。ご飯も食べたしそろそろ魔導テントに入って休もうかな。
「……あ」
首にかけた笛を手にとる。
ピュロォロロロォォ……あぁ。いい音。癒される。
少女はあの笛を2つ持っていた。どちらも手作りだそうだ。
こんなに胸が温かくなるプレゼント貰ったの、前世を含めてもはじめてかも……。
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