悠久の大陸

彩森ゆいか

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第56話 フラッシュバック

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 辰泰はマンション暮らしだった。セキュリティのしっかりした家賃の高そうなマンションだ。その六階に彼の部屋がある。
 一人暮らし向けのマンションで、部屋数は少ないがリビングは広い。
「おまえ、金持ちの子か」
「大金持ちではないですよ」
 寝室を覗くと例のゲーム機があった。
「なあ、もし俺がおまえのゲーム機からログインしたら、俺はスオウになれるの?」
「……なれるかも、しれませんね」
「なってみてもいい?」
「は?」
 那月はゲーム機に近づき電源を入れると、ベッドに乗り上げていそいそとヘッドセットを装着した。
「ちょっとでいいからスオウになりたい」
「どうして」
「強いから」
 那月は嬉しそうな笑顔を浮かべながら、辰泰のベッドに横たわった。
「なんだよもう、寝てる間に身体にいたずらするぞ?」
 辰泰のぼやきが聞こえてきたが、那月は素知らぬ顔で目を閉じた。

 ウラクの町に出た。幸い、リュウトはいないようだ。
 内心で安堵しながら、スオウの姿をした那月は町並みを眺めた。視界がいつもと違う。視線の位置が違うのだ。スオウはナツキよりも身長が高い。
 端末を操作し、まずはステータスを確認する。あらゆるスキルの数値が高い。那月はドキドキした。興奮する。
 装備を見ると、強い武器ばかりだ。興奮する。
「これなら一人でもダンジョンに行けるかも」
 那月は喜々として歩き出した。地図を広げると、ナツキよりも遥かに載っている情報が多い。行ける範囲も全然違う。興奮した。
 ホログラムのように宙に浮いている地図から、見たことのない場所を選択する。目の前に文字が浮かぶ。「ミランディウムのダンジョンに行きますか。YES/NO」
 那月は迷わずYESを選んだ。一瞬でワープする。
「なにこれ、すごい……!」
 見知らぬダンジョンに着いた。
 そこは深い洞窟で、恐怖を覚えそうなほど鬱蒼としていた。那月はごくりとつばを飲み込み、意を決して足を踏み出す。今はスオウなのだ。怖くない。怖くない。
 無骨な剣をしっかりと握り直し、洞窟の中へと踏み込んで行く。
 いきなりコウモリが大量に飛んできた。
「わあっ」
 コウモリはただのコウモリではない。モンスターだ。しかも強い。
「あっ、あっ」
 盛大に何度も噛みつかれ、ライフがみるみる減る。那月は闇雲に剣を振るった。偶然当たった数匹が霧散する。
 必死で剣を振り回していたら、なんとかコウモリが消えた。ほうっと息をつく。魔法で傷を回復した。
「痛みまでリアルにするなよな……」
 ぼやきながら洞窟を進む。すると、巨大な狼が現れた。鋭い眼光と、大きな牙を持ち、グルルルルと唸り声をあげている。那月はたちまち足がすくんだ。
 後ろ足を蹴り上げて狼が宙に浮く。速い。
 逃げる余裕などなかった。気づけば那月の上に狼が乗っており、喉に噛みつかれていた。
 死ぬ。
 そう思った瞬間、すさまじいエクスタシーが全身を駆け抜けた。ピストンバイブに犯され絶頂を迎えた瞬間に殺されたあの光景が、感覚が、脳裏に蘇る。
「うああああああああ……っ!」
 スオウの身体なのに。どうして。
 視界が暗転した。
 ハッと目を覚ますと、那月は洞窟の外にいた。死んだので外に出されたらしい。洞窟に入る前からやり直せということなのだろう。
 那月はがくがくと震える全身を鎮めるように、自分で自分を抱きしめる。あの瞬間の絶頂を忘れていない自分に愕然とした。ナツキとスオウではスキルの数値が違うのに。スオウの性的感度はナツキほど高くはないのに。
 那月は端末をいじって地図を出し、ウラクの町へと戻った。そのまますぐにログアウトする。
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