悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

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2.天花乱墜

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天花乱墜(てんからんつい)
 話し方が生き生きとしていてること。
 または、物事を実際よりも大きく話して、
 巧みな話術で人を騙すこと。




萌芽の季節が終わりを告げ、新緑が目にも鮮やかな頃、一人の少女が編入してきた。
 名を、アリシア・プリムローズ。プリムローズ伯爵のご令嬢であり、お嬢様曰く「殿下の運命の人」だと言う。
 人目を引く愛らしい顔立ちと天真爛漫な性格で、彼女は編入からそう時を置かずに、貴族の坊っちゃんたちを侍らすようになった。
 なるほど、貴族の坊っちゃんたちの目には、かなり美化されて写っているようだ。
 天真爛漫? 思慮に欠けた無礼者なだけだろ。俺にはちっとも分からないのだが、あの毒花の蜜に狂わされた貴族の坊っちゃん方の多いこと多いこと。
 ああ、まったく。三流ロマンス小説もかくやという、泥沼の恋愛劇を嗤ってやれたらどれだけ良かったか。
 忌々しいことに、現状はお嬢様が仰っていた通りになっている。
 あの毒女が王太子殿下にちょっかいをかけやがってるおかげで、徒労で終わる筈で仕込んだあれやそれを、活用する日も近いかもしれない。別に嬉しくはねえ。

「……エリアーシュは、アリシアさんのところに行かなくて良いの?」

 は? お嬢様の頭の中では、俺もアリシア・プリムローズのところに行きたくて、でも我慢しているって筋書きになってるのか?
 おぞましい妄想もほどほどにしてください、とは言わなかった。俺は出来た使用人なので。

「それだけは有り得ませんね」
「そうかしら。アリシアさんは、私と違って可愛らしいから、エリアーシュだってアリシアさんのことを好きになってもおかしくはないもの」
「生憎ですが、私は現実的に物事を見られる女性が好みです。そういう訳ですから、プリムローズ嬢と、ついでにお嬢様も、私の嗜好の埒外にいらっしゃいます」

 お嬢様が一瞬ぽかんと目を丸くして、「エリアーシュったら」と力なく微笑んだ。けれど、深い湖のような瞳は、どこか悲しげな色を湛えている。
 こんなお嬢様を目の当たりにしたら、さすがの俺だって言葉を選ぶし、言葉を呑み込む。
 お嬢様が聞いて欲しいと望むなら、或いは憂いを晴らせと命じるならばともかく、必死に隠そうとしているところを引きずり出し、生々しく血を流す傷口に傷を立てるなど、従者としても、一人の人間としてもいかがなものか。

「お嬢様のお好きな、リアの花茶を分けていただきました」
「ありがとう、エリアーシュ」

 俺にできることは、お嬢様の悲しみをほんの少しでも癒す手伝いをするくらいだ。
 今まさに満開を迎えたかのような、瑞々しい花の香りが鼻孔を擽った。
 花の女王と名高い、リアの花。その深紅の花弁を乾燥させた花茶は、香りも味も華やかで、お嬢様が昔から好んで飲んでいるもの。
 傷ひとつない指先がハンドルを摘まみ、白磁のカップがゆっくりと傾いた。桃色の唇から、感嘆の吐息が一つ。

「おいしい……エリアーシュは、本当に紅茶を淹れるのが上手ね」
「もったいないお言葉です、お嬢様」
「ねえ、一体どんな魔法を使っているの?」

 お嬢様の瞳が、きらきらと輝く。まるで、宝物を見付けた幼子のようだ。
 ……しまった。特別応接間サロンになんて引っ込まないで、中庭かどこか人目があるところにすれば良かった。
 今のお嬢様のお姿を「コースフェルト公爵ご令嬢は高嶺の花だ」と、遠巻きにしている連中が見たのなら、バカバカしい印象も払拭されただろうに。
 そのとき、応接間の外がにわかに騒がしくなった。学園に通う生徒たちの中でも、貴族の生徒だけが利用できる特別な応接間で、発情期の猫並に騒ごうなんざ、品性と教養を疑いたくなる。
 違う、そうじゃない。確かに誰かに見てほしいとは思ったが、それはお前らのことじゃねえんだが?

「ねえねえ、リチャードさまぁ!」

 開け放たれた扉と同時に、下品なほどに甲高い声が響いた。
 やって来たのは、恋に恋するお坊ちゃんたち。中心には、頭の悪さが振る舞いに滲み出ている女。
 視界の端で、お嬢様の顔色が翳った。然もありなん。あの集団の中には、王太子殿下もいらっしゃるのだから。
 幸いにして、尻軽女が殿下にまとわりついている格好なので、まだ、ぎりぎり、辛うじて、救いがあると思いたい。

「今度のお休み、わたしとお出かけしてください!」
「ごめんね。今度の休みは、政務があるんだ」
「え~!」

 え~! じゃねえんだよ、頓痴気女。男とデートしてえなら、周りの虫共で満足しとけ。

「……あら? そこにいらっしゃるのは、もしかしてイルゼ様?」
「ごきげんよう、アリシア様」
「やだぁ、私ったら気付きませんでした! お邪魔してごめんなさぁい」

 マッジで気付いていなかったなら、その目玉と耳を魔物に食わせちまえ。

「やあ、イルゼ。エリアーシュ」
「ご機嫌麗しゅう、リチャード殿下」

 耳許できゃんきゃん喚く馬鹿を前にしても、リチャード殿下はのほほんと笑みを浮かべていた。
 いやはや、殿下のお心は海よりも広くて深い。俺なら無理だ。婚約者以外の、よりにもよってあの恥知らずを好きにさせておくなんて。
 お嬢様の中身もそこそこ残念だが、あの腐れ目玉女に比べれば、宝石と路傍の石くらい差がある。
 ほらよく見ろ、婚約者殿。お嬢様の美しい礼を。スカートを摘まむ指先も、僅かに折られた膝も、教養の高さを窺えるだろう。石ころとは大違いだ。
 俺もまた、お嬢様に倣おうとしたのだが、ケダモノに腕を掴まれてしまったので断念する。俺は悪くないだろ、これ。

「エリアーシュさぁん! それ、とっても良い匂いのお茶ですね! わたしも飲みたいなあ」
「左様でございますか」

 お前の瞼と睫毛は虫の羽根か? と過るほど、何度も繰り返される瞬き。
 されど、俺は口には出さずに、にっこりと微笑みを返す。できる従者なので、奴に返したのは微笑みだけだ。
 ポンコツ女は、俺の意図が分からなかったらしく、「え?」と目を丸くしている。
 お前にくれてやる茶なんて、一滴たりとてねえんだって、それくらい察しろよ。その辺の泥水でも啜ってろ。

「おい、エリアーシュ」

 ナイフの如く鋭い声と眼差しに、俺はちらりと視線だけを動かした。
 口を利くつもりはない。目を合わせるだけ、俺は寛大な対応をしていると思う。手放して褒めてもらいたいくらいだ。
 道具を一人の人間として扱おうとする優しさがあるのに、どうして幼馴染みの悲哀から目を逸らす?
 よりにもよって、弱きものや淑女には“優しさ”や“慈愛”をもって行動するべしと、教えを受けているだろう騎士ハイドフェルト様が。

「大変申し訳ございません、プリムローズ嬢。生憎と、こちらの茶葉は長持ちしない、リアの花茶でございます。皆様に振る舞えるだけの茶葉がないのです」

 嘘は言っていない。嘘は、な。
 リアの花茶は、庶民でも買える手頃な物から、王城に献上されるほどの高級品まで、さまざまな品質の物がある。
 お嬢様にお出しした花茶は、王室御用達の最高級品。かぐわしい香りと花の甘さが味わえる分、三日ほどしか日保ちしないのだ。
 だから、他に振る舞えるほどの量は仕入れていない。仕入れる必要がなかった、と言うべきか。

「何せ、このところのお嬢様は、おひとりで過ごされることが多いものですから」
「……おい、エリアーシュ。言いたいことがあるならはっきり言ったらどうだ」
「さて。仰る意味が分かりかねます、ハイドフェルト様」

 口角を持ち上げ、微かに首を傾げる。無視してやりたかったが、あんまりにも可笑しくて、つい口を利いてしまった。
 はっきり言って良いのか? 本当に?
 お望みなら、王太子殿下やハイドフェルト様、名だたる貴族のご子息は、一人の女の尻を追いかけるのに夢中になっているって醜聞を広めてやっても良いぞ。
 ……残念ながら、お嬢様に「エリアーシュ」と諌められてしまったので、実行に移すことは出来なかったが。

「部屋に戻りましょう。皆様のお邪魔をしてはいけませんわ」
「かしこまりました」

 サロン付きの給仕に片付けを頼み、殿下に一礼をして部屋を出るべく歩き出す。
 一歩、二歩。ふと、規則正しい靴音が止まる。止まらざるを得なかった。擦れ違い様、俺の肩を掴んだ節くれ立った指。
 視線だけ振り返ってやれば、緑の目が不機嫌そうに細められ、俺をじっと見下ろしていた。まるで、俺の頭の中を覗いてやろうとばかりに。

「おまえ、何を考えてる」
「何、とは?」
「しらばっくれるな」
「……ハイドフェルト様、どうやら何か誤解していらっしゃるご様子。私は、コースフェルト公爵家の従僕です。常に、イルゼお嬢様と公爵閣下の御心に寄り添うことを考えております」

 返事の代わりに、ハイドフェルト様の眉間のシワが、ますます深くなった。
 騎士様の相手をしている暇はない。俺の足が止まっていることに気付いたお嬢様が、少し先を行ったところで待ってくれていた。
 ハイドフェルト様の手を振り払う。今度は、止められなかった。
 背中に突き刺さる、多種多様な視線。ああ、不愉快だ。言いたいことがあるのは、何もハイドフェルト様に限った話じゃねえんだよ。
 マジでどうしてやろうか。いや、まずやることは決まっている――――あの売女もどきの、化けの皮を剥いでやることだ。





 編入から瞬く間に人気者となったアリシア・プリムローズは、プリムローズ伯爵と召し使いの女の間に生まれた子供だが、半年前まではただの平民として暮らしていたと言う。
 母が病死したことを契機に、プリムローズ伯爵に引き取られ、貴族の令嬢としての教養と礼節を学び、他の貴族子息子女同様に学園に入学を果たした。
 心優しく、真っ直ぐな心根の彼女に、プリムローズ伯爵や伯爵令息は、アリシアを溺愛するようになる。
 どうやら、彼女は昔から周囲の異性に愛されやすかったらしい。
 アリシア・プリムローズの存在とその特性が、この世界は彼女を中心に成り立っている仮想恋愛遊戯乙女ゲームの世界であるという証左だ、とお嬢様は言う。
 不遇の日々を取り戻すかのように、義理の家族や、同年代の貴族子息に受け入れられ、アリシアは運命の彼と恋に落ち、幸せな未来を掴む立身出世物語シンデレラストーリー
 彼女の運命の人候補は、

 優しい王子様リチャード殿下
 格好良い騎士様ハイドフェルト様
 寡黙な一匹狼ヒルシュフェルト様
 ちょっと大人な王子様隣国の第二王子殿下
 そして、ライバルの悪役令嬢に仕えるクール系従者

と、なっている。他に、隠し攻略対象なる男が複数人いるらしいが、お嬢様は「全クリする前に死んじゃったから分からないのよ!」と頭を抱えていた。
 この話を初めて聞いたとき、俺は色々と物申したいところを必死に堪えたものだ。
 いや、訂正を申請する。も、抗議したいところを堪えているので。

「こんばんはぁ、エリィ」

 そして、俺は理性的かつ合理的な人間なので、お嬢様に抗議する暇があったら、もっと実があることをする。
 例えばそう、異性吸引女アリシアを排除する、とか。

「遅ぇんだよ、グリニコフ先輩?」
「ごめんごめん。寮管に見付かりそうになっちゃってさぁ。っていうか、チンピラみたいな口調で先輩って言われても、渾身のギャグかな? って笑えてくんね」

 学園に籍を置く生徒――流石に、王太子殿下は違うが――寮での生活が義務付けられている。
 イルゼお嬢様のサポートのために、歳を誤魔化して入学している俺も、さすがに女子寮に立ち入って、お手伝いする訳にもいかない。
 つまり、お嬢様が寮の自室に戻った後は、お嬢様の従者昼の俺は、空の色が明るくなるまでは姿を消す。
 既に教師も帰宅し、ひっそりと静まり返った学園の裏庭は、密会にはお誂え向きの場所。
 やって来た待ち人の態度は、今に始まったことじゃないが、不愉快なことこの上ない。

「あァん?」
「あっは! すっごい顔! 苦虫何匹噛み殺した感じ~?」
「テメェの口の中にも突っ込んでやりてえよ」
「んふふ。エリィが口移ししてくれるなら、イイよ?」
「ツェル、悪ふざけはほどほどにしろ」

 ぐいっと顔を近付けてくる奴は、何が楽しいのかますます笑みを深くする。
 唇に触れる、目の前の男の吐息が気持ち悪い。顔かたちは整っていようが、胡散臭い笑みを浮かべるこいつは、出来れば敵にも味方にもなりたくない性質タチの男だ。深入りはごめん被る。
 ヴェンツェル・グリニコフ――――ツェルの肩を掴んで引き離せば、思ったよりも簡単に離れてくれた。
 珍しい。まあ、いつまでもこんなところで遊んでる時間はないからな。

「例のモノは?」
「エリィってばせっかちさんなんだから~」

 手渡された、革製のシガレットケース。入っていたのは、八本の煙草と折り畳まれた紙だ。
 俺とこいつ以外には読み解けないよう仕掛けが施された紙のおかげで、たとえ明かり一つない暗闇の中であろうと、連なる文字を正しく読み取れた。
 ああ、人格に難あれど、こいつの仕事ぶりには目を瞠るものがある。堪らず、持ち上がった口角。
 俺の機嫌が上向いたことを察したらしく、目の前の男は得意満面と口許を緩めた。

「どう? ご満足いただけた? アリシアメス豚ちゃんの情報」
「……重畳だ、ツェル。恩に着る」
「いいのいいの、エリィはお得意様だからねぇ。今後もグリニコフ商会ウチをご贔屓に~」

 この胡散臭い男に、時間と金を惜しみ無く投資した甲斐があった。
 懐から取り出した燐寸で火を熾す。闇夜の中で揺らめく炎が、密書の端をちろちろと舐めた。
 燃え尽きて、灰になっていく紙を見ながら、思う。灰になるのはコースフェルトじゃない、プリムローズの方だ。

「……ばらせば破滅間違いなしだな」
「でっしょー? でも、使いどころには気を付けてね。俺もまだしょっ引かれるのはごめんだしぃ」
「分かってる」

 この情報は、劇薬と言っても過言ではない。あの雌豚を、身内もろとも破滅させられる、“悪事”について書かれている。
 まったく、こんな情報を良くも寄越す気になったもんだ。こんなの、下手したらお前の信用問題に関わるだろうに。
 ……いや、使いどころを見誤って痛い目を見るのは、コースフェルトこっちにも言えることではあるんだが。

「因みに、その煙草はサービス。エリィにはまだまだ、金蔓になってもらわないとねぇ」
「ありがたく使わせてもらうさ。事によっては、内々に済ませるつもりだったが、そうもいかないようだしな。“お上”からも、たんまりふんだくってくれ」
「それはもちろん、お金持ちってだぁいすき」

 用が済んだ以上、長居は無用。学園の警備にも金を握らせているので、見付かったところで問題ないが、学園の生徒に見られるとなると、少し面倒なことになる。
 こんな夜更けに? こんな場所で? 公爵家の使用人とグリニコフ商会の人間が? ふたりきりで? 一体何をしていたのか?
 なーんて、ゴシップネタをばら蒔いてるほど、慈愛に満ち溢れた人間ではないんでな。
 ツェルとはその場で別れ、別々のルートで寮へと戻る。

「――――こんなところで何をしている」
「ッ!」

 びくり、と思わず肩が跳ねた。こんな時間に、こんなところで生徒に出会すなんて。
 ああ、しかも、声をかけられるまで気付かなかった。この俺が、気付けなかった。
 よりにもよって、なんで“こいつ”に見付かってしまったのか。

「おい、聞いているのか」

 最悪だ。ああ、最悪だ最悪だ最悪だ。今日の俺の運は最底辺に違いない。
 昼間のように煙に巻くか? いや、もはや誤魔化されてはくれないだろう。時間も、場所も、タイミングがあまりにも悪過ぎた。

「……こんばんは、ハイドフェルト様。こんな夜更けに、こんなところで何を? どこかのご令嬢との密会の帰りですか?」
「それはいつぞやのおまえだろう。一緒にするな。実家に呼び出されていただけだ」

 舌を打ちそうになったが、寸前で堪えた俺は人間が出来ている。
 分かっていたことだが、ハイドフェルト様は俺を性根の歪んだ屑野郎とでも思っているらしい。あながち間違っちゃいないが。

「ご無礼をお許しください、ハイドフェルト様。ほんの戯れのつもりでした」
「おまえの質問には答えてやった。今度は俺の番だ、エリアーシュ。こんな夜更けにこんなところで、何をしていた?」

 ハイドフェルト様が、一歩前に出る。昼間のように小首を傾げて微笑んでやったら、目の前の男の眼差しが、更に険を増した。

「公爵家の用を済ませておりました。これ以上は、どうかご容赦くださいませ」

 嘘は言っていない。嘘は、な。
 俺に下された命は「お嬢様が学園で健やかに過ごせるよう力を尽くせ」というものなので。
 だが、どんな内容であれ、与えられた命をぺらぺら明かすような従者がどこにいる。知りたかったら、コースフェルト公爵に直接どうぞ、というやつだ。
 一礼をして、踵を返そうとした俺の手首を掴む、容赦のない手。

「エリアーシュ」

 ……帰さないってか? あんたがこんなに情熱的だったとは知らなかったなァ。
 ぜひとも、ハイドフェルト様を慕う令嬢にやってやれ。俺はごめんなので、可及的速やかに離れてほしい。
 やれやれ、とわざとらしく溜息をついて、口の端を微かに吊り上げた。温度なんて欠片もない、冷めた微笑と共に、答えるつもりはないのだと突き付けてやる。
 そして、と。

「どうか、とお呼びください。私のような使用人家具風情の名を、公爵子息様が口にしてはなりません」
「ッ、エリアーシュ!」

 シルヴェリオ・ハイドフェルトが、最も不快感を募らせる事実を口にする。
 ハイドフェルト様にこんな顔をさせてやったと思うと、胸が空く心地だ。
 だが、同時に苛立ちが小さく爆ぜもする。俺のような道具に心を砕いて、何故お嬢様のことは放っておくのか、と。

「ハイドフェルト様、どうかご理解なさいませ。そして、物分かりが悪い幼子のようなことを仰いませんように。この問答を、何度繰り返すおつもりで?」
「おまえが、俺を……俺達を名前で呼ぶまでだ、エリアーシュ」
「もしや、ハイドフェルト様は私を排斥したいとお考えで? 絞首刑にしたいと?」
「言葉が過ぎるぞ、エリアーシュ……!」

 ああ、分かっているとも。ハイドフェルト様たちに、俺を排斥したいなどという意図はない。
 だからこそ、厄介なんだ。押し付けられた善意が、時に誰かを傷付けるだけのナイフになるとも知らず。自らが、無自覚な加害者になっているとも気付かず。

「……エリアーシュ。俺も、殿下も、おまえのことを友の一人だとだと思っている。なのに、何故そこまで、執拗に距離を取ろうとする」
「僭越ながら申し上げます、ハイドフェルト様。そもそもの生まれが違うのです。距離があるのは当然のことでしょう?」
「慇懃無礼が肉を得たような男が、何をぬけぬけと」

 言ってくれるじゃねえか、おい。
 ガキの頃、まだ使用人として未熟だった俺は、本性を隠しきれないことが何度かあった。間抜けな発言をしたハイドフェルト様や殿下に「あ?」と凄んだこともある。
 従者然としている今の俺が気に食わないのか、そもそも俺という人間が気に食わないのかは定かじゃないが、ことあるごとに突っ掛かって来るから面倒臭い。まあ、下手を打った昔の俺が悪いんだがな。
 つーか、いい加減に手を離せ。無理やり剥がしてやんぞ、おい。

「――――アリシア・プリムローズ」

 凪いだ水面に、放り込まれた石。微かに、されど確かに広がる波紋。
 “従者”の仮面から、一瞬だけ溢れてしまった本性を見逃すほど、目の前の男は甘くない。

「あの女を調べているんだろ」
「……それが?」

 王家の剣たる男の眼が、俺をじっと眺入る。王太子殿下にとって、敵か味方かを見定めるために。
 ああ、見るが良いさ。俺もまた、おまえを見極めてやろう。
 王太子殿下は、シルヴェリオ・ハイドフェルトは、あの図々しい女をどう思っているのか。コースフェルトの敵なのか、味方なのか。

「王太子殿下の覚え目出度いご令嬢を調べるのは、ある意味当然のことでしょう。何せ、イルゼお嬢様と王太子殿下は婚約者同士なのですから」
「心配しなくとも、あの女を不愉快に思っているのは、こちらも同じだ」

 へえ。思ったよりも、あっさり明かしてきたな。
 まあ、ハイドフェルト様があの生ゴミをどう思っていようが、俺にはどうでも良いことなので。

「左様でございますか」

 話は以上ですか? とばかりに微笑んでやった。では俺の方もこれこれこういう事情で……と、手の内を明らかにしてやる義理はない。
 ハイドフェルト様が、ひくひくと口の端を引き攣らせている。
 いけ好かないこの男に、こんな顔をさせているのだと思うと、すっげえ気分が良いな。

「ッ、こっちから手札を切ったんだぞ!」
「それが何です?」
「~~~~おまえはそういう奴だったな! 人の足許を見るのもいい加減にしろ、性悪め!」
「何を勘違いしているのか分かりませんが、私にはそちらと仲良しこよしする気などありませんよ」
「何故だ! 目的は同じだろうがッ!」
「――――は?」

 溢れ落ちた低音に、ハイドフェルト様の指が微かに緩む。
 思いきり手を引けば、枷のようだった手はあっさりと離れてくれた。
 畜生。仮面を元に戻したところで、もはや取り繕えないし、腹の底で渦巻く怒りも収まりそうにない。
 おめでたい頭の騎士様に、一言物申してやらなければ、な。

「笑わせんじゃねえよ。俺にとっては、あの雌豚も、おまえらも“敵”だ」

 婚約者がいる身の男にまとわりつくアリシア雌豚も。
 婚約者を省みることなく、あまつさえ雌豚の好きにさせている王太子殿下も。
 そんな王太子殿下を諌めることもせず、幼き頃からの友を蔑ろにしている、ハイドフェルトも――――俺にとっては敵なんだよ。

「失礼する」

 今度こそ、寮へと戻ろうとする俺を、ハイドフェルト様が再び呼び止める。
 その言葉を頭が理解した途端、俺の感情など取るに足らない瑣末な物へと成り果てた。
 は使える。数秒で組み立てた筋書きは荒削りながらも、無難な着地点だ。
 しかし、諸手を挙げて協力体制を受け入れては、ハイドフェルト様に疑われかねない。腕の見せ所だな……。

「今、何て言った?」
「“アニマ”と“コルデー”、と」
「……アリシア・プリムローズが麻薬アニマを使っている情報は得ていたが、まさか毒薬コルデーにまで手を出したのか?」
「その可能性が著しく高い」

 アニマとコルデーは、どちらも大陸のほとんどの国――北の大国では、例外的に医薬品として使われているらしいが――で禁止されている危険な薬物だ。
 アニマは、少量では筋肉を弛緩させる効果しかないが、ある一定の量を越えると、性的興奮と酩酊感をもたらし、意識さえも混濁させて、正常な判断を失わせる。
 幸いにして、中毒性はさほど高くないが、多用すれば思考力低下も起こり得る危険な薬物であることに変わりはない。
 そして、毒薬コルデー。甘露のような猛毒は、遅効性故に摂取から数時間経って効果が出るため、暗殺の際に多用されることが多かった。
 現在でも、貴人の処刑の際に慈悲として使われるほどだ。
 そのため、我が国では王族以外の所持を固く禁じており、例え持っているだけでも、重罪にあたるほどに危険視している。
 ……誰に聞かれるとも知れない場所で、コルデーの話をするのはまずいな。

「ハイドフェルト様。一先ず、場所を変えるぞ。この話、誰かに聞かれたら、誤魔化すのが手間だ」
「同感だな。場所は……俺の部屋にしよう」

 正直、敵の腹の中に足を踏み入れるのは避けたいところだが、かといってこの男を自分の部屋に招き入れるのも嫌だった。致し方ない、と不承不承ながら頷く。
 ハイドフェルト様には「おまえ、そこまで嫌なのか」と呆れられた。おうよ、嫌だとも。
 背骨以外に棒でも埋め込んでんのか? と疑いたくなるほど、深夜でもまっすぐ伸びた背中を追いかけながら、ほんのり暗い寮内を歩く。
 自分の感情を優先させるほど愚かではないが、まさかハイドフェルト様を使うことになるとは。
 少なくとも、昼頃の俺は欠片も予想していなかった事態だな。

「入れ」
「失礼する」

 案内されたハイドフェルト様の部屋は、思った以上に殺風景な部屋だった。
 私物がほとんどない。本当に、寝て、勉強するためだけの部屋、という印象だ。
 質実剛健を信条とするハイドフェルト家の人間らしい部屋、とも言えるが。

「エリアーシュ」
「メルカダンテ」
「…………手を組む気になったから付いて来たと取るが、異論はないか」

 物言いたげなハイドフェルト様に、一言物申してやろうかと思ったが、堪えた。
 いちいち口を挟んでも話が進まないから、今は呑み込んでやる。

「手を組む? ハイドフェルト様は、ご冗談も巧みでいらっしゃる」
「どういう意味だ。場所を変えることを提案してきたのは、おまえからだと記憶しているが」
「コルデーが関わっている以上、情報提供と共有は国民の務めと判断しただけであって、そちらと足並みまで揃える気はない」

 王家の剣たるハイドフェルト様が把握していることは、国王陛下も同じように把握していると見て良い。
 手札を出し惜しみして、在らぬ疑いの目を向けられるのは困る。
 あくまでも情報提供のみであり、殿下やハイドフェルト様と協力するつもりはない――――そう、ハイドフェルト様に思わせておく必要があった。
 さて、上手くいけば、不利益を被ることなく、事態を収集できるんだが、演技力と交渉力の見せどころだな。

「俺は、そこまで信頼に足らないのか」

 苦々しげに溢すハイドフェルト様に、思わず目を丸くした。
 今日までのやり取りのどこに、信頼できる点があったと言うのか。
 少なくとも、あの雌豚女が現れて以降、お二人への信頼は底辺なんだが。いや、それ以前にだな。

「逆に訊くが、俺が信頼に足るのか?」

 俺がイルゼお嬢様に付きっきりだった時は、随分と親しげに話しかけてきたハイドフェルト様が、ある時期を境に「何を企んでいる?」だの「俺はおまえを認めない」だの、言ってくれるようになった。
 まあ、その“ある時期”というのが、旦那様のご用命で後暗い仕事を請け負うようになった頃なので、ハイドフェルト様の言い分は、あながち的外れでもない。
 ついでに、俺もハイドフェルト様に最ッ高の嫌がらせをしてやったしな。
 案の定、ハイドフェルト様は、実に冷やかな微笑を浮かべた。

「おまえのように、主人に忠を尽くさない従者を、どうして信じられる?」
「ただの使用人道具に、そんなもの求められても困るな。旦那様やお嬢様だって、給金分以上の働きを求めてねえよ」
「……逆に言えば、給金が支払われている限り裏切ることはない、か」

 嘲笑うかのようなハイドフェルト様に、俺はその通りだと鷹揚に頷いた。
 よし、ハイドフェルト様との会話におかしな点はない。何を企んでいるのかと疑われているが、ハイドフェルト様に疑われるのはいつものこと。
 問題は、ここからだ。どうやって、違和感なくハイドフェルト様と手を組む流れに運ぶか。

「……いくらだ」
「何が」
「この件が片付くまでの間、俺と手を組む金額だ」

 少し、虚を突かれた。まさかハイドフェルト様から、金銭の授受を申し出てくれるとは。
 それほどまでに、歩く三流ロマンス生成女が忌々しいのか。その点に関して同意する。

「条件がある。まず、この密約は王太子殿下やお嬢様、他の誰にも知られないこと」
「構わないが……例えば、国王陛下にもか? プリムローズ伯爵を捕縛した際には、色々と報告する必要があると思うが」
「国王陛下に、王太子殿下の恋を邪魔しましたって報告出来んのか?」
「………………無理だな」
「だろ?」

 王太子殿下の恋を反対し、片想いの女性を排除した、なんて外聞が悪いだろう。
 例え、国益の為だとか、プリムローズ嬢の教養と品性が嘆かわしい程だったからとか、大半の人間が納得できる理由だったとしても。
 というか、殿下はマジであの女に惚れてんのかね。

「次に、金銭の授受は全てが丸く収まってからで良い」
「いいのか?」
「経費がいくら掛かるか、分かったもんじゃねえからな」
「なるほど。承知した」

 互いの目的を、改めて確認し合う。
 俺は、アリシア・プリムローズの排除。ハイドフェルト様は、アリシア・プリムローズならびにプリムローズ伯爵がコルデーを入手した証拠を掴み、捕縛すること。

「何なら、誓約書でもつけるか?」
「そこまでしなくとも良い。おまえこそ、俺が裏切らないかどうかの確約が欲しいんじゃないか?」
「別に。ハイドフェルト様個人を信頼するつもりは更々ないが、殿下への献身に関しては疑っちゃいねえよ」

 ハイドフェルト様が、ひゅっと息を飲んだ。
 俺がそんなことを言うとは、考えもしなかったか? まあ、否定しない。
 もしも、アリシア・プリムローズの人品に難があるだけだったとしたら、おそらくハイドフェルト様は彼女を黙認しただろう。
 正妃にはなれずとも、側妃として王の寵愛を得る未来もあったかもしれない。
 だが、プリムローズはコルデーに手を出した。確たる証拠はなくとも、騎士団はほぼ黒と見ている。
 プリムローズを罪人として捕らえることは、すなわち殿下の恋を踏み躙ること同義だ。殿下の誇りは守れても、殿下の心を裏切ることになる。
 それでも、ハイドフェルト様はプリムローズ家を罪人として捕らえることを選択した。
 自らの破滅さえ省みない決断。理解できるとは言えない。だが、感じ入るものがないとも言わない。

「長居し過ぎたな。一先ず、三日後に俺の部屋に来てくれ。手許にある情報をまとめて、提供できるようにしておく」
「……分かった」

 絡み付くような視線を無視し、静まり返った寮の廊下へ足を踏み出す。
 今晩は時間が差し迫っていたこともあって、仔細を聞けなかったから、次の機会のときに聞き出せるだけ聞き出しておきたい。
 特に、王太子殿下が何を考えているか、だ。殿下に確認を取ったことはないが、お嬢様のことを憎からず思っている、と踏んでいたんだが。
 いや、例えあの女に恋をしていたとしても、今日までに掛けた正妃教育の時間と金を無為にするような、愚かな真似をなさるとは思えない。
 ……俺が一人で考えたところで答えが出ない事項に時間と労力を割くより、他にすべきことがあるな。
 ハイドフェルト様と手を組むのは不愉快だが、利用しない手はない。何せ、国家権力が味方に付いたも同然なのだ。
 計画の練り直し、それからツェルにをしておくか。
 上手く事が進めば、俺が使った危ない橋を有耶無耶にできるだけでなく、注ぎ込んだ物以上の利益を得られるだろう。
 いや、油断は禁物だ。やることはいくらでもある。一先ず――――。

「お嬢様にお出しする、明日の茶葉を考えなきゃな」
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