15 / 52
14
しおりを挟む「俺としては…ベラには生きていて欲しい。それと…子ができてもできなくても君の人生に深く関わった責任は取りたいと思ってる。交際を前提に俺とセックスしてくれないか?」
ロックスさんは恭しく私の手をとってそこに口付けをした。実際にされたことのない王子様のような動作に驚いてしまう。どちらかというとワイルドで怖くて荒々しい見た目からは考えられないくらい丁寧な動作で圧倒されるように彼の問いかけに頷いてしまう。
「そうと決まれば…すぐに取り掛かろう」
ロックスさんの腕が私の体を抱き上げて水場から上がって濡れた私の体を拭いてくれる。そうして自分の体も拭き始めるとついその様子を見てしまう。切れ長な赤い目に形のいい鼻に薄い唇。左耳上部にだけにつけた輪っか状のピアスと胸板に光る丸いモチーフがついたネックレスから意外とおしゃれ好きなのかと思う。長い手足に筋肉質な体つき、それに、この後の行為を考えると見てしまう彼の男の象徴。男の人は興奮したらそこが大きくなると聞くが平常時でもこの大きさか…と思ってしまうくらいには大きい。
「裸見ただけでそんなに顔赤くして…これからもっとすごいことするの…分かってるよな?」
「す…すごいこと?」
今だけでも刺激の強さにどうにかなってしまいそうだというのにロックスさんは口端を持ち上げて悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「それはベッドの中のお楽しみだな」
体を拭き終えたロックスさんはそのままタオルを腰に巻いて、私の体も別のバスタオルで包み込むと、荷物を持って私の体を抱き上げ、そのまますぐそばの私の家の中へと入って寝室のベッドに下ろされる。
ロックスさんが私に覆い被さるように近付いてくると途端に恥ずかしくなる。ロックスさんはすごく優しくて顔立ちもスタイルも抜群で自分には勿体無いくらい素敵な男性だ。でもいろいろと段取りを飛ばしてセックス、交際…というのはあまりにもハイスピード展開過ぎていまだに頭が追いついていない。
「あー…その、なんだ…俺はこういうナリだし…その、女の子は好きでもない男からセックスさせてくれって言われてそう簡単にいいです、とはならないよな…」
「そ、その…っ!ごめんなさい緊張しちゃって…っ、何しろ…初めて、なので…」
あまりに萎縮してしまった私を気遣うようにロックスさんはポリポリと頭を掻いて息を吐いた。
「緊張…だけじゃないだろ。俺みたいなガラの悪そうな男…よく女の子にゃ怖がられるから慣れてんだ。こんな男が初めてじゃ…男の俺でも同情しちまう」
確かに、彼はコワモテという部類に入る方だろう。後頭部から首にかけては痛々しい傷痕があるし、赤い切れ長な目も第一印象は怖い方かもしれない。そのスキンヘッドもよく怖がられているのだろう。だけど私は彼が見た目に反してとても優しい男性だと身に沁みていた。
「ほ、本当に緊張っていうか恥ずかしいだけなんです…ロックスさん、自分では卑下するけど…少なくとも私は素敵な男性だと思いますから…」
ロックスさんは珍しく面食らった顔をしてさらに珍しいことに頬を染めている。
「素敵って…本気か?」
「最初はびっくりしましたけど…今はロックスさんが優しい人だって分かりますしね」
彼に微笑みかけるとロックスさんも口元を緩めて私の頬を撫でる。そうしてゆっくり瞼を下ろして顔が急接近してくる。流石の私でもキスをされるのだと理解すると応えるように目を閉じた。口に触れる柔らかい未知の感触に口と目を閉じて硬直することしかできないがロックスさんは私のペースに合わせて軽いキスを繰り返した。私が慣れてる女の子ならここで舌を絡めたりするんだろうなと思いながらそんな難易度の高いことは到底できそうにない。
「できる限り優しくする…全部俺がリードするから…君はただ受け入れてくれるか?だが怖かったらいつでも言ってくれ。」
唇が離れて私の不安を取り除くように問いかける彼にただただ頷いて答える。「いい子だ」と言って私の頭を撫でると私の体を隠すバスタオルをゆっくり脱がせた。
さっきの水場で見られた裸とは違う、今は性行為のための裸に体が硬直してしまう。そんな私を察してかロックスさんは私の隣に向き合うように横になると私の体を抱きしめてポンポンと私の背中を撫でた。性的な接触とかではない、ただいろいろと不慣れな私に合わせてゆっくりとしたペースで接触に慣れさせようとしてくれる優しさにきゅっと胸が甘く痛んだ。
「あの…私に合わせてくれてありがとうございます」
「いいんだよ、まずは裸でくっつくことに慣れてくればいい。初めての相手には…大事にしてやりたいってのは俺のエゴだしな。セックスが怖くて痛いだけのものだと刻んじまったら可哀想だろ」
ロックスさんの体温が気持ちよくて私もおずおずと彼の背に腕を回す。私とは違う、筋肉質で硬い、戦いに慣れた男の人の体。本能的に異性を感じ取って胸のあたりがむずむずする。彼が触れるように私も彼の背を撫でると慈しむように私の額に軽い口付けが落とされる。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
秘密 〜官能短編集〜
槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。
まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。
小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。
こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる