3 / 26
3
しおりを挟む
「はぁ……」
新しい自室に戻って大きくため息をはいた。
もうすぐハーベスト様とシャロンさんは二人で入浴するのだろう。
あの時、すぐに引き止めたかったのだが、できなかった。
ハーベスト様と私の家の境遇が似ているのだ。
私もハーベスト様も、生まれた頃からそれぞれ義兄様、義妹と暮らす環境で育った。
私だって小さい頃は義兄様と一緒にお風呂に入ったりジャレあったりしていた。
流石に今となっては絶対にしないが。
血の繋がっていない兄妹でも、幼少期から一緒だと恋心にはまず発展しないと思っている。
私だって義兄様のことは尊敬はしていても恋愛感情としては考えにくい。
義兄様だって好きな人がいるって言ってたし、きっと私のことも本当の妹のように扱ってくれているはず。
だから、たとえ風呂が一緒でもハーベスト様達も異性としては意識していないのだろうと、無理矢理思い込むことにした。
♢
「ジュリエル、元気そうで何よりだ」
「義兄様……突然呼び出してしまい申し訳ありません」
私が会いたかったのもあるが、どうしても義兄様に協力してほしいことがあったのだ。
「気にするな。それよりも、シャロンさんは部屋にいるのか?」
「えぇ」
家の主人であるデンボス=ドルチャ男爵と、ハーベスト様にも許可をもらい、義兄様をドルチャ家に招く許可をいただいた。
シャロンさん以外は仕事で出てしまっている。
私とシャロンさんと使用人しかいないのに招くというのもどうかと思った。
だが、もしかしたらシャロンさんの力になれるかもしれない、そう思っていた。
だからこそ許可ももらえたのだろう。
「な……なんですか!?」
「これは失礼した。ライト=ディラウ、ジュリエルの義兄だ。私は病気や難病に詳しくてね、今日はシャロンさんの病気を診るように頼まれてきたのだよ」
「そ……そうなのですか!? 義父様が許可したのです?」
「はい、もちろんシャロンさんにも伝えたかったのですが、急遽決まったことでしたので……シャロンさんがずっと部屋にこもっていましたので報告ができず、今になってしまいごめんなさい」
何故かわからないが、シャロンさんは妙に慌てていた。
「いやです。私はまた服を脱がされて検査されるのでしょう? はしたないです」
「大丈夫だ。私の診療は特殊でね、病気程度ならすぐにわかるスキルを身につけているのだよ」
「え……そんな……」
そこは驚くところだと思うのだが……何故か視線をずらして困っているように見えてしまう。
義兄様はシャロンさんの近く、それもかなりの至近距離まで近づいていく。
「え……!? ちょ……ちょっと!」
シャロンさんが慌てている。こればかりはごもっともだ。
あと十センチ近づいたら口と口が触れ合ってしまいそうだ。
──やめて、シャロンさんから離れて!
あれ、なんで私はそんな事を考えてしまったんだろうか……。
「皮膚の状態や顔を見るだけでも、ある程度はわかるんだ。もう少し我慢してくれるか?」
「ひゃっ!」
聞いた途端にシャロンさんは、急に逃げ出し、顔を隠してスラリと出ていた綺麗な足も、体育座りをしてスカートで隠した。
まるで診察されたくないような行動だ。
「……失礼したな。私とて拒んでいる者を無理矢理診療する気はないよ。失礼する。ジュリエル、一旦外へ……」
私はとても悪いことをしてしまった気がした。
新しい自室に戻って大きくため息をはいた。
もうすぐハーベスト様とシャロンさんは二人で入浴するのだろう。
あの時、すぐに引き止めたかったのだが、できなかった。
ハーベスト様と私の家の境遇が似ているのだ。
私もハーベスト様も、生まれた頃からそれぞれ義兄様、義妹と暮らす環境で育った。
私だって小さい頃は義兄様と一緒にお風呂に入ったりジャレあったりしていた。
流石に今となっては絶対にしないが。
血の繋がっていない兄妹でも、幼少期から一緒だと恋心にはまず発展しないと思っている。
私だって義兄様のことは尊敬はしていても恋愛感情としては考えにくい。
義兄様だって好きな人がいるって言ってたし、きっと私のことも本当の妹のように扱ってくれているはず。
だから、たとえ風呂が一緒でもハーベスト様達も異性としては意識していないのだろうと、無理矢理思い込むことにした。
♢
「ジュリエル、元気そうで何よりだ」
「義兄様……突然呼び出してしまい申し訳ありません」
私が会いたかったのもあるが、どうしても義兄様に協力してほしいことがあったのだ。
「気にするな。それよりも、シャロンさんは部屋にいるのか?」
「えぇ」
家の主人であるデンボス=ドルチャ男爵と、ハーベスト様にも許可をもらい、義兄様をドルチャ家に招く許可をいただいた。
シャロンさん以外は仕事で出てしまっている。
私とシャロンさんと使用人しかいないのに招くというのもどうかと思った。
だが、もしかしたらシャロンさんの力になれるかもしれない、そう思っていた。
だからこそ許可ももらえたのだろう。
「な……なんですか!?」
「これは失礼した。ライト=ディラウ、ジュリエルの義兄だ。私は病気や難病に詳しくてね、今日はシャロンさんの病気を診るように頼まれてきたのだよ」
「そ……そうなのですか!? 義父様が許可したのです?」
「はい、もちろんシャロンさんにも伝えたかったのですが、急遽決まったことでしたので……シャロンさんがずっと部屋にこもっていましたので報告ができず、今になってしまいごめんなさい」
何故かわからないが、シャロンさんは妙に慌てていた。
「いやです。私はまた服を脱がされて検査されるのでしょう? はしたないです」
「大丈夫だ。私の診療は特殊でね、病気程度ならすぐにわかるスキルを身につけているのだよ」
「え……そんな……」
そこは驚くところだと思うのだが……何故か視線をずらして困っているように見えてしまう。
義兄様はシャロンさんの近く、それもかなりの至近距離まで近づいていく。
「え……!? ちょ……ちょっと!」
シャロンさんが慌てている。こればかりはごもっともだ。
あと十センチ近づいたら口と口が触れ合ってしまいそうだ。
──やめて、シャロンさんから離れて!
あれ、なんで私はそんな事を考えてしまったんだろうか……。
「皮膚の状態や顔を見るだけでも、ある程度はわかるんだ。もう少し我慢してくれるか?」
「ひゃっ!」
聞いた途端にシャロンさんは、急に逃げ出し、顔を隠してスラリと出ていた綺麗な足も、体育座りをしてスカートで隠した。
まるで診察されたくないような行動だ。
「……失礼したな。私とて拒んでいる者を無理矢理診療する気はないよ。失礼する。ジュリエル、一旦外へ……」
私はとても悪いことをしてしまった気がした。
34
お気に入りに追加
1,942
あなたにおすすめの小説

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作


【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる