明けの星の境界線

宇土為名

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 なぜ寺山が?
 振り向いたその顔はどこか違っていた。
 いつもとは何かがおかしい寺山を、逸巳はまじまじと見つめた。
「なんで…」
 寺山の向こうには怜がいた。長身を少し屈め、長い前髪の間から逸巳を見ている。
「逸巳」
 強張ったような寺山の声に逸巳は顔を向けた。
「どういう…、寺山、何でここに」
「おまえこそ」
 逸巳の言葉を遮るように寺山は言った。
「購買にいるはずだろ」
「そんなのもう終わった」
 言い返すと寺山は口を引き結んだ。たったそれだけのことに逸巳の胸の内がざわめく。一緒に行ったのはこのためだったのだろうか。購買で時間を取られている間、怜に会いに行った? だから姿が見えなくなった?
「後藤くんと昼一緒にする約束してたんだよ」
「こんなところで?」
「こんなところって…別に」
「変に思わないのか?」
「? どこでもよくないか?」
 場所なんてどうでもいいことだ。今寺山に指摘されるまで逸巳は気にもしなかった。そこを気にする寺山の思考が逸巳にはよく分からない。
 それに…
「静かなほうが落ち着くだろ?」
「いつもは教室で食ってるのに?」
「……」
 なんだろう、この違和感は。
 自分の中に怒りに似たものが芽生えていた。
 腹の底が熱い。
 逸巳は深く息を吸い込み、吐き出した。
「なんでそんなに僕のことに口出すんだ?」
 寺山が眦を吊り上げた。
「騙されてるからだろう」
「騙すって何…」
「こいつは碌な奴じゃないんだよ、なんで分からないんだ? おまえと友達だとか本気で言ってると思ってるのか?」
「思ってるよ」
「そんなわけないだろ」
 即答した逸巳に寺山は詰め寄った。二の腕を掴まれ視界が揺れた。
「こいつの噂知ってるのか? ここにいた教師を強姦したあげくにそれをバラまいて辞めさせたんだぞ!」
 逸巳は一瞬黙り込んだ。クラスメイトの話していたことが寺山の言葉に重なる。
 その教師が神田なのか。
 でも。
「だからそれは」
 噂だ。
 そう言いかけた逸巳に、くっ、と寺山は勝ち誇ったように唇を曲げた。
「噂だって言いたいんだろ? でも何もない奴ならそんな噂はもともと立ったりしないよな?」
 怜を振り返り、逸巳を見下ろした。
「よく考えろよ、逸巳」
 廊下からの光を反射して、その目がぎらぎらと光っている。こんな寺山を今まで見たことがない。
 怖い、と思った瞬間、寺山は逸巳を放し準備室から出て行った。
「待っ…、寺山!」
 とっさに逸巳は呼び止めた。このまま行かせては駄目な気がした。
 準備室を出るとき怜を振り返る。
 逸巳と目が合った怜はさっと視線を逸らした。
 足を止めることも出来たが、逸巳は寺山の後を追った。
「寺山…!」
 階段下の踊り場に寺山はいた。
「なんで──なんであんなこと──、あんなの、寺山が見たわけでもないだろ」
「見なくてもわかりそうなもんだ」
「分かるってなんだよ」
 噂で他人を理解できるわけがない。
 それを信じている寺山が逸巳は信じられなかった。
「寺山は本当のことなんか知らないだろ」
 他人とあまり関わりを持たない彼が、当時のことをリアルタイムで知っていたとは考えにくい。
 もしも知っていたとして、今まで一度もそんな話題がふたりの間で出たことはない。
 付き合いは長いのに、こんな寺山を見たのは初めてだ。感情の起伏があまりなく、いつも冷静で穏やかな彼が…
 本当にどうしてしまったんだろう?
 ちらりと寺山は肩越しに逸巳を見やった。
「じゃあ逸巳はあいつの何がいいんだ?」
 何が?
「そんなに気に入ってるのか? あいつが」
「…──」
 寺山は体ごと逸巳に向き直った。
「庇う理由を言えよ」
 そうか、と逸巳は思った。
 先日怜に同じ質問をした。
 怜の答えを答えになっていないと笑ってしまった。
 でも…
「理由なんかないよ」
 怜が理由を言わなかったように、逸巳も理由を見つけられない。
 ただ怜だから。
 怜だからだ。
「好きなんだ」
「……は?」
 寺山が顔を顰めた。
「好きなんだよ、だから何も関係ない」
 意味が分からないと言う寺山に、逸巳はもう一度繰り返した。

 ***
 
 何も、言い返せなかった。
 なにひとつ。
 言いたいことは山のようにあり、喉元までせりあがって来ていたのに結局ひと言も言葉に出来なかった。
 あいつを追いかけて部屋を出て行く瞬間、こちらを見た逸巳と目が合った。
 目が、合って…
「──」
 なんで、逸らしてしまったんだろう。
 どうしてちゃんと逸巳の目を見なかったんだろう。
 なんで──俺は。
「しょーもな…」
 床の上に怜は腰を下ろした。頭を抱え、髪をぐしゃりと掻き上げる。鬱陶しい。長い髪なんて本当は嫌いなのに。
 折り曲げた両脚の間からうっすらと汚れた床が見えた。誰も遮らない光が、扉からまっすぐに奥まで届いている。
 逸巳はきっと戻って来ない。
 あんな話を聞いた彼が戻って来るとは思えなかった。
 そう。
 そうに決まってる。
「…はは」
 過去の自分に笑いが零れた。
 どうしようもない。
 本当にどうしようもない。でもあのときはそれが一番良いと思ったのだ。それが最善だと、何も間違ってないと思っていた。今も。
 今も、恥じることなど何もないと思っている。
『それでいいのかよ』
 呆れた声で言った中井にも、いいと怜は答えていた。
 いい、これでいいと。
 思ってたのに。
「よくねえよ、馬鹿か…」
 まさか自分が誰かを好きになり、その人と想い合うことが出来るなんて考えもしなかったのだ。過去の言動が自分の首を絞めるなんて、当たり前だ。
 望んでも望まなくても、全部自分がしたことだ。
『おまえと友達だとか本気で言ってると思ってるのか?』
『思ってるよ』
 思ってる。
 間髪入れずに答えた逸巳に胸が震えた。
 先輩。
 でも、先輩はもう、今頃…
 ぽたりと床に何かが落ちた。
 小さな水たまりが点々と、いくつも出来る。
 どうして。
 …なんで、いつも、いつも俺は…
 足元の光がふと消えて、影になった。
「後藤くん」
 顔を上げると、入り口に逸巳が立っていた。走って来たのか、少し息が上がっている。
「ごめん…寺山が──」
 扉を閉め、怜の傍に屈み込んだ。すぐそばに逸巳の顔がある。同じ目の高さ、目が合うと逸巳は驚いた顔をした。わずかな沈黙のあとで逸巳の指が伸びてくる。濡れた目元に触れられそうになった瞬間、怜は顔を逸らしてそれを避けた。
「…なんで戻って来たんだよ」
「え?」
「あのままあいつと行けばよかっただろ」
 逸巳の顔を見るのが怖い。
 何を言われるだろう。
「いいから行けよ」
 シャツの袖で乱暴に顔を擦った。
「俺がどんな人間かわかったんじゃねえの? エグくねえ? 俺」
 乾いた笑いが勝手に口から零れ出す。逸巳がじっとこちらを見ているのが分かる。その気配だけで胸が焼き爛れる気がした。
 逸巳が何か言おうとするのを怜は遮るように言った。
「はは、教師襲って言いふらすって…、最低すぎ、見た目通りクズもいいとこじゃん? 馬鹿だろ」
 目元に押し当てたシャツがじんわりと濡れていく感触に情けなくなった。自分で言った言葉に自分で傷ついていれば世話はない。誰に何を言われても平気だ。どんな目で見られても跳ね返せるだけの力は付けてきた。
 怜を見た大抵の人間は噂のほうを信じた。
 本当も嘘もどうでもよかった。
 それでいいと思っていた。
 でも。 
 でも、逸巳にだけは嫌だ。そう思われたくない。
 逸巳の口から冷たい言葉を聞きたくない。
「もう行けよ…、なんで、いるんだよ」
 こちらを見ている気配が消えない。
 顔を見られない。
 目を合せたら分かってしまう。
 頼むから。
「…後藤くん」
 逸巳の手が近づいてくる。温かな手のひらが怜の頭を撫でた。
 後頭部をゆっくりと降りて、それはまた上から降りてを繰り返す。
「本当は何もしてないだろ?」
 喉の奥からせりあがってきた何かを必死で怜は飲み込んだ。ぐっと奥歯を噛みしめる。
 怜は顔を隠していた腕にさらに強く顔を押し付けた。鼻の奥がつんとして、重たい塊を飲み込んだみたいに息が出来ない。
 どうして…
「信じんの、俺のこと」
「当り前だろ?」
 逸巳の手が怜の腕に触れた。
 払いのけるように体を縮めるが、逸巳の手は離れて行かなかった。
 優しいのに強い力で、時間をかけてそっと顔から引き剥がされていく。濡れたシャツは頬に貼り付いて、なかなか離れなかった。
「…あんなの、全部嘘にしか聞こえないよ。なんでみんな信じてるんだか」
 見ていれば分かるのに。
 目尻を拭われて瞼を上げる。強く圧迫していたからか、世界はぼんやりとした輪郭に覆われていた。
 瞬くとゆっくりと焦点を結ぶ。
「行ったほうがいい?」
 目があった逸巳が少し困ったように笑っていた。
「い…」
 嫌だ。
 声が震え、掠れた。
 でも、と逸巳が言った。
「ひとりになりたいなら…」
 嫌だ。嫌だ。
 行かないで。
 嫌だ。
「いや、だ」
 声を出した途端に涙がぽろりと落ちた。堰を切ったようにあとからあとから溢れ出てくる。
「え、っ、あ──」
 慌てたように逸巳が、ポケットからハンカチを取り出してその涙を受け止めた。
 胸の奥深くから湧き出てくる。
 泣くのはいつぶりだろう。
 どこにこんなにたくさんの涙を仕舞っていたのか。
「何か飲む? あ、僕、が──、っ」
 後ろを振り返った逸巳が床に置いていた袋に手を伸ばした。見慣れた購買の袋、わずかに離れたその身体に手を伸ばし、怜はすぐさま抱きすくめた。
「…逸巳」
 びくりと腕の中の体が震えた。
「なに、後藤くん…」
 逸巳が肩越しに振り返った。
「逸巳…、いつみ」
 項に顔を埋め、背中を抱き込んできつく抱き締める。
 あたたかい。
 泣いて熱を持ち、強張った胸の底から怜は深く息を吐き出した。
 よかった。
 よかった…
 失くしたくない。
 好きだ。俺の、俺だけの──
「あ…、ご、とうく…」
 首の付け根を甘噛みすると、逸巳が震えながら声を上げた。掠れたそれにぞくりと背筋が戦慄く。
「…名前呼んで」
 呼んで欲しい。
 また名前を。
 そして知って欲しいと思った。
 逸巳には何もかも話したい。
「っ、──れ、い…っ、」
 声を上げた逸巳の顔を強引に振り向かせると、怜はその唇を奪った。

 ***

 好き?
 扉の外に立ち尽くした影が、ゆらりと揺れる。
 あいつと何が違う?
 あいつと俺の──何が?
 骨が軋むほど握りしめた拳は血の気を失くして白い蝋のようになっていた。

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