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第16話 アダルト空間へ行こう
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コントローラーを握ってゲームの画面を眺めているのとは、まるで違う。あまりにもこの世界はリアルすぎた。倒したモンスターは霧のように消えてなくなるが、斬った感触もダメージを受ける痛みもすべて本物と変わらない。
「ほら」
目の前でしゃがんでいるリュウトが、座り込んでいるナツキに視線を合わせてきた。ナツキの左手を取り、端末のパネルを開く。自分以外の人にも開けることに、ナツキは驚いた。パーティを組んでいるせいだろうか。
「これ」
リュウトはアイテム一覧を見せてきた。新しく増えたアイテムは一番上に表示される。そこに見慣れないアイテムがあった。通行証のような形をしている。
「これがアダルト空間に行けるようになるためのアイテム。使わなくても持ってるだけで効果あるから。これでナツキはいつでも行きたい時に裏側へ行ける。表でゲームしたければ表で、裏でゲームしたければ裏で、今後好きな場所でゲームができるようになる。さっきの、ナツキにはちょっと強い敵でつらかったかもしれないけど、レベルもあがったし、お金も増えたし、これからはもう少し楽に戦えるようになると思うから」
ナツキはじっとリュウトを見つめた。
「……リュウト」
「ん?」
「リュウトは平気なの……?」
「なにが?」
潤んだ眼差しで見つめるナツキを、リュウトは少し眩しそうに見つめ返した。そんなことには気づいていないナツキが、さらに見つめ返す。
「戦うこと。俺、怖くなった。無我夢中でやったけど、震えが止まらないし、まだすごくドキドキしてる。吹っ飛ばされた時の痛みも感覚もまだ残ってる」
「大丈夫、じきに慣れるよ。レベルがあがって、スキルもあがって、魔法も覚えたら、どんどん戦いやすくなっていくから」
リュウトが安心させるようにそっと微笑んだ。
「リアルな戦いが無理でやめてしまう人もいるにはいるけど、ゲーム続ける人のほうが多いし。ごめん、俺が無茶させたから。普通はこんな無茶なことしないから。俺が急かせてやらせちゃっただけだから。早く向こう側に連れて行きたくて」
リュウトは自分の端末を探り、アイテムを取り出した。回復アイテムのポーションだった。渡されたナツキは、そっと口をつけて飲み干す。
減っていたライフが回復し、痛みも消えた。細かい傷も消える。
ナツキはほぅと息をつき、目元を拭った。
「アダルト空間に入るのが、こんなに大変だとは思ってなかった。自分の下心を呪いたい」
「はははっ」
リュウトに笑われた。
「入るためには条件があるって言ったけど、一番重要なのは本人の力でクリアすることだったんだ。だからボスモンスターもナツキが倒さないと意味がない。その前のパズルもナツキがやることで、誰が通行証を求めているのか登録するという意味のものだった。入口で俺が出した紋章のようなアイテムは、初心者ダンジョンを専用ダンジョンに変更するためのものだった。あれがあれば、どのダンジョンでもアダルト空間行きのダンジョンへと変えることができる」
このゲームにはあらゆる種類の紋章があり、通常のダンジョンでは行けないような、特殊なダンジョンに入れるようになる。どの紋章でどんなダンジョンが出るのかは、実際に入ってみなければわからないが、一部の紋章なら攻略サイトを見れば詳しく書いてある。まだ見つかっていない紋章や、アップデートで新しく追加される紋章もあるので、すべてを把握している人は運営会社以外にはいないだろう。
「じゃあ、アダルト空間への入口が毎日変わるっていうのは……?」
「他にも入口があるにはある。紋章を持ってなくても入れる入口がね、どこかに隠されてる。その場所が毎日変わる。見つけるために探す旅もわりと困難だ。でもこのアイテムさえあれば、どのダンジョンでも入口にすることができる。入口に辿り着くまでの面倒な行動が、一気にショートカットできるんだ。ただ、これは誰にでも持てるアイテムじゃない。レベル百を越えて、あるクエストをクリアしないともらえない」
「なるほど……」
ナツキはどっと疲れた。回復ポーションで元気になったはずなのだが、気持ちがすっかり疲れている。
そんなナツキの腕をつかみ、リュウトが促してきた。
「向こうが出口だ。あの先にアダルト空間がある。一見、全年齢の世界とそんなに変わらないから、同じ世界に見えるけどね」
疲れていたが、しぶしぶナツキは立ち上がった。いつまでも洞窟の中にはいたくない。リュウトに腕を引かれるまま歩き出す。
洞窟の中に一点光る床があった。これに乗ると洞窟の外にワープする。
ブンッと風を切るような音がして、二人は一瞬で外に出た。
外は夜だった。このゲームには朝も昼も夕方も夜もある。リアルに近いが、時間の流れはゲーム内独自のものだ。現実の一日よりも早く昼夜が訪れる。
「ほら」
目の前でしゃがんでいるリュウトが、座り込んでいるナツキに視線を合わせてきた。ナツキの左手を取り、端末のパネルを開く。自分以外の人にも開けることに、ナツキは驚いた。パーティを組んでいるせいだろうか。
「これ」
リュウトはアイテム一覧を見せてきた。新しく増えたアイテムは一番上に表示される。そこに見慣れないアイテムがあった。通行証のような形をしている。
「これがアダルト空間に行けるようになるためのアイテム。使わなくても持ってるだけで効果あるから。これでナツキはいつでも行きたい時に裏側へ行ける。表でゲームしたければ表で、裏でゲームしたければ裏で、今後好きな場所でゲームができるようになる。さっきの、ナツキにはちょっと強い敵でつらかったかもしれないけど、レベルもあがったし、お金も増えたし、これからはもう少し楽に戦えるようになると思うから」
ナツキはじっとリュウトを見つめた。
「……リュウト」
「ん?」
「リュウトは平気なの……?」
「なにが?」
潤んだ眼差しで見つめるナツキを、リュウトは少し眩しそうに見つめ返した。そんなことには気づいていないナツキが、さらに見つめ返す。
「戦うこと。俺、怖くなった。無我夢中でやったけど、震えが止まらないし、まだすごくドキドキしてる。吹っ飛ばされた時の痛みも感覚もまだ残ってる」
「大丈夫、じきに慣れるよ。レベルがあがって、スキルもあがって、魔法も覚えたら、どんどん戦いやすくなっていくから」
リュウトが安心させるようにそっと微笑んだ。
「リアルな戦いが無理でやめてしまう人もいるにはいるけど、ゲーム続ける人のほうが多いし。ごめん、俺が無茶させたから。普通はこんな無茶なことしないから。俺が急かせてやらせちゃっただけだから。早く向こう側に連れて行きたくて」
リュウトは自分の端末を探り、アイテムを取り出した。回復アイテムのポーションだった。渡されたナツキは、そっと口をつけて飲み干す。
減っていたライフが回復し、痛みも消えた。細かい傷も消える。
ナツキはほぅと息をつき、目元を拭った。
「アダルト空間に入るのが、こんなに大変だとは思ってなかった。自分の下心を呪いたい」
「はははっ」
リュウトに笑われた。
「入るためには条件があるって言ったけど、一番重要なのは本人の力でクリアすることだったんだ。だからボスモンスターもナツキが倒さないと意味がない。その前のパズルもナツキがやることで、誰が通行証を求めているのか登録するという意味のものだった。入口で俺が出した紋章のようなアイテムは、初心者ダンジョンを専用ダンジョンに変更するためのものだった。あれがあれば、どのダンジョンでもアダルト空間行きのダンジョンへと変えることができる」
このゲームにはあらゆる種類の紋章があり、通常のダンジョンでは行けないような、特殊なダンジョンに入れるようになる。どの紋章でどんなダンジョンが出るのかは、実際に入ってみなければわからないが、一部の紋章なら攻略サイトを見れば詳しく書いてある。まだ見つかっていない紋章や、アップデートで新しく追加される紋章もあるので、すべてを把握している人は運営会社以外にはいないだろう。
「じゃあ、アダルト空間への入口が毎日変わるっていうのは……?」
「他にも入口があるにはある。紋章を持ってなくても入れる入口がね、どこかに隠されてる。その場所が毎日変わる。見つけるために探す旅もわりと困難だ。でもこのアイテムさえあれば、どのダンジョンでも入口にすることができる。入口に辿り着くまでの面倒な行動が、一気にショートカットできるんだ。ただ、これは誰にでも持てるアイテムじゃない。レベル百を越えて、あるクエストをクリアしないともらえない」
「なるほど……」
ナツキはどっと疲れた。回復ポーションで元気になったはずなのだが、気持ちがすっかり疲れている。
そんなナツキの腕をつかみ、リュウトが促してきた。
「向こうが出口だ。あの先にアダルト空間がある。一見、全年齢の世界とそんなに変わらないから、同じ世界に見えるけどね」
疲れていたが、しぶしぶナツキは立ち上がった。いつまでも洞窟の中にはいたくない。リュウトに腕を引かれるまま歩き出す。
洞窟の中に一点光る床があった。これに乗ると洞窟の外にワープする。
ブンッと風を切るような音がして、二人は一瞬で外に出た。
外は夜だった。このゲームには朝も昼も夕方も夜もある。リアルに近いが、時間の流れはゲーム内独自のものだ。現実の一日よりも早く昼夜が訪れる。
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